政策評価

令和5年3月28日

1 日時

 令和5年2月16日(木曜日)14時30分~16時00分

2 場所

 対面・オンラインのハイブリッド会議

3 出席者

(有識者)(五十音順)
石田 洋子 広島大学IDEC国際連携機構教育開発国際協力研究センター 教授
遠藤 乾  東京大学大学院法学政治学研究科 教授
南島 和久 龍谷大学政策学部 教授
福田 耕治 早稲田大学政治経済学術院 教授
(外務省)
三宅 大臣官房総務課長
木村 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
西野 大臣官房ODA評価室長
中西 総合外交政策局総務課首席事務官
前田 総合外交政策局政策企画室首席事務官
和田 大臣官房会計課課長補佐
ほか

4 議題

  • (1)外務省政策評価基本計画案及び令和5年度実施計画案等
  • (2)政策評価をめぐる最近の動き(政策評価審議会における提言・答申等)
  • (3)行政事業レビュー
  • (4)令和6年度以降の外務省政策評価の在り方

5 発言内容 

【外務省】
 本日は第37回外務省政策評価アドバイザリー・グループ会合に御出席いただき感謝申し上げる。
 昨年のロシアによるウクライナ侵攻以来、国際社会が歴史の岐路に立っている。そうした中、本年、日本はG7の議長国を務めるほか、グローバルサウスと呼ばれる国々との関係強化を図っており、特にASEANとの関係では友好協力50周年を迎えるなど、外交の年である。
 加えて、国の安全保障に関する防衛3文書が改定され、防衛力の抜本的強化が打ち出された。外交力についても、文書では抜本強化すると認知されており、今後その中身を詰めていく、魂を入れていくという重要な時期に来ている。いろいろな意味で日本の外交力をどのように抜本的に強化していくのか、という強い問題意識を持っている。
 本日の会合においては、政策評価の観点から、各議題に関する議論を通じて有識者の皆様から貴重な御指導や御意見をいただきたい。外交政策をより効果的かつ効率的に推進し、外交力の強化に資するような議論につながることを望んでいる。

(1)外務省政策評価基本計画及び令和5年度実施計画案等

【外務省】
 先ず、令和4年度当省政策評価の報告をさせていただく。令和元年度から3年周期を試験導入したが、今年度から施策を3グループに分け、3年周期を正式導入した。令和4年度は、外務報道官・広報文化組織、領事局、官房の4施策の評価を実施した。全施策とも府省共通5区分の「相当程度の進展あり」の評価結果となっている。測定指標38のうち、aが6、bが31、cが1の結果となっている。有識者の皆様には、書面及びAG会合でご所見を頂き感謝申し上げる。
 続いて、外務省政策評価基本計画案及び令和5年度政策評価の実施計画案等の説明に入らせていただく。議題2で説明するが、総務省が進める政策評価制度見直しは基本的に制度の自由化・柔軟化がなされる方向であるが、それを具現化する基本方針やガイドライン等の改正スケジュールが後ろ倒しになっている。そのような動きを受け、総務省とも相談した上で、当省の特性を踏まえた制度というものを検討するには一定の時間が必要であり、短兵急な制度の変更に伴う業務の混乱や手戻りを避けることが必要と判断した。そのため、当省の新たな評価制度の枠組みは令和6年度からの導入を目指すことにして、令和5年度は基本的に現行枠組みの下で評価を実施する考えである。この判断にあたっては、昨年6月のAG会合で諸先生からいただいた、本務に支障がない形での対応が重要との御助言も踏まえさせていただいた。
 そのため、令和4年度末に対象期間が終了する現行の当省の政策評価基本計画及び令和5年度実施計画については以下の対応をとる方針である。
 新たな基本計画(令和5年度~9年度)については、現時点では現基本計画を踏襲した内容とし、令和6年度の新たな評価制度枠組みの導入の際に必要に応じて見直しを行う。この点を踏まえ、基本計画案において、令和6年度以降については必要な場合は見直しを行う点を追加した。そのほか大きな変更はない。
 実施計画については、令和5年度は、地域局の6施策の評価(令和2年度から4年度までの3年間の実績評価)を現行の制度に基づき実施する。現行の評価制度においては、政策評価書に加えて事前分析表の作成が必要となっているが、総務省の自由化の方針や業務合理化の観点を踏まえて事前分析表はできる範囲の合理化を検討することにしている。
 判定基準及び評価書フォーマットについては、令和4年度から特段の変更はない。
 以上、外務省基本計画及び令和5年度政策評価実施計画等について御説明申し上げた。御意見・御助言などを賜りたい。
 特段御意見等ないようなので、本日お示しした外務省政策評価基本計画案及び令和5年度実施計画案に従って、5年度の評価を進めさせていただく。日程に関して申し上げれば、6月初旬頃、有識者の皆様に所見を依頼させていただきたいと考えているところ、よろしくお願い申し上げる。

