政策評価

令和8年7月8日

1 日時

 令和8年6月15日(月曜日)14時30分~16時00分

2 場所

 外務省共用国際会議室666号室

3 出席者(肩書きは会合当時のもの)

(1)有識者(五十音順)
石田 洋子 広島大学大学院人間社会科学研究科 客員教授
坂根 徹 法政大学法学部 教授
神保 謙 慶應義塾大学総合政策学部 教授
詫摩 佳代 慶應義塾大学法学部 教授
(2)外務省
石飛 節 大臣官房総務課長
上田 龍幸 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
新井 和久 大臣官房ODA評価室長
大滝 紘生 総合外交政策局総務課首席事務官
山崎 貴博 総合外交政策局政策企画室首席事務官
川島 功資 大臣官房会計課課長補佐
ほか

4 議題

  • (1)令和8年度外務省政策評価
  • (2)行政事業レビュー

5 発言内容

【外務省】
 外務省は、本年1月16日にオンラインで開催した第43回会合において説明した令和8年度外務省政策評価の実施計画に沿って政策評価作業を進めている。先般、アドバイザリー・グループ・メンバーから、作成中の令和8年度外務省政策評価書案に対する所見をご提出いただいた。前向きに評価する意見のみならず、鋭く率直な意見も数多くいただいた。皆様のご協力に改めて感謝申し上げる。
 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、高市内閣では、「平和と繁栄を創る『責任ある日本外交』」を推進することで、自らの国益を守り、国際社会からの期待に応えるための積極的な外交を展開している。その中で、外務省政策評価書は、外交青書などと同様に、日本の外交政策の積極的な取組を国民に分かりやすく伝える役割を果たすべきものと認識している。同時に、これまで取り組んできた見直しを継続しつつ、より分かりやすく活用される評価書にしていきたい。皆様のご意見、ご知見を糧に、これらの一層の改善に努める所存である。
 本日は、事前に頂戴した所見を踏まえ、有益な意見交換ができればと考えている。本日の議論を、よりよい評価書につなげていきたい。

(1)令和8年度外務省政策評価

【外務省】
 冒頭、3点述べる。
 1点目は、今回、地域別外交についての評価書を初めてパワーポイントで作成した。皆様から提出いただいた所見では、前回(令和5年度)に比して今回は記載が簡潔になり読みやすくなったことを評価できるとする一方、やや簡略化しすぎている印象がある、一部の地域外交の「施策評価(総括)」の中にエビデンスが示されていない、とのご指摘をいただいた。外務省は、令和6年度以降、評価書の見直しを進め、パワーポイントによる簡潔な評価書を作成してきた。この結果、簡潔にし過ぎて、かえって分かりにくくなった部分もあったと思う。昨年度の政策評価の際にも同様のご指摘をいただいており、簡潔さと分かりやすさのバランスをよく検討する必要があること、書き手に一層の工夫が求められることを認識した。
 2点目は、施策レベルの記載を行うページに今回から参考欄を設け、その欄に掲載した「対日世論調査結果」についてである。皆様からいただいた所見では、日本外交の取組を客観的に把握するための指標が充実したとの評価がある一方、「対日世論調査結果」と評価書案の「主な成果」や「課題及び今後の方向性」の本文との関連性が見えにくい、とのご指摘があった。この点について、関連する資料を掲載するだけでは必ずしも十分ではなかったのではないかと感じている。また室内で意見交換した際、参考欄に掲載している資料の中に、出典として記載された情報と、さらに詳細を知りたい読み手の参考になるであろう情報とが混在しているのではないかとの指摘もあった。このような混在が、分かりにくさを助長してしまった可能性があると感じている。参考資料の記載の仕方についても、さらに工夫していきたい。
 3点目は、過去のアドバイザリー・グループ会合でのご指摘を踏まえ、今回から、施策ごとの「予算額・執行額等」を評価期間に合わせて記載することにした。年度ごとに比較してみると数値が大きく変動しているものもあり、これらの数値の意味について説明が必要ではないかとの所見をいただいた。「予算額・執行額等」のエビデンスとして活用することや、その数値が示す意味をよく考えた活用を考えなければならないと感じた。

