国際問題プレゼンテーション・コンテスト
第37回「国際問題プレゼンテーション・コンテスト」開催報告
2月26日(土曜日)、外務省は、第37回「国際問題プレゼンテーション・コンテスト」をオンラインで開催しました。経済安全保障への関心が高まりをみせる中、「我が国の経済安全保障に資する外交政策の在り方について」というテーマで「提言」を募った結果、62組(83名)の学生から応募があり、事前審査を通過した5組(10名)のファイナリストが本選に進みました。
冒頭挨拶で、小野日子外務報道官がファイナリストを激励し、続いて、各ファイナリストからプレゼンテーションがなされ、様々な視点から提言が披露されました。黒﨑将広防衛大学校准教授、齊藤孝祐上智大学准教授及び土屋貴裕京都先端科学大学准教授が審査を行い、発表後には、審査委員から投げかけられる鋭い質問に対しファイナリスト達が熱意を持って答えていました。
受賞者の方々は次のとおりです。
受賞者の皆さん
【外務大臣賞】
「『経済安全保障同盟』の挑戦 多国間協調によるエコノミック・ステイトクラフトの抑止」
- 慶應義塾大学総合政策学部4年 本田 義明(ほんだ よしあき)さん
- 慶應義塾大学総合政策学部1年 中下 璃乃(なかした りの)さん
受賞者の声
(本田さん)この度は、とても栄誉ある賞をいただきまして、大変ありがとうございます。
経済安全保障に関して1年間研究をしていたのですが、今回、外交政策を考える点がとても難しかったです。また、経済安全保障自体が現在進行形の議論ですので、今回のプレゼンテーションをとおして、皆さんのご提案を聴けてとても勉強になりました。
【優秀賞】
「技術優位のために 共同研究枠組みの提言」
- 東京大学法学部4年 円光 門(まどみつ もん)さん
- 東京大学法学部4年 森本 太郎(もりもと たろう)さん
受賞者の声
(円光さん)私は、これまで大学で国際政治学を中心に学んできたのですが、主に理論的な側面に関心があったので、今回のような政策提言というのは自分にとって初の挑戦で、非常に多くの課題と学びがあったと思っております。質疑応答の際に、先生方から頂いたものをぜひ次の課題にしていきたいと思います。ありがとうございました。
(森本さん)普段、伝統的な、いわゆる陸海空の安全保障に興味を持って研究していたのですが、今回経済安全保障について、かなり真剣に考える機会を手に入れることができて、非常に価値のある経験をしたと思います。栄誉ある賞を頂きましてありがとうございました。
【奨励賞】(発表順)
「再エネ時代の電力貿易への積極参入によるエネルギー供給の安定化」
- 京都大学法学部1年 塚原 義章(つかはら よしあき)さん
- 京都大学法学部1年 姜 門模(かん むんも)さん
受賞者の声
(塚原さん) 全国より集まった同士と充実した学びの時間を過ごすことができ、これからの学習のモチベーション向上につながりました。
今回、文理や学問分野の垣根を越えて議論を組み立てなければならないということに非常に難しさを感じました。今後も外交政策等について学習する場合には、こうした学際的な視野を持って学習する必要があるということを強く実感した1日となりました。ありがとうございました。
(姜さん)今日はありがとうございました。この機会で日本のさまざまな経済安全保障政策に接することができて、とても嬉しく思っています。今後も日本を始めとする世界の経済安全保障政策に対して、興味を持っていきたいと思っています。
「脱 ワクチン他国依存 「モノ」より大切な「こころ」のアプローチ」
- 叡啓大学ソーシャルシステムデザイン学部1年 福髙 七海(ふくたか ななみ)さん
- 東京大学教養学部1年 西田 真史(にしだ まさふみ)さん
受賞者の声
(福髙さん)本日はありがとうございました。初めて外交政策の提案に挑戦してとても難しかったですが、とても価値のある機会になったなと思います。また、新しく注目度の高い経済安全保障について、デジタルや半導体、エネルギーなどのさまざまな面から具体的な外交政策を聞くことができて大変勉強になりました。今日学んだことを、さらに生かせるように励みたいと思います。
(西田さん)おそらく、今日の登壇者の中で唯一の理系の大学生だと思うのですが、自分は経済安全保障という概念に対して全然知識がない状態でのスタートでした。2か月半いろいろ調べていくなかで、経済安全保障だけでなく他の国際問題にも見識を深めることができたと感じています。とても大きなステップアップになりました。本当にありがとうございました。
「「デジタル集団安全保障」と国際協力機構の設立」
- 法政大学法学部4年 野口 夏歩(のぐち なつほ)さん
- 法政大学法学部4年 村田 萌華(むらた もえか)さん
受賞者の声
