グローカル外交ネット

令和6年4月3日

外交実務研修員 岡田 佳子
(北海道から派遣)

1 はじめに

 外務省では、地方自治体から職員を受け入れ、外務本省や在外公館で勤務する人事交流を行っています。私はこの人事交流の恩恵にあずかり、2022年4月から外務省に派遣され、外交実務研修員として地球規模課題総括課に勤務しています。
 外務省に勤務して2年が経過し、グローカル通信 への寄稿の機会をいただきましたので、外務省での体験の一端について述べさせていただきます。

2 地球規模課題総括課の仕事

持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合(第14回)(写真提供:内閣広報室) 持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合(第14回)
(写真提供:内閣広報室)

 当課は、地球規模課題に関する外交政策の要として、持続可能な開発目標(SDGs)に関わる外交政策や、国際機関等と連携した経済協力等に取り組んでいます。
 私がこれまで過ごした2年間で最も忘れ難い出来事は、SDGs推進の中長期的な国家戦略である「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針 別ウィンドウで開く」の改定です。SDGs 採択後8年間で SDGs に対する国民の認知度は約9割に達し、現在、持続可能性の理念は、日本が持続可能な発展と繁栄を実現していく上での確固たる原動力となりつつあります。他方で、2023年にはSDGs達成に向けた中間年を迎えましたが、その達成に向けた進捗には大幅な遅れが生じており、日本を含む国際社会全体でSDGs達成に向けた努力を加速していく必要があります。
 こうした国内外の情勢を踏まえ、総理を本部長とする持続可能な開発目標(SDGs)推進本部では、2023年12月に第14回会合を開催し、SDGs実施指針を改定しました。同実施指針の改定は、2019年の改定に次ぐ2度目の改定となります。

3 SDGs実施指針に込められたメッセージ

 2023年12月に改定されたSDGs実施指針では、「2025 年を目途に自発的国家レビュー(VNR)を実施する。その際、我が国が推進する SDGs のあり方について国際的に発信し、国際社会全体の持続可能性の確保に向けた取組を主導する。」と明記しています。
 日本におけるSDGs達成への努力と様々な成果を国際的に発信し、国際社会のSDGs達成に最も効果的な形で貢献していくとともに、我が国自身の持続的な発展と繁栄及び国際競争力の強化に繋げることが、今後ますます重要であり、このメッセージをより明確に示したことが、SDGs実施指針改定の大きな意味の一つだったと思います。

4 SDGsの地方への浸透

外務大臣及び徳島県知事共催レセプションの様子

 前項に加えてもう一つ強調したい点として、SDGs実施指針に以下の記載があります。
 「地方レベルにおける SDGs の幅広い浸透と推進は、我が国における大きな特色である。SDGs は地方創生等の旗印として広く位置づけられており、SDGs 未来都市や地方創生 SDGs 官民連携プラットフォーム、地方創生 SDGs金融等の様々な制度的枠組の下、各地域において、それぞれの特性に応じた様々な取組が急速に進展している。」
 私は本省勤務の一時期を地方連携推進室 で過ごしましたが、その際に携わった地方との連携事業の一つが、外務大臣及び徳島県知事共催で実施された「SDGs先進県徳島を世界へ発信するレセプション 」です。本レセプションでは、冒頭、上川外務大臣、後藤田徳島県知事がそれぞれ挨拶を行い、上川大臣は、徳島県におけるSDGs達成に向けた幅広い取組等を紹介し、若い世代も大きな役割を担うSDGsの取組が将来も継続していくことを期待する旨などを述べました。
 本レセプションでは、徳島県の食や観光の魅力、東京オリパラ大会のホストタウン交流、伝統芸能が紹介されたほか、徳島県関連企業や地元の高校生によるSDGs達成に向けた様々な取組が紹介されました。
 私がこのレセプションの準備や当日の対応等に携わったのはわずかな期間でしたが、地球規模課題をチャンスと捉え、戦略的に徳島を世界にPRする様子が極めて印象的でした。まさに、地方レベルでのSDGsの幅広い浸透とその成果を、国際社会のSDGs達成と地域自身の持続的な発展と繁栄の双方に繋げていく、という強い意思をもって開催されたレセプションだったと思います。
 また、長期間にわたり入念に準備を行いながら、実りあるレセプションとすべく、最後まで寸暇を惜しんで調整を続ける徳島県の方々の姿には胸を打たれました。同じ自治体職員として、お手本となる方々と事業ができ、私自身にとって重要な経験となりました。

5 終わりに

 過去の外交実務研修員の方々が体験記で述べていらっしゃるのと同じように、外務省員の皆様の高い能力と優れた人格に魅了され、思えば幸せな2年間を過ごさせていただいたと思います。また、担当者自身が各業務の一番の専門家として、答えをもって組織を支えることが基本なのだと、この地球規模課題総括課に来てから思い知りました。そして、常にはそうできていない自分の至らなさを恥じるようになりました。地方自治体においても原理原則は同じだと思います。約2年間にわたり、未熟な私を温かくご指導くださった地球規模課題総括課の皆様には、深い感謝の気持ちでいっぱいです。
 最後に、このような研修の機会を私に与えてくださった外務省及び北海道庁関係者の皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。これから、外務省での経験を北海道に還元し、組織としての力に高められるよう、今後もより一層努力してまいります。

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