【有識者】
 評価を専門とする立場から、評価の評価、すなわち二次評価の観点から外務省の地域別外交についての評価書案を確認した。二次評価の視点は、進捗に対する評価が適切に行われているかという「適切性」、エビデンスとして信頼性のあるデータが示されているか、様々な関係者の意見がしっかりと聞けているかという「信頼性」、そして、簡潔・明瞭に書かれているかという「明確さ」の3点である。
 施策I-1「アジア大洋州地域外交」については、以前の評価書からページ数も3分の1ほどに縮減され、分かりやすくなったことはよかったが、その反面、なぜそう評価・判断したのかの根拠が明確に示されていなかった。政策評価は、第三者評価ではなく内部評価であるため、評価結果の妥当性を示すためにも信頼性のあるデータを示すことが必要である。ただ、非常にボリュームのある評価結果を、「施策評価(総括)」の限られたスペースの中に纏めることは難しいが、せめて、数点の代表的な取組を取り上げ、「必要性や有効性が確認された」という記載につなげるなどの工夫が必要ではないか。
 また、「予算額・執行額等」について、特に「アジア大洋州地域外交」では、例年に比べて予算額の上限が大きかったり、実際には執行されなかった額もあったりしたが、その意味が分かりにくかった。評価書の読み手である国民の中には、予算関係に関心がある方もいると思うので、評価書のどこかに説明があってもよいと思った。
 次に、施策I-2「北米地域外交」について、評価は、成果の進捗を確かめるというよりも、次回への学びを得ることが非常に重要であるという観点から意見する。米国ではトランプ政権樹立という外部変化により、外交面での苦労やこれからの課題など、いろいろな学びを得たと推測するが、それらの学びが何だったのかが分かりにくかった。今後はこういう部分に留意して外交を行っていくことが必要である、といった、今回の評価で得た学びなどが書かれると、非常に有益だと思った。
 施策I-3「中南米地域外交」及び施策I-5「中東地域外交」については、「施策評価(総括)」の部分はきれいにまとめられているが、少しエビデンスが欠けている記述もあると思う。
 施策I-6「アフリカ地域外交」についても、きれいにまとめられている。特にTICAD9開催の影響から、アフリカ側からの日本に対する理解度が高まったことはすばらしいことだと思う。ただ、日本側からの対アフリカ政策に対する理解、国民からの外務省の取組や日本の外交政策に対する理解を促進するために、どのような働きかけをしたのか、そしてどのような変化があったのかという記載が弱いように思えた。
 評価書全般としては、「対日世論調査結果」を冒頭にある施策レベルの参考欄に掲載したことは大変興味深い。他方、これが外交政策の結果として変化したという意味なのか、本文とのつながりが非常に分かりにくい。読み手としては、とても関心を持つ調査結果だと思うので、位置づけが分かるよう表示の仕方を工夫すると、この評価書の意義がより出てくるのではないか。
 3年前の100ページを超える評価書の際には、「A」や「B」などの5段階の評語が存在し、全体の中で、成果の弱い部分と強い部分とが概観できた。現在は簡潔な評価書になったため、個別の地域外交は分かりやすい一方で、全体を概観することが難しい評価書になっている。地域外交の個別評価の前に、まずは地域外交全体を総括し、その説明の中で「対日世論調査結果」への言及などがあってもよいと思った。現状の簡潔さに加えて、読み手の立場で必要とするエビデンスが記載された評価書にするとよりよくなるだろう。
 また、外交面で政府開発援助(ODA)が国益のために活用されていることを踏まえるとともに、外務省ではODA国別評価を実施していることからも、そこからの適時適切な学びがあれば、政策評価書の中でも記載してもよいと思う。

【外務省】
 「適切性」、「信頼性」、「明確さ」の3点を踏まえた指摘については、しっかり受け止めたい。
 「北米地域外交」で言及された、トランプ政権樹立という外部変化への対応振りについては、米国に限らず、どのような国であれ、新しい政権が誕生すれば、その国との関係を悪くしないよう新政権に対応していくというのが日本の外交の基本原則ではないかと思う。その上で、米国のように多方面に多大な影響を与えるような国での新政権樹立の場合には、それに伴い生じた課題への対応を短期間でまとめることは容易ではなく、一定の時間が必要であろうと思う。他方で、どのように対応したのかは国民にとって大変関心深い点だと思うので、外部変化からの学びや対応を簡単でも記載することが大切だとの点は、貴重なご意見として受け止めたい。
 全体の概観については、政策評価を3年周期で行っていることから、3年ごとに全体が見えてくるものと思う。また、来年度の政策評価では総合外交政策局が所管する「国際の平和と安定に対する取組」について扱うことから、その中で見えてくる全体の概観もあると思うが、ご指摘の点は理解した。

