政策評価

平成28年2月23日

1 日時

 平成28年1月27日(水曜日) 14時40分~16時25分

2 場所

 外務省

3 出席者

(有識者)(五十音順)
秋月 謙吾 京都大学大学院法学研究科 教授
遠藤 乾  北海道大学大学院公共政策学連携研究部 教授
山田 治徳 早稲田大学政治経済学術院 教授
(外務省)
小野大臣官房総務課長,鈴木大臣官房考査・政策評価官,市川総合外交政策局総務課長,村岡ODA評価室長,中川総合外交政策局政策企画室首席事務官,西田会計課総務室課長補佐ほか

4 議題

  • (1)平成28年度外務省政策評価
  •  ア 実施計画案
  •  イ 実施要領案(政策評価実施に当たっての課題・問題点と対応策)
  • (2)政策評価をめぐる最近の動き
  •  ア 政策評価審議会における政策評価制度の改善策の検討
  •  イ 会計検査院による政策評価に関する随時報告
  • (3)行政事業レビュー
  • (4)その他

5 発言内容

(1)平成28年度外務省政策評価

【外務省】
 まず,本日の会合の流れを説明する。議題(1)において,28年度の政策評価の実施計画案及び実施要領案について当方から説明を行い,それに対してご意見やご助言をいただきたい。議題(2)では政策評価を巡る最近の動きとして総務省の政策評価審議会での制度改善の検討状況及び会計検査院による政策評価に関する随時報告の概要をご紹介する。議題(3)では政策評価との連携強化がうたわれている行政事業レビューについてご説明する。

【外務省】
 当省の政策評価については過去数年間,目標管理型の政策評価の導入,政策評価と行政事業レビューとの連携の強化,政策評価の「標準化」,「重点化」の導入等制度変更が行われている。27年度の政策評価では2年度分の評価を実施するための判定基準を導入し,有識者の方々にも議論いただいたと承知している。
 議題に沿って詳細は後ほどご説明させていただくが,28年度の当省政策評価の開始に当たりご意見・アドバイスをいただければと思う。
 まず,27年度の評価の過程で明らかになった課題を踏まえ,評価書のフォーマット及び判定基準を改善したいと考えている。判定基準については,測定指標全体としては成果があったにも関わらず,年度目標のごく一部が達成できなかった故に測定指標全体の判定が未達成となるケースが生じた。このようなことも踏まえ,28年度の評価ではより適正な評価が行われるよう工夫をしていきたいと考えている。
 また,28年度の政策評価では以下の3点につき留意しながら評価書及び事前分析表を作成したいと考えている。1点目は施策目標や中期目標の実現に向けて,年度目標の達成がどのように寄与するかの因果関係を念頭においた評価と目標設定を考えている。2点目は,事実関係の記述の充実である。当省は定性的な測定指標を中心にしているため,事実関係部分の記述をより分かりやすくしていきたい。3点目が,外交には多様な主体が関わるが,これらの関係性がより分かるような形で,あるいはそれを念頭に置いて取り組みたい。外交政策は当省だけが,あるいは政府だけがやっている訳ではなく,民間団体,国際機関,国会,他省庁等どのような主体からどのような協力を得て,当省として目標の達成に向けて活動したかをより明確にできないかという問題意識を持っている。

