気候変動
気候変動分野の透明性に係るキャパシティ・ビルディング・セミナー
平成28年11月1日


1 会合の概要
(1)日程・場所
10月26日,インドネシア・バンドンにおいて,「気候変動分野の透明性に係るキャパシティ・ビルディング・セミナー」(外務省委託事業)が開催されました。本セミナーは,低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)第5回年次会合の機会に,公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES),バンドン工科大学の協力を得て行われました。
(2)参加者
アジア地域の6か国(日本,インドネシア,タイ,ベトナム,カンボジア,マレーシア)及び1国際機関(UNFCCCバンコク事務所)から,研究・学術関係者を中心とする計37名がセミナーに出席しました。
2 議論の概要
- (1)本セミナーは,昨年12月に採択されたパリ協定において,途上国を含むすべての国に温室効果ガス排出削減行動が義務づけられたことを受け,途上国が抱える問題や求められる方策を特定し,必要な能力向上(キャパシティ・ビルディング)のあり方について話し合うことを目的に開催されました。
- (2)参加者は,以下の3つのテーマについて議論を行いました。
- (ア)途上国による自国の排出削減目標(nationally determined contributions:NDC)の策定及びその実施における課題
途上国が抱えている主な課題として,NDC策定に必要なデータの入手困難さ,専門用語の難解さ,支援プログラムや資金へのアクセスの難しさ,NDC策定を支援する外国人専門家からの知識の共有が十分ではないこと,他国の成功事例の自国への応用が難しいこと等が指摘されました。 - (イ)キャパシティ・ビルディングが必要な具体的分野
NDCの策定及び実施においては,各国の政策担当者だけでなく政治家や知事等の指導者層の理解促進が必要なこと,民間セクターとの協力の推進方法について支援が求められること,他国の成功事例を学ぶためのインターン制度の構築が有益なこと等について提案がありました。 - (ウ)NDCの策定及び実施における研究コミュニティの役割
NDCの策定及び実施に際しては,政府間の協力だけでなく,研究者間のネットワークや民間セクターとの連携を強化し,様々なステークホルダー間の協働が有益であること等について一致しました。
- (ア)途上国による自国の排出削減目標(nationally determined contributions:NDC)の策定及びその実施における課題
- (3)議論の結果,今後のキャパシティ・ビルディング支援の方向性や先進国と途上国の協力にあり方についてまとめたサマリー(日本語/英語)を発出しました。
3 評価
今回のセミナーでは,パリ協定の下で途上国が抱えている新たな課題が把握され,それに対するキャパシティ・ビルディングや協力のあり方について具体的な提案が行われました。日本の取組を紹介し,各国の現状について互いに共有することができたほか,研究者のネットワークの強化を図る上で大きな意義がありました。参加者がASEAN諸国の出身者に限定され,他の地域やアジア諸国からの参加者が得られないなど,地域バランスの面では課題が残りました。
セミナーの結果については,モロッコ・マラケシュで11月7日から11月18日にかけて開催される第22回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP22)においても報告される予定です。