(2)政策評価をめぐる最近の動き(政策評価審議会における提言・答申等)

【外務省】
 現在、総務省政策評価審議会において議論が行われている政策評価制度の見直しに関し、説明させていただく。
 昨年5月に政策評価審議会から「デジタル時代にふさわしい政策形成・評価の在り方に関する提言」が出された。同月、行政改革推進会議からは「アジャイル型政策形成・評価の在り方に関するワーキンググループ提言」が出された。
 これらの提言を踏まえて、総務省政策評価審議会で政策評価制度見直しの議論が行われ、昨年12月21日に「デジタル時代にふさわしい政策形成・評価の実現のための具体的方策」と題する答申が出された。そのポイントを説明させていただく。
 今回の見直しが目指すのは、機動的かつ柔軟に政策の見直し・改善が行われ、社会経済の変化に対応できる行政の実現である。そのために、政策評価は政策の現在地を正しく知りその現在地から政策の目的地に向けたナビゲーションを行う。つまり、政策評価はナビゲーションのツールである。対岸に渡る船が潮流の変化等に合わせて軌道修正を図るように、政策の機動的な効果検証を通じて予定経路とのズレを適時的確に把握する役割が求められている。
 見直しの方向性としては、(1)効果検証の取組の推進と(2)政策の特性に応じた効果検証が可能となる評価枠組みの導入の2点が挙げられた。前者はデータ利活用や人材育成を中心としたものなので、主として総務省行政評価局による対応を求めているものであり、当省の制度面では後者がより重要となる。効果検証には政策の特性に応じて多様な方法が存在するので、今後は画一的・統一的な評価方法ではなく、政策の個別性・多様性を重視した制度運用に転換される。ここに今回の答申の最も重要なポイントがある。
 この制度面の見直しにかかる具体的な方策としては、第一に、政府共通の評価手法を定めているガイドライン等を改訂するなど、各府省が政策の特性に応じた評価を行いやすくなるように制度運用が柔軟化される。右に加え、答申本文では、「政策評価に関する基本方針」等から体系的・網羅的な評価を求める記述も削除する方針も定められた。
 第二に、政策企画立案プロセスの中で実施され、政策の見直し・改善に反映されている分析や検討結果(審議会答申、行政事業レビューシート等)を政策評価として活用することが推奨される。昨年5月の審議会提言では、行政事業レビューの取組に目標管理型評価を一体化することが含まれていたが、こうした一律の対応は見送られたようにも見受けられる。各省の判断で適当と考える場合は、レビューシートの政策評価における活用を推奨するということになっている。
 今後のスケジュールとしては、目下総務省が本答申に沿って政策評価に関する基本方針・ガイドライン等の改正作業を行っており、それを踏まえて令和5年度以降、順次取り組むことになる。
 この答申等の動きを踏まえた当省の政策評価の在り方については、議題4で御意見をうかがいたい。

