政策評価
外務省政策評価アドバイザリー・グループ第32回会合議事録
1 日時
令和2年1月10日(金曜日) 14時30分~16時00分
2 場所
外務省 南272号室
3 出席者
- (有識者)(五十音順)
- 秋月 謙吾 京都大学大学院法学研究科 教授
- 遠藤 乾 北海道大学大学院公共政策学連携研究部 教授
- 南島 和久 新潟大学法学部 教授
- 山田 治徳 早稲田大学政治経済学術院 教授
- (外務省)
- 和田 大臣官房総務課長
- 本田 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
- 宮森 大臣官房ODA評価室上席専門官
- 園田 大臣官房会計課企画官兼首席事務官
- 高尾 総合外交政策局総務課首席事務官
- 後藤 総合外交政策局政策企画室首席事務官
- ほか
4 議題
- (1)令和2年度外務省政策評価(実施計画案等)
- (2)行政事業レビュー
- (3)その他
5 発言内容
【外務省】
本日は,お忙しい中,お集まりいただき感謝。
昨年は,御承知のとおり,6月にG20大阪サミット,8月にTICAD7,11月にG20愛知・名古屋外相会合等,大型外交行事が国内で開催された。また,10月の即位の礼に当たっては200内外の国・機関から元首や首脳が来日した。令和2年度の政策評価では,こうした行事を通じた外交上の成果も踏まえて,地域局の政策を中心にして施策の評価を実施する予定である。
外務省では,本年度から3年周期の評価サイクルを試験的に導入した。本年度については,全施策のモニタリング,実績の測定を実施したため,令和2年度が,初めて3年間,具体的には平成29,30及び令和元年度の実績についての評価を実施することになる。
本日は,有識者の先生の皆様方には,令和2年度政策評価の実施にあたり,実施計画,実施要領としての判定基準及びフォーマットについて御議論いただきたい。特に,評価に当たっての判定基準については前回会合で御説明させていただいたが,これまでの判定基準を踏まえながらも,3年というまとまった期間を捉えて判定する形に改定したので,その方向性を御確認いただきたい。
また,基本目標のうち分担金・拠出金の施策について前回会合で当方の考えを説明させていただいたが,個々の分担金・拠出金の担当部局が所掌する他の施策に含めて評価を行うことを,令和3年度の政策評価から実施する点も御説明する。
平成14年の政策評価法施行の後,その都度,評価方法を見直し,試行錯誤しながら政策評価を実施してきた。質の高い,メリハリのある効果的な政策評価の実施を目指したいと考えている。本日は,忌憚のない御意見・御助言を頂ければ幸いである。
(1)令和2年度外務省政策評価(実施計画案等)
【外務省】
本日の議題は,議事次第のとおり,まず,令和2年度外務省政策評価の実施計画案等について御議論いただき,二つ目に,行政事業レビューについてお話し申し上げる。
最初の議題,実施計画案等について。評価の対象施策は,基本目標I「地域別外交」の6施策,基本目標IV「領事政策」の1施策,基本目標V「外交実施体制の整備・強化」の2施策,そして,基本目標VII「分担金・拠出金」の3施策,の合計12施策について,令和2年度は評価を行う。外務省の政策評価体系全部19施策のうち残りの7施策についてはモニタリングを実施する。
評価サイクルについては,従来2年周期であったところ,本年度から3年周期を試験的に導入しているが,この試験導入は,前回会合,前々回会合においても御説明したとおり,国民への説明責任及び政策への活用の観点から,より簡潔でわかりやすい評価書にしていくと共に,業務合理化を図る観点も踏まえた試行として行っているものである。今後,令和2年度分の評価実施状況を踏まえた上で,特段の支障等が生じない限り,3年周期を本格的に導入していきたいと考えている。
