
野田総理大臣演説
2012年ソウル核セキュリティ・サミット
総理ステートメント(骨子)
(2012年3月27日,於:ソウル)
(和文,英文骨子,英文)
I.序
- 東日本大震災から1年,各国からの心温まる励ましと支援に勇気を得て,復興は着実に進展。
- 今般の東京電力福島第一原発事故は自然災害に起因するものだが,得た知見・教訓をテロ攻撃などに対する備えにも生かす必要。
II.東京電力福島第一原発事故からの3つの教訓
- (1)原子力の災害は広範囲長期に及ぶため,予想外のリスクに備えることが重要。
- (2)自衛隊や警察の連携など,現場での対処のための実地訓練を通じ,対応策を共有しておく必要性。
- (3)最悪の事態を常に念頭に,事態への対処を考え続け,備えることが必要。
III.核セキュリティ強化のための国内的取組
(1)原子力施設の脆弱性の克服
- 1)電源装置の増強
- 2)放射線防護車,サーベイメータ,防護服等の装備の充実
- 3)対応手順,連携要領を強化して訓練を徹底。警察と陸上自衛隊の師団等との間,海上保安庁と海上自衛隊の間で,共同実動訓練を実施。
(2)対テロ特有のセキュリティ対策の強化
- 1)人的警備体制の強化…武装治安要員の増強,巡視体制の強化。施設で働く者の信頼性確認制度のさらなる検討
- 2)施設防護・装備の充実…原子力施設の防護本部の二重化,屋外の重要設備の防護の強化
- 3)情報セキュリティ強化…サイバー攻撃に備え,原子力施設のコンピューターシステムを外部ネットワークから遮断
IV.核セキュリティ強化のための国際的取組
- (1)防護が手薄な国で盗取した核物質を,別の国でテロ行為に使われることを回避するためにも,すべての関係国が連携を密にし,国際協力を深めることが不可欠。
- (2)核セキュリティ分野の国際協力を推進する。
- 1)途上国への人的・物的支援の充実・・・「核不拡散・核セキュリティ総合支援センター」を通じた人材受入や研修の拡充
- 2)有志国との連携強化・・・輸送分野での危険回避の取組をとりまとめ。各国主導の取組に参加
- 3)IAEAとの連携強化・・・IAEA核セキュリティ基金に拠出。ベストプラクティスの共有。
- (3)不拡散の観点から,イランや北朝鮮の核開発を憂慮。最近北朝鮮が予告した「人工衛星」と称するミサイルの発射については,国際社会の不拡散の努力にも反し,国連安保理決議違反。北朝鮮が発射を自制することが国際社会の強い要請。
- (4)兵器用核物質の生産停止は,核軍縮と共に核セキュリティの観点からも有意義。兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の早期交渉開始を呼びかける。
V.結語
- 人類は,科学を基礎に事故の経験を将来に生かす力と知恵を持つと確信。
- 科学技術の成果をテロ攻撃から守るため,知見と教訓を共有し,資源の有効利用のため,将来の世代に安全と繁栄を引き継ぐ責務を果たす決意を表明。
- 本年末,我が国はIAEAと協力して福島で国際会議を開催し,原子力の安全のため,大きな役割を果たす。