政策評価

令和6年3月14日

1 日時

 令和6年2月2日(金曜日)14時30分~16時00分

2 場所

 対面・オンラインのハイブリッド会議

3 出席者

(有識者)(五十音順)
石田 洋子 広島大学副学長(ダイバーシティー担当)/特命教授
遠藤 乾 東京大学大学院法学政治学研究科 教授
坂根 徹 法政大学法学部 教授
神保 謙 慶應義塾大学総合政策学部 教授
南島 和久 龍谷大学政策学部 教授
藤田 由紀子 学習院大学法学部 教授
(外務省)
高羽 大臣官房総務課長
木村 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
新井 大臣官房ODA評価室長
門元 総合外交政策局総務課首席事務官
前田 総合外交政策局政策企画室首席事務官
青島 大臣官房会計課課長補佐
ほか

4 議題

  • (1)外務省政策評価制度の見直し
  • (2)外務省政策評価基本計画及び令和6年度実施計画案等
  • (3)行政事業レビュー

5 発言内容

【外務省】
 本日は第39回外務省政策評価アドバイザリー・グループ会合にご出席いただき感謝申し上げる。まず、藤田由紀子学習院大学法学部教授及び坂根徹法政大学法学部教授の当省政策評価アドバイザリー・グループ・メンバー就任を心から歓迎申し上げる。
 昨年は、長期化するロシアによるウクライナ侵略に加え、10月にはイスラエル・パレスチナを巡る新たな危機が発生。世界は今、歴史の転換点にあり、我が国自身も厳しく複雑な安全保障環境に直面。昨年、日本はG7議長国として、国際社会の喫緊の課題に対処すべく、各国との連携を強化してきた。世界が分断と対立を深める中、国民の安全を守り抜くため、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化するとともに、一人一人の人間の尊厳が守られる世界を作るべく引き続き各国と連携して取り組んで参りたい。
 このような日本を取り巻く国際情勢の中で、PDCAサイクルを通じた不断の見直しを行いつつ、外交政策をより効果的かつ効率的に推進する重要性は引き続き高いものとなっている。政府全体においても、ポスト・コロナやデジタル時代への機動的な適応への求める声を斟酌し、これまでの画一的・統一的な様式による評価の運用を改め、従来様式に囚われず、政策の特性に応じた評価を行うために各府省で政策評価制度の見直しが行われることとなり、「より活用される評価」とすべく種々の制度見直しを行った。今回の見直しは、あくまでも試行的取組における第一歩という位置づけ。
 国際情勢の変化や外部要因等の影響を受けやすい外交政策の特性故、政策評価における難しさはあるものの、今後とも試行錯誤を重ねながら、そのような特性を踏まえつつ、より良い政策評価制度、政策立案において役に立つ政策評価制度の確立を目指して取り組んでいく所存。今回の見直し内容や今後の当省の政策評価制度の在り方も含め、是非とも忌憚のないご意見・ご助言を賜れれば幸い。

