グローカル外交ネット

令和5年3月28日

外交実務研修員 米森 信介
(東京都から派遣)

1 はじめに

 私は、2021年4月に東京都から派遣され、大臣官房地方連携推進室と南部アジア部南東アジア第一課にそれぞれ1年間勤務させていただきました。2023年4月からは、2年間の在外公館での勤務を予定しております。拙いながら、これまでの勤務を振り返ってご紹介させていただきます。

2 地方連携推進室での業務

(写真1)名古屋市でのイベント
(写真2)右:山口市徳地手漉き和紙ブース

 地方連携推進室は、地方を重要なパートナーと位置づけ、その国際的取組を支援すべく、地方自治体等と連携して様々な事業・取組を実施しております。
 私は主に総務班に所属し、他省庁・他課室からの決裁依頼の省内・課内とりまとめや地方自治体からの照会対応等を行なってきました。一見地味に思えるかもしれませんが、沢山ある外務省の各部署がどのような業務を行っているか俯瞰でき、また、地方自治体の声を直接聞くことができたことは、4年間外務省で勤務するための基礎力を培う貴重な経験となりました。
 また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は続いておりましたが、年度の終わりに差し掛かるにつれ、徐々に対面での事業も再開しつつありました。その中で、私は「地方×世界 未来につなげる特別交流イベント」という、対面イベント事業を担当させていただきました。この事業は、外務省が地方自治体(愛知県名古屋市及び山口県山口市)との共催で駐日外交団等を都内の八芳園に招き、地方の魅力等を発信することで、コロナ後の観光インバウンド回復や駐日外交団等とのネットワーク構築等につなげることを目的としたもので、市長他からのプレゼンテーションや特産物を紹介するブース出展等、久しぶりに対面で開催したイベントでした。本イベントには林外務大臣が出席され、両市のブース視察とともに、参加者との交流・意見交換を行われました。開催準備に当たり省内調整や地方自治体との調整が非常に大変であったことを思い出します。一方で、日々調整を行う中で、地方自治体職員の熱い思いと、その思いをなんとか実現させようとする地方連携推進室の室員の姿勢を目の当たりにし、達成が困難な壁が現れた時に「できない」で終わらせず、「どのようにしたらできるか」を考え最後まで調整し続ける姿勢を心に刻むことができました。結果として対面での開催が実現し、当日は司会進行を務めさせていただく機会にも恵まれました。林外務大臣到着までの時間調整のためにアドリブを利かせることができなかったのが心残りですが、多くの駐日外交団等を前に英語で話す機会を得られたことは今でも忘れられない経験です。

「地方×世界 未来につなげる特別交流イベント」の様子

 その他にも、東京2020大会が開催される年であり、地方自治体のホストタウン交流の側面支援、外交青書へのコラム執筆、地方連携推進室のTwitterアカウントへの投稿等、多くの業務を任せていただき、非常に貴重な経験となりました。

3 南東アジア第一課での業務

 2年目は南東アジア第一課に勤務する機会をいただきました。南東アジア第一課は、ASEANのうち陸側のメコン地域5か国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム)を所管する課です。その中で、私はベトナム班に所属しております。
 ベトナムは、親日国であり、両国は政治、経済、安全保障、文化交流等、あらゆる分野において非常に緊密な関係を築いています。特に2023年は日越外交関係樹立50周年となる節目の年で、私が配属となった2022年4月以降だけでも多くの要人往来がありました。これまでニュースでしか聞くことのなかった首脳会談や外相会談等が円滑に実施できるように官邸の設備担当等との調整を担当したり、実際に会談の場に同席して記録の作成を担当したりと、非常に貴重な経験をさせていただきました。現場ではどれだけ準備しても不測の事態は発生するもので、その場で瞬時に的確に判断して対応する外務省の皆様の臨機応変な対応を見て、私もそのような基準に達することができるよう勉強の毎日です。
 また、日本の政府要人がベトナムを訪問する際には、現地でのアポイントや視察場所の調整等を在ベトナム日本大使館、在ダナン総領事館、在ホーチミン総領事館と調整して進める必要があります。南東アジア第一課や在外公館の皆様の力を借りつつではありましたが、私も1つの訪問を担当する機会に恵まれ、丁寧かつスピード感のある調整の現場を身をもって学ぶことができました。
 その他にも、「日・ベトナム経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者に対する日本語研修」においては関係省庁との調整、入札・契約手続等の一連の手続を担当したり、外務副大臣のベトナム出張に同行したりする機会もいただきました。ご迷惑をお掛けすることも多かったと思いますが、多くの貴重な経験を与えていただいたことにこの場を借りて感謝申し上げます。

4 外務省で感じたこと

 私は、外務省に派遣される前は、東京都の都税事務所等で税金関係の業務に携わってきました。都民の方々と直接関わる業務で非常にやりがいのある大変な仕事でしたが、外務省に派遣され「総理大臣」「外務大臣」「官邸」などの言葉を直に聞きながら日々業務を進める体験に、驚きを感じる毎日でした。外務省での業務は、相手国を含め様々な関係者との調整を要するもので、めまぐるしく変化をする局面や状況の中で、答えがない課題に立ち向かわなければならない時もあります。そのような中で、職員の皆様がそれぞれ語学、地域、分野の専門知識を有しつつ、俯瞰的な観点から業務を進められている姿は純粋にカッコいいと思いましたし、それぞれの圧倒的な個性・人間性を活かしつつもバランス感覚をもって日々業務に全力で取り組み、多忙な中でもコミュニケーションをとりチームで対応していく雰囲気はとても好きでした。外務省での業務を通じで出会った皆様一人ひとりを今後の仕事・人生の目標として歩んでいくのだと思っております。
 最後に、このような貴重な経験をする機会をいただいた東京都、そしてこれまでご指導とご支援いただいた外務省の皆様にこの場を借りて感謝を申し上げます。4月からの在外公館やその後の東京都庁での勤務に活かせるようこれからも精進する所存です。

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