ア 実施計画案 及び イ 実施要領案

【外務省】
 28年度の実施計画案と実施要領案をご説明する。
 実施計画案については例年とほぼ変更はない。本年4月1日から明年3月31日までを計画の対象とする。事後評価の対象については,当省では主要な政策を19施策に分類し,26年度から評価の重点化により,この19施策を大きく二つに分けて,それぞれのグループを毎年交互に一回ずつ,過去2年分の実績を評価することとしている。28年度は19施策のうち10施策につき2年度分の評価をする予定である。この他に政府開発援助の未着手・未了案件の事後評価を行う。また,租税特別措置等に関する事後評価として「特定非営利活動法人に係る税制上の優遇措置」を対象として評価を実施予定である。ただし,同特例措置は内閣府主管,当省共管のため,28年度に事後評価を行うか否かについては現在内閣府の判断待ちの状況である。事後評価の手法については,事前分析表で予め設定した目標の達成状況を測り,中長期的な効果の発現状況や外部要因の影響を勘案しつつ評価を行う。政府開発援助の未着手・未了案件については,当該案件を引き続き実施するか,それとも中止するかを明らかにする形の評価とする。租税特別措置等に関する事後評価はガイドラインに基づき行うが,具体的には当該租税軽減措置がNPOの活動及びその活性化にいかなる効果があったかの評価を行う。
 実施要領案については,27年度の政策評価過程で浮き彫りになった課題や昨年8月のアドバイザリー・グループ会合でいただいたコメント等を踏まえて評価書のフォーマットや判定基準を一部改定した。まず,フォーマットは基本的には27年度版から大きく変わっていないが,細かい点で2点修正した。1点目は「施策の分析」及び「次期目標等への反映の方向性」欄を「評価結果」の一部と明記した。政策評価の目的はPDCAによる政策のマネジメントサイクルによって施策の改善や見直しを行い効果的かつ効率的な行政を推進することにあるが,この流れを明確化する,施策の有効性と効率性を分析,評価してその結果を次期目標に反映させるというプロセスをより見えやすいようにするためマイナーな変更ではあるがフォーマットを改定した。2点目は「施策の分析」欄の記載につき,27年度までは施策または個別分野全体につきまとめて記載する形式としていたのを測定指標ごとの記載とする。目標の達成状況は測定指標ごとに記載しているので,分析についてもそれに合わせて測定指標ごととし,より分かりやすくしたいと考えている。
 次に目標達成度合いの判定基準及び手順についてであるが,27年度は初めて2年度分の目標達成状況を判定するため試行的に基準や手順を定めた。この基準等の運用状況を踏まえ,また,昨年夏に有識者の方々からいただいたコメントを踏まえ,一部改訂した。変更点をご説明する前に判定手法について改めて説明する。判定手順は従来どおりとし3段階で行う。第1段階は測定指標の26,27年度各年度の年度目標の達成状況の判定をそれぞれ5区分で行い,第2段階では両年度の判定を組み合わせる形で2年度分の評価も5区分で行う。第3段階では各測定指標の2年度分の判定結果をもとに施策全体で各行政機関共通の5区分で判定を行う。次に判定基準についての27年度からの変更点を申し上げる。当省の政策評価においては定性的指標の設定が多くなっており,外交政策の遂行には外部要因の影響も大きいため,その影響を勘案する余地を残していたが,更に28年度においては改善を図りたいと考えている。具体的には,年度目標に並ぶ具体的目標のうち,施策目標や中期目標実現への寄与度が比較的低いものがたとえ達成できなかったとしても,他の具体的目標がその目標を大きく上回って達成され,測定指標全体の進捗状況は年度目標の水準を上回ると判断される場合には,年度目標の達成状況を目標達成と判断することを可とした。ただし,このような場合も,判断した理由についてはきちんと説明するようにという指示は出していきたい。変更の背景としては,27年度政策評価の過程において,ある測定指標全体では大きな成果があったと判断されるが,具体的目標のごく一部が達成されなかったことにより,測定指標全体の達成状況が目標未達成となった事例があった。そこで外交政策の特性も勘案し,総合的な視点からの評価を可能とするためにこのような変更を加えた。当省の政策評価においては,客観的な評価を実施するために目標を具体化するように努めているが,目標達成と判定されるためには全ての具体化した年度目標の達成が必要との評価基準を維持した場合,年度目標を具体化すればするほど測定指標全体の目標達成が難しくなるという意識が働き,目標具体化の妨げとなることが予想される。これを防ぐためこのように判定基準を変更したいと考えているが,説明責任はきちんと果たさなければならないと意識している。
 また,説明責任の観点から評価書の書きぶりについても精緻化を進めていきたいと考えている。具体的には冒頭説明した3点で,1点目は施策目標や中期目標と年度目標の因果関係を明確化することである。ロジック・モデルの考え方を活用する等してできるだけ因果関係を明確化し,評価書のレベルでも明らかになるように書きこんでいくということをしたい。2点目は昨年のアドバイザリー・グループ会合での有識者の方々からのコメントを踏まえ,施策の成果を示す事実関係の記述の充実を図りたい。当省の政策評価は定性的な測定指標が多く,基準がはっきりしなくなりがちであるが,これを補うために施策の取組実績で「何をした」というのみではなく,取組の結果,どのような成果が出たのか,その成果の証左となる事実関係の記述を更に充実させたいと思っている。これによって判定の根拠も明確化できると期待している。3点目,これも有識者の方々のコメントを踏まえ,多様な主体の協力が必要となる外交政策の評価として,それぞれの主体による寄与を勘案して記述を具体化させることを進めていく。外交政策は当省のみで進められるものではなく他国や国際機関,国会や他省庁,民間や地方自治体等様々なアクターが協力をして実施されている。そのため評価に当たっては,他の主体からどのような協力を得て施策を実施したのか,当省は目標達成に向けてどのような取組や寄与をしたかを可能な範囲で明示した評価を進めたいと考えている。これを逆にいえば目標の達成に向けて当省の責任がどこまであり,裁量がどこまであるのか,逆に何が障害あるいはボトルネックとなっていたのかが分かるようにするという効果もあると考えている。
 以上,実施計画案及び実施要領案の概要及び27年度からの変更点とその背景及び理由等を説明させていただいた。ご質問,ご意見,ご助言をいただければ幸甚。

