政策評価

令和3年8月30日

1 日時

 令和3年6月28日(月曜日) 14時00分~15時40分

2 場所

 オンライン開催

3 出席者

(有識者)(五十音順)
遠藤 乾 北海道大学公共政策大学院 教授
神保 謙 慶應義塾大学総合政策学部 教授
南島 和久 新潟大学法学部 教授
福田 耕治 早稲田大学政治経済学術院 教授
山田 治徳 早稲田大学政治経済学術院 教授
(外務省)
三宅 大臣官房総務課長
本田 大臣官房考査・政策評価室長(司会)
西野 大臣官房ODA評価室長
室谷 大臣官房会計課首席事務官
高尾 総合外交政策局総務課首席事務官
鴨川 総合外交政策局政策企画室首席事務官
ほか

4 議題

  • (1)令和3年度外務省政策評価書について
  • (2)行政事業レビュー

5 発言内容

【外務省】
 本日は第34回外務省政策評価アドバイザリー・グループ会合に御出席いただき、感謝申し上げる。
 新型コロナの世界的な拡大の下、対面での外交が困難な中でも、外務省は、各国とのテレビ会議、電話会談も活用しつつ、できるだけ積極的な外交活動を展開している。今月初めにも、ワクチン・サミットをオンラインで開催し、2021年末までに必要なワクチンの確保に向けた資金調達に貢献した。また、先般のG7サミットには菅総理大臣が出席し、首脳コミュニケを含む様々な文書の発出など大きな成果を得た。総理御自身も手応えを感じられた会議であったとの報告を受けている。
 本日の会議は、当省の分野別外交、具体的には安全保障・軍縮不拡散、経済、広報文化、経済協力などの施策に関し、平成30年度から令和2年度までの3年間の実績に係る評価について議論いただく。
 外交政策は国際情勢の変化の影響を受けやすいなどの特性から、新型コロナ感染拡大以外にも様々な外部要因があり、評価が容易ではない面もあると思うが、そうした中で、それぞれの施策が日本の外交政策全体の視点から求められる成果を達成できたかという点を、我々として出来るだけ客観的に評価するよう試みた。
 先生方にはあらかじめ送付させていただいた政策評価書案について貴重な御意見を書面で頂き、感謝申し上げる。頂いた御意見及び本日の会合を踏まえ、評価の質を更に高めるとともに、PDCAサイクルを通じたより良い外交政策の推進に努めていきたい。
 また、当省の目標管理型の政策評価の今後の在り方との関係では、令和元年度から3年周期の評価サイクルを試験的に導入し、本年度はこの試験的3年周期の最終年となる。令和4年度以降の政策評価の在り方については、本年度までの当省における制度運用の状況や本年3月の政策評価審議会提言なども踏まえつつ、検討していきたい。
 本日は、忌憚のない御意見・御助言・御指導を頂きたい。

(1)令和3年度外務省政策評価書について

【外務省】
 令和3年度の外務省政策評価書についての概要を御説明する。外務省の政策評価体系は、現在、6つの基本目標の下の16の施策で構成される。本年度については、分野別外交、内外広報・文化交流・報道対策、経済協力という3つの基本目標の下の7つの施策が評価対象である。まず施策の評定については、全7施策が「相当程度進展あり」、いわゆる「B」評価となった。測定指標レベルでは7施策分全部で97指標があるが、評定の内訳は、「s」1指標、「a」12指標、「b」84指標となった。具体的には、「s」は施策II-2の1指標、「a」は施策II-1の4指標、施策II-2の3指標、施策II-3の2指標、施策III-1の1指標、施策VI-1の1指標及び施策VI-2の1指標という分布になった。
 お忙しい中、先生方から事前に多くの御所見・コメントを頂き、感謝する。まず、事前提出いただいた内容も含め先生方から御所見を賜りたい。