(1)外務省政策評価制度の見直し

【外務省】
 はじめに令和5年度の政策評価について簡単に報告させていただく。当省では、令和4年度から施策を3グループに分け、3年周期を正式導入。令和5年度は、政策評価の見直しの動きはあったが、短兵急な見直しは適当でないと判断し、従来の枠組みの下で評価を実施した。令和5年度の評価対象は、地域局の6施策であり、令和2年度から4年度までの3年間の実績評価を実施。その評定結果は、全施策とも府省共通5区分の「相当程度の進展あり」であり、測定指標については、95あるが、sが1、aが17、bが63、cが14の結果。有識者の皆様には、書面及びAG会合でご所見を頂き感謝申し上げる。
 政策評価に関しては、制度開始後20年を経て、政府全体で制度改編に向けた見直しが進められている。具体的には、令和4年5月、政策評価審議会が「デジタル時代にふさわしい政策形成・評価の在り方に関する提言」を出した。その具体的な方策について総務大臣が同審議会に諮問し、同年12月、同審議会が「デジタル時代にふさわしい政策形成・評価の実現のための具体的方策」を答申した。
 その答申を踏まえ、総務省は令和5年3月28日付で「政策評価に関する基本方針」について一部変更を行った。
 この基本方針の変更により、画一的な制度運用を転換し、政策の特性に応じた評価の実施が求められることになった。また、政策の改善に役立つように意思決定過程で活用される評価にしていくことがより重視される。
 特に重視されるのは、「より活用される評価」。いわば、きちんとできているかという監督者の視点から、何がボトルネックで、どう改善するかという政策立案者の視点への抜本的転換が求められている。同時に、評価作業の重複排除などによる合理化も重要。これまで各府省においては、評価書の標準様式を用いた「目標管理型実績評価」を一律に実施してきたが、今後は同方式に囚われず、各省の政策の特性に応じた評価を進めていくことになった。既に総務省、法務省、経産省、警察庁等の省庁が、5年度から評価書のパワポ化など大きな見直しを実施。当省としても令和5年度から9年度までの今期基本計画期間から令和10年度から14年度までの次期基本計画期間にかけて現行の評価の在り方につき見直しが必要。
 当省の政策評価の見直しに当たっては3つの論点に留意して検討を行った。
 第一に、外交政策の特性に応じた評価とは何かについて改めて考えた。外交は、中長期的な国益の観点に多分に立脚しており、中長期の実績に基づく評価が馴染む。また、ア 外部要因の影響を大きく受ける、イ 政策効果の定量的把握が困難との特徴を有している。このような特性を踏まえて、これまで可能な限り目標を具体化し、客観的情報に基づき中期での政策効果の定性的評価に注力してきた。今回の見直しにあたっても、このような特性を踏まえて検討した。
 第二に、現行の評価は役立っているかという点。国民への説明責任の観点からは、現行の取組は、外務省施策を体系的・網羅的に評価しており、有識者からも丁寧な評価との声を得ている。原課にとっても、評価部局や有識者とのやりとりを通じ、一定の気付きの機会ともなっている。他方で、他省庁と比較すると外務省の評価書の分量は突出しており、一般国民にどこまで読まれているか疑問がある。また、評価書の分量が多いため、意思決定や対外説明における活用は限定的。
 第三に、評価作業の負担を軽減できないかという点。現行の評価書様式では、定性的に丁寧に記述するため、評価書の分量が多く、作業期間も長くなっている。負担軽減のためには、定性評価を基本としつつも評価書様式の抜本的見直しが必要。
 評定については、5段階の評語があることで、評価結果の概括的な説明が容易になるが、評語の裏付けのために記述が長くなってしまう。
 また、外交青書や開発協力白書が毎年作成されているが、その取組や実績の記述が評価書や事前分析表の内容と重なるなど、省内類似作業との重複が存在する。また、行政事業レビューは、今年度から基礎的EBPMの実践が導入されるなど、更なる取組強化が求められているが、事業レベルの評価をもって施策レベルの評価を代替することは困難。そのため、全体として評価関連作業による原課の負担が増加している点も留意した。
 以上の検討を踏まえて、今回の見直しでは、「より活用される評価」の実現を主眼とすることにして、まずは試行的取組の第一歩として、令和6年度において3つの見直しを行い、併せて業務の合理化を図ることにした。その際は、評価の安定性・継続性の観点から、現行の政策評価体系や3年周期の評価は基本的に維持することにした。
 第一に、政策評価書をより使いやすく分かりやすい内容にすべく、パワーポイントで作成する。評価書は課室単位である個別分野レベルで作成するとともに、これら評価結果を取りまとめた部局単位である施策レベルでも作成する。これにより、取りまとめの過程において、幹部を巻き込んだ意見交換が容易となる。また、部内・対外説明において評価書を活用することが可能となる。
 第二に、これまでの施策レベル及び測定指標レベルでの5段階での評語は、総務省等の省庁でも廃止しており、当省も廃止することにした。評価結果は過去3年間の実績に基づき目標の達成度合いについて評価し、成果が上がった点や改善すべき点など課題を簡潔にまとめる。
 第三に、これまでは各年度に評価対象とならない部局も、毎年度の取組の進捗測定のために事前分析表を作成していたが、これは取り止める。取組の進捗測定については、外交青書や開発協力白書、外務省ホームページなど各種公表資料を活用することにする。具体的には、評価書の中でこれら資料を引用・リンクする形で、各年度の取組に関する具体的な内容を補足できるようにする。今回の見直しの検討過程では総務省と緊密に相談し、総務省の承諾を得たものとすることができた。今回の取組は試行的なものであり、今回の見直しが6年度評価においていかに実施されたかをしっかり検証しつつ、7年度以降更なる改善を検討したい。
 以上につき、御意見を伺いたくよろしくお願い申し上げる。

