政策評価
外務省政策評価アドバイザリー・グループ 第42回会合 議事録
1 日時
令和7年6月27日(金曜日)14時30分~16時00分
2 場所
外務省666号室
3 出席者
- (1)有識者(五十音順)
- 石田 洋子 広島大学 特命教授
- 坂根 徹 法政大学法学部 教授
- 神保 謙 慶應義塾大学総合政策学部 教授
- 詫摩 佳代 慶應義塾大学法学部 教授
- 藤田 由紀子 学習院大学法学部 教授
- (2)外務省
- 川埜 大臣官房総務課長
- 菱山 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
- 新井 大臣官房ODA評価室長
- 門元 総合外交政策局総務課首席事務官
- 前田 総合外交政策局政策企画室首席事務官
- 田宮 大臣官房会計課課長補佐
- ほか
4 議題
- (1)令和7年度外務省政策評価
- (2)行政事業レビュー
5 発言内容
【外務省】
本日は第42回外務省政策評価アドバイザリー・グループ会合に御出席いただき感謝申し上げる。
当省が平成15年から実施している外務省政策評価アドバイザリー・グループ会合は、今回で42回目となるが、これまで有識者から貴重な御意見・御助言等をいただきながら政策評価の改善を図ることができていると考えており、心より感謝申し上げる。
本日の会合の議題となっている令和7年度外務省政策評価は、広報文化・報道、領事及び大臣官房に関する4つの施策を対象としており、これらの施策に関する令和4年度から令和6年度までの3年間の実績に係る評価を行うものとなっている。いずれの施策も、現下の厳しい国際情勢の下で、我が国が積極的な外交政策を展開する上で非常に重要なものである。
外務省の政策評価については、まさに今この瞬間が典型であるが、外交政策が国際情勢の変化や外部要因等の影響に左右されやすい特性を有していることから、適切に評価することの難しさはあるが、今までも有識者の皆様の御意見をいただきながら、また、不断の改善を重ねながら、より活用される評価を目指して取り組んできており、また今後も尽力していく。本日は、こうした点も含め、有識者の皆様から忌憚のない御意見・御助言等を賜りたい。
(1)令和7年度外務省政策評価
【外務省】
当省の政策評価体系は、現在、6つの基本目標の下、16施策を3グループに分け、3年に1度、過去3年度分の実績を評価している。これに基づき、令和7年度は、外務報道官・広報文化組織、領事局及び大臣官房の4施策の評価を実施する。令和7年度の当省の政策評価については、引き続き「より活用される評価」を目指し、評価書の形式を含め、見直しを行った。具体的には、アウトカムに相当する成果を踏まえ、「課題及び今後の方向性」を記載したことで、評価書作成業務において、施策を改めて振り返ると共に、今後の方向性が従来よりも明確になり、評価書自体がより見やすく、活用しやすいものになったのではないかと考える。他方で、有識者の皆様から事前に提出していただいた所見で種々御指摘いただているとおり、今後の課題、改善すべき点等も少なからずあることを改めて認識した。本日の会合では、先生方から忌憚のない御意見をいただき、それらも踏まえ、引き続き政策評価の改善に努めていきたい。
【有識者】
評価の手法や結果の表記について、関係機関や国民等評価書を活用する人がどのような目で見るかという観点からコメントをする。
外務省政策評価制度については、評価書は全体的に読みやすくなった。外務省がどのような活動を行っているのかを知りたい人が評価書を読む際に、分厚い長い文章よりも非常にシンプルで読みやすいという良い印象をもたれるのではないか。多大な努力の形跡が見えた一方で、「主な成果」の欄に書かれているものが単に活動報告になっているものも一部ある。エビデンスを示すことなく「成果があった」と書かれ、ともすれば自画自賛的に聞こえてしまうところもあるので、今後書きぶりを調整するとよいのではないか。
また、今回評価対象となった広報文化・報道や外交実施体制は、何を目標にして、どのように成果を測るのかが非常に難しい施策である中、苦労して評価書を作成したことは理解するが、ITの活用については複数箇所に記載があり、重複感がある。今次評価書は実施計画のとおり実施されたため、やむを得ないものの、様々に評価を取り巻く情勢が変わってきている中で、今後評価計画を策定する際には、例えばITやDX等は広報・ITセキュリティを含めて一つの施策にまとめる等、外務省施策評価体系を整理していく必要もあるのではないか。