【有識者】
 まず全体について述べる。全体の1点目として、今回対象となった全6施策において、主に、外交青書や外務省ホームページの様々なリンクや資料が参考欄に掲載されており、全体として一層充実したことは評価できる。その上で、参考欄の情報が、評価書に記載した内容の出典としての情報とするのか、もしくは評価書に記載のない詳細な内容を知るための情報とするのか、という課題はあるものの、情報の提供という意味では充実したものとなったことを、まずお伝えする。
 全体の2点目として、全6施策において、評価対象1、2年目の令和5、6年度の予算の状況、執行額の数値だけでなく、3年目の令和7年度の予算の状況の数値も、アドバイザリー・グループ・メンバーへの所見執筆依頼時点での評価書案において既に明記されていたことは評価できる。
 全体の3点目として、全6施策において、「予算額・執行額等」及び「対日世論調査結果」が共通して示されていることは評価できる。一方で、多くの施策において、本文中では必ずしも予算関係の記載がされていた訳ではない点は、将来の課題と思われる。この点は例えば、「予算額・執行額等」の主要な内容や、施策推進のために有益であった予算の特徴的な活用方法、及び、十分な施策推進のための予算増額の必要性といった点などの記載も有益と考える。「対日世論調査結果」については、効果的な対日世論形成及び調査結果で注目すべき点などの記載も有益と考える。なお、施策I-6「アフリカ地域外交」の分野2では、日本の対アフリカ政策に関するアフリカ諸国の国民の理解が着実に増進していることの裏付けとして、同結果を示し活用している点は評価でき、こうした活用も一つの有効な方向性と考える。
 「予算額・執行額等」の個別施策ごとの確認については、「アジア大洋州地域外交」について、分担金・拠出金を除く予算の状況、執行額などが他の施策よりも高水準にある。「中南米地域外交」について、令和5年度の分担金・拠出金はこの施策の中では他の年・区分より比較的多くなっている。施策I-4「欧州地域外交」について、この施策は分担金・拠出金が他の施策よりも高水準である。「中東地域外交」について、この施策は令和7及び6年度の分担金・拠出金が他の年や区分よりも高水準である。これらは、その活用の意義や効果などを適当な箇所で説明があってもよいように思った。
 次に、「施策評価(総括)」について述べると、施策により、書きぶりや分量、内容が、若干違う面があると感じる。「中南米地域外交」の「施策評価(総括)」では、「2つの分野に掲げる目標が一定程度実現され、対中南米地域外交の必要性及び有効性が再確認された。」ことの根拠として、評価期間中の主要な取組の例が具体的に複数示され、「欧州地域外交」では、「5つの分野に掲げる目標が一定程度実現され、対欧州地域外交の必要性及び有効性が確認された。」ことの根拠として、首脳級を含む多層的対話の実現、人的交流や経済協力の深化の記載や、ウクライナ支援への寄与などの具体的な明記もあったことは評価できる。
 一方で、「北米地域外交」については、分野レベルのページでは、詳細に外交努力が記載されていることから、「施策評価(総括)」の記載でも、例えば、「政治・経済・安全保障分野など」といった、具体的な分野や、効果的だった取組の具体例を示しておくことも有益ではないかと思う。また、「アフリカ地域外交」の「施策評価(総括)」では、現状や協力及び課題への対応の必要性などが示された後で、「このような観点から取組を展開した結果、両分野に掲げる目標が実現され、対アフリカ地域外交の必要性及び有効性が確認された。」となっているが、TICAD 9をはじめ主要な取組の具体例を明記することは有益なように感じられた。
 個別の論点について述べると、「中東地域外交」の分野1「中東地域の安定化に向けた働きかけ」の中期目標では、目標設定の段階では現在のイラン情勢が発生していなかったため、イラン情勢への言及がなかったが、情勢の変化を踏まえて、イラン情勢への対応も詳細に記載したことは評価できる。
 同様に、「アジア大洋州地域外交」の分野5及び分野6では、「備考:【令和7年度】地域情勢に即し、中期目標及び測定項目を修正した。」と記載があり、情勢の変化を踏まえて機動的な修正をしたということは非常に評価できる。さらに付け加えるとすれば、どのように修正されたか、具体的な修正内容の補足説明をされると、理解を深める上で有益と考えた。
 「欧州地域外交」の分野3では、3つの中期目標が示され、「主な成果」と「課題及び今後の方向性」に3つの測定項目が存在する。1つ目の中期目標は1つ目の測定項目と、2つ目の中期目標は3つ目と概ね対応している一方で、3つ目の中期目標で明記されている「ウクライナの復興促進」は2つ目の測定項目【二国間及び国際社会の共通の諸課題に関する政策調整・協力の進展】の【】内に明記されていないため、この点を明記した測定項目の検討も有益と考えられる。
 「アフリカ地域外交」については、扱う国の数が多くエリアも広範である。「アジア大洋州地域外交」、「中南米地域外交」、「欧州地域外交」では、各々地域内の複数エリアが複数の分野として構成されているので、本施策も、将来的には、アフリカ地域内の複数エリアを複数の分野とする検討も有意義ではないかという印象を受けた。
 関連して、「アジア大洋州地域外交」については、全6施策のうち、分野数が8と最大であり、また評価書案の分量も30ページを超えて最大である。これ自体は、関連する「局」があり、その重要性からも自然なことだが、評価書としての量的観点からは、将来的に施策を二分することもあり得るのではないか。またこの施策は、分野1から4と、分野5から8で、外交的にも区分可能とも考え得る。
 「北米地域外交」について、分野1と分野2では「北米諸国」という表現になっている。評価書案の中に記載のある北米地域は2か国のみのため、「米国及びカナダ」又は「北米地域の米国及びカナダ」という記載でもよいと感じた。なお、施策を二分する案を含め、現状の記載が問題という意味でのコメントではない。