次に,実施計画の関連で申し上げると,分担金・拠出金の3施策の扱いであるが,現在,基本計画VII 「分担金・拠出金」の3施策については,これまでサンプリングという形で評価してきたが,このサンプリングの評価と国際機関評価とが重複するということもあり,令和3年度政策評価からは,各分担金・拠出金が直接関連する他の施策,具体的には,施策の基本目標IからVIにぶら下がっている各施策の一環として評価を実施し,政策評価体系の中で,今,基本目標VIIとしているものを,基本目標,施策として位置づけない,という形に変えることを考えている。外務省の現行の政策評価体系は基本目標IからVIIまでで構成されており,この中で,基本目標IからVIの各施策については,各部局と1対1対応の関係になっている一方で,VII「分担金・拠出金」の下の3施策の一つ一つについては単独で主管する部局はない。令和元年度の外務省当初予算でいうと,分担金・拠出金で1,273億円が計上されており,事務事業の数も約150件となっている。中身は様々であり,様々な部局の主管するものの集合体になっている。現状ではこの基本目標VIIについては毎回各施策から1件ずつ抽出してサンプリング評価をしている。こういった分担金・拠出金は,各部局がそれぞれの施策,具体的には基本目標のIからVIの中にある各施策を実施していく上での重要なツールとなっているということ,各分担金・拠出金の担当部局が所掌する施策の中にこれを含めていく方が,各施策の評価をしていく上ではより適切ではなかろうか,というような問題意識から,令和3年度から各分担金・拠出金に関連する他の施策の中に含めて政策評価を実施していくことを考えている。
我々としては,このようにすることが,説明責任,透明性を向上させていく上で効果的,有効であろうと考えている。これを令和3年度から実施したく,そのためには令和2年度の事前分析表の段階からその準備に取りかかりたいと考えている。
引き続きフォーマットについて。先生方に,次回のAG会合に際して,仮評価をセットした段階で御覧いただくものとして,3年分をまとめて評価し見ていくということになるので,従来,例えば平成29,30年度と,二つあった実績欄のところに,更にもう1年度分加わるような形に変更する。
次に,目標の達成度合いの判定基準,手順だが,従来は2年度分だったので,各年度について,例えば,1年度目はa,2年度目はaといった場合,あるいは1年度目がa,2年度目がbであった場合,というような,それぞれの年について付けた小さなアルファベットの組み合わせで,ほぼオートマティックに5かける5のマトリックスで見てきたが,3年度分でそのようにすると非常に複雑なマトリックスになり,また,機械的にそうやって出すものに意味があるかという疑問もあり,もちろん個々の年度の達成状況をそれぞれ測定しつつも,当該測定指標の中期目標の達成に向けた,3年間全体としての取組を総括するような形で見ていくという測定の仕方に変えたいと考えている。
次に,実施プロセス及びタイムラインについて簡単に御説明させていただきたい。本日の第32回アドバイザリー・グループ会合に続き,6月初旬のところで,皆様に評価対象12施策にかかる所見を御依頼,6月下旬に次回のAG会合を開催させていただきたい。
以上,「令和2年度外務省政策評価の実施計画案等」について御説明申し上げた。
御議論等をいただければ幸いである。
【有識者】
我々が最終的に評価書にコメントする際に,予算の執行額を確か付けていただくようお願いしたが,そればどこかで入ってくるものなのか。
【外務省】
色々なサイクルが回っているので,間に合うものについては,今年度の執行状況を入れるよう努力したい。
【有識者】
直前の年の執行額の集計は時間的な制約があるということはお聞きしたが,予算案としていくら計上し,結果がこうでしたというのしか無くて,実際どれくらい使ったのかが無いと,素人目にもどれぐらい力を入れたのかがわからなくなっている。今後のタイムラインにもこの点を意識していただきたい。
【外務省】
6月初旬の所見依頼の際に執行額の詳細も同時に御提示したいところだが,集計が間に合わず,毎年少々遅れている。ただ,例年,依頼した所見の執筆中のタイミングで,判明分を送付させていただいている。
【有識者】
最初これを提起したときにはすごく真面目にやっていただいたが,去年辺りから半分くらいしか入っていないみたいなことになり,それが時間的制約によるということはわかった上で,それが無いとやはりどれくらい力を入れたのかがわからないところもあり,それは是非お願いしたい。
【外務省】
改めて努力したい。
【有識者】