(3)行政事業レビュー

【外務省】
 行政事業レビューについては、春の公開プロセスは、外務省が主体的に行うレビューであるが、秋のレビューは、行革推進本部が中心となって、行革本部が事業を選定し、行革本部の指定した有識者の方にご指摘をいただくというもの。
 今回の秋のレビューの対象としては、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド(GF))拠出金が対象となった。
 有識者の先生方からは、拠出規模の妥当性や必要性を示すべき、理事会において我が国が単独議席を保持しているので、我が国が重視する分野の取組が、日本の顔が見える形で行われるよう、議決権の行使にとどまらず、必要な働きかけを行うべき、GFに対し拠出を始める厚労省と一体となって取り組むべき、といった指摘を頂いた。これら指摘も踏まえて、事業を改善していきたい。
 行政事業レビューの春の公開プロセスで対象となった3案件、具体的には、内外発信のための多層的ネットワーク構築、国際協力機構(JICA)運営費交付金のうち、開発教育支援事業、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women)拠出金に関しても、令和4年度予算概算要求又は執行において、指摘事項を反映した。例えば、内外発信のための多層的ネットワーク構築については、これまで招へい実績のない国及び日本大使館設置に至っていない国からの招へいも実施すべきである、JICAの開発教育支援事業についても、主な対象である小学生から高校生までに加え、社会に出る直前にある大学生や、企業からの要望にも積極的に応じ、国際協力の理解や参加を促進すべきである、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women)拠出金については、日本事務所との連携を強化したり、日本人職員の増強に取り組むべきである等、様々な有益な御指摘をいただき、事業の取組に反映させてきている。
 今後とも必要な事業を効率的に実施し、また、国民への説明責任が十分果たせるよう、頂いた指摘を踏まえて来年度の執行内容及び評価方法について不断の見直しをしていきたい。
 現在、行政改革事務局において、行政事業レビューにEBPMの実践の場とするべく、見直し・改善が進められている。今後3月をめどに実施要領が改定される方向で作業が進められており、既に、レビューシートの作成単位を予算編成過程で用いられる単位とそろえることで、政策立案・改善や予算編成プロセスでの活用を目指すことになっているほか、レビューシートもEBPMの観点を強化する改訂版シートの試行的な実施を一部事業で進めている。当省としてもこちらの取組に協力していきたい。

【外務省】
 秋のレビューの対象となった世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GF)拠出金を含め、EBPMの要素の充実化を図る試行版レビューシートについては当室も拝見した。省内では大臣官房政策立案参事官をヘッドに7課室にて構成するEBPM推進タスクフォースを設置しており、当室はその事務局的な立場にある。その立場から拝見したが、政策手段がその目的を達成するに至るまでの論理的な因果関係を明確化する重要性が改めて認識された一方で、それぞれの事業効果を測定する適切な指標設定の難しさも改めて感じられた。外交施策の特性に応じたEBPM実践の在り方について引き続き考察を深めていきたい。

