国連外交
城内外務副大臣の国連水と衛生に関する諮問委員会第23回会合 水循環・水と災害特別セッションにおけるスピーチ
平成26年10月31日

10月29日(水曜日),城内実外務副大臣は,三田共用会議所にて開催された国連水と衛生に関する諮問委員会(UNSGAB)第23回会合の水循環・水と災害特別セッションに出席し,UNSGAB名誉総裁であられる皇太子殿下のお言葉,太田昭宏国土交通大臣,ウシ・アイトUNSGAB議長の挨拶などに次いでスピーチを行い,水と衛生分野における我が国の国際協力の取組及び水に関連した災害に対する取組について,以下のとおり述べました。
1 水と衛生
(1)水は生命の根幹,社会の発展の礎であり,人間の安全保障の実現のために極めて重要な要素です。我が国は,こうした信念の下,水と衛生分野のODAを重視し,1990年代から継続してこの分野のトップドナーとなっています。また,1997年から3年毎に開催されている世界水フォーラム等の場において,統合水資源管理など,この分野で一層質の高い開発を支援していくための政策を積極的に推進しています。
(2)我が国は水分野の支援を重視しており,近年は平均約25億ドル,ODA全体の15%近くの支援を行っています。具体的には,途上国の人々のニーズに応じて,(ア)急速な都市化に対応するため,都市部の人々に対して安全な飲料水を供給するための大規模な水インフラの整備,(イ)村落部において特別な技術がなくとも維持管理・補修を行えるような井戸などの給水施設の供与,(ウ)各地域の実情に応じた良い水資源管理の手法,水の良い統治(グッド・ガバナンス)の普及,といった支援を行っています。
(3)水問題は,気候変動,大規模自然災害といった環境問題,感染症と並んで,一国のみでは解決することができず,国際社会が一致して取り組む必要があるグローバルな課題です。現在,我が国は開発政策の基本文書となるODA大綱の改定作業を進めており,本日から,新大綱案をパブリック・コメントに付しています。その中で,持続可能で強靭な社会の構築のため,健全な水循環の推進に取り組むこととしています。
(4)一方,ミレニアム開発目標(MDGs)のゴール7にある,(ア)安全な飲料水にアクセスできない人口割合の半減目標は,2010年に達成されましたが,今なお全世界で7.48億人,サブサハラ・アフリカでは3.25億もの人々がアクセスできていません。また,(イ)改良された衛生施設(トイレ)にアクセスできない人口割合の半減目標は,2015年までには達成困難な状況であり,全世界で25億人,サブサハラ・アフリカでは6.44億もの人々がアクセスできていません。
(5)こうした状況に対応するため,我が国は,2013年6月のTICADVにおいて,今後5年間で,(ア)新たに約1,000万人に対する安全な飲料水や基礎的な衛生施設へのアクセスの確保,(イ)1,750人の水道技術者の人材育成といった支援の実施を発表しており,現在,着実に実施しています。
(6)安全な飲料水や基礎的な衛生施設へのアクセスの確保は,女性にとって重要な課題です。こうしたアクセスにより,途上地域における女性,女子が長時間の水汲み労働から解放され,女性の社会進出が促進され,女子の就学率が向上し,女性のエンパワーメントの基礎が築かれます。こうした支援は,我が国が重視する「女性が輝く社会」の実現に貢献するものです。今後とも,引き続きジェンダー平等と女性のエンパワーメントを重視した支援を行います。
(7)現在,ポスト2015年開発アジェンダの策定に関する国際的議論が進んでおり,我が国も積極的に関与しています。本年7月の持続可能な開発目標オープンワーキンググループ報告書では,ゴール6として「万人のために水と衛生の利用可能,持続可能な管理を確保する」という目標が含まれています。また,同目標には,統合水資源管理を2030年までにあらゆるレベルで実施するというターゲットも含まれています。我が国は,この分野での国際的な取組の強化に向けて,引き続き政策提言を行ってまいります。
2 水関連災害
(1)水と災害は,UNSGABにおいても橋本行動計画の主要テーマの一つになっています。水は私たちの日々の生活や経済活動を支える不可欠な資源であるとともに,多すぎれば暴風雨や洪水,少なすぎれば干ばつといった大災害を引き起こします。自然災害の90%は水に関連した災害であるとの報告(World Water Development Report)があります。津波,洪水などの水関連災害は一瞬にして開発の成果を奪いかねません。このため,我が国は洪水防御,河川管理といった支援も行っています。
(2)我が国は災害多発国であり,防災の主流化を主導しています。来年3月には東日本大震災の被災地である仙台で第3回国連防災世界会議を開催します。水関連災害に対する対応は同会議における重要なアジェンダとなります。
(3)私の地元の浜松は,沖合の太平洋に南海トラフがあり,巨大地震の危険性があります。このため,将来発生しうる地震や津波に対する防災対策に力を入れています。このように,同会議においては各国における水関連災害を含む防災に対する取組を共有し,国際社会における防災の主流化を推進します。また,国連水関連機関調整委員会(UN-Water)も提言しているとおり,同会議での議論を通じて,ポスト2015年開発アジェンダに水関連災害を含む防災に対する取組をしっかりと盛り込みたいと思います。
(4)防災を進めるためには,ハイレベルの政治的コミットメントが重要です。UNSGAB委員及びその他の出席者におかれては,第3回国連防災世界会議において,母国からできるだけハイレベルの方が出席されるよう働きかけていただければ幸いです。