【有識者】
 全体的なところから申し上げると、3年サイクルにしたことで中期目標の記述が充実するのかと思っていたが、あまり機能している感じがしない。外務省では、評価に併せて3年サイクルで計画を立てている訳ではないので、記述自体にはあまり意味が無いという考え方もあり得るが、せっかく3年にしたのだから、少し中期的な変動を見越した、次期目標の設定というものがあり得る。現状の形でやり続けるのなら何かの対応が必要で、むしろ中期目標など要らないという考えならばやめてしまえばいい。
 今回評価期間の最も顕著な傾向として、経済の安全保障化、すなわち安全保障の話に経済が入り込んでくる度合いや濃度が飛躍的に増した。この点、「我が国の経済安全保障の確保」が施策II-1の測定指標として新たに追加された点は一歩前進だが、記述が総花的・中立的であり、問題の重大性や切迫性に対して弱含みである。昨今の経済強制外交の動きは末広がりで、社会にも重大な影響を与えるので、今後3年間にどういう方向性を考えているのか、もう少し全体的な打ち出しが必要ではないか。
 施策II-2・個別分野1におけるここ数年の日本外交の活躍はめざましい。ここは「a」を通り越し「s」評価でも良い。TPP、日EU、日英、RCEPを含めて頑張りはスーパーである。「a」評価とした場合でも、今後どうしていくかが重要。現在の測定指標は、自由貿易や経済連携協定の推進が正義という、昔ながらの考え方になっている。自由・連携の帰結から生じる相互依存を逆手にとって成り立つのが経済強制外交だとすると、自由・連携の増進だけで十分か。もう少し総合外交政策局で揉むなり、クロス・セクションで議論するなりして、外務省全体としての打ち出しが必要と考える。
 施策VI-1につき、society5.0地方創生、次世代と女性のエンパワーメントといった価値を日本外交が追求しているということに深く共鳴する。同時に、統合的な上位コンセプトで括られて初めて、日本外交が良い意味で色が付いて見えることになる。例えば、いろんな諸策を人間の安全保障という括りで括って、10年、20年、進めたことが評価されてきたように、こういう良い諸価値を上位概念で括り、日本外交のアイデンティティになるように進めていただきたい。「質の高いインフラ」のようなコンセプトの打ち出しが望まれる。
 施策II-4につき、国際情報統括官組織の塩対応ならぬ塩コメントは変わらない。もう少しやり方はないのか。評価されたい気も無いのだろうと思われる。現状は、お互いにハッピーな関係とは言えない。
 このほか、個別指標で違和感があったものを申し上げる。施策II-1・個別分野7-1の人権・民主主義の取組が、「a」評価になっているが、我が国の外交としてできるところはやった、というセクトラルな評価ではないか。ここ数年で世界の人権・民主主義は大幅に後退したというのが一般的な見方の中、「a」評価とするには、相当説得力あるエビデンスが必要である。欧米などとの比較で、日本は中国に対する対応において踏み込みが弱い。ミャンマーについても日本はほとんど身動きができていないのではないか。「重大な懸念」と言うが、もっと響く言葉はないのか。ミャンマーについて独自のパイプに言及するなら、それを使って明確なメッセージを送るべき。これまでの取組を「a」評価とすると、外から見た時とのギャップがあると懸念する。
 また、施策II-3・測定指標2-1では、物品役務相互提供協定(ACSA)と北方領土問題が一つの指標に包摂されている。北方領土問題は容易でなく、進展がないことは現実として受け止め、そのまま自己評価で「c」として何の問題も無い。それをACSAと一緒して「b」評価に相殺することは適当か。そもそも相異なるACSAと北方領土問題を一緒に扱う目標設定には無理がある。
 同様に、国連の安保理改革についても、何百か国もいて、その中に邪魔しようとする国もある中で簡単に進捗するわけがない。「c」評価とすることに何の問題は無い。
 なお、国際機関における日本人職員増強の取組においては、学識者の派遣も行われており、頑張りが感じられた。

