政策評価

令和8年2月25日

1 日時

 令和8年1月16日(金曜日)14時30分~16時00分

2 場所

 オンライン方式

3 出席者

(1)有識者(五十音順)
石田 洋子 広島大学 特命教授
坂根 徹 法政大学法学部 教授
神保 謙 慶應義塾大学総合政策学部 教授
詫摩 佳代 慶應義塾大学法学部 教授
南島 和久 龍谷大学政策学部 教授
藤田 由紀子 学習院大学法学部 教授
(2)外務省
石飛 大臣官房総務課長
上田 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
新井 大臣官房ODA評価室長
大滝 総合外交政策局総務課首席事務官
前田 総合外交政策局政策企画室首席事務官
田宮 大臣官房会計課課長補佐
ほか

4 議題

  • (1)令和8年度外務省政策評価(政策評価制度及び実施計画(案))
  • (2)行政事業レビュー

5 発言内容

【外務省】
 本日はお忙しい中、アドバイザリー・グループ会合にご出席いただき感謝する。現在、日本外交を取り巻く状況は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境にある。年末年始の状況を見ても、中国の台湾周辺での軍事演習に加え、ベネズエラ、イラン情勢も緊迫化している。
 外交政策は、日米同盟を基軸とし、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)を外交の柱として推進している。その中で、同志国との連携、グローバルサウス諸国との連携を図っているが、国際情勢の変化や外部要因の影響を受け、柔軟かつ臨機応変な対応が求められる部分もある。このような外交政策をより効果的かつ効率的に推進するため、政策評価を通じたPDCAサイクルによる不断の見直しは、ますます重要になっていると感じる。
 各省庁で政策の特性に応じた評価制度の見直しが行われているが、外務省もより活用される政策評価を目指し、様々な制度の見直しを行っている。令和8年度の政策評価については、国際情勢の変化や外部要因の影響を受けやすい外交政策の特性上、一定の難しさはあるものの、引き続き試行錯誤を重ね、その特性も踏まえつつ、より活用される政策評価を目指し、取り組んでいく所存である。有識者の先生方におかれては、外務省の政策評価制度のあり方も含め、忌憚のない意見や助言を賜りたい。

(1)令和8年度外務省政策評価(政策評価制度及び実施計画(案))

【外務省】
 令和5年に「政策評価に関する基本方針」を一部変更する閣議決定が行われ、政府全体の政策評価制度が見直された。これを踏まえ、外務省では施策の事後評価にかかる計画や政策評価書の見直しを実施した。これまでの評価書等の見直しのポイントを簡単に振り返りたい。
 まず令和6年度に定期的な進捗測定には外交青書や開発協力白書等を活用し、毎年作成していた事前分析表を廃止した。製本も取りやめ、ペーパーレスに移行した。評価書についてはパワーポイント化するとともに、5段階の評語を廃止し、主要課題、実績、今後の方向性、目標、評価結果等を簡潔に記載することとした。続いて令和7年度には、評価書の記載ぶりをさらに理解しやすくする取り組みを行った。評価書内の「施策目標」および「中期目標」の記述を簡潔にし、政策評価体系上の階層別に細分化されていた目標をコンパクトかつ分かりやすく再構成した。「個別分野」という表記も「分野」に統一した。
 令和8年度は、外務省政策評価見直し3年目に該当し、3年サイクルが一巡する。これまでの見直しを踏まえ、さらに検討した結果、令和8年度に使用する評価書については、令和6年度および令和7年度に行った見直しを継続しつつ、より分かりやすく活用される評価書となるよう、作成に取り組むこととした。この点から、以下の2点を見直す。
 第一に、評価書に記載する「施策の予算額・執行額等」について、評価年度の金額を記載するようにする。令和8年度政策評価書には令和5年度、令和6年度、令和7年度の欄があり、所見を求める際には、評価対象年度の予算額・執行額を可能な限り埋めて送付する。第二に、施策レベルの記載を行うページに参考資料を添付するページを追加する。令和8年度は評価対象が「地域別外交」であるため、施策レベルの評価本文に加え、参考のページを追加し、外務省が実施している地域別の海外における対日世論調査の結果等を掲載する。
 また、令和8年度の政策評価書作成にあたっては、令和7年度政策評価の際に先生方から頂いたアドバイスを可能な限り取り入れる、または反映させていきたい。外交分野はエビデンスを示すのが難しい分野の一つであるが、先生方からご指摘のあったように、政策評価書が自画自賛にならないよう、今後もエビデンスのあり方や書きぶりを工夫・調整していく必要があると考えている。これに限らず、評価サイクルが一巡する令和8年度評価実施後も、これまでの成果を検証するなど、外務省では不断の見直しを行っていく予定である。
 次に、令和8年度外務省政策評価実施計画について述べる。令和8年度は、先述のとおり、事後評価の対象として地域別外交の6つの施策に関する令和5年度から令和7年度の3年間の実績等の施策別評価、政府開発援助に係る未着手・未了案件の評価、および租税特別措置等に係る評価を行うこととしている。