(4)令和6年度以降の外務省政策評価の在り方

【外務省】
 政策評価審議会の答申等を踏まえて今後当省の特性に応じた政策評価の在り方を検討していく考え。答申で挙げられた論点について省内でまだ議論できていないが、とりあえずの考え方、認識を述べさせていただく。
 まず、検討に当たっての前提として2点ある。第1に、当省の施策の特性に応じた制度を、時間をかけてしっかりと模索する必要がある。今回の答申は、機動的かつ柔軟な政策の見直し・改善により資する評価とすることを最も重視している。そのために、規制緩和ともいえるが、現行の目標管理型政策評価制度、即ち施策レベルでの評価の自由化・柔軟化が基本的方向とされている。それは、各府省の政策の特性に応じた柔軟な評価方法を選択する余地を広げるもので、その方法はその政策に応じて個別に検討される必要があるとしている。その方法は、一朝一夕に最善手に到達できるものではなく、各府省の実務における試行錯誤を通じて改善を進めていくことが重要とも指摘している。
 第2に、対外的説明責任の確保が前提になるが、可能な限り作業の合理化が望まれる。というのも、今回見直しの背景には、各種評価作業の重複による負担感の解消もあった。
 その上で、答申で挙げられた論点について、個々にとりあえずの考え方を述べたい。
 まず、外交施策の特性に応じた効果検証が可能となる評価枠組みの在り方、評価手法の柔軟化を踏まえた現在の目標管理型評価の在り方についてである。評価の手法が柔軟化していく方向性であり、その中で現在の政策評価として行っている施策レベルでの評価である目標管理型評価をどう位置づけていくのかだが、現時点では、引き続き有効なのではないかという問題意識を持っている。つまり、外交施策というのは、中長期的な国益の観点に多分に立脚するため、中長期の実績に基づく評価が馴染みやすい。政策評価の取組は、過去20年に亘るが、現在の目標管理型の方式、即ち施策レベルの評価は、当省において比較的上手く機能、定着してきた。特に外交分野の施策や事業は、その特徴として、(1)国際情勢の変化や各国の動向等の外部要因に大きく左右される、(2)各国との友好関係増進や外交的働きかけ、情報収集など政策効果の定量的な把握は容易でない。そのため、現行の政策評価においては、可能な限り具体的な目標を設定した上で、客観的情報・事実等に基づき、政策効果の定性的把握に努めてきた。これは有識者の皆様に見てきていただいたところである。今回の答申の背景にあるアジャイル型政策形成・評価の在り方については、外部要因による影響が大きい外交施策においては、状況に応じた軌道修正が柔軟に行われるが、その判断基準となる指標、特に短期的で定量的な指標は、その事前設定はそのような特性もあって容易でない。それがどこまで公表可能かとの問題もある。
 また、昨年5月の政策評価審議会の提言では、施策レベルでの評価では効果検証が的確に行えず、むしろ事業レベルでの評価が望ましいとの見方があった。他方で、昨年11月の第34回政策評価審議会制度部会での議論を聞いてみると、「施策単位で初めて議論できるもの、施策単位で見た方が望ましいものがある」との意見もあった。中長期的な国益の観点を重視する外交施策は、後者に該当するのではないかと思われる。事業レベルの評価をもって施策レベルの評価を代替することはなかなか容易でない。中期的なスパンでの俯瞰的な評価である現行の施策評価は引き続き有効と考える。
 以上の点を念頭に、今後当省の評価枠組みの在り方を、可能な範囲での合理化を図りつつ検討したいと思っている。ただし、まだ総務省から基本方針やガイドラインの改正案が出ていないので、それを見てからという話になる。
 また、体系的・網羅的評価の求めが無くなる中での評価対象施策の範囲に関して、現在の政策評価体系ではほぼ全ての局部の施策を一律評価対象としているが、もう少し重点を置いた評価の在り方が考えられるのではないかと思われる。政策評価として公表することに必ずしもなじまない一部の局部課室については省力化の観点を含めて対象としないことも考え得る。これも総務省基本方針案、ガイドライン案に依るところとなる。
 次に、政策立案の中で行われる分析や検討結果の活用に関し、審議会答申、レビューシート等と政策評価との関係の整理については、今回の答申本文では、審議会答申、白書、計画のフォローアップ、加えて予算編成プロセスで活用される行政事業レビューシート等をそのままの形で評価書として活用することが推奨されている。ただし、当省では外務人事審議会以外の法定審議会は置かれておらず、所掌業務にかかる中期計画の策定もないため、主に行政事業レビューと白書の活用が検討対象になる。
 行政事業レビューについては、先程当省から説明申し上げたとおり、行革推進会議事務局を中心に見直しが進んでいるところである。先程申し上げた外交政策の特徴もあり、定量的な記載を中心とするレビューシートを一律に政策評価書として活用するのは困難であるが、今後適切なやり方があるのか検討したい。白書については、当省の場合、外交青書や開発協力白書があるが、そのままの形で評価書として活用することは想定されていない。
 まだ方針を固めた段階ではないが、以上の幾つかの論点をお伝えした上で、今後先生方の御意見も踏まえつつ対応したく、とりあえずの御意見やお気づきの点をうかがいたい。

