気候変動

気候変動非公式会合 ペータースベルク気候対話X

令和元年6月11日

1 会合の概要

(1)日程・場所

 5月13~14日 於:ドイツ・ベルリン

(2)主催

 ドイツ及びチリ(共同議長: ドイツ・シュルツェ環境大臣,チリ・シュミット環境大臣兼COP25議長)

(3)出席者等

 ドイツ(議長国)及びチリ(COP25議長国)並びに,約35か国の主要先進・途上国の閣僚級,国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長,国連気候アクション・サミット特使等が出席。日本からは城内環境副大臣,松浦外務省国際協力局審議官他が出席した。

2 議論の概要

 今次会合は,6月のボン(ドイツ)における補助機関(SB)会合,9月のニューヨーク(米国)における国連気候アクション・サミット,12月のサンティアゴ(チリ)におけるCOP25を見据えつつ,パリ協定の実施に焦点を当てた議論が行われた。具体的には,(1)COP25 に向けた準備,(2)適応及びレジリエンスの強化,(3) 国連気候アクション・サミットに向けた準備,(4) 気候変動対策制度(climate change regime)の下での新報告規定に向けた準備,(5) NDCに関する財政支援と実施,(6) NDCの改善及び更新,について閣僚レベルで議論が行われた(基調講演のみ公開,それ以外については非公開。会議後,共同議長による総括が発出された。)。また,ドイツのメルケル首相が基調講演を行い,同国の気候変動対策への強いコミットメントを示した。各議題の議論の概要は以下のとおり。

(1)COP25に向けた準備

 多くの出席者が,COP25で市場メカニズムに関する実施指針に合意する必要があることに言及した。市場メカニズムは,民間からも関心が高く,国際的な緩和行動を促進するものとして重要であり,実施指針により,緩和成果のダブルカウントを防止し,環境十全性を確保する必要性が共有された。また,COP25はパリ協定の本格的な実施に向け重要であり,特に2020年のNDCの更新に向けた野心の向上を促進することや,幅広い主体の行動強化に繋がることに,多くの期待が寄せられた。また,チリより,海洋・極地・生物多様性・循環経済等についても,気候変動と統合的な課題として取り挙げることに言及があった。
 我が国からは,2020年以降のパリ協定の本格的な実施に向けて2019年は非常に重要であり,COP24で合意に至らなかった市場メカニズムに関する実施指針について採択することを重視しており,採択に向けて最大限尽力すると述べた。

(2)適応及びレジリエンスの強化

 多くの出席者が,気候変動による深刻な影響が生じていること,今後想定される影響を最小化するためにも,計画の策定と実施,能力強化,早期警報体制の整備や,保険などのファイナンスの充実などが重要であるとの認識を示した。また,途上国,特に現に大きな影響を受けている島嶼国や後発開発途上国への支援の継続や強化に言及があった。適応策の効果的な実施には,科学的な知見,データや情報が必要であり,国際的な共有が有用であること,また民間セクターの取組,コミュニティベースの取組への支援,生態系を基盤とするアプローチの推進等にも言及があった。
 我が国からは,世界にも類を見ない適応の単一法である気候変動適応法を昨年12月に施行したところであり,科学的知見に基づく適応策を進めるための情報基盤を整備し,国際的にも協力を進めていることを紹介した。

(3)国連気候アクション・サミットに向けた準備

 多くの出席者が同サミットの開催に向けた国連事務総長のイニシアティブを評価し,その成功に向けて協力していく旨表明し,幾つかの国は自らが務めている分野別のリード国としての作業状況について報告した。また多くの参加者が「野心」を高めるべしとの事務総長の主張に賛同し,NDCの実施やアップデートに取り組む意思を表明した。
 我が国からは,他国と同様,同サミットに向けた国連のイニシアティブを評価すると共に,同サミットを利用して,パリ協定の実施に向けた政治的なモメンタムを高めていくことを指摘した。また,G20議長国として,イノベーションに光を当て,環境と成長の好循環を実現し,非国家主体を含めた様々なステークホルダーを巻き込んだ持続可能な気候変動対策を推進していく旨表明した。

