安倍総理大臣

日インドネシア首脳会談(概要)

平成19年8月20日

 8月20日(月曜日)午前、インドネシアを公式訪問中の安倍総理は、ユドヨノ・インドネシア大統領と会談を行ったところ、概要以下のとおり。

1.冒頭発言

 安倍総理より、昨年11月のユドヨノ大統領訪日は大変な成功であり、今回の訪問を通じ具体的な協力を進めていきたい。今回の訪問に併せて経済ミッションがインドネシアを訪問しており、両国の経済関係を一層強化するための重要な機会となることを期待する旨述べた。これに対し、ユドヨノ大統領より、安倍総理のインドネシア訪問及び経済ミッションの訪問を心から歓迎する旨述べた。

2.二国間関係

(1)「戦略的パートナーシップ」の下での協力強化

 安倍総理より、昨年合意した「戦略的パートナーシップ」に基づき、基本的価値観を共有するインドネシアと二国間関係及び国際社会の課題への取組を強化していきたい。インドネシアにおける民主化・経済改革及びテロ対策の着実な進展を評価する。我が国もインドネシアの努力を引き続き支持しており、特に、民主化を制度的に支える「法の支配」に関し、警察改革支援を継続していく旨述べた。これに対し、ユドヨノ大統領より、インドネシアの警察改革への支援に感謝する。「法の支配」の確立により一層の民主化を進めていきたい旨述べた。

(2)経済連携協定及び投資環境整備

 安倍総理より、本日ユドヨノ大統領と経済連携協定(EPA)に署名できることは喜ばしい。我が国企業の円滑な活動に向け、EPAや官民合同フォーラム等を通じ、投資環境が一層整備されることを期待する旨述べた。これに対し、ユドヨノ大統領より、インドネシアとしても投資環境の改善に向けて規制改革やインフラ整備に努めており、こうした努力を通じ、日本を含む各国からの投資を促進したい旨述べた。

(3)環境・エネルギー

(イ)安倍総理より、「美しい星50」の提案は、ビジョンとしての長期目標及び主要排出国が参加する国際的枠組み構築に関する3原則を提案し、また、この提案を支持する途上国を新しい「資金メカニズム」及びエネルギー面での取組を通じて支援するものである旨説明した。また、気候変動問題はグローバルな課題であり、まさに両国の戦略的パートナーシップの下での協力にふさわしく、インドネシアと協力を進めていきたい旨述べた。これに対しユドヨノ大統領より、「美しい星50」は大変重要な提案であり、12月にバリで開催される気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)への重要な政策的インプットとして、高く評価する。同会議の成功に向け、日本と協力していきたい旨述べた。

(ロ)安倍総理より、持続可能な森林経営に向けたインドネシアの取組を評価している。我が国は、国際熱帯木材機関による支援等を通じ、インドネシアとの協力を継続していく。「東アジアのエネルギー安全保障に関するセブ宣言」以降、省エネ目標・行動計画を策定し、その実施をレビューする必要性が共有されつつある。今後これに基づくインドネシアの取組を支援したい旨述べた。

(ハ)安倍総理より、インドネシアからの液化天然ガス(LNG)の安定供給は、両国のエネルギー協力発展の基礎であり、安定供給のみならず投資環境整備についても、大統領の配慮をお願いしたい。原子力安全・セキュリティ・不拡散の確保を前提とし、インドネシアの原子力発電導入のための制度整備に関する支援を進め、両国の互恵的な発展に寄与していきたい旨述べた。これに対しユドヨノ大統領は、インドネシアとしても、国内の需要に配慮しつつ、引き続き外国へも輸出できるようにしていきたい。LNGのみならず、石炭やバイオ燃料等の代替エネルギーについても日本と協力していきたい旨述べた。

(4)鳥・新型インフルエンザ

 安倍総理より、鳥・新型インフルエンザについてのインドネシアの対策強化を支援すべく、今般、新たに17億円規模の無償資金協力を決定した旨述べ、ユドヨノ大統領は、日本からの支援に感謝する旨述べた。