【外務省】
 いろいろな課題についてご指摘をいただいた。
 「予算額・執行額等」については、どのような書きぶりがよいかも含めて、引き続き課題と考えている。
 「施策評価(総括)」の書きぶりについては、施策ごとにそれぞれの特徴がある部分だとも感じているが、全体の横並びという観点からは、全ての施策の書きぶりを揃えた方がよい部分もあると感じている。
 「アジア大洋州地域外交」の施策を二分できないかという点について、確かに、この施策は「アジア大洋州局」という一つの「局」の所管であるが、「局」の中に「南部アジア部」という「部」があり、その部長がこの「部」を管理している。外務省ホームページでも、この「部」は、「局」から独立して扱っていることもあるので、将来的には検討し得るのではないかと感じた。また、確かに、一つの施策に性質を異にする分野が一緒に含まれているため、何らかの整理を考える余地もあるのではないかと思っている。

【有識者】
 今年度の評価対象である地域別外交の6つの施策について、それぞれにおいて優れた外交政策が展開されたと評価する。どの粒度でどのような評価軸を用いるかにより見え方は異なるものの、過去3年間に限ってみても、米中競争、ロシアによるウクライナ侵略、中東情勢の不安定化、北朝鮮による核・ミサイル開発の継続、グローバル・サウスの台頭、経済安全保障の重要性の高まりなど、様々な事象が同時に進行する中で地域外交の方向性を見定めること自体が極めて困難な状況下にあって、適切な判断のもと大きな目標が肯定的に達成されたことは特筆すべき成果である。すなわち、これほどまでに急速に変化する国際環境の中でそれぞれの地域外交がプラスの評価を維持し続けていること自体が高く評価されるべきものである。
 もっとも、なぜそうした肯定的な成果が生まれたのか、という一段下の事象において、どのような工夫をしたか、という点もまた重要な評価対象となり得る。最も典型的な事例はアメリカとの関係である。バイデン政権下のアメリカとトランプ政権下のアメリカにはマグニチュード的に大きな変化が生じているが、日本外交の「日米同盟の強化」という目標は一貫している。もっとも、両政権下において導くべき結論は同じであるとしても、そのパスウェイ(経路)は大きく異なる。この大きく異なるパスウェイを丁寧にナビゲートしながら同一の結論を導くことがなぜ可能であったか、また仮にここを誤った場合にいかなるダメージが生じ得たか。ドイツやスペインがトランプ政権との関係で困難に直面している中、日本も一歩間違えれば大きなマイナスになり得た状況でプラスを維持できた理由はどこにあるのか。こうした一段下の方法論や背景となる考え方こそが重要な評価の対象であり、各局課において実際に取り組まれたこと自体を正当に評価しなければならない。例えば、高市総理大臣が本年5月に「FOIPの進化」を提唱したが、なぜ「進化」という言葉と考え方が打ち出されたのかが重要である。また、評価対象期間の「中東地域外交」においては、「二国家解決」を掲げつつもガザ・パレスチナ問題では特別な立場を取る一方で、国家承認においては独自の立場をとっている。なぜこうした立場をとったのかという考え方が評価の中に「にじみ出す」ことが重要である。