【有識者】
 フォーマットで「施策の分析」と「次期目標への反映の方向性」を評価結果の一部としたのは,これも評価結果ということか。

【外務省】
 ご指摘のとおりである。「目標達成」等の各行政機関共通区分等の記載欄だけが評価結果ではなく,この評価に当たっての分析と更にいえば来年度目標への反映の方向性,この2つの欄もまとめて見てほしいという意図である。

【有識者】
 「評価結果」欄は我々のコメントを参考にして外務省側で記入するのか。

【外務省】
 この評価結果は当省各部局側の評価である。有識者の方々のコメントは「学識経験を有する者の知見の活用」欄に記入することでこれまでと変更はない。

【有識者】
 主体が多岐に渡る場合の記述はどこに反映されるのか。

【外務省】
 具体的には「測定指標」の「施策の進捗状況・実績」欄の取組実績に関し,これまでは外務省だけが主語になっていたものを,「○○国際機関とともに」や「○○県と一緒に」このような取組をした等もう少し詳細な記述とする。

【有識者】
 27年度評価の際,例えばヨーロッパや中南米など細分化された施策ごとに所見を書いたが,場合によっては地域や機能をまたがるようないわゆるクロスセクターのコメントを書く欄がないというコメントをした。結果としてはどこかでコメントとして取り入れてくださったと思うがいかがか。

【外務省】
 既存の施策の枠組みの中には入らないコメントは政策評価書冒頭の「総括・概要」部分に,従来ここに有識者の方々のご意見を書く欄はなかったが,ここにクロスセクターのコメントを記載させていただいた。

【有識者】
 次回コメントをする時に,今年のテーマの中で分野がまたがるような,例えば平和協力とかテロとか,他の分野にまたがるようなコメントがあった場合には書く欄があるのか。

【外務省】
 有識者の方々に所見をいただくためにお送りするフォーマットに各施策にかかるもの以外のコメントを書く欄を設ける。

【有識者】
 来年度の評価を念頭に置いた3点ということで,2点目として挙げられた事実関係の記述を詳細にという点を高く評価したい。前々回の会合で政策評価の目的の説明責任について申し上げたが,説明責任という言葉は非常にやっかいで,正しく理解されているかというと実はそうではない。政策評価法そのものでも,実は法律の議論の際には「アカウンタビリティー」と言われていたが,法文,法律になった時点では「アカウンタビリティー」ではなく「説明する責務」に変わっているわけで,多少混乱がある。説明責任とは何かということだが,その中で,国民の付託を受けて行う外交というものを皆さん方が一生懸命やったのだということをきちんと説明してくださいというものである。どうしても成果主義の流れの中で致し方ない点もあるが,これまでの政策評価を見ていて気になっており,指標の評価や皆さんが一生懸命取り組まれていることの説明は決して控えめになる必要はなく,堂々と真面目に仕事をしてきたことを書いて欲しい,それを書かないと分からないので,2点目の事実関係の記載の充実については評価したい。その流れの中で,先ほど他の先生がご質問されたフォーマットの修正は非常に分かりやすくてよろしいかと思う。我が国の政策評価書は非常に技術的には精緻化されているが,特に国民から見たら分かりにくいので,修正により,皆さん方が言いたいことがより明確に伝わるのではないかと思う。この点非常に高く評価したいと思う。
 評価基準の測定指標の目標の達成状況の判定については,寄与度が低いもの,いわゆるウェイトを付けるということだが,考え方としてはもっともだが,そもそもとして寄与度が低い目標を入れる必要があるのかなと考える。どの目標を掲げるか,どの指標を取り上げるかということで,皆さん方が何を重視しようとしているのかが分かる。皆さん方が何をどのような状態にしたいのかを掲げるのが目標なので,そこに寄与度が低いものが掲げられているのは,実は目標のあり方からいってあまり望ましくはない。外務省のこの部局はこの仕事に関してこれを重視するということを伝えるのが目標である。行政上の一連の取組を具体的にしたのが目標なので,その観点から見ると,寄与度が低い目標があるというのがそもそもおかしいのではないかという点はあるが,実際のところは,ロジックを明確にし,その中で説明していただければよいのではないかと考える。その点でもそもそも論ではあるが,評価のあり得べき方向に近づいているという意味では前向きに評価している。

