グローカル外交ネット
外務省での勤務を通じて
外交実務研修員 幸田 杏子
(東京都から派遣)
1 はじめに
私は2024年4月より東京都庁から外務省へ派遣され、1年目は大臣官房総務課地方連携推進室、2年目の現在はアジア大洋州局南部アジア部南東アジア第二課で勤務しています。
外務省での勤務では、物事のスケールの大きさに圧倒され、意思決定のスピードの速さに追いつこうとするだけで必死の毎日で、気がつけばあっという間に本省勤務の終わりを迎えようとしています。
体験記というこれまでの業務を振り返る機会をいただきましたので、私の各部署での経験と感じたことについてご紹介させていただきます。
2 地方連携推進室
派遣1年目に勤務した地方連携推進室では、着任前にはあまりイメージできていなかった「外交と地方自治体との関係」について、実務を通じて理解を深めることができました。
外務省は、外交を推進していく上で、地方自治体を重要なパートナーとして位置づけており、地方連携推進室は、地方が行う国際的取組を後押しするため、様々な連携事業を展開しています。その中で、私は総務班として、主に他省庁・他課室からの決裁依頼の省内・課内とりまとめや、地方自治体からの照会対応、「グローカル通信」というメールマガジンの企画・編集等を担当しました。また、総務班の業務以外にも、駐日外交団等に向けて地方の自然や文化、産業の魅力を発信するレセプション、セミナーの開催にも携わりました。特に、セミナーでは英語で司会を務める機会もあり、自治体職員の強い熱意や、駐日外交団の高い関心を間近で感じることができました。
業務を通じて、外務省内の各部署がどのように地方と関わりを持っているか、また地方自治体がそれぞれの特色を活かし、積極的に国際的取組を進めていることを知りました。一方で、国際的取組を実施したいけれども、やり方や相談先がわからないという自治体もまだまだ多く、外務省が窓口となり、駐日外交団や在外公館と繋いだり、PRの機会を提供したり、自治体を支援することの重要性も感じました。そして、国と国との関係は、自治体同士や市民同士の相互理解や交流から始まり、成り立つものであることに改めて気がつきました。今後、東京都に戻った際にも、この経験や各自治体の事例を活かし、都の魅力発信や都市外交の業務に貢献したいと考えています。
令和6年度地域の魅力発信セミナー
3 南東アジア第二課
2025年4月からは南東アジア第二課に異動し、マレーシア班の一員として日・マレーシアの二国間関係に関する業務を担当しています。マレーシアは、日本と基本的な原則や価値を共有する「包括的・戦略的パートナー」であり、日本とマレーシアが自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて協力していくことは、両国及び地域の平和と繁栄にとって非常に重要です。
2025年はマレーシアがASEAN議長国を務め、日本では大阪・関西万博が開催されたことから、両国間の要人往来が活発な1年となりました。要人往来の際には、私は主に行事実施やプレスの調整を担当しました。中でも、7月のASEAN関連外相会議、10月のASEAN関連首脳会議の支援要員としてマレーシアに出張する機会をいただき、現地で首脳・外相会談の調整を直前まで行ったり、事後には会談の記録を作成したりしたことは強く印象に残っています。これまでニュースでしか見聞きしたことのなかった首脳会談や外相会談が実現するまでに、どれほど多くの関係者の準備と地道な調整が積み重ねられているのかを、身をもって知ることができました。そしてどれだけ入念に準備をしても、現場では不測の事態が必ず発生します。そのような状況に陥っても、慌てることなく、瞬時に判断し、すぐに実行に移していく省員の皆様の姿から、外交の現場では知識や経験に加え、柔軟な対応力が不可欠であることを学びました。
マレーシア班ではありましたが、ASEAN関連の行事以外にも、外務大臣のフィリピン訪問やシンガポール要人の訪日、日・インドネシア外務・防衛閣僚会合(「2+2」)、さらには課を超えて、ネパール大統領の訪日など、多くの外交行事に関わることができました。大変なことも多かったものの、全員が一丸となって取り組み、成功裡に終えられたときには達成感がありましたし、微力ではありますが、その一員として携われたことは、今後の大きな糧になると感じています。
一連の業務において、特に大きな気づきだったのは、顔の見える関係を築くことで、調整のスピードや質が大きく変わってくるという点です。相手国のカウンターパートとも、ランチ等の機会に、雑談やお互いのことについて直接話し、良好な関係を築くことにより、その後の情報共有や調整のスムーズさに変化がありました。文字にすると当たり前のようにも感じられますが、外交において最も大切なのは、人と人との関係であることを実感した出来事でした。日々のやり取りの積み重ねが信頼関係を生み、それが円滑な調整につながるということを、今後の業務においても大切にしていきたいです。
ASEAN関連外相・首脳会議の会場とマレーシア議長年のロゴ
在京マレーシア大使館のカウンターパートの方々と
4 おわりに
派遣前には、この2年間で外相・首脳級の行事を何度も経験することになるとは、想像もしていませんでした。色々な外交行事が重なる中で、どんなイレギュラーが起ころうとも、日本の国益を守るために常に最善を尽くそうと、強い責任感をもって業務に取り組む外務省の皆様には尊敬しかありません。そのような皆様と一緒に、様々な業務に携わらせていただき、学ばせていただいたことは、私にとってかけがえのない経験になりました。
末筆ながら、地方連携推進室、南東アジア第二課の方々をはじめ、これまでお世話になった全ての関係者の皆様に心より御礼申し上げます。外務省特有の用語や決裁プロセスに戸惑い、日本語のメールにもかかわらず内容を理解できない、なんてことも多かった派遣当初の私に、忙しい中でも丁寧にご指導くださった省員の方々に深く感謝しています。また、このような貴重な機会を与え、派遣中も支えてくださった東京都庁関係者の皆様にも、改めて感謝申し上げます。
来年度からは在外公館での勤務が予定されています。初めての海外生活に不安はありますが、本省勤務で得た経験を糧に、引き続き精一杯努力してまいります。

