気候変動

平成28年7月7日

1 会合の概要

(1)日程・場所

 7月4~5日 於:ドイツ・ベルリン

(2)主催

 ドイツ及びモロッコ(共同議長:バーバラ・ヘンドリクス・独・環境・自然保護・建設・原子炉安全大臣及びハキマ・エル・ハイテ・モロッコ環境大臣)

(3)出席者等

 ドイツ(議長国)及びモロッコ(COP22議長国)並びに,30か国の主要先進・途上国,NGO,民間企業,国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局,国連事務総長オフィス,パリ協定に関する特別作業部会(APA)共同議長等が出席。日本からは梶原環境省地球環境審議官ほか,外務省,経済産業省から出席した。

2 議論の概要

(1)パリ以降の主要課題

 多くの出席者が,パリ協定採択後の最大の課題は各国が提出した約束草案の着実な実施であり,そのための具体的な施策策定の必要性,各国の実施を支援するための能力開発等における国際協力の必要性に言及した。あわせて,多くの出席者がパリ協定の早期発効の重要性に言及するとともに,パリ協定を実施に移す上でのAPA及び補助機関会合(SB)における作業の加速化の重要性にも言及した。我が国からは,G7伊勢志摩サミットでも確認されたとおり,パリ協定の早期の締結・発効が重要であること,国内での取組として「地球温暖化対策計画」を策定した旨を発言した。

(2)温室効果ガスの低排出型かつ気候に対して強靱な発展のための長期戦略

 今世紀半ばまでの長期戦略について,冒頭にサウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源大臣から,同国が進める「ビジョン2030」に基づき推進する再生可能エネルギー導入の加速化と経済の多角化に向けた取組を説明し,米国からは,2050年に向けた長期戦略の早期策定に関する取組について説明した。中国からは,自国が推進する2030年ないしできる限り早期の排出のピークアウトの実現に向けた取組として,中国全土への排出権取引の拡大,再生可能エネルギー導入の加速化等について紹介した。その他,各国が進める長期戦略について説明した。また,多くの国が,適応に関する長期の計画・施策にも言及した。

(3)経済移行の加速化,低排出かつ強靱な発展のための資金の流れ

 冒頭,7月4日に任期を満了するクリスティアナ・フィゲレスUNFCCC事務局長が発言し,SDGs(持続可能な開発目標)の中で気候変動の対応も包括的に取り組むことで,経済社会全体の低炭素化に向けた移行の重要性を強調した。
 続いて,アンゲル・グリアOECD事務総長が発言し,低炭素で気候変動に強靱な資金の流れの重要性を強調した。次に,アンドレアス・グルーバー・アリアンツ社CIOが,機関投資家の立場から発言し,資金のグリーン化のためには,明確な価格シグナル,官民の連携,長期計画と確実性が必要と述べた。グリア事務総長及びグルーバーCIOと出席者のやりとりの中では,炭素税や排出量取引,化石燃料補助金の段階的廃止等を通じた民間セクターに低炭素化に向けたシグナルを送る施策について,様々なやりとりがなされた。また,中国(G20議長国)から,G20グリーン資金スタディグループの作業に関し,現在行われている気候リスク分析やグリーン・ボンド等の議論について紹介した。

(4)COP22への期待

 COP22の成果については,多くの国が,締約国のみならず民間セクター,地方自治体等の幅広いステークホルダーの関与を推進するためのアクションアジェンダの強化の重要性に言及した。また,多くの国が,パリ協定の実施に向けた,透明性,緩和の計上方法等の指針策定の議論を着実に前進させる重要性を強調した。
 また,今年秋のICAO(国際民間航空機関)総会における国際航空分野における市場メカニズムに基づく排出削減枠組みの創設,モントリオール議定書の改正によるHFC規制,及びIMO(国際海事機関)における燃料消費実績報告制度に関する議論の進展を,枠組条約外であるがGHGの大幅削減に資するCOP22までの成果とすることについて,幅広い支持があった。

(5)メルケル・ドイツ首相及びメズアール・モロッコ外務大臣(COP22議長)の基調演説

 メルケル首相は,長期戦略策定に向けた取組やパリ協定の採択を受けた各国による着実な実施の重要性に言及し,EUとしての削減目標である2030年までに少なくとも40%削減の目標の実施に取り組むとともに,ドイツ国内でのパリ協定締結の手続きを進めていると述べた。また,メズアールCOP22議長からは,「グローバル気候アクションアジェンダ(GCAA)」を強化していくこと,COP22の成功に向けて,パリでの成功を踏まえて包括的,公平,透明な形で議論を進めていくと述べた。

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