安倍総理大臣
安倍総理のブラジル訪問(概要と評価)
平成26年8月2日



安倍内閣総理大臣はブラジルを訪問し、7月31日から8月2日にかけてブラジリア及びサンパウロにおける行事に参加したところ、結果概要以下のとおりです(日本の総理がブラジルを訪問したのは、2004年の小泉総理訪問以来10年ぶりです)。
I 概要
1 主要日程
8月1日(金曜日) (ブラジリア)
ブラジル経済界との意見交換会
日系議員及び政府高官との懇談
サッカー感謝の集い
歓迎式典
日・ブラジル首脳会談
日伯賢人会議メンバーとの意見交換
覚書等文書発表式
共同記者発表
ルセーフ大統領主催午餐会
記念植樹及び日系団体代表との懇談
8月2日(土曜日)(サンパウロ)
開拓先没者慰霊碑参拝、献花、日本館視察、記念植樹
内外記者会見
日伯医療分野規制に関するセミナー
アルキミン・サンパウロ州知事との会談
ビジネスセミナーにおける中南米政策スピーチ
ブラジル日本移民史料館視察
日系人との懇談(日系政治家、日系主要4団体、活躍する日系人若者)
日系団体主催歓迎会
Sport for Tomorrow(日伯スポーツの絆)
和食セミナー・料理講習会
2 ブラジル経済界との意見交換会
8月1日(金曜日)午前8時45分(現地時間。日本時間1日午後8時45分)から約20分間、ブラジルを訪問中の安倍総理大臣は、日本経済団体連合会及びブラジル全国工業連盟が共催する「ブラジル経済界との意見交換会」に出席しました。
安倍総理は、アンドラーデ・ブラジル全国工業連盟会長、榊原経団連会長、三村日伯賢人会議座長を始めとする日伯両国産業界を代表する方々に迎えられ、インフラやエネルギーの投資をめぐり日本企業とブラジル企業の間で行われた率直かつ活発な意見交換に参加し、現地のニーズ、ビジネス機会を肌で感じる機会を得ました。
3 日系議員及び政府高官との懇談
8月1日(金曜日)午前9時10分(現地時間。日本時間1日午後9時10分)から約20分間、安倍総理大臣は、宿舎において、ブラジルで活躍する日系連邦下院議員及び政府高官と懇談しました。
安倍総理からは、日系人の自覚と誇りをもって第一線で活躍されていることへの敬意を表明し、日系議員及び政府高官には、今後とも日ブラジル間の架け橋として、人的絆に支えられた良好な二国間関係の更なる発展に協力いただきたい旨述べました。
ジュンジ・アベ伯日議員連盟会長は、安倍総理の訪伯を歓迎するとともに、日伯関係強化に向けて引き続き努力していく意向を表明しました。
4 サッカー感謝の集い
8月1日(金曜日)午前9時35分(現地時間。日本時間1日午後9時35分)から約20分間、安倍総理大臣は、「サッカー感謝の集い」に出席しました。
安倍総理は、日本サッカー発展に多大の貢献を行ったブラジルサッカー関係者に感謝の意を表しました。
また、安倍総理は、招待者代表のジーコ氏に「感謝」の文字を刻んだトロフィーを贈呈し、ジーコ氏からは招待者全員のサインの入ったサッカーボールを受け取りました。また、安倍総理はジーコ氏とパス交換をしました。
6 日伯賢人会議メンバーとの意見交換
8月1日(金曜日)午後12時25分(現地時間。日本時間2日午前0時25分)から約20分間、安倍総理大臣は、「日伯賢人会議メンバーと両首脳との意見交換会」に出席しました。
安倍総理は、2007年、東京で開催された第2回会合の際に、両国双方のメンバーからの表敬を受けており、また、昨年8月の第4回会合の際には、日本側メンバーから帰国後に日伯経済交流促進のための優先分野や諸課題を纏めた『最終報告書(提言)』を受けとっています。
安倍総理から、フォローアップの説明につき、1年も経たない間に両国経済関係がこれだけ進展していることは喜ばしい、今後更なる協力が可能な分野については、日本政府としても産業界と協力して、技術面などの協力を含め取組を推し進めたいと述べました。
