気候変動
科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA) 及び実施に関する補助機関(SBI)第58回会合(結果)
6月5日~6月15日、ドイツ・ボンにおいて、科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)及び実施に関する補助機関(SBI)の第58回会合(SB58)が行われたところ、概要は以下のとおり。我が国から、外務・経済産業・環境・文部科学・農林水産・林野・国土交通・気象の各省庁及び機関の関係者が出席した。
1 会合の概要
- (1)昨年11月の国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)で採択されたシャルム・エル・シェイク実施計画や各種決定に基づく各議題について締約国間で議論が行われた。我が国代表団も、結論文書の採択に向けて、積極的に議論に参加し、貢献した。
- (2)また、議題に関する議論に加えて、グローバル・ストックテイク(GST)の第3回技術的対話、シャルム・エル・シェイク緩和野心実施作業計画(MWP)第1回グローバル対話及び投資関連イベント、適応に関する世界全体の目標(GGA)に関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画(GlaSS)ワークショップ、ロス&ダメージに関するグラスゴー対話、海洋と気候変動対話等のイベントが開催された。
2 各議題の交渉結果について
(1)GST(パリ協定の目標等の世界全体の実施状況の評価(5年ごと))
COP28でのGSTの成果となるパリ協定締約国会合(CMA)決定に向けた交渉が行われ、合同コンタクト・グループの下で、同決定の構成について、締約国間で議論を行い、例示的な構成について一致した。我が国からも、1.5℃目標達成に向けた緩和野心向上につながる要素等、CMA決定に含まれるべき事項について、会合での発言や書面での意見提出を行い、積極的に議論に貢献した。
(2)緩和
MWPの議題化については、先進国と一部の途上国が支持する中、一部締約国の反対により採択に至らなかったものの、今後の交渉での活用を念頭に、SB議長の権限の下、SB58で実施された議論の結果をとりまとめた非公式文書が作成されることとなった。我が国からは、議題化に至らなかったことは遺憾であり、COP28に向けて、引き続き緩和分野の機運を盛り上げていきたい旨発言を行った。
(3)パリ協定第6条市場メカニズム、CDM(クリーン開発メカニズム)
COP26で決定された実施指針やCOP27で決定された実施細則に基づき、国際的に移転される排出削減クレジットの報告様式や締約国の承認プロセス、6条関連の登録簿間の連携、非市場アプローチのウェブ・プラットフォームの運用等について技術的な議論が行われた。我が国からは、報告様式の改訂に向けた各国意見の集約等を通じて議論に貢献した。
CDMについては、「CDM信託基金」のパリ協定第6条4項や適応基金への移転状況等について議論された。
(4)適応
GlaSSの下で、COP27で新たに設置を検討することを決定した「フレームワーク」について、締約国間で議論が行われ、フレームワークで扱うべき事項について、締約国から多くの意見が共有された。我が国からは、COP28でのフレームワークの採択に向けて、各国の多様な気候変動影響に対する適応策の強化に資する要素として、適応政策サイクルの重要性等を取り上げるよう提案を行った。
(5)ロス&ダメージ
サンティアゴ・ネットワークのホスト機関として、国連防災機関(UNDRR)/国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)及びカリブ開発銀行(CDB)が立候補を表明し、両機関の適性等について締約国で議論が行われた。我が国は、UNDRR/UNOPSの立候補を支持し、ロス&ダメージ分野とも深く関連する防災関連の取組の経験や活動地域の普遍性等で優れている点を指摘した。一方で、特に途上国間で意見が分かれ、ホスト機関の選出には至らなかった。
(6)パリ協定第13条強化された透明性枠組み(ETF)
ETF下の隔年透明性報告書(BTR)の2024年中の提出に向けて、締約国に対する能力構築支援について議論が行われた。
(7)公正な移行
COP27で設立が決定された公正な移行に関する作業計画(JTWP)のスケジュール、実施事項、態様等について、締約国間で議論が行われた。
(8)技術移転
