政策評価

令和4年8月10日

1 日時

 令和4年6月24日(金曜日)14時30分~16時00分

2 場所

 対面・オンラインのハイブリッド会議

3 出席者

(有識者)(五十音順)
石田 洋子 広島大学IDEC国際連携機構 教授
遠藤 乾 東京大学大学院法学政治学研究科 教授
神保 謙 慶應義塾大学総合政策学部 教授
南島 和久 龍谷大学政策学部 教授
福田 耕治 早稲田大学政治経済学術院 教授
山田 治徳 早稲田大学政治経済学術院 教授
(外務省)
三宅 大臣官房総務課長
川口 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
西野 大臣官房ODA評価室長
中西 総合外交政策局総務課首席事務官
鴨川 総合外交政策局政策企画室首席事務官
和田 大臣官房会計課課長補佐
ほか

4 議題

  • (1)令和4年度外務省政策評価書について
  • (2)政策評価をめぐる最近の動き
  • (3)行政事業レビュー

5 発言内容

【外務省】
 本日は第36回外務省政策評価アドバイザリー・グループ会合に御出席いただき、感謝申し上げる。開会に先だって、このたび、石田広島大学IDEC国際連携機構教育開発国際協力研究センター教授が、当省政策評価アドバイザリー・グループメンバーに就任されたことを御報告する。

【外務省】
 本日はお忙しい中御出席いただき感謝申し上げる。私にとって初めてとなるが、久しぶりに本会合を対面開催できたことを大変喜ばしく思う。
 冒頭、報告があったように、石田教授が当省政策評価アドバイザリー・グループメンバーに就任されたことに感謝申し上げる。同教授は、これまで当省ODA評価においてご協力いただいた。今後は当省の政策評価へのお力添えもよろしくお願い申し上げる。
 本年2月のロシアによるウクライナ侵略のほか、一昨年からの新型コロナのワクチン問題等、様々な外交課題が幅広く山積する中、外交実施体制を強化するとともに、限られたリソースを効果的・効率的に活用し、より力強い外交を推進する必要がある。その観点から、政策評価を通じて効果を測定し、向上を図るサイクルが一層重要になっている。
 先生方におかれては、予めお送りした政策評価書案について貴重なご意見を書面で頂き、感謝申し上げる。頂いたご意見及び本日の会合における議論を踏まえて、評価の質をさらに高めるとともに、外交政策の一層の推進に努めてまいりたい。
 政府全体の政策評価については、昨年3月の政策評価審議会提言を踏まえ、同審議会において具体的改善策が議論されてきたが、その結果、先月末に「デジタル時代にふさわしい政策形成・評価の在り方に関する提言」が公表された。本日の会合にて、同提言の内容についても簡単にご説明するが、当省として、同提言を踏まえた今後の動向等も留意しつつ、来年度以降の政策評価のあり方を検討する必要があるところ、お気づきの点があればお聞かせいただきたい。限られた時間ではあるが、有意義な議論ができることを期待しており、忌憚のない御意見・御助言を賜りたい。

(1)令和4年度外務省政策評価書について

【外務省】
 まず、令和4年度の当省政策評価書についての概要を説明させていただく。外務省の政策評価体系は、現在、6つの基本目標の下の16の施策で構成されている。
 令和4年度からは3年周期の評価を導入し、全施策を3グループに分け、3年に一度、過去3年分の実績を評価することとした。これに基づき、令和4年度は、「基本目標III:広報、文化交流及び報道対策」、「基本目標IV:領事政策」及び「基本目標V:外交実施体制の整備・強化」の4施策の評価を実施し、とりまとめた評価書を事前に先生方に送付させていただいた。3年周期導入の過渡期として、基本目標IIIは前回評価後の1年間、基本目標IV及びVは前回評価後の2年間の実績を評価した。それぞれ評価期間が異なるも、昨年同様、評価期間を総合的に評価した。
 次に、施策の評定については、全4施策が「相当程度進展あり」(いわゆる「B」評価)となった。測定指標レベルでは4施策分、計38指標があるが、評定の内訳は、「a」6指標、「b」31指標、「c」1指標となった。具体的には、「a」は施策IIIの4指標及び施策Vの2指標、「c」は施策IVの1指標という分布になった。なお、「c」評定の指標「出入国管理上問題がないと見られる外国人へのビザ発給要件緩和」については、背景としてコロナ禍で訪日外国人数が激減し、目標の前提条件が変わってしまったという事情がある。
 お忙しい中、先生方から事前に多くの御意見・コメントを頂き、感謝。まず、事前提出頂いた内容も含め、先生方から御所見を賜りたい。