【有識者】
 見直しによる新たな政策評価制度については、確かにやってみないとわからないという感じがある。3年周期での評価が導入されて3、4年が経過したが、その際注目していたのは、中期目標について少し長めの視座で評価ができるかどうかであった。これまでの様式では実質的な内容の記載がまだ十分でないとの印象であったので、今後新たな様式においてこの点が十分に配慮されれば評価しやすくなると思う。さらに、事前分析表との関係では5、6年ほど前から予算の使われ方についても資料をいただけるようになったが、それが今回の新様式でもきちんと情報が得られるとの理解で良いだろうか。それを見ながら評価できるのであれば、今回の見直し後も有識者側の実質的作業は変わらないとの印象を抱いたところである。

【外務省】
 施策の実施に係る予算額は、今まで評価書の冒頭に記載していたが、今後も施策別の評価書に記載するようにしている。

【有識者】
 基本的に政策評価の仕事が過重になっていて、評価書が本来の業務にも差し障りがあるのではないかと懸念されるぐらいの分量になっている。これ自体は貴重な作業ではあるものの、政策評価をどのような目的で行うのか、合目的的な作業とするということがやはり重要なポイントではないかと考える。真面目に作業をすればするほど、記述の分量を多くすることが仕事の中身や真面目さを表現するものになるということから、非常に詳細にわたる内容を書いて、それでちゃんと仕事をしたことになるというタスクにしてしまえばそうなってしまうということかと思う。重要なことは、評価というものは、しっかり目標を立て、その目標がどのように達成できたのか、できなかったのか、できなかったとすればその原因は何なのかということに関してレビューを加え、これが外部的な要因ではなく、内部における何らかの目標設定やその手段等、何か問題点が見つかるようであれば外部有識者のコメントも踏まえて次年度の目標や施策に反映していくということではないか。それであれば、ポイントはやはり詳細な記述・量というよりは、しっかりポイントを絞った形で評価をし、しかもその評価作業自体が他の課からも、そして、広く言えば国民からも見えるようにするということだと思う。そのような観点から、今回の評価制度の見直しは主にフォーマットやタスキングの在り方に関するものであると理解しており、その方向は良いのではないかと思っている。

【外務省】
 政策評価の目的ということに関しては、「より活用される評価」を重視して、取り組みたいが、今後試行錯誤が想定される。今回の見直しを通じ、今まではどちらかというと原課に書いてもらう評価というところがあったが、今後は、御指摘の点を含め原課によく考えてもらうような評価にしていきたい。

【有識者】
 やってみないと分からないというところはあると思うが、要はこの施策評価のユーザーは誰なのかということだと思う。もちろん、国民への透明性やアカウンタビリティも重要だとは思うが、外務省特有の政策、他の省庁とは異なる、国際関係等の外部要因に大きく左右される施策の評価をしていかなければならない。そうした中で、外務省としてはやはり政策を立てる意思決定者に分かりやすく評価に関する情報が届くことが必要と思う。一方、SNS等も広がっているところで、国民に分かりやすくという点も無視できない。今回、分かりやすいフォーマットにして、どんな変化が出てくるのかを見ながら改善していくことが良いのかと思う。外務省は今まで本当に真摯に政策評価に取り組んでいて、様々な指標も取ろうと苦労をし、エビデンスとして非常に記述も丁寧に書いているので、大変な労力だったと思う。ただ書けば書くほど評価結果の要点が定まらないところもあるようにも感じる。指摘する方としては、書いてあればあるほど指摘することが増えてくる訳で、それよりは端的に要点だけまとめていくことにするのが一番良いのではないかと思う。他方で、地域別や分野別外交の政策評価には、これまで5段階の評語があったことから、ここはSが多いとか、ここはBが多いと達成度が概観できたが、今後は評語がなくなるので、全体傾向を見たり、比較したりする際に目の付け所をどこにもっていけば良いのか、少し難しくなるかなという気はしている。ただやってみないと分からないので、方向性としてはシンプルにして焦点を絞るのは良いと思う。

