G20(金融・世界経済に関する首脳会合)
G20開発作業部会サイドイベント
「2030アジェンダ達成に向けた効果的な三角協力」の開催(結果)
平成31年1月28日


1 概要
- (1)1月23日(水曜日),外務省は,国際協力機構(JICA),経済協力開発機構(OECD),アルゼンチン共和国と共催で,G20開発作業部会サイドイベント「2030アジェンダ達成に向けた効果的な三角協力」を開催しました。
- (2)本サイドイベントでは,三角協力の実践事例に基づきながら,2030アジェンダの達成に向け,G20関係国・国際機関が取り組むべき事項を確認し,第2回国連南南協力ハイレベル会合(BAPA+40)や今後のG20における議論につなぐことを目的として,G20関係国,国際機関,国際協力関係機関・NGO関係者,一般参加者等約140名が参加し,活発な議論が行われました。(プログラム和文(PDF)
/英文(PDF)
/議長サマリー英文(PDF)
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2 開会の辞,基調講演
- (1)冒頭,梨田和也外務省開発協力局長から開会の辞を述べ,三角協力が新たな開発ニーズに応える有効なツールであることを指摘し,開発協力の担い手としての新興国及び途上国の知見が一層活用されるためには,現場のプラクティスに基づきながら,G20を含む諸アクターの役割を明確化していくことが肝要である旨述べました。(開会の辞(PDF)
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- (2)その後,ホルヘ・チェディエック国際連合南南協力事務所(UNOSSC)代表兼事務総長特使が挨拶を述べ,本サイドイベントは本年3月に開催されるBAPA+40に向けた重要な機会であり,三角協力を長年牽引してきた国でもある日本のイニシアチブに感謝する旨述べるとともに,三角協力とのシナジーの観点から,より多くの南の国々が南南・三角協力に参画することへの期待が述べられました。
- (3)続いて,マリオ・ペッチーニOECD開発センター所長兼OECD事務総長特別顧問(開発担当)が基調講演を行い,新興国の経済成長に伴い開発協力を取り巻く環境が大きく変化していることを指摘するとともに,このような現実のなかで,三角協力が諸アクター間の政策対話や相互学習を行うためのプラットフォームとなるなど,開発協力の新たな「実験場」としての役割を果たし得る旨述べられました。
3 各セッションの概要


(1)セッション1
テーマ:「三角協力におけるグッドプラクティス及び諸アクターの役割に関する類型化の試み」
- モデレーター:
- 細野昭雄 JICA研究所シニアリサーチアドバイザー
- スピーカー:
- エンリケ・オファリル チリ国際協力庁(AGCID)二国間及び多国間協力部長
- キラナ・プリタサリ インドネシア保健省公衆衛生総局長
- エリザベス・フペ タンザニア国立ムヒンビリ病院看護師
- ウール・タンイェリ トルコ国際協力庁(TIKA)対外関係・パートナーシップ部長
- ア 細野JICA研究所シニアリサーチアドバイザーから,冒頭,三角協力の形態の多様性に鑑み,本セッションでは日本の協力による三角協力の事例を材料として,知見提供の中核となる新興国の役割毎の類型化による知見共有が試みられる旨述べました。
- イ オファリルAGCID部長からは,1999年に開始した日本・チリ・パートナーシップ・プログラム(JCPP)や「中南米防災人材育成拠点化支援プロジェクト(KIZUNAプロジェクト)」の紹介を通じて,長年にわたる二国間協力を経て,チリが防災分野における中南米地域の拠点としての役割を果たすに至った過程について発表がなされました。
- ウ プリタサリ・インドネシア保健省総局長からは,母子手帳の取り組みが紹介され,1994年に開始した国内プロジェクトの成果の面的な展開を経て,現在ではグローバルな拠点として,アジアや中東,アフリカを対象に知見共有を行っている旨発表されました。