【有識者】
 全体として適切な評価がなされていると考える。
 内外広報・文化交流・報道対策に関し、PDCAサイクルを回してプロセス管理を行おうとする積極性を評価する。他方で抽象的な記述が多い。予算や人的資源など投入される行財政資源を数量的に捕捉した上で、インプットからアウトプット、アウトカムへと量的側面から質的側面まで、アカウンタビリティの推移モデルなどを参考に、政策の有効性をプログラム・レベルの視点で具体的に示すことができれば、より良い評価に繋がると考える。
 領事業務に関し、在外公館の領事サービスの向上・改善について、インターネットでのアンケート結果において肯定的評価が高い割合に達しているが、質的評価も加えるとより蓋然性の高い評価になると考える。また、領事業務ではデジタル・ガバメント計画の下、旅券申請手続等のオンライン化など、DX (デジタル・トランスフォーメーション)推進に向けた積極的な変革が目指されている。その際は、RPA(Robotic Process Automation)を活用してルーティーンワークの自動化を進めるのが良い。旅券発給プロセスはある程度パターンが決まっているため、顔認証システムなど複数認証によるRPA活用の余地は大きい。
 外交実施体制の整備・強化に関しては、外務省全体のDXとの関係で、機構・人員上の課題をクラウド活用により解決したり、人員の適正配分を通じて生産性を上げることもできる。また、在外公館の警備体制の強化では、サイバー及びフィジカルの両面を相互に連携させてセキュリティーを強化させることができる。情報防護体制の強化もサイバーセキュリティの確保などDXの活用に関わる。地方連携の推進についても、政府のデジタル田園都市国家構想との連携が期待される。このように、マルチ・ディメンショナルな形で、外務省全体としてDXの段階的・計画的実装にあたることで、より良い評価に繋がると考える。
 外交情報通信基盤の整備・拡充に関しては、アナログ情報をデジタル化するのみでなく、デジタル情報の活用が課題。ネットワークとセキュリティを制度に組み込み、自動化すべきところは自動化し、人が判断すべきところは人が判断する形で外務省の業務の制度設計をすることで、外務省の情報基盤を強化できると考える。そのために、職員のIT研修・育成が必要と考える。欧州では、職員のサイバーセキュリティの教育・研修に力を入れている。
 複数の施策に関するコメントとしては、アナログ業務をデジタルに置き換えることに終わらず、データ・ドリブンな外交実施体制を検討いただきたい。人が判断すべきことは人が担い、ルーティーンワークはRPAを導入する等、先端的技術を活用しつつ、メリハリをつけることを提案する。

【有識者】
 ちょっと気になったことをお伝えすると、評価に慣れてきた乃至慣れきってきた印象を受ける。特にPDCAサイクルのCの部分でそう感じる。また、PDCAサイクルのAの部分につき、基本的に現状継続のコメントが多く、より良いものを目指す視点において物足りなさを感じる。
 とりわけ広報の面では、広報の成果に3つの階層性(awarenesspredispositionbehaviour)がある中で、目標の多くは最初の二つの段階に止まっており、いかに三つ目の段階(behaviour)に進めるかという観点が十分とは言えない。
 領事業務では、相応の取り組みがあり、一定の成果が達成されていることは分かるが、更なる高みを目指す創意工夫がもの足りない。在外公館は日々の業務に忙殺されているところ、全体的な観点から、本省において、他の公館においても参考となるようなベストプラクティス事例集をとりまとめて、ヨコ展開できるように職員の参照に供すると良い。
 外交情報通信基盤の整備・拡充に関しては、サイバー空間の技術は日進月歩で進化している。従来の対策に加え、レッドチーム・オペレーションなど海外の政府が実施しているより実践性の高い取り組みを検討いただきたい。

