予算・決算・財務

(2019年(平成31年)2月21日)

令和元年8月30日

 (注)文中の「新基準」は2019年(令和元年)度の評価基準案(会合実施時),「旧基準」は2018年(平成30年)度の評価基準を指す。

評価の制度全般(評価サイクル等)
  • 分担金・義務的拠出金を2年毎のサイクルに変えるのは非常に望ましい。拠出金に係る性格の違いを踏まえて評価のサイクルを変えるのは良い改善方法の一つ。
  • 本評価は,どれだけ拠出を通じて国際課題に貢献しているか,及び日本外交にとってプラスになっているのかの2点で見ているものと理解。
  • 2018年(平成30年)度評価の旧基準1と3の関係は重要。一般的に国際機関に拠出するというのは,旧基準1の国際機関としての成果・貢献に対して日本が支援するという側面と,旧基準3で同機関・拠出がツールとして役立っているという観点による側面がある。国際機関を支援していく上で,これらの側面をどのくらい強調していくのかが戦略と関わってくる。
  • 事業活動で成果が見える国際機関とそうでない機関は,機関の性格の違いを踏まえて異なる評価の仕方が必要ではないか。
  • 条約に係る拠出金において,条約体事務局と条約自体は異なる。評価の対象を事務局だけに絞ると,短期間で積極的に動く性質ではないため,評価は難しいのではないか。例えば,事務局が各国に条約の批准を働き掛けるのは困難。
評価の活用
  • 評価が低いから拠出額を上げるか下げるかは理論的には両方ある。
  • C評価は「一部改善を要する」だが,記述内容から改善点は見えてこない。どこを改善すべきかを提示すべき。評価シート上,注目されるのは総合評価,改善点,そして予算額であり,Cがついた場合は改善点を明示する必要がある。
  • 国際機関評価ネットワーク(MOPAN)の査定結果との整合性や連携といった戦略的思考が必要だろう。評価結果を活用するうえで連携しても良いのではないか。
評価基準全般(評価シートの書きぶりを含む)
  • 各拠出は,全ドナー国の中で日本は何位に位置しているのかの記述が必要ではないか。評価をする上でそうした視点があるとよい。
  • 評価シートは評価項目の「日本の」を他国の名前に置き換えても使うことができる内容となっており,日本の独自の視点が見えにくい。日本外交や国際協力の上で譲れない線のようなものも評価基準の中にあっても良いのではないか。賛否両論があるので良い例だとは思わないが,例えば人間の安全保障の視点から見る,等。国際機関による担当分野での活動を評価する際,日本独自の視点があるのではないか。新基準2ではなく,新基準1でも拾える観点がありえるのではないか。
  • 異なる拠出金シートで共通の拠出先機関につき,同一の内容が記載されていた。あまり事情を知らない人が読むと混乱する。
  • 京都議定書拠出金と気候変動枠組条約拠出金では,事務局はいずれも気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局であり,加盟国の数は別だったものの,シートの記述の9割は一緒だった。
  • バーゼル条約・ロッテルダム条約・ストックホルム条約の事務局を共同事務局にしたことは非常に合理的な動きである一方,日本人職員に関する記述が(3つのシートに)共通であることが気になった。
  • ユネスコ拠出金(任意)シートに「ユネスコが本来あるべき加盟国間の友好と相互理解を促進する国際機関としての姿を取り戻すよう機関本来の姿に戻すため」とあるが,今まで逸脱していたのかとの印象が残った。ネガティブなことを直接的な表現で書くということではなく,一般の人たちが見たときに腑に落ちる書き方は重要。
新基準1 国際機関等の活動の成果・影響力
(旧基準1 国際機関等の専門分野における活動の成果・影響力)
  • 2018年(平成30年)度評価の基準1で評価が良かったものは,進捗や成果について定量的・定性的の両方の観点からわかりやすく書かれていた。目標や活動は記載されているが,進捗や成果が記載されていない評価シートがあり,記載内容の不足によって評価が下がるのは望ましくないため,2019(令和元年)度シート記入項目案において,1-1~1-4まで,目標・活動・進捗・成果の各段階を分けて記載することは良い。
新基準2 日本の外交政策上の有用性・重要性
(旧基準3 日本の外交課題遂行における国際機関等の有用性・重要性)
  • 旧基準1の日本からの働きかけに係る内容を新基準2に吸収させるのは,論理的にすっきりしている。
  • 援助の現場となる相手国における日本のプレゼンスの高さは,国連などの事業主体というよりも,実施団体(NGO)によるものが大きい。日本のNGOは実施主体として相手国に与える日本の印象を強く意識して活動している。日本のプレゼンスの点では,国際機関における日本人職員の数が単純に増えていく以上に,どれだけ日本のNGOが活動できているかも国益にとって重要な点だろう。
新基準3 組織・財政マネジメント
(旧基準2 国際機関等の組織・財政マネジメント
旧基準5 日本の拠出金等の執行管理におけるPDCAサイクルの確保等)
  • (本評価制度の名称にある「拠出金等に対する評価」といっても)多くの場合,評価の単位は拠出金ではなく国際機関・組織。特に旧基準2「国際機関等の組織・財政マネジメント」の評価に当たっては,拠出金単位ではなく,機関全体として分担金・拠出金を管理する能力が問われていると見受けられる。シートの書式を変える必要はないが,実質的には組織体への評価となることを意識すると良い。