更に、通常、評価する際は、妥当性、有効性、費用対効果等、横串の視点を入れ込んでいるところ、全部は難しいが、例えば、評価の結果として、今後も活用できる有効な点や、次の評価に向けて重要となる課題を明示的に記載する部分があってもよいのではないか。加えて、透明性の観点から、費用対効果に関するエビデンス、例えば、何人ぐらいが参加したとか、何を実施したのか等、限られたスペースで厳しいとは思うが、国民としては知りたいところかもしれず、もう少し記載してもいいのではないかという印象を受けた。参考資料にある表や図は、本文との関係が見えにくく、もったいない。
個別施策に関しては、施策III―1「内外広報・文化交流・報道対策」では、活動を非常に具体的に記載いただき、色々な取組をされているのが分かった。対象として大学や高校生にアプローチするのは非常に良いことであるものの、一般の方や有識者等重要だと思われる人たちに対しては、従来どおりのアプローチしか行っていないようにも読み取れるところ、これらの対象者に対しても改善した取組があれば、強調してもよいのではないか。
【有識者】
まず、外務省政策評価制度全体に関して、令和7年度政策評価作業においてなされた、評価書のフォーマットの合理化、施策目標及び中期目標の合理化、分野の扱いの見直し、施策V-1及びV-2における「分野」の新規追加といった変更は、更なる改善として評価できる。また、令和6年度から行われている評価書のパワーポイント形式での作成、公開資料の積極的な活用及び一部ハイパーリンクの活用や簡潔な記載への留意等の取組は、2回目となる本評価においてもその意義や効果が確認できたので、今後も「より活用される評価書」とするためにも、また、外交政策を国民により分かりやすく説明するためにもその継続が期待される。
次に、個別の施策に関して、施策III-1の「内外広報・文化交流・報道対策」については、7つの分野を通じた取組の説明は、総じて具体的で分かりやすく、リンクや図表を含む「主な取組」の項目も含めて充実したものであり評価できる。また、本施策の将来の更なる予算及び人員の拡充によりできることは多々あると見受けられるところ、今後も将来の本施策への予算面の対応強化がなされていることが期待される。なお、分野5-1の中で日本に本部を置く唯一の国連機関である国連大学について取り上げられているが、国連大学の歴代学長に日本人がまだいないことも踏まえ、早期の実現は難しいかもしれないが将来の日本人学長の実現に向けた取組の強化や、一般国民への知名度及び有益性の向上にも寄与する活動の強化に向けての継続的な働きかけが望ましい。
施策IV-1の「領事業務の充実」については、本施策目標の分野2にある在外邦人の安全確保に向けた取組は一層重要となってきているところ、過去3年度の主な成果は評価できる。その上で、現在の本施策目標は「国民の利便に資する領事業務を実施する。」とあるところ、将来は例えば、国民の利便だけでなく、「国民の利便・安全等に資する領事業務を実施する。」等と安全を明記してもよいのではないかと感じられた。
施策V-1「外交実施体制の整備・強化」については、特に分野1で過去3年度に毎年相当程度の定員増を確保できたことや、様々な在外公館の新設と内部部局の機構の新設が実現したことは評価できる。また、分野4にある地方連携の推進では貴重な取組を行っていると理解でき、今後の更なる取組と成果に期待したい。
施策V-2「外交情報通信基盤の整備・拡充」については、サイバーセキュリティ対策や全職員に対して一人1台持ち出し可能パソコンを配備しセキュリティ機能強化も図られたことは重要であり、また、デジタル化推進室の新設がなされたこと等、様々な取組を行っていており評価できる。なお、他の施策とは異なり、本施策のみリンクや図表を含む「主な取組」の項目が見当たらなかったところ、次回の本施策への評価においては盛り込まれていることが期待される。加えて、一般国民の読者も想定して可能な範囲で追加説明があればより分かりやすくなった箇所も若干あるように見受けられた。
複数の施策に関連するコメントとしては、今回評価対象となった4施策のうち、施策III-1・IV-1・V-1の3施策においてリンクや図表を含む「主な取組」の項目が盛り込まれており、特にIII-1及びIV-1では各々の全ての分野においてそれがなされていたことは評価できる。なお、将来の評価書作成においては、アドバイザリー・グループ・メンバーによる評価作業を実施する時点までにできれば評価期間の全ての年度予算額の情報が記載されることを御検討頂きたい。
【有識者】