【有識者】
 今年は「凪」であり、昨年取り上げられた国際情報統括官組織や経済安全保障に関わる問題のように激しい議論を呼び起こす内容はなかったと思う。また、今回は3年周期の導入によるものか不明だが、全体的な量が減ったようにも感じるところ、来年に期待したい。
 今回取り上げられた施策のうち、外交実施体制の整備・強化に関しては、以前からお伝えしているとおり人員を増やす必要性があると感じており、この点での評価書の内容はそのとおりだと考える。
 領事業務に関し、かつては世界各地の領事が研修を受けた際に実施した内部の満足度調査が評価の指標とされていたが、近年はきちんと領事サービス利用者のアンケートが取られ、約8割から肯定的な回答が返ってくる等、改善されていると考える。
 内外広報・文化交流・報道対策に関し、「Discuss Japan(ディスカス・ジャパン)」という日本の政策論調を英語と中国語で世界に向けて発信するウェブ誌があるが、外務省の広報文化戦略課の取り組みの一端を担うにも拘わらず、評価書の中で取り上げられていないことは残念に感じる。また、ジャパンハウスを通じた海外広報につき、本事業が始まったばかりの頃は箱物事業として否定的な考えを有していたが、新型コロナにより往来が停止する中、こうして現地に張り出している所の取組がより重要になっており、今回の評価書の記述を見て認識が改まった。このほか、ユネスコについて不釣り合いなほど記述に力が入っていた。日本のイメージのせめぎあいの最前線にあって緊張もあったと推察する。自分で自分の足を撃たないように配慮しつつうまく対処していただきたい。

【外務省】
 今年は、3年周期導入の過渡期であるため、評価対象期間が過去1年又は2年間に限られたが、来年は地域別外交について過去3年間の実績を評価することになる。右ご理解賜りたい。

【有識者】
 内外広報・文化交流・報道対策に関し、オンライン対応などこれまでになかった取組で、顕著な実績があったものについてはもう少し高く評価してよい。外交講座をはじめとした国内への情報発信についても、世界情勢が不安定な中で情報の流通量を落とさない重要な取組であり、高く評価して良い。個別分野5で言及されているユネスコについても、第41回総会の執行委員国選挙で地域グループ内トップ当選し、下部機関選挙でも当選するなど、良い実績を挙げており、高く評価してよい。
 領事業務に関しては、警備対策官研修について、受講者アンケートでは約8割の人が有意義と回答している中で一部に「講義内容が受講者向けではない」旨のコメントがあったとのことだが、こうした一部の人からの回答をもって「内容を精査する」必要があるだろうか。日本の旅券についてシンガポールと同率で111の旅券の中で1位になったことは顕著な実績である。また、昨年の衆議院議員総選挙において、戦後最短の準備期間で在外投票者数が約2万人という結果であったことは、十分な実績といえる。また、「測定指標3-1」が「c」評価となったことについては、理由の明記が必要と考える。
 外交実施体制の整備・強化に関しては、測定指標2について「施策IV-1 領事業務の充実」との間で記述の重複があるため整理が必要。また、外交情報通信基盤の整備・拡充に関しては、令和3年度ワークライフバランス職場表彰内閣人事局長賞を受賞された点はとくに顕著な成果であると考える。
 全体を通したコメントとしては、全体的に読みやすい記述になっていると思われる。過去3年間の評価周期とした点は、3年間を一括して評価してよいという趣旨との認識だが、年ごとに実績を評価すると重複する記述も増え、かえって負担になると考える。
 新たに出た政策評価審議会答申では、行政事業レビューと目標管理型実績評価の一体化が謳われている。今後は他の省庁も行政事業レビューと政策評価の取り回しを見直す局面に入ってくる。評価が前例踏襲になっているのではとの指摘もあったが、外務省として今後政策評価の在り方をどのように変えていくのかを検討する良いタイミングと考える。