【外務省】
 御指摘のとおり、評語を廃止することで評価結果の一覧性、比較可能性が失われる面はあると思われる。他方で、政策企画・実施者にとって有益な情報を盛り込んだもの、使い勝手の良いものという意味では、より有益なものになると考えており、総務省の方針もそちらの方を重視していくということなので、まずはこれでやってみて、全体が把握できる分かりやすさという点についても工夫できるかどうかやって参りたい。これまでも丁寧に、国民に対する説明責任を果たしてきたが、今回パワーポイントにすることによって様式も簡潔になることで、より国民にも読んでもらえるものになるのではないかと期待している。

【有識者】
 今回の見直しについて、これまでもいろいろな工夫や改善等を進めてきたと思うが、例えば、施策の3グループが維持されるなど、そういった継続される部分と見直される部分のバランスは現時点では良いのではないかと思う。新しい評価書について、パワーポイントで作成されるということで、以前の評価書に比べると大変見やすくなることが期待されるため、やはり要点の把握のしやすさという点を重視していただき、あまり情報を詰め込み過ぎないようにしてもらった方が、新しい様式の効果が出るのではないかと思う。そういった見やすさの向上は、この評価を実際に使う職員の皆さんの使い勝手が良くなるとか、評価作業の負担が軽減されるといったメリットになるのはもちろんであるが、国民に対するアカウンタビリティの向上にもつながるのでないかと思う。
 もう1点、これまでの評価書を見ると、部分的にアウトプットとアウトカムの内容が混在しているところが見受けられる。今後の評価というのは特に有効性の観点からの評価というのが重視されるということもあるので、アウトプットも評価の前提として必要ではあるが、アウトカムをどのように評価していくかということがより重要になると思う。評価の形式も新しくなるので、評価の観点においてもアウトカムや有効性を重視し、評価がより充実するような方向に進んでいけば良いと思う。

【外務省】
 今回の見直しに当たっては、継続性の観点と見直し部分のバランスに留意し、政策評価体系や3年周期、PDCAの流れが反映された様式は維持した。また、これまでの評価書はどちらかと言うとアウトプットが中心な部分があったが、今後は、アウトプットは外交青書等の記述に任せるという形になるので、アウトカムの記述について工夫をしていきたい。

【有識者】
 先程の御説明について4点ほどコメントいたしたい。
 1点目は、最初に課題として「外交政策の特性に応じた評価」を掲げていただいた点に関係する。短期的に見るべきではなく中長期的に見ていかないといけないというお話と理解したが、確かに、地域局を見ているとそうだと思う。他方、ODAや各種事業系、パスポート業務、国連分担金、外交講座による広報など、必ずしもその枠では整理できないものもある。施策の特性に応じて、もう少し丁寧に説明をしていただくことが説明責任に資すると思われる。
 2点目は、現行の評価は役立っているか、評価作業の負担軽減ができないかということに関係する。負担軽減のために政策評価書をパワーポイント化するというお話であったが、シナリオがもう一つあって、大事な政策を取り上げる、重点化をする、あるいは、そのためには日本外交の戦略をもう少し議論できないかという、そういう議論の仕方もあるかと思う。今回は一つの答えとしてパワーポイント化を選ばれたということだが、この点、他の有識者からもご指摘があったように、戦略性、合目的的な評価のあり方、アウトカムを見ないといけないという点は、引き続き、今後の宿題として、総合外交政策局等とも協議いただきながらということになるのかもしれないが、どういう形の評価があり得るのか検討いただくということになるのではないか。
 3点目は、事前分析表の廃止に関してである。作業負担を減らすということであると思われ、廃止は賛成であるが、他方、一つ念頭に置いてもらいたいのは、もともとロジックモデルを作ろうとして、その形が日本版ロジックモデルとしての事前分析表になっていたという点である。最近は新規事業の金額が大きなものは予算要求時にロジックモデルを添付して財務省に提出しないといけないということになっており、改めてロジックモデルそのものが脚光をあびている。ODAではロジックモデルが大事にされている。ロジックモデルについては、施策の特性に応じて、ロジックモデルを描いた方が整理できるものについては整理をしていくということでいいのではないかと、あるいは行政事業レビューとの役割分担ということになるのではないかと思われる。
 4点目に、何を国民に説明するのかという点についてである。政策評価でこれまでは必ずしもうまくいっていなかったのは、国民に支持される外交の一環としての政策評価の扱いであった。国民に向かってPRする部分も政策評価の中で拾えればと思う。そこは伸びしろのある部分だろう。例えば、パスポートの顔認証などはこれから伸びていくものと思われる。外交政策の中で小さな話かもしれないが、しっかりPRしていかないといけない部分はある。政策評価書とともに、毎年度のPRポイントを探していくことも大事なことではないか。国民に支持される外交という視点でみると大事な論点ではないかと思われる。
 全てコメントであるが、以上である。

