グローカル外交ネット

令和6年4月12日

外交実務研修員 吉川 実
(千葉県から派遣)

1 はじめに

 私は2022年4月に千葉県から外務省へ派遣され、本年3月までアフリカ部アフリカ第二課で勤務していました。この度、本寄稿の機会をいただきましたので、今後、外務省で勤務される外交実務研修員の皆様に少しでもご参考になりましたら大変幸いです。

2 アフリカ第二課での業務

 外務省には、経済協力や国際法等を分野別に扱う「機能局」と、各地域・国を担当する「地域局」があり、アフリカ第二課は地域局に分類され東部及び南部アフリカ地域25カ国を担当しています。私はナミビア共和国及びレソト王国を担当しており、日本と担当国との二国間関係の更なる深化や国際場裡における協力のために、現地日本大使館や駐日大使館とのやりとりを通じて、担当国の政治情勢・経済状況等に常に高いアンテナを張り、時には突発事案への対応、さらには要人往来などを通じた政治・経済面や国際場裡での協力等、担当国に関するありとあらゆる業務に対応しています。政府要人の往来対応から日々の細かな照会対応まで、一つ一つの業務が相手国との関係に少なからず影響を及ぼすもので緊張感があり、地域局の醍醐味である「外交」を肌で感じることができます。その中でも特に印象深い業務を御紹介します。

(1)要人往来など

日・ケニア首脳会談 (写真提供:内閣広報室)
日・レソト首脳会談 (写真提供:内閣広報室)

 外務省へ派遣される直前に起きたロシアのウクライナ侵略等により、国際社会の分断と対立の様相が一層深まる中で、国際社会におけるアフリカの位置付けは従来から大きく変化し、「グローバル・サウス」の多くを占めるアフリカは国際社会における主要なプレーヤーとしてその重要性と発言力を急速に拡大しています。こうした背景に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着くとともに要人往来が活発になり、2022年10月の南アフリカ外相訪日、2023年3月のアンゴラ大統領訪日、7月の林外務大臣のアフリカ訪問、11月のモザンビーク外務大臣の訪日、2024年2月のケニア大統領の訪日等、数多くの要人往来に携わる機会をいただきました。特に、アンゴラ大統領訪日時は総理官邸行事、ケニア大統領訪日時は大統領一行の地方訪問担当として、失敗が許されない緊張感の中、短期間で多数のステークホルダーとの膨大な調整作業や、アフリカ第二課のみならず在外公館からの応援者や多数の関係課や関係省庁と協力しながら行事を造りあげていくダイナミックな仕事に従事することができたのは、外務省ならではの貴重な経験でした。
 担当官としては2022年8月のTICAD8(注 詳細は次項)の機会に実施された日・レソト外相会談や9月の故安倍晋三国葬儀別ウィンドウで開くの機会に実施された日・レソト首脳会談で、総理や外相に発言いただく内容の作成に従事しました。相手国との二国間関係をさらに深化させるべく、どのような内容を発動するのが効果的なのか、国際場裡における相手国の立ち位置も踏まえどのような内容でアプローチするのか、まさに外交の最前線に携わる機会でした。
 また、2023年6月には外務省及び経済産業省幹部合同のナミビア訪問に同行する機会があり、相手国政府関係者等との意見交換の他、日本が実施している支援の裨益状況を住民の方から直接お話を伺いました。東京で日々取り組んでいる業務が現地で実際に花開いている状況を目にするのは大変感慨深く感じたと共に、現地を訪問することで得た気づきを踏まえて、同国との関係を今後どのように進めていくべきかを改めて考える貴重な機会となりました。

(2)アフリカ開発会議(TICAD)

パンフレット「日本とアフリカ

 TICADは、冷戦後、国際社会のアフリカに対する関心が低下する中、アフリカの自立的な発展を支援すべく、1993年に日本が立ち上げたアフリカの開発をテーマとする国際会議であり、既に30年を超える歴史を有するアフリカ開発に関するフォーラムとして先駆的な存在です。
 私は2022年8月にチュニジアで開催されたTICAD8の広報班員として、本番に向けて機運を醸成すべく、国内外メディアのインタビュー対応や日・アフリカ関係の強化に資する事業等を対象としたTICAD8ロゴマークの使用許可、パートナー事業の認定等に携わりました。限られた期間とマンパワーの中で、最終的には総理大臣寄稿4本をはじめとする多くのメディアでTICAD8を広報することができ、大きな達成感を感じました。
 また、アフリカ地域の現状や日本とアフリカの関係、TICAD等について分かりやすく紹介したパンフレット「日本とアフリカ」の更新にも携わりました。教育関係者から「授業で使いたいのでパンフレットを送付して欲しい」といった問い合わせをいただくこともあり、苦労して更新したパンフレットがTICAD8の事後広報のみならず、少なからずアフリカに関心を持っていただけるきっかけになっていると思うと大変嬉しく思います。来る2025年に横浜で開催されるTICAD9も見据えて、少しでも多くの方の目に止まることを心より願っています。

3 地方連携推進室での業務

 地方連携推進室は、外交を推進していく上で地方自治体等を重要なパートナーであると位置づけ、その国際的取組を支援するため様々な事業を実施しています。外交実務研修員は研修の一環として短期間同室で勤務することとなっており、私も約1か月勤務する機会をいただきました。勤務期間中は、駐日外交団等を招き地方の多様な魅力を内外に発信する「外務大臣及び徳島県知事共催『SDGs先進県徳島を世界へ発信するレセプション』」の実施に携わりました。同レセプションでは、外務大臣と徳島県知事との共催により、駐日外交団や民間企業、インフルエンサーなど幅広い関係者を招待して徳島県の魅力を発信しました。、国のみではなく、地方自治体レベルでも積極的な友好交流やインバウンド促進、海外販路開拓など、国際的な取組の必要性が高まっている今、こうした取組がますます重要になると感じました。

4 おわりに

 外務省は外交の最前線に携わることができる行政機関であり、地方自治体レベルでも国際的な取組が必要とされる昨今、地方自治体職員が本研修に参加することは大変有意義であると感じます。また、国と地方と違いはありますが、行政を担う組織であるという点は共通しており、上司への決裁や関係者への説明、議会対応等、行政職員として当然に必要とされる能力を、外務省の皆様の高いスキルを学びながら体当たりで大きく鍛えることができる機会であったと強く感じます。今後も、地方自治体から多くの方が本研修に参加されることを願っています。
 最後に、あたたかく御指導くださったアフリカ第二課の皆様をはじめ外務省関係者の皆様並びに千葉県庁の皆様に、この場を借りて深くお礼申し上げます。

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