【外務省】
 評価書の記述重複に関するご指摘は、例えば評価期間2年分の実績を年度毎に分けて記載するのではなく、2年分まとめて一括して記述すべきとのご趣旨、拝聴した。

【有識者】
 三番目にご発言された有識者と似通った感想である、今年は強い意識をもって申し上げたいと思う点がさほどなかった。
 内外広報・文化交流・報道対策に関しては、外務省の累次の取組の結果、SNSアカウント数もこの数年で飛躍的にのびた。役所という堅い組織の中でも、南アジア子やODAマンなど、何人かの優れた発信を行う個人を認めていることは良い。失敗をするリスクもあるが、発信で得られる効果は大きい。才能ある外交官個人を年齢問わずのばしてもらいたい。石井駐インドネシア大使のインスタグラムは、今日のランチを紹介するだけの内容でも人気を博し、日本への親近感を高めることに繋がった。他方、あえて申し上げるなら、外務省はSNS発信の戦略が不十分と考える。例えば、ブリンケン米国務長官をはじめG7各国は外相名義のアカウントを持っているが、林外務大臣の個人アカウントでは、ここ数日は選挙の話題ばかりで、若干違和感がある。外務大臣として24時間職責を果たすために緊張感をもってアカウントを運営すべきではないか。また、外務報道官及び国際報道官がアカウントを持っていないことも気になる。正に発信の最前線であり、記者会見などを開かなくとも、多くの者がリアルタイムに情報を得るならばここだと考えるであろう場所にアカウントが設置されていないことで良いのか。ウクライナ危機を見ても、情報戦の最前線は完全にSNSに移行した。我々が戦うべき相手が例えば200万フォロワーで、我々が千フォロワーの時の情報発信力は全く勝負にならない。公式アカウントのうち、個人に頼る部分もあるにしろ、職種に該当する部分の配信のパワーを蓄積し、日本外交の発信のインフラとして整備することが重要。少なくとも数十万のフォロワーを外務省の公式アカウントとして獲得し、誰がそのポストにいても活用できることを目指さなければ、いざ思想戦や情報戦が日本にとり望ましくない形で始まると、初手から負けてしまうことになる。中長期的戦略を持ち、個人を伸ばすと共に、組織としての発信力を伸ばすべきであり、この点をより本格的に考えていくべき。
 領事業務に関し、コロナ禍で不安を抱えた在外邦人への臨機応変の対応が必要だったと思われる中、世界各国の在外公館での領事サービスアンケートで約8割の回答者が「満足」「やや満足」と肯定的だったことは高く評価できる。
 外交実施体制の整備・強化に関し、定員の増員は毎年出てくる話であるが、本件は中長期計画をたてる時期にきていると思う。これだけ新興国の国際社会での発言力が高まり、2035年や40年にはG20など権力の分散の形が変わることが間違いない中で、必要とされる外交官の資質や専門性をどのように育てるのかという長期的な態勢と合わせて、定員や機構の拡充の必要性を説明すれば、国民の理解も進むだろう。
 外交情報通信基盤の整備・拡充については、サイバーセキュリティを取り巻く環境は少しでも気を抜くとすぐに悪化する。新しいマルウェアが次々に生まれているので、それにアップデートした形で職員の意識を喚起していただきたい。eラーニングをテスト形式で行い、期限を切って合格を義務づけると、セキュリティ強化を証明する施策になるだろう。また、テレワークを含むワークライフバランスのための取組においては、秘匿性のある文書や電報の取扱いなど難しい問題があったと思うが、そうした点も管理可能な形でうまく対応できたのは良かったと思う。ただオンライン会議設備に関し、大臣等の幹部クラスでは良質なマイクやカメラを用いて完全なセッティングが準備されているが、全体的に省庁のオンライン設備のレベルは低い。様々なオンライン会議が昼夜問わず行われるようになっている中、オンライン設備により投資し課室員を含めレベルを問わずにオンラインでも声や表情も含めて良質なパフォーマンスができる環境を整備することが重要と考える。