施策III-1「内外広報・文化交流・報道対策」について、基本的には非常に良くやっている。おそらくこの3年間という期間の中でもこの内外広報や交流が焦点を絞るべき課題というのが結構変化してきているのではないかという印象を持った。
特に国内においては、当然財政事情が厳しい中で、積極的な外交を展開し、更にその規模を拡大したいという中において、「なぜ国内でこれだけ経済や格差問題が厳しいのに、例えば政府開発援助(ODA)や国際機関に拠出金を出す必要があるのか」という議論が非常に出てきやすい環境にある。これは私自身、「開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会」の委員を務めているところ、有識者懇談会の報告書を発出した際に、特にインターネットメディア系ニュースに表示されるコメントでは、ほとんどこの手の話は評価されない点と感じている。広く国民に支えられての外交というときに、日本の国益とすぐに結びつかないと思われるようなこの課題について、なぜ日本が積極的に取り組まなければいけないのかという説明を、言葉遣い・広報の仕方というのを相当程度工夫して行っていかないと、拠出規模を拡大していく際に、国会も含めて様々な議論が出てくる。そこをどのように論理付けして理論武装していくのかということは結構重要と考えている。
国外においては、特にこの半年、一年をみても、ルールに基づく国際秩序が大変な事態に直面している。国際機関や保健衛生・開発分野でも大変動が起きていて、その中で、どうして日本はルールに基づく国際秩序を推進するということをこれだけ言い続けているのかということに関するナラティブの形成が非常に大事だと考えるが、これは意外と脆い。多くの国が内向きになり、「自国ファースト」を掲げる中で、その国内に利益が還元されない外交については評価する必要もないといった流れになっている。実は、日本としては、しっかりルールが守られていなければ、石油も入ってこないといった弊害が出てくることから、ルールに基づいた国益が明確に存在するというようなことを打ち出して、多くのアジア諸国をはじめ、同調する国とナラティブを合わせていく必要がある。特に米国による相互関税が打ち出された際に、シンガポールのローレンス・ウォン首相は、明確な発言をした。あのような発言とうまく連動させて、「ルールに基づく秩序」を意識したタイムリーで機動性のある広報のようなことは、かつてなく重要性を増していると考える。
また、広報媒体は急速に変化している。いわゆる「オールド・メディア」から、「新しいメディア」に移行しており、選挙でもこの新しい媒体の影響を受けている。今の学生たちはテレビを持っておらず、スマホ、あるいはタブレットやパソコンの中の動画等が情報収集の主体になっている。このような環境下で、「広報」と言う場合、一体どのメディアを中心にリソースを配分するべきなのか等について抜本的に検討し、変えても良いのではないかと考える。更に、数万人、数十万人のフォロワーがいる個人のブロガーは、立派な一つのメディアである。例えば、河野大臣(当時)の発信力は凄かったが、大使一人一人や外交官個人の魅力が重なると意外にそこから広がる広報効果は大きいところ、積極的にインフルエンサーを内製化するようなことを遠慮なく実施していくべきではないか。以前、外務省員ミナミ・アジア子等「ゆるキャラ」が外務省の中に匿名でいた事はとても良かった。外交において現在どんなことがロジ面で進行しているのか、どういう接遇をしたのか等、何でもよいが、こういったところで身近に感じてもらって、ファンを増やしていく方法がたくさんあると思うので、積極的に進めて欲しい。
施策IVの「領事業務の充実」について、ポイントを絞ってお伝えすると、「海外安全ホームページ」が古くなっている印象があり、極めて使いにくい。安全情報がリンク等で紐付いていることが重要であり、旅行会社にAPIを提供することによって外部の情報と連動することができるところ、そういった点で改善の余地があると考える。旅行会社のサイト等に外務省の安全情報が紐付くようにすることによって、多くの邦人の安全や、連絡先など危険に遭遇した時に何をすればいいかというような情報提供を、大使館に電話するよりも早く手元で分かる状態にすることが非常に大事だと感じる。その観点から、「海外安全ホームページ」は更新の時期を迎えていると思う。現行版は古さを感じるので、ぜひ改善していただけないか。