【有識者】
 総務省による制度の変更に対し、大幅な改訂を予期しつつ、とりあえずは今までのやり方を踏襲するということで了解した。自分からは3点コメントを述べたい。
 1つは、アジリティに満ちた新しい評価の仕方に関し、外部から見ると無謬性神話に対する批判の声もある。これまでの評価はb評定で可もなく不可もなく、恙なく行われたというところに落ち着き、隔靴掻痒の思いを感じることが多い。外務省自身が評価される際、疑問に思う事業に対してはきちんとc評定がつく評価ができるような文化や体制が大事。ある課がc評定にあたる自己評価をしても、その担当官等の課内の評価に響かないようにすることが重要。評価に際しては、外部から見ても同じ結果となるように関係者の意見を擦り合わせていくのが本当の評価なのではないかと感じる。妙案がある訳ではないが、評価に際して恙なき結論で終わるのではなく、無謬性神話を克服するようなもう少し柔軟な方法を考えていく必要がある。
 2つめは、自分も長年AGメンバーを務めているが、これまで問題を指摘すると改善されたことが幾つかあった。例えば、領事サービスにつき、昔は研修を受講した職員の満足度調査結果が指標になっていたが、むしろ領事サービスの対象者の満足度を指標とすべきと伝えたところ、その指摘を取り入れてもらえた。他方、国際機関に対する拠出の在り方につき、拠出の効果測定は難しい問題であり、その観点で過去幾つか指摘をしたが、数年前に分担金・拠出金が政策評価の対象から外れてしまった。かつて毎年3つほど分担金・拠出金を選んでサンプリング方式にて評価を行っていた時と比べ、国際機関に対する拠出の在り方が評価しにくくなった印象がある。この点で、先ほど、評価になじまない部局は評価から外すとの話があった。自分は、ここ数年国際情報統括官組織の対応について指摘してきたところ、今回のお話を伺うと、同局を評価の対象から外すのかのように聞こえる。問題を指摘すると評価から遠ざかっていくようだ。日本外交全体を相対的観点から評価したいと思うが、部分的な評価となる場合、全体的な評価しにくくなるではないか。
 3つめに、3年周期での政策評価が導入された際、1年あたりの評価対象施策が限定される反面、3年というタイムスパンの設定の中で展開や発展も見られるだろうと自分でも納得したつもりだった。他方、実際に評価書を見ると、中期目標を含めて3年間の評価の記述が貧弱で、3年周期にした意義が見えなくなっている。3年周期にした利点がわかるような評価の記述を根付かせられるのか、2年周期ではわからなかったところが見えてくるようになるのか等、引き続き注視していることを申し上げたい。

【外務省】
 貴重なご意見につき感謝。1点目に関し、判定は2段階で行っていることから、各課室のところでは個別の測定指標レベルにてaとかcとかの評価をつけているところもあるが、それを集計した施策レベルでの評価となると、A評価をつけるのは実際に難しいということが構造的にある。他方、ご指摘はご尤もで、大胆な評価、メリハリをつけていくという姿勢、問題意識は重要であると理解する。
 2点目について、分担金・拠出金については、現在、政策評価の枠内ではなく、国際機関評価として別立てですでに5回に亘って評価を実施している。その評価基準についても毎年改善し、精緻化を図っている。政策評価における評価対象を今後どうするか、一部の部局の施策を外すかについてはまだ全く決めておらず、これについては総務省の基本方針やガイドラインを見てからの話になるので、今後とも検討していきたい。
 3点目に関して、過去の議事録も確認し、中期目標をしっかり活用した評価についての先生の御指摘は認識している。その点は工夫していけるよう引き続き取り組んでいきたい。

