総理大臣

野田総理のソウル核セキュリティ・サミット出席(概要)

平成24年3月27日

 3月26,27両日,ソウルにおいて核セキュリティ・サミットが開催され,我が国から野田総理が27日の行事(プレナリー・セッション(午前)及びワーキング・ランチ)に出席されたところ,概要以下のとおり。今次サミットでは,世界53カ国と4国際機関等から,首脳級36名(米,露,中,印,加,伊,インドネシア,タイ,ベトナムなど)を含む代表が参加し,核セキュリティに対する取組みに関し,各国の基本的姿勢,各国毎の具体的取組み,国家間の協力協調の分野などにつき,発言を行った。また,議場外では活発な各国首脳級の意見交換が行われ,二国間の諸問題や現下の国際社会の課題について活発な意見交換が行われた。

1.プレナリー・セッション(27日午前及び午後)

  1. (1)本セッションでは,「核セキュリティ強化のための国際協力措置と国内措置,将来への約束」をテーマに議論が行われた。まず,議長である李明博韓国大統領の冒頭発言に続き,オバマ米国大統領,胡錦涛中国国家主席,ナザルバエフ・カザフスタン大統領に次いで野田総理は4番目に発言された(野田総理の発言骨子)。
  2. (2)各国からは,原子力は現下の掛け替えのないエネルギー源であり,その安全な活用のためには,核テロの脅威に備えて具体的措置を早期にとる必要がある,核兵器のない世界に向けて忍耐強い努力が必要であるとの基本姿勢が多く述べられた。そのための措置として,核軍縮,不拡散,原子力安全とともに,核セキュリティへの取組みの重要性が表明された。
  3. (3)同時に,福島原発事故への日本の取組みに言及し,それを賞賛する意見を表明する声も少なからず聞かれた。
  4. (4)野田総理からは,各国からの激励と支援を得て復興は着実に進展している,福島原発事故から得た知見・教訓をテロ攻撃などへの備えにも生かす必要があると述べた上で,核セキュリティ強化のための具体的国内措置及び国際的な協力として,以下を紹介された。
    1. (イ)国内での具体的措置として,1)電源装置の増強や放射線防護車,サーベイメータといった装備の充実,施設防護の二重化等を通じた,原子力施設の脆弱性克服,2)対応手順や訓練の徹底,共同訓練の実施等を通じた,現場における異なる組織間の連携強化,3)武装治安要員の増強や巡視体制の強化等の人的警備体制の強化,4)原子力施設のネットワークの遮断といった情報セキュリティの強化の取組を紹介。
    2. (ロ)また,国際的な取組については,1)核不拡散・核セキュリティ総合支援センターを通じた途上国への人的・物的支援の充実,2)輸送分野でのセキュリティ強化,情報安全強化などで同志国との連携強化,3)IAEAとの連携強化等について述べられた。
    3. (ハ)また,核不拡散の取組の文脈で,イランや北朝鮮の核開発を憂慮する,北朝鮮のミサイル発射について,国際社会の不拡散努力に反し,国連安保理決議違反であり,発射自制は国際社会の強い要請であると述べた。また核軍縮への取組みの文脈では,兵器用核分裂性物質の生産禁止条約の交渉の早期開始を訴えた。
  5. (5)午後のセッションの最後に,次回核セキュリティ・サミットを2014年に蘭で開催することを決定し,首脳コミュニケが採択された(コミュニケ骨子)。

2.ワーキング・ランチ(27日昼)

 午前のセッション後に行われたワーキング・ランチでは,「核セキュリティと原子力安全の相乗効果」をテーマに議論が行われ,潘基文国連事務総長の発言に続き,野田総理は2番目に発言された。

  1. (1) 福島の事故が原子力安全から核セキュリティへの関係性について再認識させられた点や両者の相乗効果やIAEA等国際機関の果たす役割についての言及がなされた。
  2. (2) 野田総理からは,以下の点を発言された。
    1. (イ) 福島原発事故は自然災害に起因するものではあるが,その経験からは,原子力施設に対するテロリストの攻撃など人為的な危害への対策についても共通する教訓があると述べた。
    2. (ロ) そうした観点から,野田総理は,1)予想外のリスクに備えることが重要,2)自衛隊や警察の連携など,現場での対処のための実地訓練を通じ,対応策を共有しておく必要性,3)最悪の事態を常に念頭に,事態への対処を考え続け,備えることが必要,を事故から得られた,核セキュリティ分野における教訓として国際社会と共有したいと述べた。

3.ワーキング・ディナー(26日夜)

 前日に行われたワーキング・ディナーでは,前回のワシントン・サミットからの進展につき,米,英,露,EU,イスラエル等12カ国の出席者が発言した。各国からは,東京電力福島第一原発事故への日本人の勇気ある対処に対する賞賛が述べられ,(イ)防護強化への具体的措置の重要性,(ロ)装備や訓練の必要性,核セキュリティ強化のための研修所間の協力は大事,(ハ)核物質だけでなく原子力技術の流出も脅威,(ニ)核セキュリティ関連の法的な枠組み(核テロ防止条約や改正核物質防護条約,国連安保理決議1540)への支持などが,述べられた。

4.その他(二国間の懇談)

 野田総理は,時間的制約がある中で,核セキュリティ・サミットのセッションの合間に,米,中,韓,露,仏,印,伊,NZ,IAEA等多くの国・機関の首脳と懇談を行われ,北朝鮮の「人工衛星」と称するミサイル発射問題に関して一致して北朝鮮の自制を求めることにつき,共通の認識の醸成を強める機会となった。

5.評価

  1. (1)2010年のワシントン・サミットに続く今次サミットでは,前回を上回る53カ国及び4国際機関から30名を越える首脳レベルが参加し,核テロの脅威は現実のものであるとの共通の認識に立って,それに備えて各国が具体的措置をとる必要性,諸国が連携して対処することの重要性などを確認しあった。
  2. (2)特に,前回サミットからの高々2年しか経過していないが,具体的な進捗と次回サミットに向けた取組の方向性についてサミット参加各国から報告がなされ,単なる決意の表明というより,具体的な行動を目指した会議となった。
  3. (3)また,福島原発事故から1年というタイミングで今次サミットが開催され,原子力安全と核セキュリティとの相互関係に注目が集まる中,原発事故から得られた教訓を踏まえ,核セキュリティ強化のための我が国の国内取組を各国首脳と共有し,国際協力を促す基盤に資する措置を発信することができた。
  4. (4)更に,核セキュリティへの取組みは,核軍縮や不拡散への取組みと重なるとの認識についての発言がなされる中で,北朝鮮の核開発や「人工衛星」と称するミサイル発射について,主要国を含む各国首脳が集まる今次サミットの場で野田総理から北朝鮮に対し強く自制を求めたことは,国際的な不拡散体制のみならず,我が国安全保障にとっても脅威となる事案について,良いタイミングでメッセージを発信することになった。
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