今日の改革案からずれるかもしれないが,年2回の会合のうちおおむね6月頃会合では実際の評価の話が中心で,1月の会合では次年度どうするということを含めたものになるなかで,6月の前年度評価で提起したポイントが評価書に取り入れられるところとそうではないところがあり,それについて外務省側でどういうふうに考えて,どこまで対処されたのかというのを,冬の会合時にレビュー的にできるようになれば,より応答的になるという気がしている。この会合とは別に外務省の勉強会をやらせていただいた際,とても質の高いレポートも出るのだが,そのレポートが外務省のどこかの棚におかれて店ざらしにされているのか,きちっと上の方に反映されているのか,本当のところがよくわからない。大臣なり次官なりに直接インプットする機会があった方がいいということを繰り返し提起しているのだが,どうなっているのだろう。理由があって実現しなかったものも含めてでもいいのだが,冬の会合の時に一定程度レビューできた方がコミュニカティブになるのではないか。
【外務省】
例えば去年の夏の段階でいただいたコメント等について,その年の評価の中に即座に織り込んでいけるものは織り込んだ上で総務省に提出させていただいている。それ以外にいただいたコメントについて,令和2年度の作業を省内に依頼するときに,基本的に各局課に,先生からいただいたコメント等を貼り付け,こういう御指摘を頂いているのでこれも織り込んで考えて欲しいという形で活用させていただいている。
そういうプロセスも含めて,どうやって,先生方との関係でいわゆる「見える化」をしていくかということは課題として承り,外務省としてもきちんとコミュニカティブにやっていくためにはどうすれば良いかよく検討させていただきたい。
【有識者】
前回の会合時,3年周期にして,より中期的な,時間軸を長く取った評価になるので,評価書で言うと「中期目標」の書き方とどれくらい連動するのか,逆にそれがないと3年にする意味が少し減るような気がするのだが,中期目標の書きぶり,また,それとの関連で我々はどう評価していったらいいのかというのをもう少し考えた方が良いのではないかと話をした。そういうのは,次回の評価書の書きぶりにどう反映されるのか,またはされないのか,そこのところはどうなったのか,実は知りたい。
【外務省】
過去相当分の議事録をレビューして,お預かりしたままの御提言がなんなのかという中で,中期目標のあり方というものもあるというのは認識している。その上でやはり評価サイクルを変えていく中でより良いものにしていくところで,頂いた提言が,実際に,実務の中でどのようにいかされて,何がどう変わったかというところについても,できる限り,実例をもって,夏には,ある程度フィードバックさせていただくように心がけたい。
【有識者】
分担金・拠出金の扱いを変えるということで,各分担金・拠出金の担当局部課室が所掌する施策の中に含めて評価するというわけだが,これまでも分担金・拠出金というのはかなり横断的に,全省的にあるわけで,それを直接担当されているところが評価しようという趣旨はよくわかるのだが,確認として,今まで,基本目標VIIの評価書というのはどこの部局が担当されていたのか。もう一つは,令和2年度まではとりあえずこの基本目標IからVIIというのを維持して,3年度から変えるということだが,令和2年度においても経過措置的なことをするということだが,その具体的なイメージがいま一つ湧かなかった。最後に,令和3年度にこのように変わったということになると,現行の施策VIIの1,2,3であるところの,「政務及び安全保障分野」「経済及び社会分野」「地球規模の諸問題」に係る国際貢献,という3つの分類というのは,溶けてなくなるというイメージでよろしいのか。
【外務省】
まず3点目だが,それぞれ国際機関を通じた政務及び安全保障分野に係る国際貢献,国際貢献という意味では,例えば基本目標IIの施策II-1「国際の平和と安定に対する取組」の中に,こういうものも読み込んでいく,あるいは,それぞれ部局に散ってはいるが,そちらの施策の中のエレメントとして各拠出金・分担金のそもそもの趣旨,拠出目的はほぼ同じなので,各部局の施策とのリンケージをよりはっきりさせるという趣旨である。1つ目の,今までどこがどのようやっていたかということだが,評価という意味ではサンプリング方式という形で,その年々,ピックアップしてその分担金・拠出金を担当するところが評価するという形でやってきている。2点目の経過措置であるが,評価そのものは事前分析表に基づいて行うので,令和2年度に,令和3年度の評価に向けた事前分析表を作ってもらう必要があるので,令和2年度から取り組ませていただくということである。