【有識者】
 最初に発言された有識者と多くを共感する。
 施策II-1の総合外交政策局の取組に関し、所掌が幅広く、色々な評価がありうるが、外交政策と学術界との関係の点では、10年前と比べると飛躍的進捗がある。その中でも、補助金制度における地方在住や若手・女性研究者に重点を置いた裾野の拡大や審査体制の強化への言及は非常に良く、ぜひしっかりと取り進めて欲しい。
 今後の測定指標として「経済安全保障の確保」が明示されたことも、大変重要。おそらく来年辺りに国家安全保障戦略が改定されるため、外交戦略上の全体目標を再定義する必要があり、外務省の政策評価における指標もおそらく柔軟に改定されるであろう。その際、「経済安全保障の確保」に係る目標の設定に当たっては、特に総合外交政策局と経済局の間で十分に協議し、よく連携して対応いただきたい。
 平和構築分野における人材育成につき、育成された人材が多くの重要なポストについていることを国民に示していくことは重要。ただ、南スーダンからの部隊引き上げ以降、日本のPKOは明らかに低迷している。国際的PKO活動は今も展開されているが、日本との関わりが十分に見えてこない。こうした状況をどう捉えているのか。将来的な派遣に向けた調査は今も継続しているのか。実際に展開できていない状況を評価するための指標を定めても良いのではないか。
 人権・民主主義の取組が「a」評価になっているが、国際NGOフリーダムハウスの民主化指標はここ20年にわたって後退している。アジアでもかつて緑(自由)だったが、黄色(部分的に自由)から多くの国が紫(非自由)となった。日本は何を働き掛けて何を成功させたのかが一般的な問いである。セクトラルな成功と一般的にうまくいっていないと理解されている状況を対比させていかないといけない。志を高く持ち、人権・民主主義という旗印を掲げた所掌の仕事の中で、世界を見渡して何が果たし得ただろうかという評価が必要なのではないか。
 施策II-2に関し、「a」を超えて「s」くらいの評価を与えても良い。この3年間の外務省の行った外交成果は、世界の中でも特筆すべき成果を挙げた。放っておけばアメリカと中国の間で分断されかねない経済秩序が、多くの意味で日本のイニシアチブによってつながれた。それぞれの経済連携を成しえた以上に、世界の経済秩序という点で日本が果たした役割は非常に大きかった。掛け値無しに自己評価を高めていっても良い。
 施策II-4につき、自分は、6年前に国際情報統括官組織の評価を「c」にすべきと書いた。その後、国際情報統括官組織が自らの業務にかかる数的評価指標を徐々に導入したので、それは素直に評価しようというコメントを確か3年前に出した。しかし今回はその手を抜いてしまった印象で、非常に残念。かつて局長級の某幹部は、国際情報統括官組織は政策部局に対して適時適切な情報をインプットする重要な役割を果たしており、安保法制制定過程においてもその役割がしっかりと果たされたと述べていた。そういう実態があるのであれば、インテリジェンス・サイクルの中で果たしている役割を客観的に評価すべき。現状では、情報分野の活動は公開できないことを理由として評価作業を怠っているようにしか見えない。改善を強く要求する。

【有識者】
 総合外交政策局関連の施策では、測定指標11-4の科学的知見の外交への活用促進における「持続可能な開発目標達成のための科学技術イノベーション(STI for SDGs)」の取り進めについて内閣府とのデマケーションが一番気になった。同取組を外交の観点で評価するのか、科学技術の社会実装の観点で評価するのか、十分整理できていない。政府部内での整理ということでは、第6期科学技術イノベーション基本計画において「科学技術外交」と明確に謳っていることからも、やはり外交としての観点が主軸になるのであろうが、そうすると文科省や環境省含む他省横断的なSDGsに関する取組を外務省としてどのような視点で評価していくのか、目標を明確にした上でもう少し整理が必要ではないか。
 国際経済部分について、他の有識者からも色々コメントがあったため割愛するが、特にサミットの取組については、もっと積極的に取り上げ、PRするのが良い。
 国際法の形成・発展に向けた取組について非常に重要だと感じたのは、測定指標1-2記載の、従来から取り組んできた研究会等開催による知見の蓄積が今般の新型コロナに係る未曾有の事態においても迅速に国際法上の課題について検討し、政策に反映することができた、という部分であり、こうした説明は本評価書含め他の機会においてもしっかりとPRしていただくのが重要。加えて、測定指標3-1については、経済局の個別分野1の測定指標と重複するので、両部局の間で立て付けの整理が必要ではないか。
 国際情報統括官組織については、インテリジェンスに関する課題が多分にあるという点はしっかりと記載いただいているように思う。10年ほど前には新型インフルエンザを巡る騒ぎがあり、今回は新型コロナ問題が起きたが、また将来も類似の事態が発生しうる。その時に備えて今回の課題を外務省として総点検し、外交上の脆弱性を洗い直す必要がある。うまくいった点やいかなかった点など他国の事例も含めて、現時点での知見を収集・整理することは重要である。
 広報分野について、オンライン形式による講座の実施等、新型コロナ下の柔軟な対応について記載しているが、こうした努力もしっかりとPRするのが良い。
 経済協力についても同様にオンラインでの対応等柔軟に対応できた部分についてはしっかりとPRしていただきたい。
 先ほど述べた新型コロナ対応に係る外交上の脆弱性の洗い直し及び総点検に関連して、今般の新型コロナの影響で外交上のパフォーマンスが落ちたものについても、チェックしておいたほうが良い。これは必ずしも公表する必要はないが、ワクチンが普及し出口が見え始めている現状だからこそ、どこかで機会を捉えて実施するのが良い。
 SDGsについても改めて申し上げるが、複数の省庁が関わっていることから、政策が断片化しているのではないか。外交政策として外務省が最後に見るということであれば、もう少し外務省がイニシアチブをもって交通整理するのが良い。
 総合外交政策局に協力を仰ぎつつ、外交イヤーや新型コロナ等外交を取り巻く変化についてのレビューを実施し、本評価書や外交青書に記載しても良い。評価書冒頭の総括表にもう少し政策の内容に関する中期的な変化について記載できないか。本評価書が政務三役や指定職にとって分かりやすく使い勝手の良いものになることを期待する。

