経済

TRIPS
議長報告書の概要

平成23年4月26日

1.概要

  1. (1)TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)は,特許権,商標権,著作権,地理的表示(GI)等に関する国際的な知的財産権保護ルールである。しかし,ドーハラウンド交渉の対象は,ワイン(ぶどう酒)及び蒸留酒のGI(我が国では焼酎の「薩摩」等)に関する多数国間通報登録制度に限られている。4月21日(現地時間),ムワペTRIPS理事会特別会合議長(ザンビア大使)から,合成テキストが添付された現在までの交渉の現状評価に関する議長報告書が発出された。
  2. (2)また,ドーハラウンド交渉の枠外であるが,TRIPS協定と生物多様性条約(CBD)の関係(TRIPS/CBD)及びGIの追加的保護をワイン及び蒸留酒以外にも拡大するか否か(GI拡大)についても議論が行われている。これらの論点について,4月21日(現地時間),ラミー事務局長から現状評価に関する報告書が発出された。

 それぞれの報告書のポイントは以下のとおり。

2.ポイント

(1)地理的表示(GI)多数国間通報登録制度

  1. ア 議長報告書はドラフティンググループ等におけるこれまでの議論の論点を整理したものであり,事実に基づいて交渉の現状を表したもの。
  2. イ 議長報告に添付された合成テキストは,ブラケットを利用することで,加盟国からこれまで出された提案や数次にわたるドラフティンググループ等での加盟国の議論を反映したものである。本交渉分野において初めて作成されたテキストであり,交渉の一定の進展を反映。
  3. ウ 合成テキストは,「参加」「(多数国間通報登録簿に登録するための)通報」「(多数国間通報登録簿への)登録」「登録の法的効果,結果」「(開発途上国等に対する)特別かつ異なる待遇(S&D)」等の要素からなっており,「参加」については,多数国間通報登録制度への参加を義務化するか否か, 「登録の法的効果,結果」については,多数国間通報登録簿に登録されたGIの保護について全加盟国に一定の法的効果を発生させるべきか否かのそれぞれの論点について,EU等のグループと日米豪等のグループの間に懸隔があり,それぞれの提案がブラケットに入れられている。「通報」「登録」「(開発途上国等に対する)特別かつ異なる待遇(S&D)」等については,議論が進み,テキストが整理されてきている。
  4. エ 交渉の対象産品はワイン及び蒸留酒であるが,これを超えて対象産品を拡大することを主張する国があったため,合成テキストにはそのような主張も反映されている。ただし,議長報告書及び合成テキストのカバーレターにおいて,本交渉の範囲がワイン及び蒸留酒であることを議長が明確にしている。

(2)GI拡大及びTRIPS/CBD(ドーハラウンド交渉の枠外)

  1. ア ラミー事務局長による報告書は,事務局長主催の大使級協議等におけるこれまでの議論の論点を整理したものであり,事実に基づいて議論の現状を表したもの。
  2. イ 報告書は,ワイン及び蒸留酒にのみ義務づけられているGIの追加的保護をワイン及び蒸留酒以外にも拡大することの必要性について,各国の立場の隔たりが依然として大きいことを示している。
  3. ウ 報告書は,TRIPS/CBDに関し,特許出願において遺伝資源の出所等の開示を義務づけることの必要性について,各国の立場の隔たりが依然として大きいことを示している。
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