(4)気候変動対策制度(climate change regime)の下での新報告規定に向けた準備

 多くの出席者が,各国の気候変動対策の報告・透明性の確保はパリ協定実施の肝であり,各国間での情報共有・信頼醸成・相互学習・取組の進展確認,及び投資家に対する投資喚起の基礎として重要であるとの認識を示した。複数の出席者が,パリ協定に基づく新たな報告制度では,現在運用されている隔年報告書等の経験を活かすことが有用であり,報告の在り方を順次改善していく必要性を指摘した。途上国からの出席者は,報告作成に係る能力が不足しており,先進国と同等レベルの報告を行うことが困難であること,報告制度の運用には相当程度の柔軟性が認められるべきであること,先進国からの資金的・技術的・人的・組織的な支援が必要であること等を主張した。
 我が国からは,国内で運用されている温室効果ガスの算定・報告・公表制度や,途上国の透明性に関する能力向上を目指した「コ・イノベーションのための透明性パートナーシップ」等の取組について紹介した。更に,衛星いぶきによる温室効果ガスの濃度観測を通じた国際協力や本年5月に京都で開催されたIPCC総会への貢献についてもアピールした。

(5)NDCに関する財政支援と実施

 多くの出席者が,NDCの実施には資金をより一層スケールアップさせることが必要であり,その点で,1000億ドルの気候資金動員が肝要と指摘した。また,資金の流れをパリ協定の長期目標に整合させることが重要との指摘もあり,その中で,グリーンファイナンスなどの先駆的な取組を提案する国もあった。さらに途上国のNDC実施における技術支援の重要性も多く指摘された。
 我が国からは,途上国のNDC実施支援に取り組む意思がある旨表明した上で,マルチ・バイ双方での支援が重要と指摘し,マルチについてはGCFやMDBsを通じての協力を,バイでの支援については,支援に先だっての支援対象国との政策対話を通じて,気候変動対策を取りやすい環境 (enabling environment)の構築が重要と指摘し,その取組の一環として,我が国が途上国との間で進めている二国間クレジット制度(JCM)を紹介した。

(6)NDCの改善及び更新

 冒頭,ポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストロム教授がプレゼンテーションを行い,温暖化の状況,温暖化が進んだ場合の人類・自然に対する壊滅的影響,パリ協定の目標を達成する可能性及びその方策等について説明。野心の急激な(exponential)引上げの必要性,迅速かつ抜本的な気候行動を起こすための政治的意思の重要性を強調した。これを受け多くの出席者が,NDCの野心引上げの必要性を再確認するとともに,適応と緩和のバランス,様々なプレーヤーの参加確保,生物多様性・水・健康・インフラ等のより広い社会的側面の考慮,資金的・技術的・人的な国際支援等の必要性を指摘した。また,複数の出席者が,長期戦略の策定と足並みを揃えてNDCを改善すべき旨主張し,2050年実質排出ゼロに向けた取組も紹介された。また,多くの出席者が,NDC改善に向けた重要なマイルストーンとして,本年9月に予定されている国連気候アクション・サミットに言及した。

(7)メルケル・ドイツ首相及びシュミット・チリ環境大臣の基調講演

 メルケル首相は,若者が実施している気候変動対策を求めるデモについて理解を示しつつ,国際社会が一丸となって気候変動対策を強化すべき旨強調した。また,気候資金を長期的に予見可能な形で提供すべき旨主張しつつ,GCFに対するドイツからの新たな拠出として,現状約束額の倍の額を支払う意思を改めて表明した。気候変動対策強化へのモメンタム構築の場として,9月の気候アクション・サミットの重要性に言及し,メルケル首相自身参加予定である旨述べた。更に,欧州委員会が昨年公表した2050年までに実質排出ゼロを目指す長期戦略ビジョンをうけ,その達成方法についてドイツ国内で議論することに言及した。加えてドイツの状況として,2020年目標の達成は困難になってきているが,2030年目標の実現に向けて取組を強化する,2038年までに石炭火力発電を撤廃する,原子力発電も撤廃し,再生可能エネルギーを一層増加させる,といった点に言及した。
 シュミット・チリ環境大臣は,気候行動における女性参加の重要性を強調するとともに,国内にとどまらない,様々なレベルでの行動強化の必要性を指摘した。更に自国の状況として,森林保護やプラスチック製品使用禁止,湾岸地域の保護,再エネ導入増加といった取り組みをアピールし,チリへの投資を歓迎する旨強調した。

(8)シュルツ・ドイツ環境大臣による閉会挨拶

 シュルツ・ドイツ環境大臣は,閉会挨拶として,参加者の率直かつ有益な議論への貢献に謝意を表するとともに,それぞれのセッションの議論を総括しつつ,交渉から行動及び協力に焦点を移すべき,NDC実施及び改善にむけて強い政治的意思を保つべき,緩和・適応・ファイナンスを一体として気候変動対策を進めていくべき,NDC改善に向けた政治的モメンタム構築の場として気候アクション・サミットを有効に活用すべき,といった点をキーメッセージとして紹介した。最後に,ドイツ・チリ共同議長の責任において議論の総括を発出する予定である旨述べて閉会した。


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