
貿易と開発交渉
議長報告の概要
平成23年4月26日
1.概要
- (1)ドーハ・ラウンドは,その正式名称を「ドーハ開発アジェンダ」と称するとおり,開発が中心的な課題となっている。「貿易と開発」では,途上国の多角的貿易体制への統合を促進していくために,WTO協定上の義務を途上国については減免すること,必要な技術支援を行うこと等について交渉されている。具体的には,WTO関連協定の途上国に対する特別の配慮条項(S&D条項)を更に強化するために,これらの条項の見直しの交渉が行われている。
- (2)先進国と途上国の対立点が解消されていないため,4月21日,貿易と開発委員会特別会合議長のバシール大使(パキスタン)から,交渉状況に関する議長報告の発出に留まった。その議長報告のポイントは以下のとおり。
2.ポイント
(1)(S&D実施に関する)モニタリング・メカニズム
- ア WTO協定における途上国に対する各配慮条項の実施状況をモニターするメカニズムの範囲・機能等について議論をしてきた。
- イ 現在,議長テキスト第4版(補遺1)をベースに議論しているが,1)メカニズムの由来,及び 2)配慮条項の実施状況を評価・検討する手続き等に関し,メンバー間に大きな隔たりが存在し,議論が膠着している。
(2)協定関連のS&D関連のアフリカ等からの個別提案
- ア ドーハ・ラウンド交渉の開始を機にアフリカ等から提出されたS&D関連の個別提案(2002年)のうち,6つの提案(例:協定における途上国の実施義務に対する一部免除等)について,テキスト案をベースに議論してきた。
- イ しかし,テキスト案の一部のみが合意されていないとするメンバーと,テキスト案全体に継続して議論すべき点が依然として残っているとするメンバーの間で,議論が膠着している。
- ウ 他方,既に実質合意されたもののWTOカンクン閣僚会議(2003年)の決裂に伴い未採択のままの28個の提案(例:輸入許可発行迅速化による途上国への配慮等)に関しては,適当な機会があれば,あらためて正式に採択されるとの理解はメンバーで共有されている。