7 覚書等文書発表式・共同記者発表
両首脳は、民間を含め両国の間で結ばれた覚書等の文書交換式及び共同記者発表を行いました。共同記者発表では、安倍総理から、日本とブラジルは、これまでも、手に手を取り合って、セラード開発、造船、製鉄など多くの分野で大きな協力の成果を上げてきた「共に夢を語り、共に夢を実現してきたパートナー」であり、経済面では、ブラジルは深海油田等のエネルギー分野やインフラ輸送で大きな投資機会を有し、2億人近い巨大市場であることを説明しました。また、ハイレベルの経済ミッションが同行していることから判るように、日本企業はブラジルを熱い眼差しで見つめており、ルセーフ大統領との間では官民一体となって、引き続き両国の互恵的な協力関係を推進していくことにつき一致したことを説明しました。
8 ルセーフ大統領主催午餐会
8月1日(金曜日)午後1時40分(現地時間。日本時間2日午前1時40分)から約80分間、安倍総理大臣夫妻は、ブラジル外務省イタマラチ宮で開催されたルセーフ大統領主催午餐会に出席しました。
ルセーフ大統領からは、乾杯挨拶において、日伯間の長年の友好関係に言及するとともに、経済分野、科学技術・学術、教育分野の交流の進展を評価し、一層の協力拡大への期待を述べ、乾杯しました。
続いて、安倍総理からは、乾杯挨拶において、両国が民主主義や法の支配、基本的人権の尊重といった基本的な価値を共有し、海外最大の日系社会の存在を始め、人と人との絆によって結ばれた特別な信頼関係にあることに言及し、日本サッカーに対するブラジルサッカー関係者の貢献、首脳会談の成果、日伯経済関係の一層の進展に言及し、乾杯しました。
9 記念植樹及び日系団体代表との懇談
8月1日(金曜日)午後3時50分(現地時間。日本時間2日午前3時50分)から約10分間にわたり、安倍総理大臣夫妻は、安倍晋太郎元外務大臣が1985年のブラジル訪問時に記念植樹を行った木を視察し、続いて、日本国大使館の前庭にイペーの木の記念植樹を行いました。
その後、午後4時(現地時間。日本時間2日午前4時)から約30分間、駐ブラジル大使公邸において、日系団体代表者約200名と懇談しました。
懇談の冒頭、高橋老人会会長から、歓迎の辞が述べられました。
続いて、安倍総理から、日伯両国関係における日系人の方々の貢献、ブラジル太鼓選手権大会におけるブラジリアの光太鼓の初優勝への祝意並びに日系人を対象とする招聘、研修プログラムの大幅拡充などについてスピーチを行い、その後、出席者の方々と懇談しました。
10 開拓先没者慰霊碑参拝、献花、日本館視察、記念植樹
8月2日(土曜日)午前9時20分(現地時間。日本時間2日午後9時20分)頃から、安倍総理大臣夫妻は、イビラプエラ公園において、開拓先没者慰霊碑への献花を行い、霊廟を参拝しました。
その後、公園内にある日本館敷地を視察した後、記念植樹を行いました。
11 日伯医療分野規制に関するセミナー
8月2日(土曜日)午前11時40分(現地時間。日本時間2日午後11時40分)から約15分間、安倍総理大臣は、日ブラジル医療分野規制セミナーに出席しました。
このセミナーは、これまで国家衛生監督庁(ANVISA)の薬事承認までの時間が長い点が、日本の医薬品・医療機器をブラジルに提供する上での支障となってきていたため、ブラジルにおける薬事規制の審査迅速化を目指し、日本の規制当局である独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)とブラジルの規制当局である国家衛生監督庁(ANVISA)等が初めて主催したものです。