【有識者】
そうすると,各担当部局の中で,分担金・拠出金を所掌されているところが,何らかの形で評価にも携わり始めるのは実は令和2年度からということでよろしいのか。
【外務省】
今まで各部局が,自身が持っている分担金・拠出金について何もしていなかったということは全くない。直接所掌されている施策の中に既に織り込んだ上で評価をしている部局もあるが,そういったものを,メリハリを付けて更にきちんと織り込んでいくべきものは織り込んでいただくということを,進めていければと考えている。分担金・拠出金,先ほど申し上げたとおり150ほどの様々な事務事業があり,国連分担金といった大きなものから,数百万円規模の,目的が非常に特化した拠出金もある。そういった細かいものまで逐一各施策の中に柱を立てるか,というと,それは主管部局の判断で,そこまでするものかどうかも含めて,あるいはほかの似た,分担金・拠出金ではないけれども類似する事務事業の一環としてその中に入れるかというのは,各部局の判断ではないかなと考えている。
【有識者】
わかりました。
【有識者】
まず前提のお伺いなのだが,これは,外務省としては様式とか評定の部分についてだが,現段階では確定されたものなのか,会合に出して頂いているということは意見を言って多少改善の余地はあるのか。
【外務省】
省内的には,関係する部局からの決裁は得ているものではあるが,御指摘頂き,外務省として検討して変更すべきと考えるものについては検討して参りたい。
【有識者】
では,様式と評定の方について,改善に資するようであれば,ということで意見を申し上げたい。まず様式の最初の所,施策の単位で予算を書くようになっており,これが難しいものもあるという,さきほどのお話しだったが,決算額が確定するまでちょっと時間がかかるということか。
【外務省】
そうです。
【有識者】
そうすると,この様式に入れていいのかどうかというところがあって,要するに6月ぐらいに取りまとめて評価書として出すということが可能なのか,しかも過去3年振り返った分をここに記載しないといけないということなので,実際の作業としては,振り返っていろいろ調べて書き込む,ということで,ここの作業がちょっと重たくならないのかというのが一つ気になるところである。
というのは,施策のくくりが大きいので,施策の中の予算を全部調べて合計金額をはじき出さないといけないので,未確定の部分があれば書けないということになるのではないか。書ける所だけ書いて出して下さいということでいいと思わなくもないが,施策のくくりが大きいのが気になっている。そこは,担当部局が書けるように,あるいはあまり過剰な負担にならないようにちょっと工夫をした方がいい部分かもしれない。それから,測定指標のところで3年分の施策の実績を毎年度分に分けて書いていくという様式になっているが,これは3年度分をまとめて書くという形にするという話だったのではなかったか。
【外務省】
一つ目だが,どういう段階で執行額が確定するか今一度確認したいとは思うが,少なくとも8月末の総務省提出の段階には埋まっているものとであり,そのプロセスの中で,6月初旬の段階でどこまで入るか努力して参りたいと。少なくともきちんと出す段階においては埋まっていくものである。
2つ目だが,評価結果の分析欄については3年分まとめた形で記述することになる。一方で,実績欄はモニタリングのプロセスもあるので,各年度で積み上げる形にしている。
【有識者】
この段階で調整は難しいかもしれないが御検討いただければと思うのは,実績欄はもうちょっと省略できないかということである。3年分の達成状況と3年分の分析,レビューの結果があれば,だいぶ省力化,重点化できると思う。結局,提案の実績欄の書きぶりだと今までとあまり変わらないということになるので,御検討頂ければと思う。
【外務省】
施策の「アジア大洋州」や「北米」といった項目での予算額及び執行額は,基本的に同じ名前の局の予算額及び執行額であって,予算書,決算書をまとめる過程において自然と計算はなされる。政策評価のためだけに数字をまとめるといったものではない。決算は省内の作業では大体6月ぐらいがまとまっていく時期である。
【有識者】
そうすると,予算の金額のところは,タイミングだけの問題であるということで理解する。