  • 2019年(令和元年)度評価において,基準数を2018年度の5つから4つに減らすのは良いだろう。基本的に拠出のPDCAサイクルは日本がグリップすればうまくいく。うまくいかない場合は特例であり,それは組織・財政マネジメント全体に問題があることだと思うため,旧基準2「国際機関等の組織・財政マネジメント」と旧基準5「日本の拠出金等の執行管理におけるPDCAサイクルの確保等」を統合して,新基準3「組織・財政マネジメント」とするのは良いだろう。
  • 日本の任意拠出に対するPDCAサイクルは可能なのか。国連機関は各ドナーの意向から逸れないように密なコミュニケーションを取ろうとするが,組織全体のPDCAサイクルの他,個別に日本の拠出金だけ独立して見ることは可能なのか。複数国によるプール予算に対する拠出なら可能かもしれないが,個別の任意拠出に全てできるかは疑問。任意拠出には2パターンある。一つは国際連合開発計画(UNDP)等の機関に対する拠出。全体予算に出しているので,組織としてPDCAサイクルとして説明する。もう一つは,限られた国が事業のファンドに拠出するというパターン。後者は前者と異なったPDCAサイクルになる可能性はある。
  • MOPANや英国国際開発省(DFID)といった第三者による評価について個別の欄があっても良い。
  • 国際機関によっては予算策定や内外の評価・監査は毎年実施していない。各機関のサイクルに多少合わせると,作業の省略化につながる他,内部監査の内容を評価にきちんと含めることで「機関自身による評価もされている」との評価につながるだろう。
  • 監査について,機関の規模や予算は大小あり,各機関の状況に応じて監査の実施主体や頻度等が異なるため,外部監査と内部監査の両方を実施していないことが直ちにマイナス評価になるわけではない。監査で指摘された問題にきちんと対処できているかを評価することも重要である。
新基準4 日本人職員・ポストの状況等
(旧基準4 国際機関等における日本人職員・ポストの状況等)
  • 2018年(平成30年)度評価では,日本人職員が少ない等の事情のある機関の総合評価が低いという傾向がある。外交上重要な条約・機関について,日本人が少ないからといって評価が下がり,ひいては予算にまで影響が及ぶとすると,本来の意図から外れるのではないか。評価の上では日本人職員数よりも外交上の重要性・有用性の方に重点を置いた方が良い。日本人職員に係る基準は,当該機関への日本人送り込み上の課題を抽出する役割はあるとしても,国際機関側の問題ではない可能性がある。総合評価に反映するにあたって,機関のパフォーマンス,外交上の重要性と比べると歪みが生じているのではないか。
  • 本件評価を行うのは,拠出金が日本の外交に貢献しているのか,説明する必要があるためであり,ドラスティックだが,日本人職員数は外数にし,参考程度にしたら良いのではないか。
  • 日本人職員数は記載してあって良いと思うが,数を評価に適用すべき機関とそうでない機関,更に拠出額とリンクさせる評価方法は慎重にした方が良い。
  • ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)を評価に含めないのは,根付いた人のみを評価し,根付かなかった人は評価しないという厳しい視点で評価していると理解した。趣旨としては良いと思う。
  • JPOを定性的に評価するのも良い。また,日本のJPOの定着率が国際的に見ても高い場合,成果として残るはずなので,JPOの強みを見せようと思うと定着した数の方が実質的な成果を見せられるのではないか。
  • 日本人職員数につき,国連分担金やユネスコ拠出金等,機関が公表する望ましい比率の達成有無は,国際機関側が設定した客観的な指標であるので,それに向かって増やしていこうというのは分かりやすくて良い。
  • 全体の職員数が多くて機関の方で望ましい職員数を発表している機関で,現実の日本人の職員数を用いて評価するのは良い。
  • 化学兵器禁止機関のシートでは,「化学に関する専門知識と語学力の両立が求められており,日本人職員の採用が難しくなっている」とあったが,機関側は受け入れる体制にあっても,人材を創っていくのは日本の課題で機関側の問題ではない。
  • 日本の顔が見えるという点につき,国際機関に日本人職員が増えるということは,その機関の本部や事務局レベルでのプレゼンスという面では良いと思う。しかし,現地社会へのインパクトという観点からみれば,国連機関の日本人職員数よりも,日本のNGOへの支援を強化し,現地でのプレゼンスを高めた方が効果が高いのではないか。
  • 条約体事務局等,20数名の小規模な機関では全加盟国から職員を採用することは困難。また,規模の大きさによっては2人が1人に減るインパクトの違い等,不均衡がある。
  • 望ましい比率が算出されていないにも関わらず,「財政的な貢献が20%であるのに対して日本人職員数の比率は12.5%を占めている」という記述があったが,国際機関の規模の違いがある中,日本人職員比率と拠出率を比較すること自体,論理的に正しいか疑問。小さい機関で,そのような書きぶりをすると,かえってミスリーディング,不自然な印象を与える。
  • 多くの機関は「望ましい職員数」を出していないので,同じフォーミュラを用いてしまうと評価は歪んでしまうのではないか。
  • 日本人職員のプレゼンスを評価することは良いが,公表する性質上,国際公務員という中立的な立場である点を意識して出した方が良い。
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