【有識者】
 令和6年度と令和7年度の政策評価書はかなり簡潔で分かりやすい形に変更されたと認識しているが、この変更が書き手・読み手双方にどのように受け入れられたのか。分かりやすく簡潔な記述は読み手には利便性が高い一方、書き手としては、情勢が急速に変化する複雑な世の中で過去の政策を評価する際に、十分な背景説明が難しくなる可能性がある。特に最近の情勢は例年以上に説明が難しいのではないかと想像している。今後は、読み手にとってのわかりやすさと、必要な説明の双方を確保する記述のあり方を検討すべきだと考える。
 また、多くの新しい用語が生まれており、政治・国際・評価分野以外の人には馴染みのない「ジャーゴン(業界用語)」も多く存在する。例えば、評価には「アウトカム」や「エビデンス」など、一般国民にはなじみのない用語がキーワードとなるのでこれらへの対応が必要ではないか。
 国民に分かりやすく、さらに簡潔な記載をする上で、タイムリーな内容ではない評価結果をどう扱うか、また、ジャーゴンを使用する際はまとめて説明する欄を設けることについて検討すべきである。

【有識者】
 近年、評価書のパワーポイント化、外交青書、開発協力白書、外務省ウェブサイト等へのハイパーリンクを通じた参考資料の活用といった取り組みが行われていると承知している。令和8年度の取組の一つである施策レベルの記載箇所にも参考資料を添付する点は、エビデンスに基づく評価の強化、政策評価書の分かりやすさ向上、そして評価の活用促進につながり、評価できる。
 施策予算額や執行額等の評価年度の金額を可能な限り記載し、アドバイザリー・グループのメンバーに提供されることは、所見作成の参考となり、有益であると理解している。さらに、金額の記載に加え、施策予算額の増額が施策推進につながった場合や、今後さらなる予算額の確保が必要な場合は、その旨も併せて説明に含められることが望ましいのではないか。来年度(令和8年度)の予算額については、本会合開催時点では国会での予算審議前であるが、外務省の来年度予算案は過去最大であると報道されている。もっとも、全体としては過去最大であるものの、外務省内の全ての施策に対し必ずしも十分な予算が確保されているとは限らないであろう。今後さらに予算が増額され、それが十分な施策推進につながる場合は、そうした状況もアピールすることは有益ではないか。
 今回挙げられた以上2点の取組は、いずれも評価の観点から非常に重要かつ有意義である。

【有識者】
 令和8年度政策評価に向けた取り組みに関し、2点述べる。
 第一に、各部局が施策目標の達成状況を評価する際、より広い文脈で、どのような戦略を目指し、その中で当該施策がどのように位置づけられるのか、すなわち戦略と施策目標の階層構造、その戦略の根拠について丁寧に記述してほしい。他のメンバーからも指摘があったように、概算要求は各部局にとって死活問題であり、気合を入れて記載されている。外務省予算のポイントである「OSAの拡充」、「日本企業進出支援」、「邦人保護の体制整備」については、その必要性が丁寧に記載され、予算計上により目標達成に向けた動きが明確になっている。一方、政策評価書は平板な形で提示されている。年度ごとの重点が異なるという難しさがあるものの、その年度に目指した全体像、それに基づく施策目標がどのように定められたかが示されれば、評価指標を置きやすくなるため、できるだけダイナミックな記述が望ましい。
 第二に、参照基準は毎年変わりうる点である。外交は相手があることであり、外務省のみで達成できるものではない。例えば、現在の日中関係を評価する場合、昨年と今年では参照基準が全く異なる。政策評価として何が評価者に求められるかについては、率直な記述が望ましい。年度内または複数年度に生じた事象と、その都度の対応について、当初目標に左右されず率直に記述することが重要だと考える。