続いて,判定作業についてだが,結果としては,個別の測定指標を積み上げる形で判定をしていくということだが,他の府省のやり方をみていると,もっともっと簡素にされている。この判定結果が,一番注目されるというか,幹部に対してメッセージ出しをする部分かと思う。最初に気になるのは,成績が悪い所,「b」以下,「c」とか「d」が気になるということになってくるだろうし,PRできるのはどこかなということで言うと,「a」,「s」とついているところとなる。そうすると,白書を見た時に,それが正しかった,確かにPRできているかといったつながり方をすると分かりやすくなっていくのではないか。そういう話になっているのか,または,担当部局がただ単に自分が頑張ったから「b」だ,いや,もっと頑張ったから「a」だと,いうふうな話にしていくということになるのかといった点の整理は,どうなったのか。
【外務省】
まず,政策評価の方は政策評価の方で,評価書に書かれた事実,基準に照らして評点を付けていくので,白書のハイライトと評価書の評点の相関性あるいは連動性があるかというとそこは難しい。御指摘頂いた後者の部分については,もう一度確認させていただき,追って御回答させていただく形でもよろしいか。
【有識者】
結構です。改めてそれ以外のところで,もう少し工夫をしていただければなと思う所がある。役に立つようであれば採用していただければという程度で申し上げるが,例えば総括表である。施策をずらっと並べてabcがどういうふうに付いているのか,bがどうだ,と,それを評価書の頭に一覧表の形で持ってきていただくと非常にわかりやすいと思う。多くはbが付いており,これが標準である。aやsが付いているのは非常にPR力がある,実績もあるものである。c,dは改善の余地がある,という見え方ができると,幹部の方々からも見えやすいのではないか。エクセルの表のような形をイメージしているが,この表に現れる「注目すべき評定」の定義が担当部局によって自由に解釈できるとなると,これは信頼できない表,ということになってくるので,一定の方向性が必要であり,工夫していただければと思う。
もう一つは,これはSABCDという基準というのは,例えば,アメリカとの外交関係において何を意味するのか。二国間関係の中で,例えば中国との関係をどう評価するかというと,たとえ戦後最悪だと言われる水準という時期があったとしも,それを直ちにCとかDという風に評価できるかというと,それは適切ではないということになるかと思う。そうすると,施策の分類を,工夫した方が良いのではないかと思っている。地域外交についてはこの判定基準を用いないとか。他方で,例えば旅レジのようなものがある。これはどんどん伸ばしていかなきゃいけないので,こういう目標管理型の議論は重要になるわけである。判定基準自体がいいとか悪いとかいう話ではなく,これはこのままにしておいて,これを適用する施策はどれか,という話を,もう一度検討していただくことができるのではないか。
【外務省】
1点目の総括表的なものというのは実は今も多少はしているのだが,これをよりわかりやすく,より良いものにしていくという工夫は,引き続きして参りたいと思う。
2点目についてはかなり大きな宿題というかコメントと受け止めたので,問題意識を持ちながら考えてみたい。
【有識者】
判定基準について御説明いただいたが,それぞれ共に重要なことだと思うが,ここ2,3年,政府部内でかなり話題になっているのは,統計改革であったり,官民データ活用だったり,EBPMだとか,いわゆる統計等を始めとするデータ等の活用である。当然政策評価にも非常に重要なわけで,こういった統計等を始めとして,データの整備,また,改善,そういったデータ等の利活用の推進,これを外務省としてどのようにされているのか,教えていただきたい。
【外務省】
いわゆるEBPMの推進というのは政府の課題であるので外務省としてもできるところをやっていくというふうに取り組んでいる。統計を利活用してやっていく,いわゆる定量的な部分というのは,当省においてどこでどのぐらいできるか,というのは引き続きよく見ていきたいと思うが,一方で例えばロジックモデル的な考え方,すなわち,インプットからインパクトに至るロジックの部分については,省内のマインドセットも含めて,導入していくべき部分が多いと考えており,そこはこれからどういう取組ができるか,現に,徐々にいろいろやってきているところであるが,更にどういうふうに強めていけるか,日々議論したり,こういうことができるのではないかということを考えたりしているところである。