- エ フペ・タンザニア国立ムヒンビリ病院看護師からは,病院マネジメント手法としての5S-KAIZENアプローチをスリランカから学び,タンザニアの文脈に適応させるとともに,そのタンザニアの知見を他のアフリカ諸国にも共有してきた,「二重の三角協力」の経験について発表がなされました。
- オ タンイェリTIKA部長からはTIKAの設立背景や特徴が説明され,開発協力の受益国としての経験を生かしながら,他の開発協力機関との連携のもと,周辺国に対する南南協力や三角協力を積極的に展開してきた経験について発表がなされました。
(2)セッション2
テーマ:「持続可能な開発のための2030アジェンダに関するG20行動計画の推進に向け,より効果的な三角協力の在り方を考える」
- モデレーター:
- ハイエ・シュッテ OECD上級参事官兼開発協力局持続可能な開発のための資金課長
- スピーカー:
- エンリケ・オファリル チリAGCID二国間及び多国間協力部長
- キラナ・プリタサリ インドネシア保健省公衆衛生総局長
- エリザベス・フペ タンザニア国立ムヒンビリ病院看護師
- ウール・タンイェリ トルコTIKA対外関係・パートナーシップ部長
- エルナン・アオン 在京アルゼンチン共和国大使館書記官
- カルメン・ソージャー カナダ外務貿易開発省国際支援関係課長
- クラウディオ・サリナス 欧州連合(EU)国際開発協力総局戦略的パートナーシップ及び資金ツール課長
- セドリック・クローリー 南アフリカ国際関係協力省経済開発課長
- 室谷龍太郎 JICA企画部国際援助協調企画室副室長
- ア パネリストから,効果的な三角協力のための要素として,受益国のオーナーシップやニーズに基づいたアプローチ,受益国から知見提供国への転換を促す長いスパンでの技術的支援,多様なアクター同士の相互学習の基盤となる共通のレポーティングや情報共有の枠組みなどが言及されたほか,三角協力及び南南協力に関する実践的な知見や経験を共有するための機会が引き続きG20等の場を通じて提供されていくことへの期待が述べられました。
- イ フロアからも,アクター間の共創と相互学習により「実験場」としての三角協力の可能性はさらに拡大し得ること,国際的な政策枠組みのなかに三角協力アプローチを組み込むことの重要性などが指摘されました。
4 総括,閉会の辞
- (1)アラン・クラウディオ・ベロー駐日アルゼンチン共和国特命全権大使から,南南・三角協力を一層推進していくうえで,本イベントでの実り多い議論がBAPA+40に引き継がれることへの期待が述べられました。
- (2)ハイサム・レブフ・サウジアラビア経済・企画省G20担当課長から,次期G20議長国として,2030アジェンダ達成に向け三角協力及び南南協力を推進することの重要性が強調されました。
- (3)最後に,本清耕造JICA理事から,本イベントの総括として,南南・三角協力は諸アクターが2030アジェンダ達成に向けて協働することができる重要な手段である旨指摘するとともに,三角協力の効果的な実践のための共通の価値観が醸成され共通の枠組みが形成されること,G20が引き続き経験共有の機会を提供していくことへの期待が述べられました。
5 評価
- (1)本イベントは,2030アジェンダの達成に向け,従来のドナー国・受益国といった枠に留まらない,多様なアクター間の協力の重要性が高まるなか,三角協力における知見の提供者としての新興国の具体的な役割に焦点を当てて類型化を示すことで,その役割を促進するためにG20関係国や国際機関が果たし得る貢献について活発な議論が行われたという意味で,非常に時宜を得た有意義な機会となりました。
- (2)また本イベントでは,三角協力の実践にかかわる実務者からの現場の知見と,G20関係国からの政策レベルでの知見とをバランスよく交差させながら参加者同士の意見交換を行うことができ,効果的な三角協力についての共通のビジョンの形成にも大きく寄与することができました。