国際保健

平成28年6月17日

1 概要

 参加各国は,HIV及びエイズを巡る問題が依然として国際社会における喫緊の開発課題であるとの認識に立って,2001年のエイズ特別総会で採択された「誓約宣言」,2006年及び2011年の「政治宣言」,2015年の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」及び「アディスアベバ行動目標」等を想起しつつ,エイズ流行の2030年までの終息に向け,包括的な予防対策・治療・ケア・サポートの実現のための努力を強化することで一致。

 今回の政治宣言では,世界のHIV/エイズを巡る現状及びこれまでの対策の進捗及び2015年以降のHIV/エイズ対策の方向性に関する提言が行われた。

2 主な内容

  • (1)過去5年間(2011年~2016年)の間のかつてない成果(2015年までに1,500万人のHIV陽性者への抗ウイルス薬治療(ART)提供実現,85カ国における母子感染撲滅の概ね実現)を確認する一方,こうした成果から「取り残された人々」の存在について認識を共有し,HIV/エイズ対策においても「誰一人取り残されない」ことを目指す。
  • (2)これからの6年間(2016年~2021年)のHIV/エイズへの「優先(Fast-Track)」対応に向けた国際社会のリーダーシップの必要性を確認し,2020年までに世界における新規感染者を50万人以下に,また,エイズ関連死亡者を年間50万人以下とし,差別やスティグマ(汚名)を撲滅することにコミットする。
  • (3)エイズへの「優先(Fast-Track)」対応に重要となる資金の前倒しや多様化の実施にコミットする。
  • (4)HIV/エイズ対策のための検査及び治療へのアクセスの確保にコミットする(質の高い保健サービスへの公平かつ普遍的なアクセスを含む,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に取り組む)。
  • (5)ジェンダー間の平等と女性及び女児のエンパワーメントに資するHIV/エイズ対策の変革を追求する。
  • (6)質の高いHIV対応や予防や治療,ケアへのアクセスの確保,アプローチの多様化と対象の拡大及びエイズ流行終息とHIV対策の成果の確認の必要性を強調する。
  • (7)HIV/エイズの検査や治療を受けることを阻害しうる法律の廃止や差別やスティグマを撲滅するための法律や政策等を推進する。
  • (8)HIV/エイズ対策のすべての関係者が積極的に関与し,「対策の鍵となるコミュニティー(key population)」を含むHIV陽性者,HIV感染の高いリスクにさらされている人々及びHIVの影響を強く受けている人々への支援を行う社会を実現する。
  • (9)地域の指導者や機関の活用は,より効果的なエイズ対策にとり不可欠であることを確認する。また,国際社会の連携と共有責任の強化を通じ,地域の取り組みへの効果的な資金提供を確保する。
  • (10)HIV/エイズ対策の管理,モニタリング及び説明責任の強化の重要性を確認し,質が高く時宜を得た信頼のおける情報量の拡大に向けた努力や政府間・機関間の情報交換を推奨する。
  • (11)遅くとも第75回国連総会までに次回HIV/エイズ・ハイレベル会合を開催し,コミットメントについての指標を改訂する。また,国連事務総長は,進捗状況に関する年次報告を行う。

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