【有識者】
 専門が評価学であるところ、評価書を評価の視点から拝見しコメントした。今回の評価対象施策は広報文化、領事、大臣官房と外務省業務全体に関わるものであるが、具体的なデータを並べ真摯に評価に対応されていると感じた。一方で、記述が多い中で、施策全体についてどのように評価するかが見えにくい。例えば、施策III-1「内外広報・文化交流・報道対策」の施策目標では前段の文章に「以下を戦略的、有機的、かつ統一的に推進する。」と記載するが、その部分が評価として表れていない。そこが書かれていると個別分野のそれぞれの評価内容が生きてくるのではないか。
 施策の評価につき、現在は各測定指標においてb評定がたくさんあるから、施策全体がB評定になるとのプロセスになっているが、目標にも優先度・重要度等の違いがあり、その中でもここがうまく行ったり、行かなかったりしたため、全体評価がBとなったとの理由が示された方が将来的な学びが得やすいだろう。ただプロセスが決まっているのであれば仕方がないのかも知れない。また、全体的にb評定が多く、中にはa評定でも問題ないと思うものも結構ある。特にコロナ禍の状況で種々の工夫が為され、グッドプラクティスに近い実績を残しており、あまり課題があると思われない測定指標でもb評価とされているものもある。もっと胸を張ってaとして良いと思うし、もしbとする場合はaとするには足りなかった点も示すことが次の学びにもつながる。
 個々の測定指標の評定に加え、施策全体として評価する一言が欲しい。個別の測定指標についても実績を具体的に記載する一方で、「次期目標等への反映の方向性」がどれも網羅的で抽象的な書き方となっているので、まとめの文章においてもパンチのある記述ができないだろうか。また、アンケート調査を種々行っているが、その結果について世代やジェンダーで分けて分析することによって、ホームページの内容やアクセスの方法などの改善につながるところ、そうした分析が行われていることが少しでも示されると評価書の読み手は納得感が得られるだろう。また、今回評価の対象となった2年間は新型コロナ及びオリンピックもあり、広報においては特殊な2年間であったと思うが、この2年の学びがいかに次に活かされるかに関心がある。

【外務省】
 当省の政策評価体系については先にご説明したとおりだが、6つの基本目標の下に部局単位で施策が置かれ、施策の下に課室単位で個別分野が置かれ、個別分野の下に測定指標が設けられている中で、政府各府省庁共通5区分に応じた目標達成度合いの判定基準及び手順に従い、測定指標ごとに主管課室が達成状況を評価し、さらに各部局のとりまとめ課が施策全体の評価を行っている。
 外交政策の特殊性はご理解のとおりで、定量指標になじまない、中長期的に判断する必要のある施策が多いという側面がある。その中で可能な範囲で数値化できるものは定量指標を設けるとともに、測定指標の判定基準には定量的指標の判定基準に加え定性的指標の判定基準も設けている。また、施策全体については、2段階の判定基準を設けて、政府各府省庁共通5区分に応じた評定をしている。
 例年、政府全体として当省でいう「B」評価、すなわち政府各府省庁共通5区分でいう「相当程度進展あり」が6割程度、「A」評価、すなわち「目標達成」が3割程度を占めている。
 いずれにしても頂いたコメントについては、評価制度全体の見直しの中で検討していきたい。
 改めて、先生方の貴重な御意見に感謝。今回の会合で頂いた先生方の御所見を考査・政策評価室でとりまとめ、関係部局とも調整の上、評価書への必要な加筆修正を行う方向で調整させて頂きたいと考えるところ、改めてご連絡したい。