【有識者】
 まず、他の先生方の御指摘のとおり、経済連携協定に関する活動については、日EU・EPAやRCEP含め日本が結節点となって大きな役割を果たすような立派な仕事をしたと感じている。今後、米中対立が続く中、日本は結節点として色々な外交カードを持つことができると思う。
 施策II-1の測定指標6-3に関し、国際機関における日本人職員の増強に向けて積極的に取り組んでいる。自分の近辺でもJPOプログラムで今年国連に入職した者がいる。国際機関には外務省のみならず、例えば厚生労働省からWHOに派遣される者もいるが、中には国家公務員を離れ、国際公務員に転職する者もいる。また、商社やグローバル・ビジネスに関わる30歳前後の若手で、国際機関に加わって貢献したいという人材も増えてきている。こうした状況を鑑みても、今後更に精力的に広報に取り組むと良い。
 施策II-2の国際経済に関する取組でもそうであるが、単に政治レベルのみならず、行政レベルでも、例えば日銀の国際機関グループの下、IMFなどとの交渉に当たる者もいる。あるいは、OECDパリ本部に国際公務員として赴任する国家公務員も近年増えている。そうした行政レベルの人的貢献についても日本はアピールできるのではないか。
 施策II-3の国際法の形成・発展につき、オンラインによる様々な取組がなされたというのは結構なことだと思う。今後は大学、弁護士会、日系企業、JETROあるいは学会などと協賛する形でこうした機会を増やしていければ、法の支配といった様々な価値の普及に役立つのではないか。
 施策II-4の情報収集に関しては、今後デジタル庁が創設されるということもあり、内閣府を始めとしたカウンターインテリジェンスの中核組織と外務省との関係をどのように再構築していくのかという視点は、政策評価を実施していく上でも検討の余地がある。
施策III-1では、多くの有識者が広報活動に登用されていると知り安堵した。特に海外発信、あるいは補助金等を利用した外部関連機関への支援といった報道対策について更に努力を重ねるとより有益である。
 施策VI-1の経済協力では、非軍事的協力による平和と安定への協力、人間の安全保障といった分野について、今般のコロナ禍における日本の外交活動を「ワクチン外交」と批判するメディアもあるが、やはりそうした中でもワクチン無償供与といったものは、「自由で開かれたインド太平洋」を掲げる日本として戦略的に重要な施策の一つとして積極的にアピールして良い。こうした新型コロナ関連の具体的な活動を本評価書の経済協力あるいは地球規模の諸問題への取組に加筆すると良い。
 次の施策VI-2の地球規模課題についても、COVAXへの財政支援等様々な日本の積極的な取組は地球規模課題への大きな貢献である。後述のSDGsとも関係するが、日本の貢献として更に対外的にアピールしてくことが重要。
 複数施策関連としては、今回あまり多く触れられていないが、国連防災機関への日本の人的資源での貢献は追記できる。日本の持つ防災やICT技術は国際的に大きく貢献し得る分野でもある。SDGsの17の目標を外務省としてどのように達成・評価していくかにも関わるが、デジタル化・グリーン化といった成長戦略とも絡めつつ、SDGs推進について外交戦略を掲げるのであれば、外務省としてどこに力点を置くのか分かり易く評価書に記載するのが良い。
 安全保障と経済が相互に連関する中、両者のバランスをとりながら、人権やデモクラシー、とりわけ香港や台湾、ミャンマー問題に対する日本の立場や方針を示していく必要がある。そうしたことも含め、経済と安全保障を結びつけた評価の在り方について今後考えていかねばならない。
 最後に、国連改革の部分で申し忘れていたが、国連行財政改革に関して単年度予算への移行が記載されているが、例えば欧州においては新型コロナ対応施策のための7か年予算といった多年度予算による対応もある。国連行財政改革を進める際には、そうしたことも念頭に、中長期予算の在り方についても勘案していくのが良い。

