福田総理大臣

温家宝総理との会談・昼食会(概要)

平成19年12月28日

 12月28日午前、中国訪問中の福田内閣総理大臣は温家宝国務院総理との間で、約2時間にわたり会談を行い、署名式、共同記者会見に続き約1時間昼食会を行った。概要以下のとおり。

【1.日中関係総論】

(1)冒頭、温総理より、日中関係は更なる発展の重要な段階にある、共に努力し、チャンスをつかみ、戦略的互恵関係を推進し、両国関係を大きく前に進めていきたい旨発言。

(2)福田総理より、日中は大きなチャンスと責任に直面、世界の大局を見据え、アジア・世界の未来の創造のため共に協力していきたい、互恵協力を進めつつ、国際的ルールに則り、国際社会の中で責任ある形で協力することが必要、こうした日中協力は、時代の要請、世界の期待も大きい旨発言。また、両国国民の相互理解が不可欠であり、一層の努力の必要性を指摘。

(3)更に、福田総理より、サミット、北京五輪と重要行事が続く来年を、末永く銘記される日中関係飛躍の年としたい、北京五輪の成功のために協力したい旨述べ、温総理より賛同。

(4)福田総理より、胡主席に桜の咲く頃に訪日頂きたい、その前の楊外交部長、唐国務委員の訪日を歓迎する旨述べ、温総理より、胡主席は桜の咲く春頃に訪日する、成功させたい旨発言。また、温総理から、明年10月に北京で開催されるASEM7への福田総理出席招請がなされ、福田総理から、招待に感謝、同会合を有意義なものとしたく、積極的に検討したい旨発言。

【2.互恵協力の強化】

(1)ハイレベル経済対話

 双方は、第1回対話の成功を歓迎し、第二回対話に向け、フォローアップを進めることで一致。

(2)気候変動/省エネ・環境(共同コミュニケ-別添1)

(イ)福田総理より、気候変動に関し、成長と環境の両立のため知恵を絞り協力すべき、日中両国の協力は、子孫と国際社会に対する責務である旨述べ、バリ行動計画の下で、中国を含む全ての主要経済国がより責任ある形で参加する実効的な枠組み構築が必要である旨発言。

(ロ)福田総理より、具体的アクションの積み重ねが国際的議論の進展にも貢献するとし、日中の具体的協力の進展に言及し、双方は、今後、以下の協力を進めることで一致。

(ハ)温総理より、日中間の省エネ・環境協力は進展している、気候変動問題は深刻な挑戦であり、その解決に向け、バリ・ロードマップを踏まえ、積極的に参加し、生産的役割を果たしたい、中国は具体的目標を設定して、真剣に取り組んでおり、これは責任ある態度の表れ、優れた技術と経験を持つ日本との協力を一層推進したい旨発言。また、長江、渤海等の水質汚染処理、省エネセンターや環境基金の設立に向け協力を進めたい旨発言。

(3)知的財産権・ビジネス環境改善

(イ)福田総理より、知財保護は、「対立」ではなく「協力」のテーマ、地方での日本企業と知財関係機関との連携等について、具体的活動を展開したい旨発言。温総理より、中国政府は知財保護を重視、経験豊富な日本との協力を進めたい旨発言。

(ロ)福田総理より、ビジネス環境改善の重要性を指摘し、両総理は、日中韓投資協定の早期締結、日中韓ビジネス環境改善アクション・アジェンダの早期公表に向け努力することで一致。

(ハ)温総理より、対中技術貿易円滑化措置をとること及び完全な市場経済地位承認を要請。

(4)農業

(イ)対中コメ輸出に関し、双方は、検疫条件につき、来年3月末までに解決し、その間150トンを暫定輸出することを歓迎。福田総理より、引き続いての配慮を要請し、温総理より、できるだけ早く技術的な問題を解決していきたい旨発言。

(ロ)温総理より、ポジティブリスト制度につき要望。福田総理より、フォローさせたい、残留農薬・検査技術に関する研修を実施したい旨表明。

(5)科学技術協力

 双方は、気候変動及び核融合分野他のサイトヘでの科学技術協力の共同文書が合意に至ったことを歓迎。

【3.相互理解・相互信頼の促進】

(1)安全保障分野における交流

(イ)福田総理より、来年は日本側艦艇を派遣する旨表明し、温総理より歓迎。また、両総理は、防衛当局間の連絡メカニズム設置に向け、共同作業グループの早期開催で一致。

(ロ)また、双方は、人民解放軍青年将校と自衛隊青年幹部の相互訪問実施で一致。

(2)青少年交流・知的交流等(「日中青少年友好交流年」の活動に関する文書-別添2)