3.地域・国際情勢

(1)東アジア地域協力

(イ)安倍総理より、全ての東アジア協力の枠組みをインドネシアと共に発展させたい。東アジア・サミット(EAS)については、次回会合で環境・気候変動につき具体的成果を出し、EASの下での協力を発展させていきたい。EASの発展に向けインドネシアとの連携を重視している。ASEAN+3についても、今後とも効果的な協力を促進していきたい旨述べた。これに対しユドヨノ大統領は、次回EASの成功に向け協力していきたい旨述べた。

(ロ)安倍総理より、日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定について、5月の経済大臣間の合意に基づき、8月末までに大筋合意し、11月の日ASEAN首脳会議までの妥結を目指して、引き続きインドネシアと協力していきたい旨述べ、緊密に協力していくことを確認した。

(2)北朝鮮

 北朝鮮問題について、安倍総理より、六者会合の作業部会において、「次の段階」の措置の実施に向けた議論が始まっている。北朝鮮の非核化に向けた動きを加速させるべく、協力を得たい。我が国は日朝作業部会において、拉致問題について議論し、一刻も早い解決を得たいと考えている。核、ミサイル、「不幸な過去の清算」の問題についても議論していきたく、北朝鮮の誠意ある対応を期待したい旨述べた。これに対し、ユドヨノ大統領は、拉致問題の早期解決を期待している。インドネシアは、拉致問題を含め北朝鮮についての色々な問題の解決に貢献していきたい旨述べた。

(3)国連安保理

 安倍総理より、我が国の常任理事国入りを常々支持頂き感謝する。引き続き早期の常任理事国入りを目指すので、協力を得たい。現在、非常任理事国を務めるインドネシアとは、情報共有・連絡を密にしたい旨述べた。これに対し、ユドヨノ大統領より、日本は常任理事国入りする十分な可能性があり、包括的な改革案につき議論する中で引き続き協力していきたい旨述べた。

(4)海上安全

 安倍総理より、マラッカ・シンガポール海峡の航行安全の確保は極めて重要である。このため、関連施設整備や沿岸諸国の海上保安機関の能力向上支援等、より一層の貢献をしていく。インドネシアのアジア海賊対策地域協力協定への早期加盟に向けた大統領の決断と指導力に期待する。今年末までには我が国が供与する巡視船艇3隻の引渡しが行われる予定である旨述べた。これに対し、ユドヨノ大統領より、マラッカ・シンガポール海峡の沿岸国として、同海峡の安全確保のための努力を継続していく旨述べるとともに、巡視船艇が本年末までに引き渡されることに感謝する旨述べた。

(5)平和構築(アチェ和平の定着)

 安倍総理より、アチェ和平・復興への取組を引き続き支援すべく、本年380億円規模の円借款を始めとする経済協力を実施した。また、昨年、元兵士等の社会復帰のため、国際移住機関(IOM)を通じ10億円の支援を実施した、更に、これに加え、元兵士のみならず地域住民を対象として、アチェの和平の定着を図るための支援の実施を検討中である旨述べた。これに対し、ユドヨノ大統領より謝意の表明があった。

(6)アフリカ開発

 安倍総理より、来年5月、我が国は第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)を横浜で開催する。TICADプロセスでは、アジアの開発経験をアフリカで活用する観点から、アジア・アフリカ協力を推進してきている旨説明した。両首脳はTICAD IVの成功に向けて協力することで一致した。

(7)核兵器不拡散条約に基づく不拡散体制強化

 安倍総理より、2010年の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議に向けてNPT体制の強化にインドネシアとともに取り組んでいきたい。NPTに基づく核軍縮・不拡散体制の強化の観点からも、インドネシアには包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期批准をお願いしたい旨述べた。これに対し、ユドヨノ大統領より、核不拡散は重要であり、インドネシアとしても引き続き検討を進めていきたい旨述べた。

(8)中東

 最後に、ユドヨノ大統領より、中東問題に関し、日本からパレスチナ問題についても支援をいただきたい旨の話があり、安倍総理より、先般、麻生外相より、2000万ドルの対パレスチナ支援を新たに表明した旨紹介した。

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