安倍総理は、スピーチを行い、日本におけるドラッグラグ解消の経験等を説明するとともに、ブラジルにおける薬事規制の審査迅速化に向け、日本とブラジルで共同活動を開始することを表明しました。
12 アルキミン・サンパウロ州知事との会談
8月2日12時(現地時間。日本時間3日0時)頃から約10分間、安倍総理大臣は、アルキミン・サンパウロ州知事と会談しました。
安倍総理からは、ブラジル国内で約160万人いる日系人のうち約100万人を温かく受け入れているサンパウロ州に対して謝意を表明しました。また、2015年に日・ブラジル外交関係樹立120周年を迎えるのを機に二国間関係を更に発展させていきたく、サンパウロ州政府とも協力していきたいと述べました。
安倍総理は、サンパウロはブラジル経済の中心であり、今回の訪問でブラジル経済のダイナミズムと多様性を実感している旨述べ、サンパウロ州との科学技術分野における協力の進展に期待を表明しました。
14 ブラジル日本移民史料館視察
8月2日(土曜日)午後3時30分(現地時間。日本時間3日午前3時30分)から約10分間、安倍総理大臣は、ブラジル日本移民史料館を視察しました。この史料館は、日本人移住者のブラジル社会において果たしてきた役割とその成果について、資料を展示・保存することを目的に、ブラジル移住70周年事業として創設されたものです。安倍総理は、ヤマシタ移民史料館運営副委員長の案内により、移住開始当時の生活についての展示や、第2次世界大戦時の日系社会展示などを視察し、当時日系人の方々の厳しい生活や苦労に思いをはせました。
続いて安倍総理は、午後3時40分(現地時間。日本時間3日午前3時40分)から約50分間にわたり、日系政治家、日系4団体他代表、活躍する日系人の若者とそれぞれ懇談を行いました。
安倍総理は、今日の良好な日ブラジル関係にとって日系人の存在は不可欠な礎であったと述べ、各分野における活躍を称えました。日系政治家との懇談では、50名近い方が懇談の場に集まり、安倍総理からは日系人としての誇りをもって活躍される政治家に敬意を表しました。日系4団体他代表との懇談では、安倍総理から、世界最大の日系社会を支える各出席者の努力に敬意を表し、また1985年にブラジルを訪問した安倍外務大臣(当時)にも話が及びました。最後に日系の若者に対しては、安倍総理から、今や6世代にわたる日系社会を担う存在としての期待を表するとともに、日本とブラジルの人的絆が今後更に強化されるよう、高い期待を示しました。また総理からは、来年の外交関係樹立120周年に向けて、二国間関係の更なる強化と深化に向けた日系人の方々の協力を呼びかけました。
15 日系団体主催歓迎会
8月2日(土曜日)午前4時30分(現地時間。日本時間3日午前4時30分)から約30分間、安倍総理大臣夫妻は、ブラジル日本文化福祉協会地上階大講堂で開催された日系団体主催歓迎会に出席しました。
両国歌斉唱に続き、安倍総理からスピーチを行い、日伯関係における日系人の方々の功績を称え、日系諸団体による日本文化伝承、日本語教育、スポーツ、医療・社会福祉の向上及び日本文化の普及のための尽力に敬意を表しました。また、日系社会青年・シニアボランティアの約100名への大幅増員を発表しました。
また安倍総理は、2015年が外交関係樹立120周年であり、文化面での交流を盛り上げ、日本語教育の普及支援を行っていく意向を表明しました。
最後に、安倍総理は、日系社会の一層の発展を祈念してスピーチを終え、その後花束贈呈、1000名を超える日系人との写真撮影が行われました。
16 Sport for Tomorrow
8月2日(土曜日)午後5時30分(現地時間。日本時間午前5時30分)から約30分間、安倍総理大臣は、「Sport for Tomorrow~日系社会が結ぶ日伯スポーツの絆「リオから東京へ」~」に出席しました。