(野口さん)本日は、このような場に参加することができて、大変嬉しく思っています。私自身は、こういった社会情勢の中で、少しふさぎ込んでしまうこともあったのですが、この大会に参加したことによって、再び世界に、国際問題に目を向けることができましたし、同世代で、同じ学生の皆さんと同じ課題に向かって学ぶことが、私自身にとってもすごく良い刺激になり、良い経験になりました。ありがとうございます。
(村田さん)本日は、ありがとうございました。大学4年間の集大成として、このようなやりがいのある事柄に取り組めたことは非常に刺激になりました。また同世代にこんなにも真剣に日本の事や外交を考えている方たちがいることを知ることができて、とても嬉しく思います。
講評(五十音順)
黒﨑委員
各賞を受賞された皆さん、本当におめでとうございます。
このコンテストには、大学1年生から4年生、そして文系理系をまたぐ多様なバックグラウンドを持つ学生の参加がありました。そこから選ばれたファイナリストの皆さんにおかれましては、外交問題について勉学を重ねてきた4年生の優秀さもさることながら、1年生や理系学生の健闘も素晴らしく、大変感服いたしました。皆さんの論文と発表は、論旨が極めて明快で、一つの議論に絞ることでより説得的なものにしようとしていることが伝わるものでした。その議論も、複雑なパズルを解き明かして入念に組み立てられていたように思います。こうした点が本選に出場した方々と残念ながら進めなかった方々を分かつことになったといえるでしょう。本選では結構厳しい質問をしたのですが、それは発表者のクオリティの高さに刺激を受け、今後皆さんが勉強をさらに深めていくための課題を提示したくなったからということでご勘弁いただければと思います。今後もいろいろなチャンスがあると思いますので、学生の皆さんには引き続きチャレンジすることを期待しています。
最後になりますが、参加した方だけでなく視聴した全ての学生の皆さんに「外交問題を考えることは面白いな」とか「ワクワクするな」と感じていただくことで、この国際問題プレゼンテーション・コンテストがご自身の夢を追い求めるための糧となることを願ってやみません。
齊藤委員
皆様、お疲れ様でした。そして、今回受賞された皆様おめでとうございます。
経済安全保障の定義もまだ明確ではなく、現在進行形の難しい問題を扱うなかで、いずれも非常に有意義な議論を展開されていたと思います。また、審査中は質疑の時間が限られていましたが、いずれのご提案も興味深く、もっと議論を深めていく機会を持ちたいと思わせるようなものばかりだったと思います。
何よりこういった場にきちんとした素晴らしい準備をして出てくるということ自体が、まず賞賛されるべきことだと思います。質的にも全体的に非常に魅力的な提案が多く、私自身も勉強になることがたくさんありました。
多くのご提案にもあらわれていたように、経済安全保障は、政府や外務省だけの話ではありません。今後、企業や大学に勤めてもいろいろなかたちでかかわり、触れていくことになると思います。これからも経済安全保障の問題は続いていくと思いますので、今日のご経験を踏まえつつ、意識的にニュースを追いながら考えを深めていっていただければと思いますし、私も皆さんとまた改めて議論をする機会があればいいなと強く思っています。
土屋委員
本日は大変お疲れさまでした。本選に臨まれて各賞を受賞された皆さん、本当におめでとうございました。
経済安全保障という問題、非常にホット・イシューになっておりますが、古くて新しい問題で、広義にはあらゆる経済的な要素の安全を保障するということです。しかし、人によって、あるいは国によって定義や解釈が異なるという中で、今回本選に臨まれた5組の皆さんは、エネルギー、グローバルヘルス、エコノミック・ステイトクラフトへの対処、技術、サイバー・デジタルと非常に多岐にわたる角度から小論文並びにプレゼンテーションに取り組まれたと感じています。まさに経済安全保障推進法案が昨日閣議決定されたタイミングでもあり、タイムリーな政策形成の中にあって、またウクライナ情勢を巡って伝統的安全保障の重要性と共に天然資源、LNGなどのエネルギー問題を巡り改めて経済安全保障の重要性が国際的に認識されてきていると感じます。
新興技術をめぐる経済安全保障に焦点を当ててみても、科学技術政策、外資規制の問題、通商安全保障、エネルギー資源など、さまざまな政策が複雑に絡み合っており、そうした中で日本の外交、外交政策といったものがどのようにあるべきか、どのように日本が取り組んでいくべきなのか、ということについて、非常によく考えていただいたと思います。
かなり厳しいあるいは難しい質問をした部分もあるかもしれませんが、我々学者も、政策形成の過程にある人たちも、まさに今考えている最中のこの難しいテーマによく取り組まれたと思います。
今後、経済安全保障、ならびに日本の外交、外交政策という問題により関心を深めていただき、これからの学びや将来の糧にしていただけると嬉しく思います。