また、中国に渡航する邦人の安全をどのように守るか。安全があるとビジネスも盛んになるし、民間学術交流もできる。以前、人的交流が大事であることを大使が書いておられたが、高校生や大学生が本当に安全に行き来できたり、海外出張も含めて、人々が安心して中国に行けるようになったりするか、この辺りに絞った形でその方法を検討して欲しい。もちろん中国の制度を変えるわけにいかないので、中国の現行制度にどのように適応して安全を最大化していくのかということについては、まだまだやるべきことがあると考える。
施策V―1の「外交実施体制の整備・強化」について、順調に拡大し、特に外交課題の変化に応じた形で多くの部局が再編成されている点については、非常に優れた組織編成がなされていると思う。同時にこれは各省庁に共通の課題であるが、やはり優秀な人員をどういうふうにリテンションしていくのか、中途採用、社会人経験者採用を含めて、優秀な方の人的流動性というものを取り込んでいくことが外務省の機能強化につながるといった流れを、是非強化していただきたい。「外部の人が調書を書けるのか、根回しはできるのか」等、たまにそういった発言をする職員に遭遇するが、これは外交力・国力を毀損する行為である。流動性を高めることに国益があるということを是非外務省が率先して実践して欲しい。
施策V―2の「外交情報通信基盤の整備・拡充」について、生成AIサービスが導入され、すでに一部業務で活用されていると承知する。素晴らしい試みであるが、外交特有の機微な情報の取り扱いや、相手がいる中での信頼性の獲得といった時に、どのように信頼に足るAIを使っていくのか、という課題がある。上手く使えれば、業務の劇的な改善に繋がると思うし、職員の皆さんのワーク・ライフ・バランスに大きく寄与すると考えられるので、外務省に限らないが、是非積極的に推進されるようにしていただければと思う。
【有識者】
気付きの点を3点話させていただきたい。
第一に、全体として紙面が限られている中でも工夫して情報を盛り込まれており、非常に分かりやすかった。一方で、他の有識者からも指摘があったとおり、紙面が限られているといえども、もう少し説明が欲しい箇所があった。例えば、施策III―1の「日本とは立場を異にする発信等によって日本のプレゼンスの低下につながらないように」との記載については、因果関係の説明が欲しかった。
第二に、先ほど別の有識者からも指摘があったが、広報については、インスタグラムでの発信や学生を対象としたイベント等の様々な取組を行っており、個々のレベルでは良いが、その根本的な問題、すなわち外交は、内政と密接に関わっており、我々の平和と繁栄は外交と密接にリンクしているという、根本的な理解を促すような広報が重要ではないか。外務省のインスタグラムを確認したが、大臣の活動をアピールしていくのも大事であるが、我が国の繁栄と外交と密接に関連していることをナラティブとして発信していくような、そういった広報活動が世論との関係で必要だと感じる。世論に限った話ではなく、例えば私の周りでは国際関係を専攻する大学院生の数が減っている。私が大学院生の頃は、在外公館での専門調査員のポストは人気が高かったが、今はそもそも応募する人も少ないと聞く。専門家の卵のレベルでも、外交への関心が低下しているという現状がある。一般市民、専門家の卵、学生といった様々な層に根本的なメッセージで働きかけていくような広報が、今後求められると考える。
第三は、これも既に他の有識者から指摘されている事項であるが、国際情勢が厳しくなっていることや、世界各地でデジタル化が進んでいること等、予期できない環境変化に、柔軟に対応できるような外交の仕組みの構築が必要だと考える。予期できることに対するシステムはしっかりされていると思うが、例えば、政策評価書には、職員の間でセキュリティ意識にばらつきがあると記載されていた。一般企業であっても深刻な問題であるが、日本外交の中枢を担う外務省でそれが発生しているのは如何なものかと感じた。
【有識者】
まず、外務省政策評価制度に関し、評価書の構成が「過去3年間の主な成果」及び「課題及び今後の方向性」となっていたので、それぞれについてコメントする。
「主な成果」については、アウトカムを書くには難しい分野が多くある。「令和7年度外務省政策評価書」(案)に「定性的な測定項目を中心としつつ、客観的な情報・事実等に基づく実績を主に記載するように努めた」とあるとおり、「成果」の内容は必ずしもアウトカムである必要はなく、むしろアウトプットを記載した方が適切な分野もあると考える。これを踏まえて、例えば、施策III―1「内外広報・文化交流・報道対策」については、事業量・実績等の数値を交えた具体的でわかりやすい記述が多くあり、充実した結果になっていたが、その一方で、根拠を示さないアウトカム的な記述も散見された。一例を挙げると、「各国国民の対日理解を促進し、親日層・知日層の形成に結びついた」「日本の外交政策について正しい理解を増進するための一助となった」「省員の情報防護に関する知識の定着が実現した」「赴任先での危険行動の抑止につながった」等であり、そのようなアウトカムを記載する場合は、根拠をできる限り示すことが望ましいと考える。