【外務省】
 4点いずれも貴重なご意見を伺った。今回はこの様式で評価をやってみるが、御指摘の点は評価が終わった段階で検証する形でさらに工夫していけるようにしたい。

【有識者】
 見直しに当たっての(外交政策の特性に応じた評価、より実務や国民に活用され役立つ評価、評価作業の負担軽減という)3つの論点について、いずれも意義がある点と思われる。また、評価の安定性、継続性の観点からは、現行評価体系や3年周期の評価が維持されており、引き続きPDCAサイクルも維持されていることから、今回の見直しは着実で妥当な見直しと考えられる。
 その上で、外交青書と開発協力白書のことについて申し上げたい。昨年の3月に外務省ホームページに掲載された(昨年2月16日に開催の)「外務省政策評価アドバイザリー・グループ第37回会合議事録」中、「5 発言内容」の(4)「令和6年度以降の外務省政策評価の在り方」(での外務省説明)の最後のところで、「外交青書や開発協力白書があるが、そのままの形で評価書として活用することは想定されていない。」とあった。評価書は予算年度単位で外交青書は暦年単位であることや、外交青書は分析ではなく実績が主要素であり、概要や過去の経緯等も記述されているため、そのままでは活用できないということは正にそのとおりと思われる。
 他方、今回の見直しには、評価の負担軽減、省内類似作業との重複による課題といったことがあるので、そういう観点から青書・白書の一層の活用は意義があると考えられる。そして、国民に活用され広く読まれることを企図して作成されている青書・白書なので、そういう意味では今後の(より国民にも読まれるようになることも企図した)評価に向けての作業にも活用でき、また、青書・白書の中には図表とかデータも含まれているので、EBPMの観点からも意義があるのではないかと思われる。
 最後に、外交青書の活用の技術的な観点として、外交青書の発行・刊行は評価作業期間中で開発協力白書の発行・刊行より後でもあるため、最新版の外交青書については、評価作業のできるだけ早い段階からの実際の活用について念のためスケジュールの確認や検討などが望ましいようにも見受けられる。

【外務省】
 御指摘のとおり、1年前は、外交青書、開発協力白書をそのままの形で評価書として活用することは難しいと考えていた。実際に、青書・白書は評価の部分がなく、取組、実績の記述が中心になっているが、総務省とも相談した上で、取組や実績の部分にリンクして活用することは問題ないということであったので、こういった形にした。
 具体的なリンクの張り方は、青書等の発刊のタイミングを踏まえつつ工夫していきたい。
 以上、6名のアドバイザリー・グループの有識者から貴重な意見を伺い、感謝申し上げる。ご意見を踏まえ、今後の作業に取り組んで参りたい。

【有識者】
 外交日程との関係では今年は激動の年であり、日本をとりまく国際環境や世界自体において、政策において何を重視すべきかというところが大きく変動しており、外務省が司る政策領域と注力すべき国・領域・対象というものがやはり刻々と変化していくものかと思う。政策評価書は地域別と領域別とそれぞれ分けて見ているが、世界の主要課題が大きく変化していく中で、当然、外務省の実施体制を大きく変えていかなければならないのではないかと考える。課室の規模や新領域への対応、例えば政府安全保障能力強化支援(OSA)が創設されたときに、その予算が20億円から50億円、これから更に桁が増えるような時に室だけの対応で良いのか、機動的な実施体制の改変を行っていかないとミスマッチが生じるのではないかと思う。これは新興国とかグローバルサウスも然りということであるが、いわゆる外務省が取り組むべき課題と実施体制がうまくマッチしているのかということの検証が今回の政策評価の仕組みではできなかったので、そのあたりはどういう感覚で捉えているのか、とにかく仕事が増えて大変な課が生じているのか、サイバーとか宇宙とか新領域があるが知見がまだ足りていない等、そのような組織的な実施体制の課題みたいなもので今感じているところがあれば率直に教えて欲しい。