【有識者】
 世論調査の結果を取り入れることや、資金額を明記することなど、可能な限り数値化することにより外交成果を可視化する取り組みは有益である。他方で、外交の成果は必ずしもすべて数値化できるわけではなく、外務省の努力にかかわらず成果がでにくい分野も存在するため、数値化による評価にはリスクが伴うことについても何らかの形で配慮した評価書にすべきである。

【有識者】
 外務省の評価は事後評価であり、説明責任つまりアカウンタビリティが求められる。評価書の大きな意味としては、担当部局の取り組みの記録を残すこと、そして国民が外交政策を理解できるよう、丁寧かつ分かりやすい説明により透明度を向上させることにあると考える。これらの観点から5点述べたい。
 第一に、予算規模を示すこと自体は有意義だが、施策ごとに示すことは難しいとも感じる。特に、トランプ政権の動向、USAIDの急な撤退、国連機関からの引き上げ、急速な円安などにより、外交にかかる基礎的経費が増加する可能性がある。また、年度途中の政権交代による補正予算や見込み違いも発生しうる。このような予測不可能性や不確実性について、どこかで説明を付記すべきである。当初予算の話ではあるが、過去数年の状況から計画通りに進まないことや省内の状況も踏まえ、一定の留保を持たせ、外交が生き物であると伝わるよう説明することが重要である。
 第二に、外交政策とエビデンスの親和性は高くない。パスポート発給事務や顔認証システムのように着実に数値を積み上げるべき分野がある一方で、外交成果とそのエビデンスを予算要求に結びつけることは容易ではない。このため、OSA、日本企業進出支援、邦人保護緊急退避のための体制整備など、予算概算要求で「分断時代の国際社会において国益を追求する予算」と称されている点が達成できたのか、重点的に説明する必要がある。また、目標達成に至らなかった原因として、予算不足や国際情勢変化のスピードが速く対応できなかった場合の説明も必要だろう。外交と成果、エビデンスの関係は単純ではないため、この点をしっかり説明すべきである。
 一方、ウクライナ侵攻時の評価書の記述で印象的だったのは、欧州との関係で外交的努力がプラス評価に、ロシアとの関係がマイナス評価に変わった点である。これは外部要因による変化だとは思うが、欧州との関係がプラスに転じたのは、これまでの外交的努力の成果であると考える。そうしたPRできる部分、すなわち「これまでの取り組みがこうした成果につながった」という説明は、外交政策への国民理解に資するだろう。エビデンスは使い方次第であるため、この点を重視すれば評価書はさらに充実するだろう。
 第三に、ポジティブな評価は非常に重要だと考える。外交的努力や外務省全体の取り組み、例えば万博において達成できたことなど、予算活用を含め、テロ対策やセキュリティの万全さ、接遇の適切性など、実現したことをしっかり説明すべきである。今後万博などのイベントがある際には、達成できたことをPRとして明確に記述することが、読者にとっても興味深く、後続の議論にもつながるだろう。
 第四に、メンバーによる「可能な限り1対1で対応するような工夫を検討していただきたい」とのコメントは、「分かりやすく」という趣旨に基づいている。無理に1対1の対応を求めるのではなく、評価書が煩雑にならないよう、方針が変わった場合はその旨を明記し、実際に実施したことを整理するなど、分かりやすさに重点を置くべきだという意図がある。
 第五に、評価書は事後評価であるため、外務省が何をやってきたかの記録、PRできる点、予算不足でできなかった点など、総括を記載することで、より分かりやすさが向上すると考える。いずれにせよ、外務省独自のカスタマイズが政策評価においてできると、より実用的な評価につながると期待する。できなかったことについては、予算要求につなげるというポジティブな視点で見れば、より良いのではないか。

【有識者】
 過去数年における外務省の評価改善については、メンバーの意見を取り入れつつ、毎年改善を重ねており、簡素化の点で対応が進んでいると思っている。政府全体の政策評価の見直しとしての簡素化は、評価担当者の負担軽減のためでもあり、外務省の評価書も以前に比べ省力化されているが、一方で、簡素化しつつも、分かりやすく伝えるべきことを伝える評価にするには技術が必要であり、難易度が上がっていると考える。簡素化の方向性は良いが、伝えるべきところを伝えるという、評価の有効性を常に考慮して取り組んでほしい。関係者だけでなく、一般の人々が読んでも分かりやすく理解できる評価であるべきである。簡素化されると情報が少なくなる傾向にあるため、その中で分かりやすさとの両立に留意していただきたい。
 なお、令和8年度の評価対象は「地域別外交」であるが、この分野は評価が非常に難しいと考える。説明すべき点はきちんと説明しないと、外務省の意図が外部の第三者に伝わらない可能性がある。評価対象の難しさを踏まえ、説明を尽くすよう留意してほしい。