 次に、今年度の評価対象である地域ごとの外交と来年度の評価対象となる機能ごとの外交との関係について述べる。どのような戦略目標をどのような手段で達成するかを考える際、この2つは密接に絡み合っている。加えて、中東・欧州・アジアという3地域がいかなる相互関係のもとにあるかという地域間連接の視点も不可欠である。北朝鮮はウクライナで戦闘を継続しており、シャヘドの攻撃ドローンはその生産・供与の手段も拡大し続けている現状を踏まえれば、地域間においてそれぞれ何を目指すのかという目標が相互に連接していることは明らかであり、各地域外交を評価する際にはこうした観点をどう反映するかについて考えていた。北米局にとって北米との関係を強化することは最重要であるが、その強化が機能別・地域間別においていかなる意味と位置づけを持つのかという観点が評価の土壌に上がってくることが望ましい。
 「アジア大洋州地域外交」に関しては、我が国の外交にとって最も直接的な課題が集積する地域であり、それぞれの取組はいずれも良好であったと評価する。特に日韓関係の改善は、日本の近隣外交における大きな構造的変化をもたらした。2017年から2020年にかけては日中関係の改善が地域外交に構造的影響をもたらしたと評価しているが、現状に照らせばむしろ日韓関係が確固たるものとなっていることがミニラテラリズムやミドルパワー連携に実質的な意味を与えている。岸田・尹錫悦外交時代以降、政権交代後も揺るがない形で維持されているこの関係はファンダメンタルズの結びつきと呼べるものであり、その実現に向けた努力は称賛に値する。
 ASEANについても、毎回の世論調査において日本への評価・信頼が高水準を維持していることは評価に値する。東南アジアは外務省の中でも敏感な地域であり、米中関係がこれほど厳しさを増し、中東情勢を巡りマレーシア・インドネシアと欧米諸国との間に距離が生じ、グローバル・サウスの自立性が強化されるといった国際社会の流れの中にあっても、すなわち、ASEANにとっての外交的選択肢が増加する中にあっても、日本の地位が相対化されないどころかむしろ信頼度において再評価が進んでいる。この事実は外交上の大きな成果であり、多くの関係者の努力が結実したものと高く評価する。
 「北米地域外交」については、トランプ政権第二期においてその特性がより顕著に表れる中、多くの同盟国がより深刻な困難に直面している状況においても、日米関係はOECD加盟国の対米関係においてほぼトップティアを維持しており、引き続き強固な基盤を維持していることは大きな成果である。
 「欧州地域外交」については、欧州大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分となっている中で、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」という認識のもと、戦争の開始・膠着・終結の可能性といった各フェーズにおいてインド太平洋との関係性を踏まえながら欧州を捉えることができたことを積極的に評価する。日・NATO関係の発展及び防衛産業基盤における協力の進展、並びに欧州が抱える課題に共感しつつ日本が積極的に関与していくという構造が形成されていることも肯定的に評価する。
 「アフリカ地域外交」については、グローバル・サウスの中核としての関係強化が日本にとって望ましい国際環境の形成に直結する重要課題となっている。TICAD9の開催・横浜宣言採択が良好な雰囲気の中で行われ日本の対アフリカ関与が広く可視化されたことに加え、従来の開発・民主化支援や公衆衛生分野の協力にとどまらず、対アフリカ投資やAI・先進技術分野への関与など2040年代の戦略的環境を見据えた長期的投資が実現しつつあることを肯定的に評価する。

【外務省】
 それぞれの政策の重要性、評価できる点、課題、今後のあり方などにつき総合的にご意見をいただいた。評価の中に「にじみ出す」ことの難しさも認識しつつ、重要な課題として受け止めたい。

