19日午前11時45分(現地時間)から約110分間,訪米中の玄葉外務大臣は,クリントン国務長官との間で日米外相会談を行ったところ,概要以下の通り(先方:キャンベル国務次官補,シファー国防次官補代理,ヌーランド国務省報道官ほか,当方:藤崎駐米大使,鶴岡総合外交政策局長,八木経済局長,伊原北米局長,横井外務報道官ほか同席)。
1 アジア太平洋地域情勢
(1)北朝鮮
金正日国防委員長死去という情勢を受け,玄葉大臣は,クリントン長官との間で,北朝鮮情勢について突っ込んだ意見交換を行った。両大臣は今回の事態が朝鮮半島の平和と安定に悪影響を与えないことが重要であるとの認識を共有し,そのためにも日米及び日米韓の間で,関連の情勢を注視し,情報を共有しながら,緊密に連携していくことを確認した。両大臣は,六者会合パートナーと緊密に協調する必要があるとの見解を共有した。また,両大臣は,すべての当事者がこの時期において安定と平穏を望んでいると考えており,その上で,北朝鮮の非核化に向けた取組についても,北朝鮮の具体的な行動を確保するために日米韓の緊密な連携を引き続き維持していくことを確認した。
拉致問題については,玄葉大臣から,米朝対話の度に米側から取り上げていただていることに謝意を表明し,さらに,この新しい事態を受け,問題解決に向けて更なる米国の理解と協力を求めた。
(2)対アジア太平洋地域政策
玄葉大臣から,米国がアジア重視の政策をとっていることについて歓迎の意を表し,14日に東京で行った自らのスピーチで示されたアジア太平洋の秩序構築のあり方について触れた。また,玄葉大臣から,様々な共通の課題に中国を交えて取り組んでいくことが重要であるとして,日米中対話を提唱した。これに対し,クリントン長官から賛同の意向が示された。
(3)ミャンマー
クリントン長官から,先般のミャンマー訪問の成果,米国のミャンマー政策について説明があった。玄葉大臣からは,現在の民主化・国民和解の流れが前進していることに勇気づけられている,対ミャンマー政策については,共通の目標の下で,日米で役割分担ができるのではないかと述べ,両大臣は,日米間で緊密に連携していくことで一致した。その上で,玄葉大臣は,来週の自らのミャンマー訪問でもこのような前向きな流れが更に進展するよう働きかけていきたい旨述べた。
(4)インド
両大臣は,インドとの間で日米両国が戦略的関係を深めていることを確認し,玄葉大臣からは,その具体的な協力として本日,ワシントンにおいて事務レベルの日米印協議が行われる予定である旨言及した。
2 グローバルな課題
(1)イラン
玄葉大臣から,日本としても安保理決議第1929号の履行に付随する措置を拡大したところであり,引き続きイランに対する圧力を維持するが,それと同時にイランへの働きかけも重要である旨述べるとともに,イラン中央銀行を制裁対象とする国防授権法案について,イランからの原油輸入が停止すれば,世界経済全体への打撃となる惧れがあるとの考えを伝えた。これに対し,クリントン長官からは,日本側の懸念については承知しており日米間で緊密に議論をしていきたいとの反応があった。
(2)アフガニスタン
クリントン長官から,日本のアフガニスタンに対しての取組,なかんずく,来年東京で国際会議を開催することについて評価する旨の発言があった。
(3)イラク
クリントン長官から,イラクの経済関係強化という日本の姿勢につき評価する旨の発言があった。
3 日米関係
(1)日米安保
玄葉大臣は,クリントン長官との間で,普天間飛行場の移設及び在沖縄海兵隊のグアム移転を含む在日米軍の再編について引き続き日米合意に従って進めていくことを改めて確認した。また,グアム関連予算について米政府の「ロードマップ」合意へのコミットメントは不変であることを確認した。また,玄葉大臣からは,沖縄の負担軽減を進めていくことが重要である旨述べ,米側の協力を求めた。
(2)経済
玄葉大臣から,TPP交渉参加に向けた関係国との協議に関する我が国での準備状況について説明した。
(3)文化・人的交流
両大臣は,来年の日米桜寄贈100周年を日米交流を深める機会としていくことで一致した。また,玄葉大臣からは,震災復興の施策の一環として,青少年交流事業「キズナ強化プロジェクト」を立ち上げる旨紹介し,クリントン長官との間で,その実施にあたって,日米共同の「トモダチ・イニシアティブ(TOMODACHI)」とも連携していくことについて一致した。
(4)子の親権
クリントン長官から,ハーグ条約締結に向けた日本の取組を評価する旨言及するとともに,既存の個別案件への対応についても要望があった。玄葉大臣からは,ハーグ条約は来年の通常国会に提出することを目指している旨説明するとともに,クリントン長官から要望があった個別案件についても,何らかの前進が得られるよう努力したいと述べた。