【有識者】
 まず、それぞれの施策における記述の中で精粗があるのが気になった。特に同一の施策の中において、丁寧に説明されている部分もあれば、簡易に済まされている部分もあるのが多少気になった。
 また、国民に対して示すという観点から見た時に、本評価書は果たして分かりやすいか。もちろん見識のある外務省専門家や国際政治分野研究者は、適切に内容を咀嚼できるだろうが、一般の国民は消化不良になるだろう。例えば、施策III-1の広報の部分においても、非常に多くの試みが羅列されているが、いくつかの少数の枠組みに類型化することも可能ではないか。例えば、対象が一般国民か、専門家か、あるいは意図・目的が情報共有か、信頼関係の醸成かといった点に着目して、様々な広報の取組を分類すれば、それぞれに対する評価が国民一般にも分かりやすくなる。また、同じ観点から、施策II-3の国際法の形成・発展に関する取組についても、非常に難解ではあるが、領土、安全保障といった分野毎に評価をまとめると、国民に示すという観点から分りやすいものになると考える。

【外務省】
 先生方からの御指摘のうち、評価室として持ち帰る必要があると感じた部分につき簡潔に申し述べたい。まず冒頭申し上げたとおり、今般総務省の政策評価審議会から提言があったことも踏まえ、次期サイクルに向けて右提言を我々の政策評価の枠組みにどのように組み込むことができるのかについて研究していきたい。その中で、御指摘いただいたように、政策評価の性質として、まずは国民への説明責任ということと、内に向いては自らの自己点検のためのPDCAツールとして活用していくという性質とのバランスをどう考えていくかも検討したい。政策評価審議会の提言を組み込みながら、分りやすさ、御理解のいただきやすさを確保する点が大きな課題である。本日御指摘いただいた測定指標の構え方についても、例えば安保理改革で言えば行財政改革や安保理非常任理事選挙等がパッケージとなったひとつの指標であるが、その組み方が適切なのか改めて検討したい。国際法局のACSAと日露の関係、あるいは平和構築人材育成事業とPKOも同様の問題なのかも知れない。中期目標に関する指標についても、設定しやすい指標と、必ずしもそうではなくいわゆる永遠のテーマのような指標とが混在しており、中々分かっていただきにくい側面がある。外交政策の特質上やむを得ない面もあるが、より明確に構えられるものについてはより具体的な指標を設定する等の工夫の在り方も検討したい。
 今回評価の評定という点においては、人権・民主主義や経済連携の部分について様々な御指摘を頂いた。また、経済と安全保障との結び付けの問題についても御意見を頂いた。加えて、国際情報統括官組織の評価に関する問題意識については6年前から御指摘頂いているということで、そもそも評価になじむのかという根源的な問題もある一方、評価をやる以上はしっかりと行うべきだという御指摘はもっともであり、今後の対応を検討して参りたい。さらに、SDGsの関係での他省庁とのデマケーション、あるいはオンラインのメリット・デメリットを含めた新型コロナに係る総括の必要性、また、アピールできる成果についての対外発信についても御意見を頂いた。これらの点は政策評価書にて対応すべきなのか、あるいは外交青書や開発白書を始めとする他の媒体等を活用すべきなのかも含め考えていく必要がある。いずれにせよ、本日頂戴した論点については我々から関係各課へしっかりと伝達した上、各課からのフィードバックを受けつつ、先生方とも引き続き意思疎通したい。