【有識者】
 3点述べる。
 1点目に、総合的な印象として、厳しい時代の中で緻密な外交努力を重ねて来られたことが評価書案を通じて感じられた。例えば、「アジア大洋州地域外交」や「欧州地域外交」に関する記述には多層的・総合的な連携強化という言葉が随所に見られる。自身が機能的領域を研究していることもあり着目したが、伝統的な政府間交渉にとどまらず、経済安全保障・健康安全保障・AI・半導体などの先進技術分野など多様な領域を包含し、かつ政府のみならず官民学の連携のもとで各地域において多層的な協力関係を緻密な努力のもとに築いてこられたことが評価書案にも表れている。一方で、「アジア大洋州地域外交」・「北米地域外交」・「欧州地域外交」については記述が重厚である一方、「アフリカ地域外交」・「中南米地域外交」については相対的に記述が薄く、地域間の格差が評価書案の上にも表れている。多層的・総合的な連携強化をキーワードに、引き続き各地域へのアプローチを深めていくことが重要ではないか。
 2点目に、他のメンバーからも指摘があったが、評価と参考資料との関連について述べる。外交成果を数値で評価することの難しさはよく理解している。また、外交努力の結果がその後の「対日世論調査結果」にどの程度反映されているかを数値として示すことの困難さも承知している。しかしながら、現状の評価書案では「対日世論調査結果」が「参考」として掲載されており、評価との関連性が分かりにくい。「参考」として示されている資料が当該評価とどのような関係にあるのかを本文中に明示することが望ましいのではないか。
 3点目に、外交は双方向的なものであり、民主主義国家である日本においては、日本がなぜその地域に関与するのかという点について国民の理解を深めていくことが重要である。例えば、アフリカにおける感染症分野での日本企業の関与を促進しようとしても、経済的インセンティブの観点から障壁があるとの声も聞かれる。北米やアジアについては国民が重要性を比較的理解しやすい一方、地理的に離れた中南米やアフリカについては国民の理解が十分に追いついていない面もある。こうした地域への関与に対する国民の理解促進のためのアプローチも今後の重要な課題となるのではないか。

【外務省】
 多層的・総合的な連携強化に向けて政府のみならず官民学の連携のもとで各地域において取り組んでいる点をご評価いただいた。評価と参考資料との関連、とりわけ「対日世論調査結果」をどのように理解し活用するかという点については引き続き検討していきたい。また、日本のアフリカの関与などに対する国民の理解促進という点については、内閣府が実施している日本人を対象とした外交に関する世論調査の中に「アフリカに対する親近感」や「開発協力」に関する質問事項が存在することから、こうした調査結果を活用しつつ評価に反映することも一案と考えている。外国人の対日関心のみならず日本国民の外交に関する関心も評価上の論点となり得ることから、記載のあり方については今後も引き続き検討していきたい。

(2)行政事業レビュー

【外務省】
 政策評価と予算の連携という観点から、内閣官房行政改革・効率化推進事務局の主導の下で実施されている行政事業レビューに関する最近の当省の取組について説明する。
 今年度から、官邸主導で行われている補助金・基金の見直しの取組の一つとして、行政事業レビューが各府省庁における自己点検の一環と位置づけられた。6月5日(金曜日)、行政事業レビュー公開プロセスを開催し、従来のEBPMの観点に加え、「効果検証を強化し、成果に基づく制度運用へ転換すべき」「政策目的と手段を精査し、公平で目的に即した政策設計・運用を徹底すべき」といった観点も踏まえつつ、当省の3つの事業について外部有識者に議論いただいた。
 今後、公開プロセスの対象事業以外の当省事業100件について、外部有識者による書面点検を実施し、事業の改善及び見直し、ひいては令和9年度概算要求につなげていく予定である。現在、令和9年度概算要求に向けた省内プロセスが進んでいる。行政事業レビューシートは、補助金・基金事業に限らずあらゆる事業に係る予算編成の際の参照資料として、財務省主計局においても重視されていると認識している。引き続き、外務省内の予算査定においても重視していく方針である。政策評価と同様、合理化を進めつつ、更に意味のある取組となるよう検討を続けていく。

【外務省】
 本日は、非常に具体的なものも含めて皆様から貴重なご意見・ご助言をいただいた。いただいたご意見・ご助言も踏まえながら、今後の改善につなげていきたい。


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