【有識者】
 令和6年以降の外務省の政策評価の在り方については、当面、少なくとも総務省の方針が確定するまでは、現状のやり方を繰り返していくことについて賛成である。これまでの約20年間の積み重ねとしてある種のバランスが取られたものとなっており、これをスタートラインにするのは良い。今後、総務省のみならず、行革事務局側からの方針も明らかになり、行政事業レビューと政策評価の統合に向けた動きも進む中、難しい対応が求められるであろう。他方、外務省にとって役に立つ評価のやり方を今から再構築していくチャンスが来るのだという捉え方もできる。もし少しでも合理的に外務省の政策評価を動かしていけるのであれば、そのチャンスを最大限活かしていただければと考える。
 「アジャイル型政策形成・評価のあり方に関するワーキンググループ」の提言における無謬性神話からの脱却につき、抽象度の高い話であるが、否定されるべきものとして5点が挙げられている。すなわち、解決すべきことを解決しない、第三者の声に耳を傾けない、縦割りの現状維持をする、社会の変革に対応しない、データの活用に前向きになれない、という5点である。これら5点をやらないことが大事。外交政策は、相手のある状況での交渉・調整を中核とし、現場に合わせた柔軟な変化が求められるものであり、このような問題点はあまり想定されない、または部分的に留意すれば十分である。他の政策分野では、中長期的に安定した一つの目的について役割分担が固定化し、縦割りの状況となって外部環境の変化に対応できないものがある。外交はそういうタイプの政策とは異なるので、同問題に過度にとらわれる必要はない。それよりも注意すべきことは、外務省がいろんな努力をしていることをわかりやすく、伝わりやすくするということ。また、古くから言われていることであるが、戦略的外交を進めていくこと。最近、ODAを外交の目的に使っていくという話が新しく出てきている。外交とODAとの間の壁をどう取り除いていくのか、外交のためにどう活用するのかが問われている。この点で、強い溝があったり、縦割りが強そうなところで連携していくべきところについて特に注視していく必要がある。
 中・長期的な話ではあるが、米国の政策評価法(GPRAMA)の枠組みの下で策定されている国務省とUSAIDの合同戦略計画(Joint Strategic Plan)は比較的わかりやすくよく整理されており、参考になるのではないか。これは、5つの戦略目標、19の戦略目的を整理し、それらをパワーアップ、ステージアップさせていくというもの。総務省の新しい方針やEBPMが取り入れられてきたことで、日本の環境がかなりアメリカの状況に近づいてきたように見受けられるため、紹介させていただく。米国では、2010年に政策評価法現代化法(GPRAMA: Government Performance and Results Acts Modernization Acts)、2016年に援助等透明性とアカウンタビリティ法、プログラム・マネジメント推進アカウンタビリティ法、また、2018年にEBPM基盤法というデータの活用とかEBPMを推進するというタイプの法律が制定された。実はアジャイル型政策形成・評価とかデジタル時代にふさわしい政策形成・評価というのは、米国のこれらの制度と同じような方向性にある。日本も基礎的な部分がかなり米国の状況に似通ってきており、改革がなされた後、米国務省の評価のやり方などを参考にできるところが増えてくるのではないか。これについては、自分自身も今後勉強していきたいと思っており、今回はコメントにとどめたい。

【外務省】
 貴重なご考察に感謝。引き続き、エビデンスやデータに基づいた評価は外交の特性上容易ではないが、御指摘のとおり、今回の見直しを最大限チャンスとして活かすことは重要かと思われるので、今後も相談させていただきたい。

【有識者】
 これまでODA評価に参加してきた経験から申し上げれば、外務省は、政策評価もODA評価もやっており、他の省庁とは非常に異なっているとの印象。これからは各省庁が政策の特性にあわせた評価ができるようになるということであれば、政策評価を全体的・包括的に行う上で、エビデンス的なものはODA評価と連動させるのも一案。ODAはエビデンスの宝庫のような印象であり、政策評価とODA評価を連動する、地域別外交の評価においてもそれに即したようなODA評価を行う等、工夫することが有益と考える。
 また、令和5年は日本の安保理非常任理事国就任、SDGsの中間年、国際協力大綱の改定、G7サミット等、多くの外交案件がある。他方で、令和6年以降の新たな評価制度の下、外交案件が盛りだくさんだった令和5年を顧みずに新たに評価を行うというのは少々違和感がある。令和5年度の外交案件による影響等について令和6年の新たな制度の下でどのように評価するかは、令和5年の時から用意していかなければ間に合わないであろう。
 さらに、他国は、日本の評価のやり方に関心を持っていることは確か。日本が法律を定めて政策評価を行っていることについて学びたいと考えているので、評価を通じた外交、評価外交というものもトピックとしてあげていくのも良いのではないかと思われる。

【外務省】
 貴重な御意見に感謝、ODA評価との連携はこれまでも考えてきたところであるが、ODA関係部局ともいろいろ相談しつつ対応していきたい。また、令和5年における様々な外交上の重要な活動についてもしっかり踏まえ得た上で6年度以降の評価を行っていきたいと思う。