【外務省】
 御指摘のとおり、効果的にかつ成果に繋がる政策を展開する上では、実施体制は極めて重要な要素であると思っている。課題の変化に合わせ、官房が適時・適切にリソース配分、規模を差配し適切な体制で臨むべきだと考えている。このような問題意識が常にある中で、予算・定員要求についても昨年末にしっかりと関係当局と議論し、しっかりとした成果を出している。加えて実施体制、機構についても、例えば具体的にご指摘のあったOSAという新しいツールについては、一昨年の「国家安全保障戦略」において同ツールの導入を決め、昨年、担当室を立ち上げて20億円の予算の下で開始し、来年度は50億円をお願いしている。そうすると当然それに充てる人員が必要になり、来年度中には課に格上げすることが既に決定している。さらに、例えば経済安全保障に外務省として取り組む上でどういった実施体制が望ましいのか、それからODAが引き続き非常に重要なツールであるものの、ずっと青天井で伸び続ける時代でもない中、国際協力や地球規模課題への取組の在り方として、今の国際協力局の体制がこのままでいいのか等の問題意識を持ちながら、外務省内の様々な意見を集約しつつ、機構改革についても来年度に向けて検討を開始しているところである。
 一方で、定員要求、予算要求は毎年のサイクルの中でしっかり取り組んでいるが、機構改革については、大規模になれば全体としてはより大きな改革ができるが、相当なエネルギーが必要となり、組織に対する負荷もかかって、結果として実際の政策の精度に繋がらないようなことも起こり得る。先ずは適正な規模でプライオリティを付け、着手すべきところを定め、しっかりと機構改革を進めることが必要なアプローチかと思っている。それを来年度に向けて、来年度にやらなければいけないこと、もう少し中期的に考えて取り組むべき機構の在り方等、いろいろ濃淡を付けて考えているところである。

【外務省】
 政策評価体系については、現在は組織毎になっているが、それを重点化して戦略的な形にできないかという問題意識をもっており、その点については先ほど有識者からも御指摘があった。政策評価体系を戦略的なものにすることで重点化が図られ、より国民にわかりやすくなるようにできる反面、例えば右翼課の負担が増えてしまったりする面等もあるので、この点については引き続き検討課題にしていきたい。

【外務省】
 外交実施体制ではないが、今の体制の中でも少し工夫出来るのではないかということについて中で議論しているところを申し上げると、例えば従来からのODAの枠を超えた革新的な資金調達も含め、どういったものができるかということをいろんな議論の中で行っている。他方で、そのような知識を持っている者ばかりではないので、そういったことも学びつつ、外部の有識者の意見も聞きながら、新しい時代の潮流に乗るような開発資金の在り方等いろいろと取り組んでいる。人員が増えて組織が拡充することも大事であるが、そういった工夫も同時にやっていきたいということを現場でいろんな課から聞いており、また、実際そのようにやっているところである。

(2)外務省政策評価基本計画及び令和6年度実施計画案等

【外務省】
 以上の見直しを踏まえて、現行の当省の政策評価基本計画(令和5年度~令和9年度)及び令和6年度実施計画についての対応を申し上げる。
 まず、現基本計画は、「外交政策の特性を勘案しつつ、実績評価方式による評価を行うことを基本とする。また、これらに加えて、必要と認められる政策については総合評価方式等を用いた評価を行うこととする。」としている。今回の制度見直しによってア 評価書のパワポ様式への変更、イ 評語の廃止、ウ 事前分析表の取り止めを行うことで、当省の政策評価は従来の「目標管理型評価」とは異なる型式になるが、引き続き目標の達成度を見ていくものであり、「実績評価」として取り扱うことが可能であると考える。また、評語や事前分析表は、「目標管理型ガイドライン」に基づくものであり、「実績評価」の要件ではなく、現基本計画でも言及されておらず、今回の見直しは現基本計画との間で矛盾は生じない。したがって、現行の基本計画を維持することとした。
 ただし、現基本計画は、昨年3月の「基本方針」の一部変更前に策定したものであり、見直し条項の中に「特に、令和4年12月21日付け政策評価審議会答申に基づく今後の基本方針の変更を踏まえ、令和5年度中に外務省における令和6年度以降の政策評価の在り方について精査し、必要な場合は基本計画の修正を行う」旨の規定がある。今回基本計画の内容を修正する必要はないという判断から、本箇所の記述は削除することとした。
 令和6年度実施計画については、令和6年度の事後評価としては、第2グループ(いわゆる機能局)に当たる総合外交政策局・軍縮不拡散科学部、経済局、国際法局、国情官組織、国際協力局、地球規模課題組織の6施策に係る令和3年度から5年度にわたる3年間の実績等の施策別評価と政府開発援助の未着手・未了案件に係る評価を行うことを記載している。前者の施策別評価については、既に作成された令和5年度事前分析表において記述されている「施策目標」、「施策の概要」、「中期目標」を踏まえ、これら目標の達成状況を測定する形で評価を行う。
 また、今次見直しを念頭に、実施計画(「3 事後評価の方法(1)」末尾)に「評価書の作成に当たっては、使いやすく分かりやすいものとする。」旨を追記した。以上の次第で、基本計画及び令和6年度実施計画についてとり進めたいと考えているが、御意見などがあればお願いする。
 特段御意見等ないようなので、本日示した令和6年度実施計画に従って、6年度の評価を進めさせていただく。日程に関して、6月初旬頃、皆様に評価書案を送付し所見の執筆を依頼させていただく。そして、6月下旬から7月上旬にかけて再度会合を開催させていただきたいと考えている。