夏の会合時に,そういった部分,取組状況等も含めて何らかの形で報告したいと思う。
【有識者】
もう一つ,官民データ活用の関係では,各省にEBPM統括推進官を置くようになっているが,外務省での状況如何。
【外務省】
外務省においても,官房に政策立案参事官が居る。その下でいろいろと取組をすすめてくということになっていて,タスクチームも組まれている。
【有識者】
それには考査・政策評価室は関与しているのか。
【外務省】
同室が事務局役になっている。
【有識者】
各省のEBPMの政策推進課はいわゆるよろず相談室的なものが期待されているということのようだ。毎年3月に外務省で実施している外交に関する世論調査で用いるアンケート調査を策定する場合,担当部署から考査・政策評価室になんらかの相談はあるのか。質問紙,アンケート票の策定に関しては,全省的な立場から,EBPM推進統括官のポジションの方も関与されているのか。
【外務省】
この調査は毎年やっているもので,取りまとめの主管課があり,毎回聞く質問と,年によって変える質問があるが,質問内容については各地域課なり各課なりに相談はあるが,それをどういう問い立てにするかというプロセスに考査・政策評価室は関与していないのが現状である。御指摘のとおり,データをどう活用するかということの逆算をして,そういうところから,考査・政策評価室にもきちんと横串で見るというのは今後考えていきたい。
【有識者】
平成28年度の調査なのだが,質問文をそのまま読んでみるが,問いはこうである。問8として,「日本は安保理理事国として,どのような取組を優先的に行うべきと考えますか。」という質問で,選択肢が8つあり,「東アジアの安全保障環境への対応」「中東の安全保障環境への対応」「アフリカの安全保障環境への対応」「PKOや紛争後の国づくりなど,国際平和協力」「軍縮・不拡散」「国際テロ対策」「法の支配の維持・強化,人権状況の改善」「安保理改革を含めた,国連の改革」となっている。これ自体は何の問題もないが,実はこれ,電話調査である。調査票だったらこのような選択肢を示されて,回答はそれほど困難ではないかと思うのだが,突然電話がかかってきて,今申し上げた選択肢を電話口で言われて,そして適切に回答できるか,というと,有識者調査だったらそれほど問題ではないかもしれないが,調査の対象というのは,一般の方なわけで,そうすると,ここから得られたデータの信頼性はいかほどのものかという問題がある。28年度調査ということで申し上げたが,昨年度も同じようなものが見られる。この3月にもまた繰り返されるのであろうか。すると,政府の取組と画した形で,外務省では望まれるような手法が取られていないと見られかねないわけなので,これからどういうふうに取り組んでいかれるか,問われてしかるべきだと思うので,機会があれば御説明等をしていただければと思う。
【有識者】
EBPM関係で複数の省庁とつきあいがあるが,政策評価の中でどういうふうにEBPMに取り組むかという中でロジックモデルというふうな流れになり,このロジックモデルがEBPMを象徴するものとして取組がエンカレッジされている。政策評価との関係では,政府が閣議決定で出している3つの評価類型との関係が実は重要になる。一つは事業評価方式,これはまさに公共事業や,外務省ではODA関係のところかと思うが,この方式で,当該事業を着手するかどうか,ちゃんと費用便益分析をしてというものである。これは非常にEBPMの考え方とマッチしているので,事業評価方式とEBPMは親和性が高い。その意味でEBPMに関しては,外務省は対応しているという説明が可能なのではないのかと思う。
問題は実績評価方式の目標管理型評価の部分であって,事前分析表の導入の段階で,これはロジックモデルに替わるものとして導入されたわけである。EBPMが入ってロジックモデルが入ると,事前分析表をどういじるかというところが実はテーマになっているとも言える。ただ,事前分析表という形で総務省がモデルを呈示した背景には,ロジックモデルはやっぱり難しいだろういうことで,現在の事前分析表になっているわけである。EBPMを取り込むとなると,事前分析表をどういじるかということが,ひとつは課題になるし,元々ロジックモデルを導入できないから事前分析表になっているので,このままでいいのかもしれない。そこは取扱いの問題かなと思う。施策のサイズを大きくするとロジックモデルはできないので,現在外務省はこの形で問題ないというふうな説明になるということかと思う。
