寄稿・インタビュー
茂木外務大臣書面インタビュー
(2021年1月4日付、エル・ウニベルサル紙)
「日本はメキシコ進出日本企業への支援(柔軟な対応)を模索」
日本の外務大臣は、進出日本企業がパンデミックと米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の発効により、苦労の中メキシコで活動していると認めている。
新型コロナウイルスによるパンデミックの最中、日本はメキシコと中南米との関係強化に取り組んでおり、メキシコ訪問を通じて、メキシコ国内で苦労ながら活動する日本企業への支援を模索すると日本の茂木敏充外務大臣は述べている。
そのため、メキシコ政府との関係を緊密化し、メキシコで活動を続けるため、進出日本企業が支援(より柔軟な対応)を必要としていることを伝えるため、外務大臣として初の中南米訪問を行うとエル・ウニベルサル紙に述べている。
【問】今次訪墨の目的及び二国間関係に与える影響は。
【大臣】新型コロナの感染拡大により国際社会が大きく影響を受ける中、私が目標とする「包容力と力強さを兼ね備えた外交」を中南米においても展開し、民主主義、法の支配、自由貿易といった基本的価値を共有するパートナーであるメキシコを含めた中南米諸国との関係を強化したいと考えています。
今回の訪問に際し、新型コロナ収束のための連携を含む幅広い分野での協力を通じた二国間関係の更なる深化や、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた連携を確認したいと考えています。
経済関係については、2005年の日墨EPA発効後、進出日系企業は約4倍の1,300社となり、中南米最大の日本企業集積拠点となるなど飛躍的に拡大しました。他方、進出企業は、コロナ下で、多大な苦労の中、雇用維持に努めつつ活動している状況です。また、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が発効するなど、メキシコで操業する企業の環境は大きく変化しています。このような中、進出企業がメキシコでより活動しやすくなるよう、引き続きメキシコ政府と意見交換をしていきたいと考えています。
また、本年から安保理非常任理事国となるメキシコとの間で、安保理改革を含む諸課題や拉致問題を含む北朝鮮への対応を始め、地域・国際社会の諸課題について、緊密な連携を確認したいと思います。
今回のメキシコ訪問を、2021年の日本外交にとって、また両国関係にとっての良いスタートとしたいと思います。
【問】TPP発効から2年経過し、日本とメキシコとの関係でどのような面が強化されたのでしょうか。
【大臣】日墨EPAが2005年に発効して以来、二国間の経済関係は、貿易・投資を軸とし、めざましい規模とスピードで深化しています。特に、メキシコから日本への農林水産品の輸出は大きく増加しています。日本において、豚肉、アボカド、アスパラガスなどのメキシコ産品をスーパーなどで目にする機会が増え、これらは日本の食卓にとって身近な存在となっています。日本からメキシコ向けの自動車や自動車部品の輸出が増加し、また、新規投資や企業の進出も大きく増加しています。
また、私が担当大臣を務め、2018年12月に発効したTPP11では、更なる関税削減・撤廃を実現しており、両国の経済関係が一層強化されることが期待されます。
日本とメキシコは、TPP11の発効に向けて共に主導的な役割を果たしてきました。また、今月にはメキシコから引き継ぐ形で、日本は本年のTPP委員会の議長国となりました。世界的に保護主義的な動きが見られる中で、TPP11を通じた自由貿易を推進し、その輪を拡げていきたいと考えており、引き続きメキシコと共に主導的な役割を果たす考えです。
【問】中国が参加し、日本も署名したRCEPによりTPPに影響はあるのでしょうか、もしくは日本とメキシコの経済・貿易関係に影響はあるのでしょうか。
【大臣】昨年11月に署名に至ったRCEPは、世界のGDP、貿易総額の約3割、我が国の貿易総額のうち約5割をカバーしており、これにより、この地域の貿易・投資の更なる自由化、活性化が期待できます。
TPP11は、ハイスタンダードでバランスの取れた21世紀型の新たな共通ルールを世界に広めていくとの意義を有しており、こうしたTPP11の意義は、RCEPの署名によっても何ら減じるものではありません。
TPP11には、11か国のうち、チリ、ペルー、ブルネイ、マレーシアの4か国が国内手続を終了していないという課題があります。我が国としては、メキシコと共に、チリ及びペルーの早期締結に向け、引き続きリーダーシップを発揮していきます。