(3)行政事業レビュー

【外務省】
 先ほど議論が行われたとおり、政策評価制度については見直しがなされているところであるが、行政事業レビューについても内閣官房行政改革事務局等を中心として見直し・改善が進められている。
 ご案内のとおり、行政事業レビューは、各予算に紐付いた行政事業レベルで施策を評価するものであり、先ほど有識者から議論があったとおり、特にEBPM(Evidence Based Policy Making、証拠に基づく政策立案)の実践の場とすべく行革事務局を中心に各省横断的な取組がなされている。
 先ほど有識者から、政策評価制度の見直しにおいて、負担の軽減や業務合理化、ポイントをもっと絞っていくといった議論があったが、どちらかというと行政事業レビューについては、ロジックモデルを入れて予算毎の説明責任をきちんと果たしていくという方向に向かっている。昨年にはレビューシートのフォーマットが修正され、よりEBPMを重視する形になった他、今年に入ってから、今月と来月に3回に渡ってワークショップが開催される予定である。
 このワークショップは、行政事業レビューの内容をもっと充実させようとする各省横断的な取組で、外務省関連では特にレビューシートの反映が難しい分担金・拠出金について、それを所管する原課と、行革事務局、総務省行政評価局、また外務省の会計課、考査・政策評価室が一同に会し、よりよいレビューシート作成について議論する試みである。
 他方、レビューシート自体は、政策評価と同じようによい書類になることは大事であるが、正にどのように活用されるのかが重要。レビューシートは予算に紐付いているので、予算編成の際の参照資料として、財務省主計局としても重視していると理解しており、今後、外務省としても省内の予算査定においてより活用していく方向で検討を進めている。先ほどの議論と同様、政策評価と軌を一にして、合理化を進めつつ、より意味のある資料となるよう検討を続けていきたい。

【外務省】
 外務省では予算事業の約半分が分担金・拠出金なので、ワークショップを通じてモデルとなるシートを改善し、それを使って横展開していくことは重要な取組になる。
 外交分野は、施策に限らず事業も外部要因に大きく左右されるので想定どおりになかなか進まないことや、各国との友好関係増進や外交的働きかけ等、政策効果の定量的把握が容易でないとの特徴を持っている。そうした特性に応じたEBPM実践の在り方についても引き続き考察を深めていきたい。

【外務省】
 本日は忌憚のないご意見やコメントをいただき感謝申し上げる。当省の政策評価制度の見直しについては、試行的取組の第一歩として「より活用される評価」を実現するために着手するもの。種々のご意見を踏まえ、まずは実施し、令和7年度以降も今回の見直し結果を検証しつつ、更なる改善の可能性を検討していきたく、先生方から、引き続きご指導・ご鞭撻を賜りたい。
 次回会合は本年6月又は7月に再び開催させていただく予定。その際には、新しい様式での政策評価結果に対しての先生方の率直なご意見等も含め、大所高所からの有益なご所見を賜り、当省の適正な政策評価の実施に引き続きお力添えをお願いしたい。本日の会合にご出席いただき感謝申し上げる。


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