気候変動
科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)及び実施に関する補助機関(SBI)第60回会合(結果)
(国連気候変動枠組条約第60回補助機関会合(SB60))
2024年6月3日~6月13日、ドイツ・ボンにおいて、国連気候変動枠組条約第60回補助機関会合(SB60)が開催され、科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)及び実施に関する補助機関(SBI)の第60回会合が行われたところ、概要は以下のとおり。我が国から、外務省、経済産業省、環境省、文部科学省、農林水産省、林野庁、国土交通省、気象庁及び関係機関が参加した。
1 会合の概要
2024年11月に開催予定の国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)及びパリ協定第6回締約国会合(CMA6)等に向けて締約国間で議論が行われ、結論文書が採択された。我が国代表団も、結論文書の採択に向けて積極的に議論に貢献した。
議題に関する交渉に加えて、COP、CMA決定に基づく複数のイベントが開催された。
また、会期中には、複数の関係国及び関係団体と気候変動に関する意見交換を行い、また、二国間クレジット制度(JCM)について、実施ルール整備やパートナー国拡大等に向け協議を行った。
2 各議題の交渉結果について
(1)緩和
緩和野心実施作業計画(MWP)議題において、第3回グローバル対話(「都市:建築と都市システム」)を踏まえた議論が行われた。我が国からは、COP28で決定されたグローバル・ストックテイク(GST)やグローバル対話等の結果を踏まえた決定案を作成することなどを主張したが、今後の作業の進め方に関する意見の隔たりが大きく、結論文書の採択に至ることができず、次回会合において検討が行われることとなった。
(2)適応、ロス&ダメージ
適応については、CMA5の適応に関する世界目標(UAEフレームワーク)の決定を受けて、その進捗を測定するための指標に関する作業の進め方等について議論が行われた。CMA6に向け、関連指標を整理する作業を進めるとする結論文書が採択された。
ロス&ダメージについては、ロス&ダメージに対応するためのワルシャワ国際メカニズムのレビューのための委任事項に関する結論文書が採択された。
(3)グローバル・ストックテイク(GST)
GSTのプロセス改善に関しては、各国の主張が記載された非公式文書が作成され、次回会合において検討を継続するという結論文書が採択された。我が国からは、第2回GSTに向けてIPCC第7次評価報告書(AR7)が情報提供できるように、検討プロセスを柔軟に進めること等を主張した。
CMA5で設置が決定されたGSTの実施に関するUAE対話については、その対象範囲について、資金及び実施手段に限定する、GSTの成果全般とする等の選択肢が議論され、それらが記載された非公式文書に留意した結論文書が採択された。我が国は、GSTの成果全般を対象とするよう主張した。
(4)パリ協定第6条市場メカニズム、クリーン開発メカニズム(CDM)
CMA5で決定に至らなかった国際的に移転される排出削減クレジットの報告様式や締約国の承認プロセス、6条関連の登録簿間の連携、非市場アプローチのウェブ・プラットフォームの運用等について技術的な議論が行われ、これらの事項に関するCMA決定の選択肢及び会期間のワークショップ開催が示された結論文書が採択された。我が国からは、6条の完全運用化に向けて、報告様式の採択を優先すること等を主張した。
クリーン開発メカニズム(CDM)については、CDM機能の停止時期や今後必要な技術ペーパーの内容等について議論され、次回会合において検討を継続するという手続的な結論文書が採択された。
(5)公正な移行
UAE公正な移行に関する作業計画(JTWP)について議論が行われ、今次会合で議論されたCMA6の決定案が記載された非公式文書や各国からの提出意見等を留意しながら検討を継続するという内容の結論文書が採択された。
(6)農業と食料安全保障に関する気候変動対策
2025年に「農業分野における気候行動、食料システム・食料安全保障に係るアプローチ」、2026年には「実施手段に係る課題及び機会」をトピックとしたワークショップを実施する等を内容とする結論文書が採択された。
(7)その他
適応委員会のレビュー、国別適応計画、研究と組織的観測、透明性枠組みの報告ツール、対応措置、キャパシティ・ビルディング、技術移転、ジェンダーと気候変動、事務局事項等に関する議論が行われた。
3 SB会期中の主な関連イベントについて
(1)第16回研究対話
IPCC等から「新しいNDCの開発:低排出かつ回復力のある開発への移行」等に関する紹介があった。
(2)年次GST対話
CMA5の決定に基づき、GSTの成果が次期NDCの検討にどのように情報提供されるかについて、知識と優良事例の共有を促進することを目的に議論が行われた。我が国からは、NDC策定に向けた国内制度や、全ての温室効果ガスごとの目標設定、フォローアップ制度を紹介した。
(3)海洋と気候変動対話2024
海洋の生物多様性保全、レジリエンス、技術・資金とのリンクについて議論が行われ、我が国からはブルーカーボン、気候変動予測研究、海岸保全計画(高潮堤)等の取組を紹介した。
(4)山と気候変動に関する専門家対話
気候変動が山岳地帯及び下流コミュニティに与える影響等について議論が行われた。
(5)非市場アプローチ(パリ協定第6条8)に関するワークショップ
実施手段及び支援の関係機関及び各国の取組の紹介や連携等について議論が行われた。我が国からは、CEFIA(Cleaner Energy Future Initiative for ASEAN)とSUBARU(Sustainable Business of Adaptation for Resilient Urban Future)イニシアティブを紹介した。
(6)技術メカニズムと資金メカニズムのリンケージに関するワークショップ
これまでの各国・関係機関の取組の紹介があり、今後の両メカニズムのリンケージの強化に向けた議論が行われた。我が国からは、気候技術センター・ネットワーク(CTCN)を通じた支援で得られた教訓と今後の取組を紹介した。
(7)第2回新規合同数値目標(NCQG)に関する特別作業プログラム下会合(MAHWP)
CMA6に向けてNCQGの決定文書の構成に関して、共同議長から過去の技術専門家会合や第1回MAHWPにおける各国の主張を踏まえたインプットペーパーをベースに議論が行われた。
(8)シャルム・エル・シェイク対話
パリ協定第2条1(c)における全ての資金フローを1.5℃目標に整合的にする目標について、締約国間で対話が行われた。各国の資金交渉官や専門家からなるパネルディスカッションや複数のグループに分けての少人数会合を通して意見交換が行われた。