【外務省】
 政策評価に係るコメントの中で、総合外交政策局の関係で多くの御指摘を頂いた。特に上位概念としての「日本外交として打ち出していけるものは何か」という点についてよく考えていきたい。御指摘のとおり、「質の高いインフラ」も相当程度定着してきた。今般のコロナ対応の中で、「人間の安全保障」及び「誰の健康も取り残さない」という考え方も、実態を伴う形で日本外交の姿を示すことができるようになっている。そうした具体的な成果を踏まえて、政策評価という観点から、国民目線に立ってどのように打ち出していけるかという点は、重要な御指摘である。
 また、人権外交の評価については部内でも様々議論があったが、実態面で何が起きているかという部分とセクトラルな評価というところでどう判断するか、という部分は重要な御指摘である。人権関連当局としては、やれることとやれないことがある中で、「ビジネスと人権」や「人権デュー・デリジェンス(企業活動における人権への影響の特定、予防・軽減、対処、情報提供を行うこと)の徹底」という観点からは、具体的な成果を積み重ねてきたと評価している。いずれにせよ全体の評価としての「a」評価の妥当性については部内でも再検討していきたい。
 国際情報統括官組織につき、一省員としての意見だが、ここ数年で同組織のプロダクトの質は非常に高くなっている。もちろん政策評価の在り方となるとまた別問題ではあるが、実務の世界での外交の動きを踏まえ、我々政策当局がいかなる情報や展望を同組織から必要としているかについて、より意思疎通が密になり、有機的に仕事ができるようになっている。実体上きちんとした仕事を積み重ねていくという話と政策評価という文脈においてどのようなメッセージを出していくかという話は別ではあるが、最近のクオリティの高まりというのは特筆すべきと感じている。

【有識者】
 1点質問だが、先ほど御説明頂いたように、ワクチン外交含め、外交における保健分野の占める割合が高くなっているようだが、右分野に係る外務省内での所管はどこか。

【外務省】
 地球規模課題審議官組織の中にWHO関連を所管している国際保健政策室があり、これまでのコロナ対応含め、厚労省との連携等が重要になってくる部署である。国際機関での日本人のプレゼンスといった話もあったが、同部署の現室長はWHOでの勤務経験もあり、医師免許も保持している厚生労働省からの出向者であるが、一連のワクチン供与含め陣頭指揮を執っているのは同部署である。