【外務省】
 当方から申し上げた2点目の成果の記述の充実について,自分も着任後,政策評価書を読んだが,例えば,○○会合をやりました,○○締約国会合に出席しましたという記述が多い。しかし,評価とは,その結果として何が生み出されたかだと思うので,まさに説明責任をきちんと果たすという点から,何をやった結果どういう効果が現れた,外交の場合は効果が現れるのはすぐではなく難しい面はあるが,できるだけ具体的に,定性的な指標でもきちんと説明ができるように充実させたいと思っている。また,寄与度の点についてはおっしゃる通りだと思う。なぜ寄与度が小さいものが載っているのかというと,定量的指標が少ない中でできるだけ目標を具体化せよとの要請の中で,もちろん外交政策なので具体目標全てを書くわけにはいかないのだが,書けるものをできるだけ書いてきた。ところが,例えばある地域との経済関係の強化進展という測定指標の一つの具体的目標として「○○国とのEPAの実質合意を目指す」というものがあり,EPAは実質的合意に至らなかったが,同国との関係では全般的には経済関係が強化されており,地域のその他の諸国との間でもいろいろな経済協議等により経済関係が強化されている中で,1つのEPAが実質合意に至らなかったがために経済関係の強化進展という測定指標全体として目標達成とならなかったのは,やはり外交に携わる者からみてそういう感覚ではない。こうした場合により適正な判定を行う必要があるという観点から判定基準の一部を変更したいと思う。例えば定期的に開催している経済関連の会合1件が何らかの事情で開かれなくても,二国間の間で総理が率いる民間企業の経済ミッション等を通じて経済関係が強化された場合などにも,その点を勘案して評価をしていきたいと考えている。

【有識者】
 以前も同じようなことを申し上げたので議事録にも残っていると思うが,定量的指標において,地域別の相手があるので完全に統一化するのは無理だと思うが,書きぶりや指標化の方法に少しバラツキがあり気になる。表層的なことだが,例えば要人往来数につき,「日本側は外務省政務三役,相手国は元首,首脳,外務大臣」というものや,「要人往来数」とだけ書いてあるところもあったり,「外相会談数」を書いているところもある。組織内指導があってもいいのかなと感じており,もう少し揃わないのかと思う。もし,要人往来数は外務省として決まったものがあるのなら全部にそう記載するか,別にグロッサリーのようなものを作るようなことをした方がいいと思う。
 次年度の評価対象に広報が入るので見てみたが,例えば国内広報,海外広報,IT広報となっている。国内も海外も今やサイバースペースがかなり主流になってきているので,このような分類でうまくいくのだろうか。また,例えば,香港の総領事館もHPを出していて,その中でコメント等読んでいるが評価書には載せない,というようなやりとりを以前の会合でしたことがある。今は変わっているかもしれないが。一言でいうと,次年度は広報分野がどのような評価になるのか大いに楽しみである。

【外務省】
 要人往来数には確かにバラツキがある。昨年8月の会合でも議論された世論調査についても採用している局・課によって,日本での世論調査や相手国での世論調査等統一されておらず,おっしゃるとおりだと思う。ここは平準化してどれをもって要人とするのか統一することも一案である。一方,国によってどのレベルを要人と取るのかはそれぞれである。できるだけ統一したいと思うが一方で,国によって来日する要人数が極端に少ないというのもあれば,極端に多い国もあり,その統計が取れるものもバラツキがあるので,若干のバラツキは残ると思うができるだけ統一されるような方向で指導はしていきたい。