【外務省】
 先生方の貴重な御意見に感謝。全体的には応援のメッセージを頂いたと理解している。複数の方から実施体制の強化につきご指摘いただいたが、官房総務課の軸となる業務。外交課題山積の中、いかに実施体制を拡充するかは大きな課題であり、外交の要諦は人であるということを基本として、DXの取組を進めている。人にしかできない外交業務を精査し、人員の適正配置をしつつ、ルーティーン業務や情報収集でAI等の効果的活用方法を検討したい。そのためにDXを進め、人のトランスフォームを図り、実施体制を強化したい。
 定員の増員に関する中長期的な計画の必要性についてもご指摘のとおりである。外務省の定員については、今まで6,500人という水準を目標としており、今回これがようやく達成された。この6,500人という目標は、英国等の水準をもとに定めたものだが、現在、英国や仏等は8,000~9,000人の水準に至っている。そのため、次は8,000人程の水準を目指すことが考えられる。一方で、将来的に必要になる人材を考えた上で逆算してどの程度の人員が必要というところまで詳細な見取図があるというわけではない。また社会が流動的であるため、そのとおりにいかないこともある。いずれにせよ頂いたコメントを活かし、より強力な外交を推進していく体制にしたい。
 広報についてのご指摘にも感謝する。広報活動のみが広報なのではなく、外務省の活動一つ一つが広報の要素を含んでいると理解している。情報戦において偽情報が飛び交う等複雑になる中で、いかに効果的な発信をするかは一層大きな課題。これは今回のウクライナ危機で顕著になった大きな政策課題と認識しており、今後しっかりと取り組みたい。
 多くのコメントを頂いたこと、改めて感謝申し上げる。

(2)政策評価をめぐる最近の動き

【外務省】
 5月に政策評価審議会の「デジタル時代にふさわしい政策形成・評価の在り方に関する提言」が公表された。これは、デジタル化など社会経済が急速に変化し、複雑化・困難化する課題等にスピーディーかつ的確に対応するため、柔軟かつ機動的に政策の見直しができるようにすることを目指すもの。これまで政策を立案及び決定し、モニタリング・検証・改善してきたが、この一連のプロセス自体を「政策評価」と捉えて、その過程で用いられた資料を評価書の一部と見なすとする発想の転換をしようとしている。
 本提言を踏まえ、総務省にて、具体的な指針の検討、既存の制度との調整、ガイドラインの策定等がなされると承知。また、総務省において今後、各府省の実態や考えをヒアリングしつつ評価制度改革の方向性、すなわち、(1)EBPMの実践が進むよう各府省の取組を支援、(2)EBPMを実践する人材育成など評価の環境整備を推進、(3)評価の実施の考え方を整理、に基づき検討されると承知。
 本提言を踏まえ、今後出されるであろう具体的な指針を待って、今後の当省の政策評価のあり方について検討していきたいと考える。他方、中長期的な国益の観点に多分に立脚する外交政策の特性から、中長期の実績に基づく評価がなじみやすいと考えられる側面もあることから、当省の政策の特性に合わせ、可能な範囲で、柔軟に検討・対応することが大切と考える。また、総務省は年内に基本方針やガイドライン等の改定を行う考えと承知しているが、例年、当省では秋から次年度政策評価に関する検討・方針決定を行っており、年内には基本方針・実施要領等を策定するところ、総務省が行う基本方針やガイドライン等の改定のタイミングによっては、当省令和5年度政策評価実施スケジュールとの関係で、十分な検討期間がとれない虞もある。いずれにしても、当省に適した政策評価の在り方を模索したいと考えているところ、先生方とも連携させていただきながら進めていきたい。

【有識者】
 総務省にて今後の政策評価の在り方について年末までに方針を出すと承知している。外務省にとっては、外交政策あっての評価であり、評価のために外交政策が不安定になったり、業務の混乱があってはならない。EBPMの大きな趣旨は合理性を高め、効率的・効果的な行政を実現させることにある。もし政策評価の制度の変更が短兵急に行われることになれば、外務省としては少し時間をいただきたいと総務省に伝えてはどうか。本務に支障がなく、合理的に政策を取り進めることが出来る形で対応することが重要。それがEBPMの趣旨である。
 例えば、行政事業レビューの対象事業は政策評価を割愛する、又は行政事業レビューをもって政策評価を代替する方法があるが現在の基本計画期間においては、これまでの政策評価を継続し、その間に新しい政策評価のあり方を検討し、切り替えを図ることも一案と考える。