(2)行政事業レビュー

【外務省】
 6月3日に、行政事業レビュー春の公開プロセスをオンライン形式で実施し、ア グラスルーツからの日米経済関係強化プロジェクト、イ 一般文化無償資金協力、ウ 国際熱帯木材機関(ITTO)分担金および拠出金の3件が取り上げられた。
 いずれも事業内容の一部改善という形の評価を頂いており、概要を紹介する。
 一つ目の「グラスルーツからの日米経済関係強化プロジェクト」は、日本企業の投資、雇用による米国経済、社会の貢献を、特に、州、地方レベルにおいて米国民に正しく認識せしめるため、通商、経済政策の決定プロセスに影響力を持つ有識者との人脈を形成し、日本企業の活動の円滑化を図るなどを通じて、草の根レベルから日米経済関係の深化、強化に貢献することを目的としている。この事業は外務省の一般行政経費として事業規模が大きいこと、2016年の米国大統領選挙を契機に始まった事業であり、米国の政権が交代したタイミングで、これまでの実績を検証して、今後の事業実施に向けて課題について議論をする観点から選定したもの。全体として、事業としては意義があり、個々の案件についても評価できるものが多いという指摘、政権交代やコロナ禍といった大きな環境変化の中で、課題の変化をきちんと捉えて、より有効性を発揮できる方向性を打ち出していることは前向きに評価できるとの指摘があった。その上で、成果目標(アウトカム)を明確にする必要性について議論となった。数値化や把握が難しい事業だが、定性的な指標かつ中長期的な成果をさらに踏み込んで検討してほしいといった指摘や、人脈形成・地域住民感情の改善、対米直接投資・対米日系企業進出のためのより良い環境整備について定量・定性両面から調査把握する努力をしてほしいといった指摘があった。
 次に、「一般文化無償資金協力」は、無償資金協力の一類型であり、精神的な豊かさをもたらす文化・スポーツ分野の開発を推進することで、人間中心の開発をし、質の高い成長とそれを通じた貧困削減の実現を目的とするものである。同時に、日本のソフトパワーなどの強みを生かした支援を行うことで、親日感情の醸成や対日理解の促進といった効果が期待できるという外交政策上の観点も踏まえつつ実施している。
 本事業は、昭和50年度に創設された文化無償資金協力と平成12年度に創設された文化遺産無償資金協力を統廃合するかたちで、平成17年度に発足したもの。そこから15年以上が経過した。これを踏まえ、その意義、実施プロセスについて点検を行うとの観点から選定されたもの。本件については、案件のほとんどが2億円未満で事後評価の対象外となっていることから、事後監理の在り方が重要であり、今後も対応に留意してほしいといった指摘や、外交政策と各案件のより明確な関連づけやビジョンを示し、具体的なアウトカムを設定することが望ましいといった指摘があった。また、案件選定に関し、日本国民にとっても相手国双方にとっても、案件選定基準が明確になるように日本側の方針を示すことが望ましく、そのためには中期的な目標を立てて実施することは一案であるといった指摘も頂いた。
 3つ目の「国際熱帯木材機関(ITTO)分担金および拠出金」については、ITTO事務局が不適切な投資により多額の損失を出したことを受け、平成28年度に会計検査院から、ITTOの拠出金管理に関して政府側の国際基金の決算書の確認等が不十分だという旨指摘を受けた経緯がある。これを踏まえて今後の拠出の在り方を検討する観点から選定された。
 まず、投資損失問題について、ガバナンスの向上を図るための内部規則の改正等の制度面での取組は行われているが、実際の運用が重要であり、今後、規則に沿った運用がなされているかの確認が重要といった指摘があった。
 このほか議論になった論点としては国民への説明・知名度の向上が挙げられる。日本国民に熱帯木材とITTOに関心をもってもらうことが重要であり、活動内容等について、国内向けのアピールの在り方を検討する必要があるという指摘があった。また、日本の優れた植林や木材加工技術を、ITTOを通じて途上国に普及させていくこと、脱炭素や生物多様性についてもITTOの影響力を高めていく中で、日本の影響力拡大にもつなげていくことの必要性も指摘された。
 これらの他にも非常に有意義な御提言を頂いたところ、今後の事業実施に反映させていくとともに、引き続き予算への反映につなげていきたいと考えている。

【外務省】
 長時間にわたり忌憚のない御意見・御指摘を頂き感謝申し上げる。ODA評価や国際機関評価も含め自分の経験上一連の様々な評価に接する機会があるが、常に考えさせられるのは何のために評価を行うのか、誰のために、またどのようなメリットがあるのかというところである。一般的に考えると、評価をしている以上、当該施策の質の改善という面と国民への説明責任という性質があり、両者のバランスはうまくいく場合といかない場合がある。例えば、政策の質の改善という面では、先生方のような専門の方々にお伺いすれば良いという場合もある反面、そうすると国民への分かりやすさという部分と相反してしまうこともある。政策の質の向上という面においても、評価期間を3年に1度にするのが良いのかという期間の設定から始まり、政策の分割の仕方を含め、常に悩みつつ試行錯誤しながらやってきている。国民への説明責任という観点では、政策評価のみならず、例えば外交青書も発行しており、あるいは日々の情報発信によって国民への説明責任を日々果たしてきているという自負もある。クリアな答えというものは無いのかもしれないまでも、政策評価審議会からの提言及び本日皆様からいただいた御意見も踏まえつつ、政策評価の在り方について先生方とも連携させていただきながら考えて参りたいので、引き続きの御指導よろしくお願い申し上げたい。改めて、本日に至るまでの皆様方の御協力に改めて感謝申し上げたい。


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