技術メカニズムと資金メカニズムのリンケージについて、今後の両メカニズム間の協力関係の維持・強化に向けた議論が行われた。
(9)その他
国別報告書・隔年報告書、対応措置、適応委員会のレビュー、資金に関する常設委員会(SCF)のレビュー、キャパシティ・ビルディング、国別適応計画、研究と組織的観測、国連気候変動枠組条約事務局予算等に関する議論が行われた。
3 SB会期中の関連イベント及び二国間会談等について
(1)関連イベント
- ア GST第3回技術的対話
GST第3回技術的対話が実施され、第1回、第2回に引き続いて、緩和、適応、実施手段等のテーマごとに、締約国及び非締約国主体が意見交換を行った。第3回の実施をもって技術的対話が終了し、今後は共同ファシリテーターにより全3回の対話の成果等をまとめた統合報告書が作成・公表される予定。 - イ MWP第1回グローバル対話・投資関連イベント
MWP下の第1回グローバル対話及び投資関連イベントにおいては、全ての締約国及びステークホルダーの間で活発な意見交換が行われた。双方のイベントでは「公正なエネルギー移行」をテーマに、再生可能エネルギー、系統とエネルギー貯蔵、省エネルギー、二酸化炭素回収・貯留(CCS)/二酸化炭素回収・利用(CCU)の4分野について、締約国及び非締約国主体がそれぞれの優良事例や課題の共有を行った。我が国からは、国内のエネルギー政策や脱炭素先行地域等の取組、諸外国との人材育成事業や技術実証事業、「パリ協定第6条実施パートナーシップ」等の国際協力の取組を共有しつつ、地域をはじめとする多様なステークホルダーの取組の重要性を指摘。当該イベントの成果を通じて、エネルギー移行分野での1.5℃目標に整合的な取組を推進する緊急性・重要性を強調した。 - ウ 非市場アプローチ(パリ協定第6条8)に関するワークショップ
非市場アプローチの優良事例や経験について締約国・関係機関等による議論が行われ、我が国からは、ASEANのエネルギー移行と脱炭素化に貢献する官民イニシアティブであるCEFIA(Cleaner Energy Future Initiative for ASEAN)の取組を紹介した。 - エ GlaSS第6回ワークショップ
適応策の目標設定や指標、各締約国における適応策の主流化の取組、適応サイクルについて意見交換が行われた。我が国からは、国内の適応策実施体制を紹介しつつ、地域特性を反映した形で適応策を推進することの重要性を提起した。 - オ ロス&ダメージに関するグラスゴー対話
COP27で決定されたロス&ダメージ支援に対する新たな資金面での措置について締約国間で議論を行った。 - カ パリ協定第9条5に関する第2回隔年ワークショップ
パリ協定第9条5に基づき先進国が提出した気候資金に関する事前情報の提供に関して、次回の情報提供に向けた改善点や、これを途上国がどのように活用していくかについて議論を行った。 - キ 気候資金の新規合同数値目標に関する第6回技術専門家対話
2025年以降の気候資金目標に関して、目標額を検討するためのアプローチについて、締約国やステークホルダー等を交えて議論を行った。 - ク 海洋と気候変動対話
海洋分野での気候変動対策の実施の強化について議論が行われ、我が国から海洋の脱炭素政策及び水産分野の適応策の概要や、ブルーカーボンに関する取組等について紹介を行った。 - ケ 第15回研究と対話
地球規模の気候システム研究に関する3つのテーマ(変革的な適応、非CO2温室効果ガス、二酸化炭素除去(CDR)を含むマイナス・エミッション技術)について議論が行われ、我が国から気候変動予測研究の水災害対策への活用における民間セクターとの連携の重要性、熱帯雨林のメタン吸排出に関する研究、少ない肥料で収量を確保できるコムギの育成等の取組を紹介した。
(2)二国間会談等
- ア 会期中、AOSIS(サモア)、AILAC(コスタリカ、コロンビア、チリ)、豪州、ブラジル、EU、スイス、米国、シンガポールと個別に会談を行ったほか、国内外のNGO・ユースとも意見交換を行い、COP28に向けた議論や我が国が取り組む気候変動対策の発信を行った。また、我が国他が所属するアンブレラ・グループ(UG)として、UAE(COP28議長国)、国連事務総長事務局、国連気候変動枠組条約事務局と意見交換を行った。
- イ この他、二国間クレジット制度(JCM)について、パートナー国とのJCM実施ルール整備やパートナー国拡大に向けて様々な国と協議を行った。
(3)我が国主催イベント
6月9日、日本と世界銀行の共催で、「パリ協定第6条実施パートナーシップと市場インフラの進捗に関するサイドイベント」を開催し、最新の取組状況を共有した。