外務報道官談話
ユネスコ記憶遺産の新規登録について(外務報道官談話)
1 本10日(現地時間9日),ユネスコが記憶遺産の新規登録について発表し,日本ユネスコ国内委員会が申請していた「東寺百合文書」及び京都府舞鶴市が申請している「舞鶴への生還」が登録されました。誠に喜ばしいことであり,関係者の皆様と共にこの決定を歓迎し,祝意を表したいと思います。
2 一方,中国の関係機関によって申請された「南京事件」に関係する文書についても登録が発表されました。当該申請案件は,例えば,日中両国の歴史共同研究でも示されてもいるように,日中間で見解の相違があることが明らかなものです。それにもかかわらず本件は,中国の一方的な主張に基づき申請されたものであり,当該文書は完全性や真正性に問題があることは明らかであると考えます。日本政府が,これらの基本的な考え方について随時申入れを行ってきたにもかかわらず,当該案件が記憶遺産として登録されたことは,中立・公平であるべき国際機関として問題であり,極めて遺憾です。
3 記憶遺産事業は,文書遺産の保護やアクセスの確保等を目的として,当該基準を満たした文書等を登録するユネスコの事業です。この重要なユネスコの事業が,政治利用されることがないよう,我が国は責任あるユネスコ加盟国として,然るべく本件事業の制度改革を求めていく所存です。
【参考】日本の申請案件
(1)東寺百合文書
平安時代以来一貫して東寺の宝蔵(ほうぞう)に収められ,1,000年以上にわたって東寺に伝承した約2万5千通に及ぶ寺院文書。日本の仏教史,寺院史,寺院制度史研究上で貴重な資料。1685年(貞享2)に加賀藩第五代藩主・前田綱紀(まえだつなのり)により「百合」の箱が寄進され,保存・管理されてきた。
(2)舞鶴への生還
1945-1956年のシベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録
「シベリア抑留体験の記録」,「安否を気遣い帰還を願う日本の家族に関する資料」,「引揚関連資料」に係る570点の資料から構成。
(3)中国の申請案件
中国各地の公文書館等が共同申請した「南京事件」に関するとされる資料。写真,日記,裁判記録等で構成。