もう一つは総合評価方式だが,昔は総合評価方式と外務省が称していたものがあったが,あまりそこは取り組まれていない部分かなと思う。EBPMとの関係では,PRするべき施策については,総合外交政策局とも協力して事例をしっかりと示していただく必要が出てきた,あるいは政策評価を使ってPRするという関係が出てきたと思う。そこはこれからの課題であろう。EBPMと政策評価との関係と言った時には,そういう理解の仕方,解釈の仕方があるのではないか。
【外務省】
議題Iは以上とする。御指摘頂いた点は夏の会合においてでも,フィードバックすることを検討したいが,評価作業自体は,ご説明した実施計画の方向で取り進めさせていただく。
(2)行政事業レビュー
【外務省】
昨年11月に行われた,行政事業レビューの「秋のレビュー」の外務省分について概要を御説明する。先ほどの議論の後半につながってくるような話で,今回対象になったのが,国際交流基金事業の中の,文化芸術交流事業についてのレビューがあり,評価指標の設定について相当議論が活発に行われた。この文化芸術交流事業は公演実施とか,日本祭り,ジャポニズム,さらには放送コンテンツを様々な途上国に出していくという事業である。これについて,いわゆるアウトカム指標として,どういう指標が置かれているかというと,例えば公演の来場者数が平均500人以上とか,映画上映会来場者数が1,600人以上とか,放送コンテンツについては54か国以上に,延べ500番組以上の放映を達成するという形で設定されているのだが,議論においてはこれらの指標は活動実績を測る指標であって,文化芸術交流事業の目的・趣旨である対日関心の喚起と日本理解の促進という目標とどうつながるのか,というような議論がかなりあった。その目標達成,効果がどれだけ出ているのかというところが今の指標でははっきりしないのではないか,実際それを測れていないのではないかというような御指摘があった。先ほどの議論にもあったが,統計を取るにしても,何の統計を取るのかというところの問題はかなり指摘されたと思っている。他方で,こういう効果はなかなか測りにくいところもあるのではないかというご指摘もいただいた。定量的なものに全てできるのか,必ずしもそうではないのではないか,という御指摘も一部にはあり,その辺を加味しながら,御提言としては,特に毎年継続的,定期的に行われているものについては,中期目標に到達するための段階的な個別分野ごとの適切なアウトカム指標に改善すべきであるという提言もあった。なかなか定量的なものに出せないという御指摘もあった上で,効果を測れる指標を設定すべきではないかという御提言であったと受け止めており,そのような方向性で改善させていただこうと考えている。
2つ目は事業実施後の評価プロセスという観点での指摘があった。具体的に言うと,事業を行った後のアンケートで,この事業は有意義だったか,というアンケートを行うであるが,アンケートの回収率自体も来場者数に比べても1割程度とかしか集まらず,その中で出していただいた方は大概,「良かった」「有意義だった」という回答になる。そうすると数字上は「有意義であった」が90何パーセントという非常に高い数値になり,それ自体は努力して事業を作り上げた成果だとは思うが,指摘されたのは,90何パーセントということは,5,6パーセントは不満を持っているではないか,あるいはその90何パーセントにもグラデーションがあって,もう少し改善すべきだというところをちゃんと拾って,次の良い事業に結びつけていくというところが,しっかりと行われているとは言いがたいという御指摘があった。これをもう少ししっかりと反映するような形で,国別,地域別の状況に合わせた形で,さらには,時代に即した方法で次につなげていくような取組をすべし,との御指摘があった。
