気候変動
第20回「気候変動に対する更なる行動」に関する非公式会合(概要)
1 会合の目的
「『気候変動に対する更なる行動』に関する非公式会合」(略称:日伯非公式会合)は、我が国とブラジルが共同議長を務め、2002年から毎年東京にて開催してきました。この会合は、各国の交渉実務担当者(首席交渉官級)が非公式な形で率直な議論を行うことを目的としたものです。本年の会合は、昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染症対策のため、オンライン形式で開催しました。会合では本年11月に開催が予定されている国連気候変動枠組条約第27回締約国会合(COP27)に向けた交渉の方向性や課題について、意見交換が行われました。
2 日程・場所・共同議長
- (1)日程:
- 3月16日(水曜日)・17日(木曜日)
- (2)場所:
- オンライン
- (3)共同議長
- (日本側)赤堀 毅 外務省地球規模課題審議官
(ブラジル側)パウリーノ・フランコ・デ・カリヴァーリョ・ネット外務副次官(Mr. Paulino Franco de Carvalho Neto, Ambassador, Secretary of National Sovereignty and Citizenship, Ministry of Foreign Affairs)
3 参加国・オブザーバー
(参加国)
アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、豪州、ベリーズ、ブータン、ブラジル、カナダ、中国、コスタリカ、エジプト(COP27議長国)、欧州委員会、フランス、ガボン、ドイツ、ギニア、インド、インドネシア、日本、メキシコ、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、サウジアラビア、セネガル、シンガポール、南アフリカ、スイス、英国(COP26議長国)、米国
(オブザーバー)
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局、科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)議長、実施に関する補助機関(SBI)議長、Center for Climate and Energy Solutions(C2ES)
4 議論の概要
(1)COP26後の道筋:交渉から実施へ
2022年は、UNFCCCの採択から30周年となります。2020年からのパリ協定の本格運用開始も相まって、気候変動対策はルール策定のための交渉から実施へと新たな段階を迎えています。当該セッションでは、この状況を踏まえ、今後、気候変動対策に関する国際的な枠組みをどのように気候変動対策の実施の強化につなげていくかについて参加国が議論を行いました。
多くの参加国から、昨年のCOP26におけるパリ協定実施指針の完成を受け、本年においては、パリ協定の1.5℃努力目標の追求に向けた気候変動対策の「実施」が重要であるという発言がありました。いくつかの国から、1.5℃努力目標の追求に整合的でない温室効果ガス排出削減目標(NDC)を掲げている締約国に対して、目標の引き上げ等、更なる取組の強化が必要という意見や、気候変動対策の実施において、非国家主体の取組が重要となってきていることから、地域・地方政府、先住民、ジェンダー、若者等の視点を反映していくべきという指摘がありました。
また、UNFCCCの下で行われてきた、締約国間の交渉による合意に基づいて世界全体で気候変動対策を実施していくという多国間主義の重要性や、気候変動対策が関連する分野の広がりを受けて、UNFCCCの外で交渉が行われている生物多様性や海洋環境の保全の分野との連携の重要性を指摘する意見がありました。
(2)COP27で期待する成果と今後のプロセス
COP26では、グラスゴー気候合意の採択をはじめ、重要議題に関する合意や気候変動対策の強化に関する各種のイニシアティブ・宣言の立ち上げ等を成し遂げました。COP27に向けて、引き続き、様々な交渉議題に関する議論が継続されるところ、3つのパートに分かれて、各議題についての各国見解や今後必要な作業等について意見交換が行われました。
パート1:緩和、透明性枠組み、市場メカニズム
多くの参加国から、各国のNDCやパリ協定に基づく長期戦略(LTS)に基づく緩和策や、COP26で立ち上げられたグローバル・メタン・プレッジといった気候変動対策の推進に関する「イニシアティブ」に基づく取組の実施を推進すべきという発言がありました。いくつかの参加国から、COP27に向けて、1.5℃努力目標の追求に整合的なNDCやLTSを提出していない締約国は、排出削減目標を引き上げるべきという意見が出されました。関連して、COP27で決定文書の採択が予定されている「緩和野心の拡大に関する作業計画」に基づく作業を通じて、締約国の緩和の野心向上を図っていくべきとの指摘がありました。
いくつかの参加国から、COP26で実施指針が合意されたパリ協定第6条・市場メカニズムについて、COP27に向けて、第6条4項監督機関の設立をはじめとする6条の運用開始に向けた作業の進捗を期待する意見や、共通表形式が合意された第13条・透明性枠組みについて、2024年末に第1回目の提出が予定されている隔年透明性報告の実施に向けた能力構築支援の必要性が指摘されました。
パート2:適応、損失と損害(ロス&ダメージ)、気候資金
いくつかの締約国からは、本パートで扱われた適応、ロス&ダメージ、気候資金は、COP26で決定された作業計画等において、COP27を越えて来年以降も議論を継続することになっているものの、COP27における野心的な成果を求めていくべきとの意見が出されました。
適応について、多くの参加国から、本年2月に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書第2作業部会報告書を引用しつつ、科学的知見に基づき適応策を実施していくことの重要性が指摘されました。また、いくつかの国からCOP26で立ち上げられた「適応に関する世界全体の目標(GGA)に関するグラスゴー・シャルムエルシェイク作業計画」に基づく作業の早期実施及びGGAに関する議論の進展を期待する意見が出されました。
ロス&ダメージについて、いくつかの国からCOP27で決定文書の採択が予定されているサンティアゴ・ネットワークの運用体制に関する合意の重要性や、COP26で立ち上げられた「ロス&ダメージに関するグラスゴー対話」における議論の進展を期待する意見が出されました。
気候資金については、いくつかの参加国から、先進国による年間1000億ドル資金動員目標の達成に向けた取組を継続すべきこと及び2025年以降の新規合同数値目標に関する特別作業プログラムにおける議論の進展を期待する意見が出されました。
パート3:グローバル・ストックテイク、科学、海洋、技術
多くの参加国から、グローバル・ストックテイク(GST)は、パリ協定に基づく取組の実施を評価する重要なプロセスであり、本年のIPCC第6次影響報告書等の最新の科学的知見を反映しつつ、締約国の野心向上につながる成果を目指していくべきという意見が出されました。また、いくつかの参加国から、気候変動対策における非国家主体の取組の重要性に鑑み、GSTにおいても、これらのステークホルダーの参画を確保すべきという指摘がありました。
2022年は、複数の海洋関連の国際会議が開催されることを受け、これらの会合の成果を踏まえつつ、気候変動と海洋に関する議論の進展を期待する意見が表明されました。