【有識者】
 もし定義が違うのであれば,読む方の立場から見れば,多少煩雑でもこの指標ではこういうカウントの仕方をしていますというのを明示しないと,ある要人往来数の定義を見て,他もこれと同じことを言っているに違いないと思って見るということになると,少なくともミスリードだと思う。

【外務省】
 そこは今後,定義を明示するようにする。広報分野についてのご指摘については,基本的に評価書の施策割りを予算の体系に合わせる必要があり,一部例外はあるが,基本的に課室ごとに個別分野を設定しており,この結果,広報分野においては国内広報と海外広報とIT広報と分けられている。ただ,それぞれについてクロスに関わっているところもあるので,全体的なところが分かるように書くように指導していきたい。

【有識者】
 ウェブの世界というものが行政と深い関わりがなかった時代は,広報というのは,言葉は悪いが典型的なやりっぱなしというか,市報は月に一回出せばいい,これがどういう形で市民生活に役立つとか,実際に何人ぐらいの人が読んでいるのか,それは知りませんがきちんと出していますということであったが,最近はそう言っていられなくなっている。極論すると,広報は全部フェイスブックでやるというようになって,フェイスブックでどのようなインパクトがあるのかきちんと分析できるようになり,それが正しいかどうか分からないが,そういう時代になりつつある。そのため,外務省が予算を使って広報を展開することにどのようなインパクトがあって,世論調査等は使われているようだが,どういう数でどこが見られているのかは一工夫すれば分かる。マーケティングでいうと,スーパーが新聞に広告を出すのと,ネットで出すのとは違うので,紙媒体はどこで誰が読んでいるのかは全く分からない,大きな文字で広告を出すしかなかったのが,ウェブの世界になったら,毎秒ごとに今ここで誰が読んでいる,ここは紙媒体の広報では扱いが小さいけれど,ウェブではこういうところが見られているんだというのが分かるというのが売りになっている。それがいいか悪いかは別としてそういう時代に入りつつあるので,組織割り,予算割りというのはよく分かるが,ある程度工夫できるところは,外務省の広報はこういうやり方をやっていて,こういうインパクトがあって,こういう問題点があるということが外部の人にも分かるようにするということが,ある意味において評価の値打ちだと思うのでその点ご配慮いただければと思う。

【有識者】
 国際機関の評価については基本的に去年と同じような感じで違う組織を評価する形になるのか。 自分は前回初めての評価だったが,取り上げられた機関がなぜ取り上げられたのか分かるようにしていただけると助かる。去年は予算規模が10億円以上の大きなものを対象にしているという説明は受けたが,そういうことか。

【外務省】
 3つの分野から一つずつ毎年取り上げているので,今年は去年評価した機関とは違うものを評価する。予算額は,数十万円から数百億というものもあるが,インパクトの大きいものとしておおむね10億円以上としている。該当する案件の一覧のなかで淡々と機械的に取り上げていきたいと考えている。この年はこれを選んで,来年はこういうことがあったからこの機関は選ばないというようなことはできれば我々としては避けたいと思っている。

【有識者】
 経済協力のところで評価基準が分からないところがある。去年評価をした際に事前分析表が手元になかったが,どの項目にいくら使ったかというのは事前分析表に書いてあったということだが,評価書には大まかにしか書いていない。評価に際してどこにどれだけ予算を使ったのかという情報が確定していないタイミングで評価することもあるということだが,事前分析表も一緒に送ってほしい。

【外務省】
 ある施策の予算額と評価の記載は1年ずつずれており,例えば,26年度事前分析表の経済協力施策部分の予算額と27年度政策評価書の経済協力施策部分の評価を見合わせていただくと,予算と取組実績が分かるようになっている。

【有識者】
 執行額は記載されていないのか。評価の観点からすると執行額がないのはいかがかと思う。

【外務省】
 事前分析表の情報は予算額である。会計検査院からも指摘があり,今後,評価書に評価対象年度の執行額を記載することになったが,施策全体の執行額は7月下旬に出るため,有識者の方々に評価書案お送りする時点で入手できる数値はご提示するよう努力する。

