グローカル外交ネット

令和2年2月26日
ジャパンSDGsアワード表彰式
テレビ番組のインタビュー
アワード受賞団体視察

外交実務研修員 保科 隆之
(北海道から派遣)

1 はじめに

 私は,2018年4月より,北海道から派遣され,現在,国際協力局地球規模課題総括課で勤務しております。本省での2年の勤務も残りわずかとなったところ,寄稿の機会をいただきましたので,簡単ではありますが,私の外務省での経験を御紹介させていただきます。

2 地球規模課題総括課について

 この部署の名前を聞いて何をやっているのか想像がつく方はあまりいないのではないでしょうか。地球規模の課題というと,最近耳目を集めている海洋プラスチック問題をイメージする方が多いかもしれませんが,教育やジェンダー,防災,水・衛生,気候変動など,開発途上国・先進国を問わず,世界は様々な課題に直面しています。地球規模課題総括課では,国際機関との連携やODAなどの枠組みを通じて,こうした課題の解決に取り組んでいます。

3 SDGsアウトリーチ班として

 私が地球規模課題総括課で主に担当しているのが,SDGs(持続可能な開発目標)の広報です。SDGsとは,2030年までに持続可能でより良い世界を実現するため,全世界が取り組むべき17の目標を定めたもので,貧困や教育,ジェンダーといった伝統的な開発課題から,エネルギーや経済成長,差別の解消といった先進国も取り組むべき課題,そして,地球環境や気候変動といった国境を越え世界中が協力して取り組むべき課題まで,内容は多岐にわたります。このように説明をして,「なるほど!そういうことか!」となる人はかなり少数かと思います。私も着任した当時は,より良い世界を実現しようという目標であるということは理解できても,それが日常の生活,あるいは経済活動とどのような関係があるのか掴めずに苦労しました。
 SDGsアウトリーチ班では,遠い世界の話に感じられるようなSDGsを身近に感じ,具体的な行動を起こしてもらえるよう広報業務を行っています。私も,官邸での政府表彰や,講師としての講演,TV出演,SNSでの発信,広報動画の制作など様々な広報業務に携わりました。定型的な仕事ではない分,日々頭を悩ませながら試行錯誤が続く,大変な仕事ですが,普段の生活の中でSDGsを見つけると,日々の仕事が報われた気がしてうれしくなります。
 ここでは,この2年の間で私が担当した印象深い仕事を2つ紹介します。

 
(1) ジャパンSDGsアワード
 
 ジャパンSDGsアワードは,SDGs達成に資する優れた取組を行う企業・団体等を表彰する制度です。表彰式は毎年12月に総理大臣をはじめ,官房長官や外務大臣,官房副長官のご列席のもと執り行われます。アワードのプロセスは非常に長く,一年の半分はこのアワード業務が続いているといっても過言ではありません。全体のスケジュール管理や応募案件の整理,情報発信,選考委員との調整,表彰式のサブロジなどやることは非常に多いですが,このような政府表彰のプロセスを最初から最後まで担当できたことは非常に貴重な経験となりました。表彰式の中で私の起案した挨拶を総理に読んでいただけたときは大変感慨深い瞬間でした。
 
(2) SDGs講演
 
 アウトリーチ班では,企業研修や自治体,学校など依頼があれば,講師として出向き,SDGsに関する講演を行います。人に何かを教えるためには,まず自分の中でしっかりその内容を理解することが求められます。SDGsという,ただでさえ輪郭のつかみづらいものを,わかりやすく人に教えるというのは非常に難しいものでした。何度か講演をしていくと,基礎となるパターンはできますが,毎回聴衆や会場の雰囲気は異なるので,どのようなことを話すのか試行錯誤していました。さまざまなところで講演をしましたが,最も印象深く,かつ緊張したのはテレビ番組のインタビューです。収録なので撮り直しや編集ができるとわかっていても,緊張でガチガチになりながらのインタビューとなりました。

4 おわりに

 私自身,英語の知識も国際的な知見も持ち合わせていなかったので,外務省という未知の世界で働くことが決まったときは非常に不安が大きかったです。それでも,ここまでくじけずに何とかやってこられたのは,地球規模課題総括課の皆さんのサポートがあったからだと感じています。右も左も分からない中,たくさんご迷惑もおかけしましたが,いつも優しく暖かく見守っていただき,たくさんのことを学ばせていただきました。
 特に,この2年間でSDGsを取り巻く環境が大きく変わり,着任当時には想像も出来ないほど,社会の中でSDGsというものが根付いてきました。そのような中,政府の中で中心的な役割を果たす地球規模課題総括課で働き,社会が少しずつ変わっていくのを間近で見られたことは,かけがえのない経験だと感じています。
 このような貴重な機会を与えていただいた外務省と北海道に改めて心から感謝申し上げます。本省での勤務も残りわずかとなりましたが,毎日を大切に過ごし,少しでも成長できるよう精進したいと思います。

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