次に、「課題及び今後の方向性」欄については、全般的に「今後の方向性」についての記述は充実していたが、評価の結果に基づいて何が「課題」として発見されたのかという記述が弱かった。例えば、施策III―1分野1では、各種講座の裾野の拡大が課題であることや、施策V-1「外交実施体制の整備・強化」分野4「地方連携の推進」で自治体ごとの国際的取組の進展の格差を捉えて課題として設定されている等、課題を明示的に記載している箇所もあったものの、全般的には、評価を行った上で抽出された課題という観点からの記述は少なかった。
「施策の改善に役立つ評価」、「より活用される評価」という政策評価制度見直しの目標に鑑みれば、「政策評価によってどのような課題が発見されたか」という点をより一層重視した評価を行っていただきたい。
なお、個別施策として2点コメントしたい。
施策III-1の分野2「海外広報の実施」について、外部専門家やコンサルタントの活用、業務委託等の方法を適宜利用していくのは必要なことであるが、やはり、契約の更新の時期等に、その費用対効果を検証することも重要と思われる。
施策V-1分野1「外務省の人員、機構の更なる整備」の「主な成果」に、内部部局の機構の新設について記載されているが、新設された機構が想定通りの効果を上げているかが大事であり、一定期間経つと検証が可能になると考えるので、今後検証を行っていただきたい。
【外務省】
各有識者から、各施策、政策評価制度に関わる多くの貴重なコメント、アドバイスをいただいた。各施策に係るコメントについては、従来と同様に、関係課室に共有し、調整させていただくが、政策評価制度に係るコメントについては、当方からの意見を何点かお伝えしたい。
まず、評価書のフォーマット、記載方法等に関するものとして、令和6年度の政策評価から行っている評価書のパワーポイント形式での作成、参考資料としての公開資料の活用、一部資料のハイパーリンク化、また、令和7年度評価で行った評価書のフォーマットの合理化、施策目標及び中期目標の合理化等は、より活用される評価及び外交政策を国民により分かりやすく説明するとの観点から好意的なコメントをいただいた。引き続き工夫を凝らしながら、より分かりやすく、より活用される評価書を目指して取り組んでいきたい。
また、内容面に関するものとして、妥当性、有効性、費用対効果の視点からの評価の必要性、成果に基づく課題の抽出、政策評価のユーザー及び国民への説明責任の観点からの政策評価の目的、ロジックモデル、参考資料の有効活用等について複数の有識者からコメントをいただいたので、それぞれコメントする。
1点目の妥当性、有効性、費用対効果の視点からの評価の必要性、成果に基づく課題の抽出について、「外務省における政策評価の基本計画」は、「必要性」、「有効性」及び「効率性」の観点を基本としつつ、評価対象政策の性質等に応じ、適切な観点を選択し、総合的に評価するとしており、評価書はこうした観点からの記述に努めている。また、令和5年に一部見直しが行われた「政策評価に関する基本方針」では、有効性の観点からの評価を一層重視するとされ、課題を洗い出していくことの重要性が確認された。こうした観点から、令和7年度の政策評価書では、「主な成果」とともに、「課題及び今後の方向性」という欄を設け、関係課室には可能な限り課題について記述してもらうようにしている。御指摘の点も含め、まだ不十分なところもあるところ、関係課室と相談しながら、引き続き改善に努めていきたい。
また、「外務省における政策評価の基本計画」は、政策効果の把握について、「できる限り政策効果を定量的に把握することができる手法を用いることとするが、外務省が実施する外交政策は、各国との友好関係の増進、外交的働きかけ、情報収集等、必ずしも政策効果の定量的な把握になじむとは言えないこと、また、外交政策の効果を把握する評価方法が開発されていない側面もあること等を踏まえ、定量的な把握が困難である等の場合には、政策効果を定性的に把握する手法を主に用いるものとする。その場合においても、可能な限り、客観的な情報・事実等に基づくものとする。また、政策効果の把握に関する手法については常にその改善に努める。」としており、いただいたコメントも参考にさせていただきながら、今後とも改善に努めていきたい。