(イ)双方は、「青少年友好交流年」である来年、4千人規模の青少年交流を目指すことで一致。

(ロ)知的交流を支援し、内容は新日中友好21世紀委員会にて検討してもらうことでも一致。

(ハ)福田総理より、中国国民訪日団体観光の査証の緩和措置を通じ、団体観光に加えて、来年3月より家族観光を実現することとした旨表明し、温総理はこれを歓迎。

(ニ)温総理より、「孔子学院」を増設したい旨発言。福田総理より有意義なことと評価。

(3)羽田-北京チャーター便

 温総理より、羽田空港と北京南苑空港を結ぶ定期的なチャーター便を北京五輪前に就航させたいとの日本側提案について、引き続き関係当局に相談させたい旨発言。福田総理より協力を要請。

(4)日中領事協定

 双方は、日中領事協定交渉を加速させ、早期締結を目指すことで一致。

(5)青島総領事館開設

 福田総理より、国会による承認を経る必要はあるが、2008年度に青島に総領事館を開設することとなった旨述べ、中国側の協力を要請。これに対し温総理より、歓迎の意を表明。

【4.東シナ海資源開発問題】(両国首脳の東シナ海問題に関する新たな共通認識-別添3)

 双方は、これまでの協議を通じて相互理解が一層深まり、具体的解決策についても積極的な進展が得られたことを確認。同時に、両総理はこの問題を早期に決着させるという断固たる決意を共有し、今後も協議を継続し、一刻も早い解決を目指すことで一致した。

【5.遺棄化学兵器処理事業】

 双方は、遺棄化学兵器処理事業の廃棄のプロセスの加速化で一致。

【6.歴史・台湾】

(1)温総理より、歴史と台湾問題は、日中関係の政治的基礎、台湾は中国の核心的利益である旨述べ、国連加盟についての公民投票の動きは、両岸及び地域の安定を脅かすものである旨述べ、懸念を表明。

(2)福田総理より、振り返ることがつらいような歴史であればこそ、しっかり直視すべき、それを伝えるのは我々世代の責務、将来に誤りなきよう期すことが私の仕事、我が国は、平和国家としての歩みを続けていく、広く中国国民にも理解して頂き、未来志向の日中関係をめざしたい旨述べ、来週北京で開催される歴史共同研究への期待を表明。

(3)福田総理より、我が国の台湾に関する立場は、日中共同声明にあるとおりであり、何ら変更はない、心から平和的解決を望んでおり、そのための対話の早期再開を強く希望している、したがって、一方的な現状変更の試みは支持できない、この観点から、台湾の公民投票を巡って両岸に緊張が高まるようなことは望んでおらず、また、これが一方的な現状変更につながっていくのであれば、支持できない旨表明し、温総理よりこれを評価。

【7.地域・国際社会における協力】

(1)北朝鮮

(イ)福田総理より、六者会合は年末の「期限」を控え重要な局面を迎えている、今、最も重要なことは、北朝鮮が、約束どおり、五者に対し、「完全かつ正確な申告」を行うことである旨発言。

(ロ)温総理からは、核問題は、六者会合関係国の共同の努力により、着実に進展している、措置が全面的かつバランスのとれた形で実施され、共同声明の内容が実現されることへの希望を表明。双方は、六者会合共同声明を完全に実施し、北東アジア地域に永続的な平和と安定を実現できるよう、日中で緊密に協力していくことで一致。

(ハ)福田総理より、拉致問題を含む日朝関係に関する日本の方針を説明し、引き続き働きかけを行ってきている、日朝関係が進展すれば、日本が、六者会合プロセスの進展のためにより積極的な役割を果たせる、六者会合プロセスが全体としてバランスよく前進するよう努力を続けたい旨発言。

(ニ)これに対し、温総理より、日朝関係の正常化を歓迎し、支持する、シンガポールでも表明したとおり、拉致問題に関する日本の関心を理解しており、対話を通じ、適切に解決できると信じている、日朝関係の改善を強く支持する旨発言。

(2)ブットー・パキスタン元首相を狙ったテロ事件

 福田総理からお悔やみを表明するとともに、今回の卑劣なテロ行為を断固として非難する、パキスタンの政府及び国民が今回の苦難を乗り越え、引き続き民主主義の定着に向けて力強く歩むことを期待している旨述べ、温総理も同様の考えを表明。

(3)国連安保理改革

 福田総理より、中国のより積極的な態度、大局的判断を要請し、温総理より、日本の国連における地位と役割を重視しており、日本が世界の平和と安定のためより多くの貢献を行うことを望んでいる旨発言。双方は、日中間で更に緊密に意思疎通をはかっていくことで一致。

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