【外務省】
 以上,有識者の方々からいただいたご助言を踏まえ,28年度により良い政策評価を実施すべく進めていきたい。28年度の作業スケジュールを念のためご紹介したい。この会合を踏まえ,各課に作業依頼を出し,それを取りまとめたものを7月上旬に有識者の方々にお送りする。これを元にお手数だがご所見の執筆をお願い申し上げる。ご所見の送付を受けて7月後半に次回のアドバイザリー・グループ会合を開催したいと思っているので日程調整をさせていただく。その後当省内で幹部決裁を経て,8月末を目途に28年度政策評価書を完成させ,公表という手順を考えている。引き続き半年間程度にわたりよろしくお願い申し上げる。

(2)政策評価をめぐる最近の動き

ア 政策評価審議会における政策評価制度の改善策の検討

【外務省】
 議題(2)では政策評価に関する最近の動きを2点ご紹介させていただく。1つ目として,総務省の下に置かれている政策評価審議会の中の政策評価制度部会,さらにその下にある目標管理型評価ワーキング・グループにおける議論,2つ目が会計検査院の検査報告をご紹介する。
 1つ目の目標管理型ワーキング・グループでの議論であるが,まだ中間とりまとめの段階で今年度いっぱいかけてまとめていく方針である。このワーキング・グループにおいては,政策評価の改善に資するということを主眼とし,各府省からもヒアリングを行い,事前分析表を分析しながら,改善方策を検討してきているところで3つの課題が見えてきたということである。1つ目がモニタリングを活用できる若しくはモニタリングを活用した方が望ましい施策も目標管理型評価となっているが,全てを目標管理型にする必要はないのではないか,モニタリングを活用した方が望ましいものがあるのではないかという指摘。2つ目が目標を設定するまでのプロセスが明らかになっていない,因果関係が明らかになっていない事例が多いのではないか。3つ目が無理に測定指標を定量化していないか,定量化しすぎではないか。この3つが論点として出てきている。
 目標管理型評価は全府省を対象として約500の施策が対象である。現在は26年度からの措置として実施時期の重点化を行っている。当省の場合は2年おきのため,1年目はモニタリング,2年目に2年度分の評価を行っている。こういうことを各府省でここ2年間ほどやってきているが,この中で見えてきたのが全てを目標管理型評価の対象とする必要はないのではないか。例えば,評価結果を施策の改善に反映する余地が乏しいものについては,政策評価ではなくモニタリングに移行させてはどうか,あるいは目標や実績値が安定的に推移するような施策については実績値にエラーが発生したときのみ評価するという選択肢もあるのではないか,というのがワーキング・グループでの方向性になってきている。2つ目は目標設定までのプロセスを明らかにせよ,という点である。もちろん各府省とも目標を立てて,施策を考え,達成手段を選ぶに当たって分析は行っているようではあるが,どうもそこがはっきりしない,因果関係が十分に明らかになっていない,そこで可能な限りエビデンスに基づいて分析をして,必要な達成手段,達成すべき目標を設定するプロセスを明らかにすることが望ましい。一部の府省では,事前分析表を作るにあたりカスタマイズしているところもあるようで,このようなグッドプラクティス等も見ながら,因果関係を明らかにするような書き方をするべきではないかという論点が出てきている。3つ目が一部の府省で行き過ぎた定量化がされているようであるが,必ずしも定量化をしたからといって適正な評価ができるものではないということで,例えば測定指標の定量化が難しいものについては,定性的な評価であってもきちんと書くことによって内容を充実化することもいいのではないか,あるいは,定量的指標を参考指標として補足的に活用することで評価してもいいのではないかという案がでてきている。このワーキング・グループの議論は継続しているので,今後2ヶ月ほど議論をした結果が我々に提示されてくると思われる。このワーキング・グループの結果,提言の内容を見ながら当省としても取り入れられるようなところは改善策として活用していきたいと考えている。以上,政策評価審議会における議論をご紹介させていただいた。