2点目の政策評価の目的については、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」において、政策評価の目的について、効果的かつ効率的な行政の推進に資するとともに、政府の有するその諸活動について国民に説明する責務が全うされるようにするとしている。この観点から、第一義的には外務省政策評価書のユーザーは当省の関係部局であるので、こうした認識の下、先ほどもご説明したとおり、政策評価書には「主な成果」とともに、「課題及び今後の方向性」を記述することとし、効果的かつ効率的な政策の推進に活かすことを目指している。御指摘の点も含め、まだ不十分なところもあるので、引き続き改善に努めていきたい。
同時に、外務省が行っている諸活動について、政策評価を通じて国民に説明する責務を全うするとの観点から、政策評価書をより分かりやすく、より見やすくする取組を行っており、参考資料の工夫もその一環として行っている。外務省政策評価書は、令和6年度に大幅な見直しを行い、試行錯誤しながら不断の改善を行っている。先生方からの御意見、アドバイスも参考にさせていただきながら、引き続き改善に向けた取組を継続していきたい。
3点目のロジックモデルは、基礎的なEBPMの定着に向け、事務事業レベルを中心に取り組まれてきた経緯があるが、政策評価制度が本来対象とする施策レベルでの実践に向けたアプローチについては、政策評価審議会において今後の課題として議論されていくことになるものと承知している。評価制度の改善に向けて、引き続きこうした議論の動向等もフォローしていきたいと考えている。
4点目となる参考資料の有効活用について、令和7年度の政策評価書は、各施策の分野毎に「主な成果」及び「課題及び今後の方向性」を中心に記述しており、「主な成果」の理解を深めていただくとの観点から、「主な取組」について参考資料を付けている。令和6年度の評価書と比べ、参考資料を増やし、表、グラフ等を活用し、より見やすく、理解しやすい資料を掲載するよう努めている。また、項目を設け、「主な成果」のどの部分に対応した資料か分かるような工夫もしている。ただ、まだ改善の余地はあると考えているので、御指摘の点も参考にしながら、引き続き評価書の改善に努めていきたい。なお、よりコンパクトな評価書にするとの観点から、写真等については、政策評価書の参考欄に張っているリンクから外交青書や開発協力白書の関連箇所に飛び、そちらで御覧いただけるようになっているので、この点については御理解いただきたい。
政策評価のあり方については、令和6年度から見直しを行っているが、本年度の政策評価の検証事項を令和8年度にも反映させていく等、引き続き有識者の皆様とも連携させていただきながら今後も改善を図っていきたく、宜しくお願いしたい。
(2)行政事業レビュー
【外務省】
政策評価と予算の連携という観点から、これまでの会合でも行政事業レビューについて簡単に紹介してきた。前回紹介したとおり、昨年度から行政事業レビューシートシステムが導入され、今年度も同システムを通じた行政事業レビューを実施してきている。今後、各省庁からの改善点等の意見が蓄積されることにより、更なるシステムのアップデートが期待されている。今回は、行革事務局の主導の下実施されている行政事業レビューに関する当省の取組について御説明したい。
今月頭に、行政事業レビューの公開プロセスを実施し、内容については外務省ホームページに掲載されているが、当省の3つの事業について外部有識者とEBPMの観点等から議論を行った。また今後、その他の当省事業100件について外部有識者による書面点検を実施し、事業の改善、見直しにつなげていく予定。
現在、令和8年度予算概算要求に向けた省内プロセスが進んでいる。レビューシートは、予算編成の際の参照資料として、財務省としても重視していると承知しており、会計課としては引き続き、外務省内の予算査定においても重視していく方針である。行政事業レビューと政策評価は、外務省の取組全体をそれぞれ異なる視点から評価する取組という意味で表裏一体であり、政策評価と同様、合理化を進めつつ、更に意味のあるものとなるよう検討を続けていきたい。
【外務省】
本日は、貴重な御意見やコメントをいただいた。特にアウトカムにエビデンスが不十分である点や活動報告になっているという点は、以前からも言われているが、外交という政策上の特性を踏まえつつ、いろいろな工夫をしながら、できるだけ政策効果の把握や施策の改善に役立つ評価にしていきたいと考えている。引き続き御指導・アドバイス等を賜りたい。