安倍総理は、応援メッセージを通じて、リオから東京へ両国の夢をつなぐことに期待を示すとともに、ブラジル・スポーツ界で貢献のある日系人アスリートを含む選手を激励しました。
また、柔道着、卓球道具及び野球・ソフトボール道具を関係スポーツ団体に寄贈しました。
17 和食セミナー・料理講習会
8月2日(土曜日)午後6時5分(現地時間。日本時間3日午前6時5分)から約15分間、安倍総理大臣は、サンパウロ市内のホテルで実施された「和食セミナー・料理講習会」に出席しました。今回の「和食セミナー・料理講習会」は、「真の和食の姿とその精神」をブラジル国内に広く伝えるために、サンパウロ市内の日本食レストランの料理人や現地の料理学校生徒を対象に、寿司、出汁を使った料理などで日本食・食文化の魅力を発信するというものです。
料理講習会では、日本から「一般社団法人国際すし知識認証協会」代表理事を務める風戸正義氏、現地の日本料理店の第一人者でもある小池信也氏に加え、現地のトップシェフでもあるアレックス・アタラ氏の3名の講師による和食や日本食材を使用した現地創作料理等の料理講習会が実施されました。
安倍総理による挨拶の後、安倍総理は、「料理講習会」で作られた料理を試食し、現地料理人や料理学校生徒達との交流を深めました。
II 評価
日本の総理大臣として10年ぶりのブラジル訪問を機に、人的絆で結ばれた特別な信頼関係を有し、民主主義や法の支配といった基本的価値を共有するブラジルとの間で戦略的グローバルパートナーシップを構築し、益々幅広い分野での協力推進が謳われた共同声明を公表しました。戦略的グローバルパートナーシップの構築により両国関係のレベルを更なる高みへ引き上げられることが期待されます。
ルセーフ大統領とは昨年G20サミットの機会に実施された会談以来、2度目の首脳会談となり、打ち解けた雰囲気の中で会談や午餐会が行われ首脳間の個人的信頼関係も構築することができました。
約50名もの我が国産業界トップ、政府関係機関、学術関係者の長らが同行し、グローバル大国として台頭するブラジルに対する高い関心が示されました。ルセーフ大統領からも日本からの投資の増加に対する強い期待が示され、安倍総理からは人材育成等の協力を通じて両国関係の強化を促進したいと応答し、日本企業の事業展開を後押しすることができました。
日系社会の代表や多くの方々と現地日系社会の活動や将来的課題等についての意見交換を行い、1世紀を超える日本人移住の歴史を有するブラジルにおいて、日系社会の存在は、今日の良好な日・ブラジル関係にとって不可欠であることを再認識し、今後とも日系社会に対して積極的に支援することを確認しました。
なお、今次総理訪伯に際し、日系人及び査証に関し、表明・公表された施策は以下のとおり。
1.日系人
(1) 2015年が日・ブラジル外交関係樹立120周年であることから、文化面での交流を盛り上げ、日本語教育の普及支援を行っていきます。
(2) 毎年JICAが派遣する日系社会青年・シニアボランティア約60名が日本語、日本文化、福祉、スポーツなどの指導を通じて活躍していますが、これを約100名に大幅増員します。
(3) 若い世代の日本への関心を高めるべく、次世代日系人指導者招聘制度の拡充、日系社会次世代育成研修の100名への倍増を図ります。
(4) 日本政府は日系病院に対する支援として「日系社会ボランティア」の新たな派遣、「日系研修員の本邦研修」等を実施します。今後の拡充を検討する中でのブラジルの医療事情の改善にも貢献できるよう支援します。
2.ブラジルの一般旅券所持者に対する数次査証の導入
二国間の交流促進に資する取組として、ブラジルの一般旅券所持者に対する数次査証の導入を決定しました。