グローカル外交ネット
外交実務研修員研修(独立行政法人国際協力機構(JICA))
外務省地方連携推進室
1 はじめに

外務省では、地方自治体から職員を受け入れ、本省及び在外公館でそれぞれ勤務する外交実務研修員制度を設けています。
2025年7月23日、外交実務研修員19名は「外交実務研修員研修」の一環として独立行政法人国際協力機構(JICA)を訪問し、JICAの事業概要、在外での案件形成、東南アジア・アフリカ地域における開発課題と今後の展望、及び地方自治体との連携事例に関する講義を受講しました。
2 講義概要
(1)事業概要
約70年の歴史がある日本のODAは近年、開発途上国への民間資金フローの拡大、開発ニーズの複雑化、そして我が国の厳しい財政状況等、取り巻く環境の変化を踏まえた対応が求められるようになり、本年4月に独立行政法人国際協力機構法(JICA法)が改正されたとのお話がありました。本法の大きな改正は約16年半ぶりとのことで、日本のODAが大きな転換点を迎えていることがうかがえました。
(2)在外での案件形成
JICA在外拠点と外務省在外公館は「現地ODAタスクフォース」を構成して連携し、タスクフォース自ら、相手国の開発ニーズを把握する立場から、新規案件を提案・発掘することが求められているとのことでした。在外勤務を控える研修員にとって、実際の協力案件がどのように形成されていくのかは大きな関心テーマであり、案件の具体的な検討プロセスについて確認できたことは非常に有意義でした。
(3)東南アジア・アフリカ地域における開発課題と今後の展望
JICAが手がける地域のうち、研修員の関心が特に高かった東南アジア及びアフリカ地域における開発協力について伺いました。
東南アジアは産業高度化の遅れによる成長鈍化、将来的な少子高齢化、域内格差などといった課題を抱えており、こうした課題へのアプローチとして、高度産業人材の育成、高齢化対策、農業振興等が協力方針となっているとの説明がありました。
アフリカは、他地域と比較して若年人口が大幅に増加する等そのポテンシャルが注目されていますが、若者への教育・能力強化や仕事・活躍の機会が十分にないことによるデモが相次いでいるほか、1日2.15ドル以下で生活する「極度の貧困人口」が増加している状況です。JICAはこうした課題に対し、技術協力を通じた医療環境の改善など医療福祉への協力や稲作振興、産業振興、有償資金協力及び無償資金協力によるインフラ整備等に取り組んでいるとの説明がありました。
このように、地域によって抱える課題は異なっており、開発協力の方法も多様であると学びました。研修員が赴任する地域は様々ですが、各地域の開発課題に沿った事業を行っていくためには、赴任先において常に現地の開発ニーズに向き合うことが重要であると学びました。
(4)JICAと地方自治体の連携事例
講義では日本国内の地方創生に資するJICAの様々な取り組みが紹介され、いずれ地方自治体に帰任する研修員にとって大変有益な情報が得られました。
例えば、JICAでは開発途上国の青年層を対象として、国内の地域リソース(地方自治体、NPO、大学等)を活用した研修事業(青年研修)を行っています。この事業は、青年たちが自国で必要とされる分野について、日本の経験・技術を理解する研修を実施するものです。研修生を受け入れた自治体や地域の団体では、研修生との交流等を通じて地域の特色や資源が再認識され、国際交流から国際協力へと発展する事例があるとのお話があり、地域活性化・地方創生に取り組む全国の自治体職員にとって、大いに参考になると感じました。
3 おわりに

研修員からはJICAの国際協力の取組のみならず、JICAによる日本国内の自治体との連携についても学ぶことができ、今後の在外公館勤務や、自治体に戻った際にも役立てたい等の感想が寄せられました。
この度は、御多忙の中にもかかわらず本研修を快諾いただき、研修員が今後勤務するうえで大変参考になる貴重で充実した講義を実施くださったJICA関係各位の皆様に厚く御礼申し上げます。