【有識者】
 政策評価制度見直しの方向性につき、必要性、有効性、効率性のうち、特に有効性の観点を重視するとのことである。世界の先進国では、経済協力開発機構開発援助委員会(OECD―DAC)が定めた「関連性、一貫性、有効性、効率性、影響、持続可能性」という6つの指標を用いながら評価を行うのが最近の趨勢となっている。外交においては、SDGsとの関連で「持続可能性」は非常に重要。また「影響」も効果検証に関わるもの。6年度以降はこれらの観点も十分考慮していく必要があるだろう。
 「政策の特性に応じた効果検証に応じた評価枠組みの導入」は大賛成である。一律にOECD-DACの6基準を全て網羅的に当てはめるのではなく、政策目標・目的との関連によって、また行動変容を促すための介入の在り方によって、どの評価基準に焦点を当てるかを変えていくべき。どういう目的で評価をするのか、どこに焦点を当てて評価するのか等も含めて考える必要がある。
 デジタル技術を評価にどう活かすかというのは、欧州の評価コミュニティにおいても重要なテーマになっている。評価においてAI、ビックデータ、ディープラーニングの結果等を使うという手法もある中、情報に含まれるフェイクニュースをどう排除するかという問題もあり、正しい情報の中でAIを活用していくことも必要となる。評価におけるデジタル化の方法論やその解釈、また、その限界をどこに定めるかということまで考えて、デジタル評価というものを位置づけていかなければならない。AIが有効なツールであるのは確かである。
 データ評価における倫理のあり方については、各論レベルまで落とし込んでデジタル化対応の議論をしていかなければならない。データ社会、特にデジタル経済社会において国益を増進していくためにどのような使い方ができるのかといったところまで戦略的に考え、日本としての戦略的自律性のあるデジタル戦略を立てなければならない。昨年12月に防衛3文書ができたわけであるから、外務省としても、国家外交戦略、外交力整備計画といったような3文書を考えることも望ましいのではないか。

【外務省】
 興味深い御指摘をいただき感謝。デジタル化を評価にどう活用していくか、データの活用等については、これから総務省も然るべく各府省を支援していくとのことなので、引き続き連携をとりながら取り組んで行きたい。
 今回も先生方の貴重な御意見を賜り感謝。今後、外務省としても、試行錯誤をしつつ、新たな制度の在り方の検討に入っていくわけであるが、ぜひ今後とも先生方から御指導いただきながら検討を進めていきたいと思うのでよろしくお願いする。

【有識者】
 追加で2点申し上げる。平成13年に政策評価制度が最初に各府省に導入された際、平成14年度の実施施策にかかる評価書が平成15年度に公表された。この例に鑑みれば、令和6年に制度を変更する場合、令和7年度に実施した政策を令和8年度に新しい様式に沿って評価することもあり得る。新制度の下での報告書の作成はもっと後の話になる可能性もある。今後のタイムスケジュールは制度の改革の範囲と規模との見合いで検討することになるのではないか。
 また、直前の有識者のご指摘に関連し、例えば、自律型致死兵器システム(LAWS)はごく最近の新しい動きであるが、これは日本としてもAI技術の軍事利用等との関係で議論していかなければならない段階にある。外交努力によって専ら議論していかなければならないものとして伸びしろのある話であり、しっかりモニターや情報開示をし、正に評価を通じてレビューしていく価値のあるものである。ほかにも科学技術外交や感染症対策に関わる出入国管理等、今後モニターが必要となるような新しい動きもいくつかある。それらは、伝統的な外交とは異質なものであるため、評価の対象として見せる価値があり得る。

【外務省】
 本日は、長時間にわたり貴重な御意見・御指摘をいただき感謝申し上げる。
 国際社会が岐路に立ち、政策評価の在り方も変わっていく中、評価のための評価ではなく、我々の立場から実務に活かされる役立つ評価を行うことが重要と考える。防衛力が伸びていく中で、外交も車の両輪として強化していく必要がある。限られた資源を有効に活用するためにも、政策評価を活用して外交力が強化されるよう評価の在り方を検討しなければならないと改めて認識した。
 本日の議論において、先生方から、無謬性神話に関する考え方、評価対象の設定の在り方、評価作業のタイムスケジュール管理などに関する貴重な御意見を伺った。今後とも先生方からいろいろ御指導いただきながら外交力の強化に資する政策評価について検討して参りたく、引き続き御指導・御助言を賜りたい。


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