グローカル外交ネット
外務省での勤務を通じて
外交実務研修員 吉澤 静渉
(長崎市から派遣)
1 はじめに
私は令和5年4月から2年間の任期で長崎市から派遣され、軍備管理軍縮課で勤務しています。
私が長崎市に入庁して2年目に、外務省への派遣が始まり、初めて派遣された方が親しい先輩であったため、このポストにとても興味を持つようになりました。私が派遣されるまでの2名の先輩方は男性で、他の省庁への出向者も男性が多いことから、「女性では派遣されることはないのだろう」と思いながらも、外務省に出向したいという思いをあらゆる場面でアピールし、念願叶って外務省で勤務することができました。外務省の実情としては、私が所属する軍備管理軍縮課の半数が女性で、性別なんて全く関係なかったと感じています。
「外交実務研修員」という自分の役職の名前も知らずに外務省の門を初めてくぐった時のことが、まだ昨日のことのように感じられますが、体験記の寄稿依頼が接到し、もう振り返りの時期に来ているということがとても感慨深いです。
大変稚拙な文章で恐縮ではありますが、本寄稿で、外務省での業務の紹介とそれらの業務を経験して感じたことを記載したいと思います。これから、外交実務研修員として外務省で勤務される方に、少しでも外務省での勤務のイメージを持っていただければ幸いです。
2 軍備管理軍縮課での勤務

私が勤務している軍備管理軍縮課には、例年、私の出向元である長崎市、そして、広島市から外交実務研修員が派遣されています。
軍備管理軍縮課では、「核兵器のない世界」の実現のため、あらゆる取組を企画し、実施しています。また、核兵器不拡散条約(NPT)や核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)等、核軍縮に関する条約をフォローしている所属でもあります。
その軍備管理軍縮課での業務の中で特に印象に残っている2つを紹介します。
(1)平和祈念(記念)式典について
広島市及び長崎市からはそれぞれ8月6日及び9日に行われる、平和祈念(記念)式典へ、例年、大臣及び軍縮不拡散・科学部長の出席依頼があり、その調整等を行っています。
両市や厚生労働省、官邸と関係者、調整事項が多く、とても大変な業務ではありましたが、これまで主催者側として関わってきた式典に異なる立場で関与し、また当日も外務省の職員として出席できたことで、式典を見る視点が変わり、新たな発見もでき、大変貴重な経験でした。
そして、改めて、式典への注目度の高さを感じ、出向元へ帰ってからも気を引き締めて、この式典に関わっていかなければいけないということを実感する機会となりました。
(2)長崎市での国際会議の開催

令和5年11~12月には、長崎市で軍縮不拡散・科学部が関与する、「G7不拡散局長級会合(NPDG)」、「グローバル・パートナーシップ作業部会(GP)」、「「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議」という3つの国際会議を開催しました。3つすべての会議で、視察に関する業務を任せていただき、出向する直前まで勤務していた、原爆資料館での経験も活かすことができました。
一方でこれまで長崎市職員として携わってきた会議とは進め方も規模感も全く違っていて、日々変わりゆく状況に戸惑うことも多かったですが、他の省員の皆さんの協力もあり、無事に開催することができました。
参加者の方から「とても良い視察だった。準備は大変だったと思うけど、この視察を企画してくれてありがとう。」と直接言っていただいたときは、涙が出そうになるくらい嬉しく、今までに味わったことのないくらいの達成感がありました。
3 おわりに

「2年間」という期間を周囲から「長い」と言われてきました。私自身は「短い」と思いながら上京し、振り返ると、自分が考えていた以上に「短い」時間でした。この短い2年間で有意義な経験をできるかどうかは自分次第だと思います。
着任当初はわからないことばかりで、やっとの思いで1日を過ごすこともあると思いますが、課員の方とコミュニケーションを取りながら、自分ができることを探し、そしてその業務を着実にこなし、積極的に省員として業務に関わってください。自治体での勤務では得られないことを経験できる、貴重な機会がたくさんあります。その機会を逃さず、充実した外交実務研修員ライフを過ごしてください。
そして、他の外交実務研修員の皆さんと良好な関係を築いてください。きっと自分の状況を理解してくれる、良い仲間になると思います。
貴重な経験をさせていただいた外務省の皆様、様々サポートいただいた長崎市の皆様、2年間切磋琢磨してきた外交実務研修員のみんな、そして快く出向に送り出してくれた家族に、この場を借りて感謝申し上げます。
私は本省での2年間の勤務を終えれば、在外の勤務なく、出向元に戻ることとなりますが、外交実務研修員としての経験を自治体での業務に活かして行きたいと思います。残り僅かの期間を大切に、少しでも成長した自分で外交実務研修員を終えたいと思います。