岸田外務大臣

平成25年11月12日
北欧・バルト8か国との外相級会合(1)
北欧・バルト8か国との外相級会合(2)
北欧・バルト8か国との外相級会合(3)
1.会合の概要

(1)ASEM第11回外相会合に参加するためにインドのデリーを訪問中の岸田外務大臣は、11日午後1時50分(現地時間)から約70分間、北欧・バルト8か国との外相級会合に参加しました。

(2)この会合は、日本と北欧・バルト諸国との協力を深めるために日本が呼びかけたことにより、今回、初めて開催されました。会合では、スウェーデンのビルト外相が議長を務め、その下で非常に活発な意見交換が行われました。その結果、今後日本と北欧バルトとの間で取り組むべき共通の課題として、平和構築、北極、女性の社会参画、イノベーションを活用した経済成長などが明らかになりました。

(3)北欧・バルト諸国の間での協力について話し合う非公式な枠組みであるNB8(Nordic-Baltic Eight)において次期(2014年)調整国を務めるエストニアから、来年のNB8の関連会合へ日本を招待したいとの発言がありました。日本としては、まず、来年2月に予定されているNB8政務局長会合に参加し、今回の会合で明らかとなった諸課題について議論し、今後の外相会合等への参加も視野に入れつつ、具体的な施策に結びつけていく考えです。

(4)今回の会合の参加者は以下のとおりです。
  日本:岸田文雄外務大臣
  スウェーデン:カール・ビルト外務大臣(議長)
  ラトビア:エドガルス・リンケービッチ外務大臣
  リトアニア:リナス・リンケビチュウス外務大臣
  ノルウェー:ボルゲ・ブレンデ外務大臣
  デンマーク:ニック・ヘケロップ欧州・貿易大臣
  フィンランド:ペッカ・ハーヴィスト国際開発大臣
  エストニア:ヴァイノ・レイナルト外務次官補
  アイスランド:グズムンドゥル・エイリクソン駐インド大使

2.岸田大臣の発言概要

(1)会議冒頭、岸田大臣から、長く平和と民主主義の旗手であり、平和構築、軍縮、開発、人権、環境等の分野で高い国際的発信力を持つ北欧諸国、また、この20年間で民主化と市場経済化を実現し、EUやNATOの重要なメンバーとして新興国の模範とも言えるバルト諸国と、アジア最古の自由、民主国家である日本が連携し、国際社会の諸課題について「一つの声」で発信していくことは大きな意義があると述べました。

(2)また、岸田大臣は、(ア)国際社会の平和と安定に一層積極的に貢献するため積極的平和主義を提唱している日本として、北欧・バルト諸国から理解と支持を得るとともに、共に平和構築に貢献したいこと、(イ)平和と安定及び経済成長の鍵である女性の社会参画を進めるため、トップランナーである北欧・バルト諸国の知見を得たいこと、(ウ)IT、医療、再生エネルギー等の分野で高いイノベーション力を持つ北欧・バルト諸国と連携し、産業振興を図り、新たな市場の創造や企業の国際展開を進めていきたいこと、(エ)ロシアから中欧、さらには中央アジアへのゲートウェイである北欧・バルト諸国とアジアへのゲートウェイである日本には協力の余地があり、双方向の貿易・投資を促進したいことすること等を述べました。

(3)さらに、アジア太平洋地域については、不透明を増すアジアにおいて、安定性と予見可能性を高めるため、基本的価値を共有する欧州が、アジアの地域協力への関与を深めることが重要である旨述べました。また、北極に関しては、日本と欧州は、環境保護、資源の持続可能な利用、関連国際法の遵守、先住民の権利尊重等の原則を共有しており、引き続き協力していきたいこと、また、北極海域において、国連海洋法条約を始めとする関連国際法が遵守され、航行の自由と安全が確保されることを重視していることを述べました。

3.各国の発言概要

 全ての参加国から、今回の会合の実現に向けた日本のイニシアティブに対する高い評価と、今回の枠組みを継続し、今後も様々な課題について日本と北欧・バルト諸国との間で議論を行っていくことへの期待が表明されました。
 また、日本と北欧・バルト諸国との間で議論していくべき課題として、サイバーセキュリティを含む安全保障、平和構築、地域協力、女性の社会参画、福祉、高齢化といった社会問題、医療、情報技術、エネルギーの多様化と効率化、研究・イノベーションを活用した経済成長、北極をめぐる協力等、様々な論点が提起されました。
 これらのうち、主な議論の概略は以下のとおりです。

(1)平和構築
 海賊対策、カンボジア及び東ティモールを始めとする地域の平和構築に対するリーダーシップ、中東及びバルカン地域等に対する人道支援などの日本による貢献について高い評価がありました。一方、北欧地域もこれまで平和構築に貢献してきた実績があることから、その知見を活かして具体的な協力について話し合っていくことを確認しました。

(2)北極
 各国から、日本の北極評議会へのオブザーバー参加を歓迎し、今後、日本との協力を進めていきたい旨の発言がありました。特に、北極海域は政治的・経済的にも重要であり、国連海洋法条約を始めとする自由で公正なルールに従って協力を進めていくべきとの意見が多数ありました。

(3)地域協力
 バルト諸国からは、日本がバルト地域に対して高い関心を示していることを評価しつつ、政治的、経済的にアジアとの橋渡しとなることについての期待が示されました。また、東方パートナーシップの取組の現状について説明がありました。さらに、多くの国から、共通の隣国であるロシアとの関係についての関心が示されました。
 岸田大臣からは、日本が東方パートナーシップの対象国に対して対話の促進、民主化支援、市場経済化支援の3つを柱とした外交を推進していることなどについて紹介しました。

(4)その他
 各国から、日本の安全保障政策や成長戦略、TPP交渉等の貿易政策などについて関心が示されました。岸田大臣からは、これらについての日本の取組の現状を説明しつつ、北欧・バルト諸国との間で今後も議論を深めていくことの重要性を再度指摘しました。

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