気候変動

平成30年11月1日

1 会合の概要

(1)日程・場所

 10月22日~24日 於:ポーランド・クラクフ

(2)出席者等

  • 参加者:約39か国・地域
  • 議長:ミハウ・クリティカ・ポーランド環境副大臣(COP24議長)
  • 日本:菅沼特命全権大使,松浦外務省国際協力局審議官,小野環境省大臣官房審議官,外務省,経済産業省,環境省から出席

2 議論の概要

(1)ビジネス・プレCOP

ア e-Mobility

  • ポーランドがファシリテーターを務め,自動車の電動化について議論。COP24でe-mobility閣僚宣言を発表する見通しであること等が紹介された。また,民間企業の参加者からは,自動走行による排出削減の可能性,政府や自治体によるインフラ整備の必要性,非化石電力の比率の重要性等が指摘された。他の参加国からは,各国の国内事情に応じた取組が必要であること,長期的には水素の活用や移動方法の転換等が必要であること等が指摘された。
  • 我が国からは,供給面(製造)と需要面(使い方)の両面が重要であることを指摘。供給面については,インフラ整備状況やエネルギーミックスを考慮した適切な政策措置をとる必要があること,需要面については,自動走行やカーシェアリングによる排出削減の可能性に言及した。

イ Mega-Cities

  • ノルウェーがファシリテーターを務め,大都市における温室効果ガス削減とその課題について議論が行われた。温室効果ガス排出の大部分が都市に関連すること,IPCC1.5度特別報告書を踏まえてスピード感を持って取組を進める重要性等が共有された。都市における温室効果ガス削減には,水処理・リサイクル・交通・緑化・脆弱性等の様々な課題が関係し,政府による適切な規制・目標設定,公共交通の整備・電化促進による交通部門の低炭素化等が重要であることが指摘された。
  • 我が国からは,IoT・AI等を活用したディマンド・レスポンスの取組等を紹介。また,温室効果ガス削減・循環経済・レジリエンス等の様々な側面を考慮した一体的な都市作り,国際的な都市間連携の重要性を指摘した。

ウ Future of energy - production, distribution and storage

  • NZがファシリテーターを務め,将来のエネルギーの在り方に関し,安全保障,資金・投資,エネルギー価格,公正な移行等の様々な観点から議論が行われた。多様なエネルギー間の市場競争の促進,政府による適切な市場設計,エネルギー転換のための,生産段階と消費段階におけるコスト負担のバランス,利害関係者による対話と公正な移行の重要性等が指摘された。
  • 我が国からは,パリ協定長期成長戦略の策定作業を進めていること,洋上風力等の再生可能エネルギー・水素・CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization & Storage)などの先進的な技術を促進していくこと等を述べた。

(2)パリ協定の実施指針

ア 緩和

  • 欧州委員会・シンガポールがファシリテーターを務め,パリ協定の緩和に関する実施指針に関して議論が行われた。多くの参加国が,ICTU(information to facilitate clarity, transparency and understanding of NDCs)が各国のNDC(Nationally Determines Contribution)の進捗把握や,世界全体の取組状況を把握するために重要であることを指摘した。一方で,NDCのスコープ(NDCに緩和以外の要素が含まれるか否か)や,ICTUガイダンスの詳細度については,参加国の間で異なる意見が見られた
  • 我が国からは,NDCの進捗把握のための定量情報の重要性や,詳細なガイダンスの策定が実際にNDC策定等の作業を行う担当者にとっても有益であること等を指摘した。

イ 適応

  • ノルウェー・マーシャル諸島がファシリテーターを務め,パリ協定の適応に関する実施指針に関して議論が行われた。適応が全ての国にとって重要で各国の状況に応じて多様であること,適応報告書の提出方法が各国の裁量に委ねられていること等を多くの国が指摘した。一方で,適応報告書の提出方法や,報告事項の性質(事前情報か事後情報であるか)の違いを,どのようにガイダンスに反映するかについては意見の相違が見られた。
  • 我が国からは,適応は国・地域等によって多様であるため,適応報告書について,各国が適切な報告事項や提出方法を選択できる柔軟性の確保が重要である旨を指摘した。

ウ 透明性枠組み

  • NZ・インドがファシリテーターを務め,パリ協定の透明性枠組みに関する実施指針に関して議論が行われた。多くの国が,透明性枠組みが各国の信頼を高めるために重要であること,既存のMRV(Measurement, Reporting and Verification)制度の経験をもとにすべきこと,各国の能力に応じた柔軟性の付与と継続的な改善が重要であることを指摘した。一方で,新しい透明性枠組みにおける報告の開始時期や,柔軟性の適用範囲等については意見の相違が見られた。
  • 我が国からは,全ての国に共通のガイダンスを作成する必要があること,柔軟性の付与と継続的な改善が重要であるが,各国が能力的な制約を十分に説明する必要があること等を指摘した。また,アジア地域における我が国のキャパシティ・ビルディングの取組についても紹介した。

エ 資金

  • ドイツ・メキシコがファシリテーターを務め,パリ協定の資金に関する実施指針に関して議論が行われた。多くの国が支援実績の透明性,資金の予見可能性の重要性を指摘した。また,1000億ドル目標やGCF増資に関する情報が,各国の信頼を高めるとの指摘もあった。一方で,資金の予見可能性については,国内の法的・行政的制約から定量的な情報提供に限界があることも,多くの国が指摘した。
  • 我が国からは,引き続き途上国支援に着実に取り組むことや,資金の予見可能性向上のため,定性的な情報が有用であること等に言及した。

(3)タラノア対話

  • タラノア対話,特に12月に開催予定の政治フェーズについて議論が行われた。多くの国が,タラノア対話の成果として,各国のNDCの野心向上に向けた強い政治的なメッセージを出す必要性に言及した。また,IPCC1.5度特別報告書に言及しながら,直ちに行動を起こす必要があることについて多くの国から言及があった。政治フェーズの成果物については,閣僚宣言・首脳宣言・COP決定等,いくつかの選択肢が考えられることも指摘された。
  • 我が国からは,12月の政治フェーズの成果は,交渉する性質のものではなく,議長の責任の下で取りまとめることで,強い政治的なメッセージを出すことが可能であることを指摘した。

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