【外務省】
 大変心強い御意見に感謝申し上げる。

【有識者】
 今年度は3年周期導入の移行期であるため、評価対象施策について1~2年分の実績しか記述がないが、来年度の評価ではどうなるか。3年周期導入に当たっては、中期的な軸で評価するため、中期目標の記述を拡充するようにしたと記憶している。仮に来年度の評価において評価対象期間が1~2年になるのであれば以前の評価と重なったとしても、3年分をまとめて一括して記述してもらうのが良いのではないか。

【外務省】
 来年度の地域別外交施策の評価では、前回から十分期間をとっているので3年分の記述・評価が可能となる。また、次の分野別外交施策の評価に関しても、同様に3年分の記述・評価ができると考える。評価書の記述に関しては、可能な範囲で合理化していきたい。

(3)行政事業レビュー

【外務省】
 本年6月1日に、行政事業レビュー春の公開プロセスをオンライン形式で実施し、例年どおり、一般経費政策案件、ODA案件、拠出金案件からそれぞれ1つずつ計3件が取り上げられた。いずれの非常に関しても、内容の一部改善というかたちで評価頂き、非常に有意義な御提言を頂いたところ、示唆に富む有意義な議論になったと考えている。以下、3案件についてそれぞれ概要を説明する。
 内外発信のための多層的ネットワーク構築に関して、本事業は一般行政経費として事業規模が大きく、政策の優先度が高いこと、また、過去2年はコロナ禍のため招へい事業を十分実施することはできなかったが、今後事業を本格的に再開させていくにあたり、公開点検を通じて外部有識者の御助言を得ることは有意義と考え選定した。有識者からは、事業の意義を強調するコメントをいただいた。その上で、(1)被招聘者は有識者、報道関係者、政治関係者などが中心だが、社会的インフルエンサーは必ずしもいわゆるエリートとは限らず、その点を考慮した対策を考えるべき、(2)これまでとは異なる柔軟な発想を持つ若い専門家などを交えての取組が必要等、多くのご意見を頂いた。さらに、アウトカムの検証方法については、どの程度の規模の人々にどの程度届いているのか、試行錯誤しながら、測定していく必要性等につき指摘いただいた。
 国際協力機構運営費交付金のうち開発教育支援事業に関しては、国民等の国際協力への理解と参加を促し、国内の多様な担い手の裾野拡大と国際協力の拡充を目指すJICA事業。より効果を高めるための助言を得るべく、公開点検を行うことは有意義であると考え、選定した。有識者からは、事業目的の意義について理解が示されるとともに、(1)日本に在住する途上国出身者による出前授業の促進、(2)オンラインと対面を組み合わせたハイブリッド方式を積極的に取り入れること、(3)社会に出る直前にある大学生に対する働きかけ等、改善案を提案いただいた。
 UN Women拠出金に関しては、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに取り組む国連機関であるUN Womenへの拠出金であり、令和3年度の当初予算と比べ、令和4年度の当初予算が約1億円増額され、政策の優先度が高いことから選定した。有識者からは、事業の重要性について理解が示され、活動をより積極的かつ継続的にアピールしていく必要性についてご意見をいただいた。また、今後の事業の方向性について、(1)日本事務所の活動内容をもう少し具体的に把握しておいた方が良い、(2)日本のジェンダー平等の達成度についての国際評価が現状極めて低いこととの関係で、内閣府など他省庁も巻き込んで、どのように有機的に連携して、日本の評価を高めるかという観点からも、事業の進め方について工夫を加えることが望ましい、(3)国内のジェンダー政策と本拠出との連携を強化する必要がある等、有益な指摘をいただいた。
 このように、事業の改善点を外部の目からご指摘頂けるのは有り難いと考えており、今回頂いた御提言を今後の事業実施に反映させつつ、引き続き予算への反映につなげていきたいと考えている。

【外務省】
 本日はお忙しい中、会合に御出席いただき、たくさんのご示唆に富んだコメントを頂き、感謝申し上げる。頂いたコメントを今後に活かしていきたいと考えているところ、先生方におかれては、引き続きご指導・アドバイス等をよろしくお願い申し上げるとともに、改めて、感謝申し上げる。


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