ラッド共同議長,
御列席の皆様,
気候変動と同様,核軍縮もまた,人類が国境と世代を越える責任感を持つことができるかを問いかける課題です。したがって私は,核軍縮・不拡散を追求することこそが,核リスクを最も確実に最小化し,国際の安全を強化する道であると強調します。本日,皆様とそのような考え方を共有しつつ,「核兵器のない世界」に向け,現実的で責任ある道を歩み始めたいと考えます。
本日の外相会合を主催する豪州と我が国は,核軍縮・不拡散分野で協力を深めてきました。本日の会合の共同議長であるラッド外相は,首相時代に「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」の立ち上げにイニシアティブを発揮されました。また,日豪両国は2月の外相共同ステートメント発出に続き,5月のNPT運用検討会議に際しては核軍縮・不拡散分野で作業文書を共同提出しました。我が国は,そのような協力を,同じ方向を目指す他の国々に広めていくことが時宜にかなっていると考えるに至りました。
NPT運用検討会議は,最終文書に合意することで,危機に直面するNPT体制を救いました。しかし,この合意が極めて脆弱な基盤の上に立っているのも事実です。そのようなタイミングで,志を同じくする皆様と共に,地域横断的な緩やかなグループを形成し,国際社会を主導していくことには大きな意義があると考えます。皆様と議論を深め,具体的提案を積極的に行い,核兵器国と非核兵器国,先進国と途上国といった対立構造を乗り越える解決策を提示していきたいと考えています。
新グループは,NPT運用検討会議での合意を着実に履行することはもちろん,核軍縮・不拡散に関する創造的な政策を提案し実現していくことができます。中期的に目指す方向性としては,政治宣言にあるように,「核兵器のない世界」に向けた移行期戦略として「核リスクの低い世界」に向かうことを提案します。そのためには,核軍縮分野では核兵器の数と役割の低減,核不拡散分野ではIAEAの強化を通じた拡散リスクの低減等が重要です。
核リスクを低減する上で,核兵器の数と役割の低減は,特に重要です。仮に,核兵器国が自国の核兵器を放棄することにつき直ちに同意できないとしても,これらの国々は核のリスクを低減させるための実践的な措置を講ずることができます。例えば,消極的安全保証の実効性を高める措置や,核兵器の保有の「唯一の目的」といったアイディアにつき,皆様と議論を深めていきたいと考えています。また,非核兵器地帯の設置と強化も,核リスク低減に貢献すると考えます。
1年後,第2回目の外相会合を実施するまで,グループとしての議論が深まり,具体的な行動となっていくよう,事務方に指示を出したいと思います。そして,我々のレベルでも,必要に応じて連絡を取り合いながら,「核リスクの低い世界」に向けた具体的アイディアについて意見交換していければと考えています。そのような議論の成果として,例えば,今後目指すべき方向性をグループとしての「行動計画」のような形で打ち出していくことを提案したいと思います。
御清聴ありがとうございました。