寄稿・インタビュー

CNN(米国)への安倍総理大臣寄稿
(2015年9月25日付)


【安倍晋三:より良い世界のための教訓】

平成27年9月27日

英語版 (English)

 成長は繁栄をもたらし,繁栄は平和をもたらす。今月,国連総会のためにニューヨークに集まる世界の指導者達は,これらの言葉をよく耳にするだろう。そして,これは真実である。しかし,国連創設70周年にあたり,この言葉が現実の世界,そして現実の人々の生活にどう当てはまるのか,振り返って検討することは重要だ。

 現実の世界において開発と繁栄が何を意味するか,そして日本がこの課題といかに向き合うかについて,CNNから私の個人的な意見を問われた時,私は昨年のコートジボワール訪問を思い出した。そこでは,日本が女子に読み書きを教え,裁縫など現地で求められる職業訓練施設を長年支援してきている。私は,そこで出会った少女たちの,将来への希望に満ちた笑顔が忘れられない。

 日本はこの60年間,相手方の個別のニーズを尊重し,理解しながら,人材育成支援やインフラ整備支援を行うことで,開発途上国のパートナーとなってきた。

 しかし,世界で多くの人々が貧困にあえぎ,あるいは自分の家を失い難民化している中,依然として,やるべきことは山積している。

 例えば,現在,中東や北アフリカから大量の難民が周辺国及び欧州に流入している状況は深刻な人道状況であり,国際社会による一致した取組が必要だ。日本は,難民のホストコミュニティを支持し,この問題に全力で取り組む。

 しかし,今や,国際的な平和と安定の維持のためには,一国だけでは十分でない。だからこそ日本は,国際協調主義に基づく「積極的平和主義」により,国際社会の平和と安定への貢献をこれまで以上に果たす。9月19日,国会で成立した法案により,自衛隊の国際的な平和協力活動への参加が認められる範囲が拡大する。

 協力の場の一つが国連であり,だからこそ,私は今回ニューヨークでの会合に出席する。しかし,世界の平和と安全を促進する可能性を最大限に発揮するためには,中心的な役割を担う安全保障理事会を含め,国連改革を進める必要がある。それでこそ,世界の国々や人々が直面する課題を解決する取組の上で,より大きな役割を果たすことができよう。21世紀にふさわしい形での改革こそ,平和と繁栄,安全をもたらす。

 日本の取組に話を戻そう。我々は以下の三点に基づき開発協力を進めている。それは,人間一人ひとりを大切にする(人間の安全保障),開発途上国の自発性とその可能性を信じる(自助努力支援),自立的発展を後押しする(持続的成長)ということだ。

 それでは,実際には,これらはどのような意味を持つのだろうか。

「人間の安全保障」
 人間の安全保障は,一人ひとりの重要性を認識し,個人が才能や能力を開花させ,自立し,社会に貢献できるようになることが開発途上国の成長の鍵となることである。成長は包摂的でなければならず,誰一人として取り残されるべきではない。だからこそ,日本の支援では,女性も含め社会において最も脆弱な立場にある人々を特に重視している。日本が持つ強みとして,保健医療分野における協力を,人間の安全保障を推進する上で重視する。

 例えばカンボジアでは,妊婦ケアの技術指導を提供し,乳児死亡率を劇的に減少させた。バングラデシュやケニアでの水の浄化事業,スリランカの漁村での女性ビジネス支援,また最近ではエボラ拡大防止のために,医療従事者の派遣や,物資・資金提供を西アフリカで実施した。これらの支援の現場では,多くの日本人女性が主体となっており,より良い社会を創る後押しをしていることを誇らしく思う。

「自発性の涵養」
 人間の安全保障と関連する課題としては,開発途上国の人々が更なる成長を志し,経済的自立への道筋を開くために欠かせない新たな技術や能力の習得支援の必要性がある。その一つの方法として,学校教育や技術・技能の供与により,開発途上国の人材を開発してきた。この結果,開発途上国には自国産業が育ち,国家の発展と成長の強固な基盤を作ることとなる開発途上国自身の努力を育むことができる。

 私はこのようなアプローチを強く支持しており,自分自身でも,20年近く前から,ミャンマーやカンボジアなどアジアの後発国で学校建設を支援してきている。また,タイでは,学院設立と日本での企業実習を組み合わせて,明日のタイの産業を担う若者を養成してきた。

 アフリカでは,2013年に修士号取得と日本企業でのインターンシップの機会を与えるABEイニシアチブを立ち上げた。また,産業化を進めるため,14か国において理数科教育プログラムを導入した。

「持続可能な成長」
 究極的には,世界の貧困撲滅は持続可能な成長を意味し,それは「質の高い成長」を促進するインフラ整備や人的資源開発のために,開発途上国が必要とする支援を提供することを意味する。このような考え方から,日本は,アジア向けに「質の高いインフラパートナーシップ」プログラムを始める。インフラ投資は,利用者に対して長期に亘る影響と便益を与えるものなので,インフラのコスト評価では,全体的なライフサイクルを通じたコストを考慮すべきである。

 また,地震や津波など多くの自然災害を経験した国として,「防災の主流化」を強調したい。事前の防災投資や災害後の復興段階におけるBuild Back Better(BBB)が重要だ。自然災害に脆弱な太平洋島嶼国やカリブ諸国には,教育,交流支援などにより防災分野での支援を実施してきている。

 このようなアプローチは,本年2月に決定した「開発協力大綱」に反映されている。日本はこの大綱に基づき,「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に積極的に貢献する決意だ。

 国連が創設されて70年。日本は,戦後70年,ひたすらに平和の道を歩み,国家の再建を進めてきた。1950年代半ばからは,多くの開発途上国,とりわけアジアの国々を中心に,発展への貢献策を実践した。

 この期間に,アジアはめざましい発展を遂げ,多くの国々では高いレベルの民主主義が実現している。アジアの教訓の多くは,アフリカや中東といった世界の他の地域でも活かすことができる。

 実際,このような考え方に基づき,来年,国連や他の共催者とともに,私は第6回TICAD首脳会議を,初めてアフリカ大陸のケニアで開く。TICADの機会を活用し,また来年のG7サミットの議長として,世界のリーダーと共に緊密に協力していく。

 各国の安全は,世界の中でその国以外の場所で不安定と貧困が存在していれば脅かされることになるという教訓をこれまで我々は学んだ。日本の経験を共有することにより,こうした課題に対処し,開発協力の新しいページを開くことができるであろう。


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