【外務省】
 貴重なご意見、コメントに感謝する。これまでいただいたご意見等に対してコメントする。
 日本を取り巻く外交的な環境は、これまで以上に速いスピードで変化している。その中で、陳腐化しない政策評価がどこまで可能か、課題だと考える。外務省内で使われているカタカナ用語を含む専門用語については、読者の皆様に分かりやすいよう、使用については十分注意したい。
 施策レベルの評価書本文に参考のページを追加する点について、EBPMの推進及びより活用される政策評価書を目指した取組として評価いただいた事に感謝する。参考資料の添付については、その目標に見合った資料が掲載されるように進める。
 予算については、引き続き、予算の効果を検討すべきという指摘と理解した。確かに概算要求書には多くの情報と、その年の予算獲得において何を重視するかが記載されている。過去3年間のそうした情報から、施策の実施状況と成果がわかるようにしたい。
 数値化による評価にはリスクが伴うことについてもそのとおりである。そもそも3年間では評価できない事柄もあるだろう。おそらく、より長い期間で分析しなければわからない点もある。このあたりについては普遍的な課題だと認識しているが、できる限り、皆様に理解していただけるよう努めたい。
 また、単なる評価書ではなく、アピール部分を明確に示し、国民に外務省、あるいは外交が何をしているかを伝えることも重要であると認識している。今後作成するにあたり、その点を念頭に置き、メリハリをつけた記述に努めたい。不確実性が高まり、実現できなかった施策があれば、できるだけその背景や理由がわかるような記述に努めたい。
 省力化・簡素化に関する指摘について、我々も、この点について議論する際は、評価書の質が低下しないか常に懸念している。もし何か懸念点に気づかれた場合は、忌憚なく指摘していただきたい。

(2)行政事業レビュー

【外務省】
 有識者の先生方のこれまでの御協力に改めて感謝申し上げる。政策評価と予算、行政事業レビューの連携が重要であると認識しており、まず、前回のアドバイザリー・グループ会合開催以降の取組について簡潔に説明したい。
 前回6月のアドバイザリー・グループ会合開催後、9月には令和8年度予算概算要求が発表された。これにかかるレビューシートは、外部有識者の書面点検を経て、行政改革・効率化推進事務局が公表している「行政事業レビュー見える化サイト」で公表済みである。毎年11月に行われる内閣官房の「秋のレビュー」は、行革事務局が各省のレビューシートを選定し公開検証を行うものである。今回外務省のものは対象外だったが、12月16日に補正予算が成立し、これに関するレビューシートもウェブサイトで公表済みである。政策評価は政策や施策・分野といった大きな塊で見る一方、行政事業レビューは事業ごとにお金の流れや支出先に着目し、よりミクロな視点で評価を行う。この二つは外務省の取組み全体を異なる角度から評価するものであり、密接に連携すべきだと認識している。
 この観点から、政策評価書への「施策の予算額・執行額等」の記載と予算要求に関する御指摘があったが、具体的な予算使途は、事業ベースでよりミクロに把握できる行政事業レビューで確認することができる。外務省の政策を国民に分かりやすく伝える上で適切な役割分担であり、その意味でも密接に連携していく必要がある。
 また、国民に対する分かりやすさについても指摘があった。「行政事業レビュー見える化サイト」で公表されている行政事業レビューシートは、ユーザー視点でも非常に使いやすく、情報にアクセスしやすい。令和6年の同サイト公開以降、事務方も新たな方式に徐々に慣れてきたと感じるが、だからこそレビューシートの内容が一層問われてきていると思料。政策評価の文脈で御指摘のあった専門用語について、レビューシートにおいても同様に、分かりやすく記載することを引き続き意識していきたい。引き続きEBPM手法を用いて、予算事業の改善・見直しを実現するためにレビューシートを活用し、次回の概算要求にもつなげていく。

【外務省】
 本日、長時間にわたりそれぞれの専門的知見を踏まえた貴重な意見を賜り、感謝申し上げる。これから令和8年度政策評価を本格的に準備・推進するにあたり、本日頂いた意見を踏まえ、より良い評価ができるよう、今回の地域別外交にしっかり対応していきたい。引き続き外務省としても、より活用される政策評価を目指し、不断の見直しを図っていく所存である。引き続きのご協力をよろしくお願いしたい。


政策評価へ戻る