経済

NAMA(非農産品市場アクセス)交渉
議長報告書の概要

平成23年4月26日

1.概要

  1. (1)NAMA(非農産品市場アクセス)交渉では,鉱工業品及び林水産品の関税及び非関税障壁の削減・撤廃に向けた交渉が行われている。最終合意の土台となる「議長テキスト(モダリティ・テキスト)」はこれまで5回発出され,最新のものは2008年12月に発出。
  2. (2)今次の議長報告書は,2008年12月以降の交渉状況についてワセシャ議長(スイス大使)が文書で報告するものであるとともに,前回議長テキストが改めて議長報告書に添付されている。
  3. (3)NAMA交渉の残された論点のうち,電気製品や化学品等の分野別の関税撤廃等の議論の状況については,「現行テキストの文書の修正の必要は今のところない」とのみ記述(別途,ラミー事務局長が分野別関税撤廃についての報告書を発出)。
  4. (4)もう一つの主要論点である非関税障壁に関しては,議長が主導して日本を含む少数国での集中的な議論が行われ,その成果として,前回議長テキストの一部を改訂した作業文書が提示されている。
  5. (5)議長報告では,非関税障壁の議論は継続できるとする一方,交渉全体をどう進めるかは加盟国間の議論に委ねられていると言及。

2.ポイント

  1. (1)NAMA交渉の主要論点についての進捗状況を以下のとおり報告。

    ア 特定国の特別扱い

     スイス・フォーミュラによる関税削減の一部免除を要求する途上国(南アフリカ,アルゼンチン等)との間で,具体的な除外内容等につき他の加盟国と協議が行われてきたが,まだ合意が見られていない。

    イ LDC(後発開発途上国)の扱い

     モルディブについては,本年LDCから除外されたが,同国の財政事情等に鑑み関税削減の義務が軽減されることが必要との意見が出されている。

    ウ 非関税障壁

     議長主導により,日本を含む少数の国での集中的な議論が行われ,その成果として,今後より多くの国で議論するための土台となる作業文書を提示。また,各提案の議論の状況について説明。

  2. (2)進捗状況の報告に加え,非関税障壁に関する作業文書を添付。

    ア 水平メカニズム

     二国間での非関税障壁を巡る紛争案件を迅速に解決すべく,既存の手続よりも簡便な協議手続を新設する提案。対象となる範囲や手続面での詳細について,引き続き議論が必要。

    イ 繊維品等のラベル表示に係る規制

     繊維,衣類,旅行用品等のラベル表示に関する国内規制について,ラベル表示義務を制限(繊維組成やサイズ等)する努力義務等を定める提案。原産国名称の表示義務の扱い等,未確定の論点が残っており,引き続き議論が必要。

    ウ 国内規制に関する通報義務等の透明性の強化

     WTO協定で定める国内規制の各国への通知・公表義務等の強化に関する提案。通知内容の拡大等と行政負担のバランスに関する論点等の解決が今後の課題。


     その他の提案については,まだ作業文書の形でとりまとめられた成果は出ていないが,引き続き議論が続けられる見通し。また,非優先検討項目(ワゴン2)についても,今後の進め方について議論することとなった。

    2008年6月の高級事務レベル会合において,各国から提案された13提案のうち,各国の支持が多い7提案を優先的に検討することが決められた。なお,輸出規制の通知義務の強化等に関する我が国の提案は,他の5つの提案とともに非優先検討項目とされている。

  3. (3)さらに,前回議長テキストを土台として議論することにおおむね合意が得られているとして,前回テキストと同じ文書を報告書に添付。
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