最後に,こういう文化芸術交流事業というのは,行うところによっては民間で十分できるではないかという指摘があり,国際交流基金からの説明では,なかなか商業ベースに乗らないものを中心にやっているということであったが,ではずっと商業ベースに乗らないままで良いのかというような話もあり,今行っている事業については,将来的にはしっかり商業ベースに乗っていく,民間主体による実施というものにつなげていくような事業というものを意識してやるべきであるという御指摘があった。文化事業というのは数字が取りにくいところは,正直言ってある。ずっと国が行っていくのではなくて,民間に移していくことを見据えた形で,事業を効率良く,意味のある形で行っていくことが重要ではないかという御指摘があった。
(3)その他
【有識者】
評価は使い方というところもあり,例えば,令和元年度の事前分析表を基に令和2年度の評価書としてまとめられるということだが,令和元年度は即位の礼を含めて様々なことを,外務省として非常にエネルギーの要ることをなさったがこれがどこに出てくるのかというと,あまり出てこない。それでいいのか,というところをお伺いしたい。政策評価の実施計画を変更してでもPRすべきことはPRするということがあっても良いのではないかと思う。折角の制度の切り替え期なので,それがうまくいけば,例えば習近平国家主席が来られて国賓対応をされるというところで,外交的な努力や成果をきちっとその次の段階ではまた記録として残すなり説明するなりということができるかと思う。
行政事業レビューの件についても,PRの仕方はあると思うのだが,外部有識者の指摘にそのまま引きずられるのではなく,重要な施策は多くの努力がそこに乗っているので,その努力をいかすためにも,何をしたら良いのかということで,解釈を駆使していただいて,プラスに転化できるように是非頑張っていただきたい。
【外務省】
外交の対外発信の施策としては,外交青書がある。現在編集中であるが外交青書2020においては,G20やTICADなど主要行事を含め令和元年度の外交活動について巻頭特集等でアピールする予定である。
【有識者】
特集を組まれるということなので,来年の評価書には,重要な施策については,外交青書にこのように載っている,と簡単に書くということもありうるのではないかなと思う。
【外務省】
評価とPRの関係についてパブリックを意識したPRということなのか。評価を用いたPRというのは,評価をみてらっしゃる方々に対するPRなのか,一般国民向けのPRなのか,ご説明頂ければ幸いである。
【有識者】
政策評価は,評価法の3条で必要性,有効性,効率性の観点から評価をすると書かれているが,必要性は政治が判断する,というのがあるかと思う。効率性は行政機関でできることだが,予算要求ということをやっている役所としては自分たちの施策は要りませんということは言えないので,ほんとは勝負しなければいけないのは有効性だろうと。有効性は,成果効果が出ているという話で,PRできることがあるならPRするというのが本筋だと思う。そういう意味で,PRできることの目星みたいなものが評価書にあっても良いのではないかと思っている。そこは総合外交政策局の方が整理されていると思うので,そことリンクするというようなことはあっても良いのではないか。
【外務省】
2019年を振り返れば,外交的に言えばG20,TICADといったマルチの会合をホストし,バイの関係では,日露,日米,日中,日韓と様々あったが,バイとマルチのバランスを取って,いろんなことがあったのが2019年だったと思う。それから2020年は,引き続き多国間の枠組みに日本としても貢献していくことに変わりはないが,相対的に申し上げれば,よりバイの関係が節目になる年,節目になってくる国の数が多いという気がする。引き続き,気持ちを引き締めて政策に携わっていきたいと思うし,2019年,そして,今年2020年の結果もしっかりと評価をして,御指摘いただいた,PR,外交青書ともうまく連動していければと考えている。前回の会合で御指摘を受けた点も含めて,改めて御指摘をいただいた。省内でも検討させていただくが,先生方からいただいた御指摘等に対する対応ぶりの一覧表を,できれば作らせていただいて,反映できるところは反映できる,反映できないところは反映できない,というところについても御説明させていただければ先生方の御理解も更に進むと思うし,より実のある議論ができると考えるので,そういった対応も検討させていただきたいと思う。
改めて,新年早々お集まりいただき,長時間,会議に御参加,御提言いただき,どうもありがとうございました。引き続きまたどうぞよろしくお願い申し上げる。