イ 会計検査院による政策評価に関する随時報告

 昨年前半の半年間程度,全府省の政策評価の実施状況が会計検査院の検査の対象となり,昨年12月に検査院が随時報告を発表した。内容は多岐にわたるが,この中で当省に関わりの深い目標管理型の政策評価に関わる所見を紹介したい。同所見では,政策評価の客観的かつ厳格な実施が求められている中で,有識者の方々のご知見など活用した上で,できる限り定量的な測定指標を設定する等政策効果の客観的な把握に努め,評価結果を政策や次年度以降の予算に適切に反映させていくことが必要であるとしている。また,目標管理型政策評価に関し3つの提言・留意点が出された。1つ目が定量的指標をできるだけ設定しつつも,もしできない場合には定性的なものであってもその達成度合いが検証できるような具体的な測定指標の設定に努めよとしている。全府省を検査したところ,2,307指標あったが,その中の25.7%の593指標が定性的で,かつ,391指標において,はっきりしていない,具体的に定められていないものだったので改善の余地があるというのが提言の一つである。2つ目は行政事業レビューとの連携強化をより徹底するようにとしている。行政事業レビューで出てきた考え方を政策評価書の中に明示して利用せよという指示である。会計検査院の検査の結果,政策評価の評価結果欄に行政事業レビューにかかる情報を活用した旨の記載があったのは2件のみであったということで,行政事業レビューとの連携が強く求められている中でより活用するように,PDCAのサイクルの中に明示的に入れるようにとの指示があった。3つ目は先ほども議論があったが,予算の執行額の明記である。まさにご指摘のように,執行額を踏まえた上で,どのように効果的,効率的に実施できたか,ということが評価できるので,政策評価書に明示するようにとの指示である。実はこれまでは執行額の記入は任意であった。ちょうど我々が評価書を公表する時期に執行額が分かるか分からないかという状況であったため,恐らくガイドライン策定時には総務省から任意との指示があったと思われる。現在では,ほぼ確定に近い額が入手できるようになったので,今後はきちんと書いていきたいと考えている。以上簡単ではあるが検査院の報告をご報告させていただいた。

【有識者】
 評価について,検査院がこういう形でメッセージを出されることは何度か過去にもあったのか。

【外務省】
 初めてである。恐らく政策評価も10年ほどやってきていることや,特に行政事業レビューも活発化しているので,そのような背景を踏まえて恐らく検査院としても関心を持ったのではないか。

【有識者】
 政策評価も予算やマンパワーを使ってやっているのだから,きちんとやれというような,いわゆる検査院的な発想で見ているのか,検査院も最近エフェクティブネスと言い始めてきており,やっていることが限りなく評価に近づいてきているのでどのような観点か関心がある。

【有識者】
 定量的指標についての検査院のコメントと総務省のコメントはどこで調整されるのか。

【外務省】
 恐らく定量化という要請はなくならないと思っている。ただ,何が何でも定量化せよと言っても,外務省のようなところではなかなか難しい中で,定量的指標もなるべく書くようにしている。定性的指標を多用せざるを得ないが,もう少しきちんとメルクマール,どうしてその評価をしたのかが分かるような閾値のようなものを明確化していくということを,検査院の指摘と総務省の下の審議会の指摘双方を見ながらやっていかなければならないと思っている。

(3)行政事業レビュー

【外務省】
 行政事業レビューについて簡単にご説明する。行政事業レビューは予算の確実な執行という観点から,各府省自らが行政事業の効率性や効果を検証して,その結果を次の予算要求や具体的な予算執行につなげていく,そのための取組になっており,今般の予算要求の中でも財務当局としても非常に重視しているということがよく見えた。春と秋にそれぞれレビューがあるが,春については各府省自らが全事業についてレビューを行うが,秋については行革推進事務局主催のレビューが毎年行われている。そういった中で当省については,26年の秋のレビューで,国際機関の拠出金について多面的な評価を行って公表すべきという指摘がなされた。それを踏まえて昨年夏の28年度概算要求の前に,全ての国際機関評価を実施し,その結果をHP上に公表して,さらに予算要求に反映した。このように過去のレビューにおける指摘を着実にフォローアップしてきているところである。27年度の春の行政事業レビューについては,特にJICAの交付金と技術協力,国際機関職員派遣信託基金(JPO),国際交流基金への交付金,この3つについては外部有識者による公開プロセスを6月24日に行い,その議事録等結果をHPに載せている。27年度の秋のレビューについては当省事業は対象にならなかった。28年度の行政事業レビューのプロセスについては,通常のスケジュールでは3月末頃に行革推進会議が開催され,それをもって開始される見込みとなっている。その会議において新年度の実施要領が策定され,そこで策定された実施要領に基づいて点検作業を行った結果を,8月末をめどに行われる概算要求前に公表することになる。また,昨年同様今年6月も3件程度の事業を選定した上で,外部有識者による公開プロセスを行う予定。

【外務省】
 これをもって議題を終了する。次回,7月末に開催させていただくのでどうぞよろしくお願い申し上げる。


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