経済

DSU改正
議長報告書の概要

平成23年4月26日

1.概要

  1. (1)紛争解決手続了解(DSU)改正は,ドーハ・ラウンド交渉における9番目の交渉項目であり,目的はDSUの「改善と明確化」。一括受諾の枠外で交渉されているが,これまで他のラウンド交渉と歩調を合わせて交渉が行われてきた。
  2. (2)4月21日(現地時間),ドーハ・ラウンド各交渉分野の議長報告書等発出に合わせ,本交渉についてもサボリオ交渉議長(コスタリカ大使)から議長報告書が発出された。
  3. (3)本議長報告書では,交渉議長による交渉の現状に関する概括的な報告に,2008年7月に発出された議長テキストと,2010年5月会合以降の交渉会合での議論の概要をとりまとめた文書が添付されている。

2.ポイント

  1. (1)交渉の現状に関しては,交渉項目ごとに議長が提案国や関心国を招集する少数国会合の交渉フォーマットが導入された2010年5月会合以降,7回にわたり開催された一連の交渉会合において,多くの交渉項目において一定の進展があった旨報告している。
  2. (2)特に,我が国がEUと共に提案国であるシークエンス(注1)については,「条文案について一つの認識に達しつつある」と評価されている。また,上記と同様に,我が国がEUと共に提案国であるポスト・リタリエーション(注2)については,一連の交渉の中で主要な一致点を特定するに至っている旨評価されており,このシークエンス,ポスト・リタリエーションが,それぞれ前向きな進展が見られた項目の1番目,2番目に取り上げられている。その他,2010年5月会合以降扱われた項目についても議論が行われた旨記載されている。
  3. (3)他方,合意に達するにはまだ多くの作業が残されていると指摘しており,本交渉における12交渉項目(注3)のうち2010年5月会合以降の少数国会合で扱われていない交渉項目について,今後更なる作業を要する旨述べている。最後に,交渉全体の成功のためには,各加盟国の立場に更なる柔軟性が必要であるが,交渉参加国は,作業の成功と交渉の早期妥結に向けて,建設的な態様で作業を続けることに完全にコミットしているとの議長の理解が示されている。

  1. (注1)シークエンス

     加盟国は,自国の措置がWTO協定違反と認定された場合,一定の是正期限までに措置を是正しなければならないが,これが是正されない場合,申立国はいわゆる対抗措置(関税引上げ等)をとることができる。ただし,現行協定では是正期限終了後30日以内に対抗措置の承認を受けなければならない。しかしながら,協定違反の措置が是正されたか否かについて争いがある場合,これを解決するための手続を行うと30日以内に対抗措置の承認を受けることができない。そこで,この不都合を解消するため明示的な規定が必要であり,議論が重ねられてきた。

  2. (注2)ポスト・リタリエーション

     現行協定には,対抗措置が発動された後,対抗措置を受けている国がWTO協定違反の措置を是正したと主張しても,対抗措置を終了させるための手続が明記されていない。そこで,この手続を明示的に規定するため,議論が重ねられてきた。

  3. (注3)DSU改正交渉における交渉項目

     1)シークエンス 2)ポスト・リタリエーション 3)第三国の権利 4)パネル構成 5)差戻し 6)相互に合意した解決 7)厳秘情報の取扱い 8)透明性 9)時間短縮 10)S&D(特別のかつ異なる待遇) 11)柔軟性・加盟国コントロール 12)効果的履行

このページのトップへ戻る
WTOドーハ・ラウンド交渉(交渉議長報告書等の発出) | ドーハ・ラウンドの主要な動き(閣僚会議等) | 目次へ戻る