国連

麻生総理の第63回国連総会出席(概要と評価)

平成20年9月28日

  • 麻生総理は、総理就任翌日の9月25日、第63回国連総会出席のためニューヨークを訪問した。約10時間の滞在中、総理は一般討論演説を行い、食料危機・気候変動に関する国連事務総長主催夕食会に出席したほか、潘基文国連事務総長、ラッド豪首相、タラバーニー・イラク大統領との会談等を行った。
  • 今回、我が国総理の国連総会出席が3年振りに実現したことで、アフリカ開発会議・G8サミットを主催した年に、新総理の一般討論演説により、我が国外交方針を力強く世界に発信することができた。また、バイ会談等の首脳外交からも成果が得られた。更に、国連重視姿勢を改めて明確に示したことで、国連の運営・改革に積極参画するモメンタムが得られた。

1.主要行事の概要

(1)一般討論演説

 総理は一般討論演説において、経済的繁栄と民主主義を通じて平和と幸福を実現するという信念を訴えるとともに、技術力や発想力を活かした日本ならではの外交について、自らのことばで国際社会に向けて力強く発信した。

 具体的には、国際金融問題につき我が国の経験と知識の貢献に心がけること、世界経済の安定に向け自らの経済成長に断固取り組むこと、アフリカ・開発や気候変動の問題に人間の安全保障や省エネ技術など日本の技術・発想を活かすこと、中東和平に向け日本ならではの貢献を進めること、国際社会と一体となりテロとの闘いに積極参画すること、北朝鮮の行動に応じ日朝関係を前進させる用意があること、中国・韓国は重要なパートナーであること、IAEA次期事務局長候補に天野之弥ウィーン代表部大使を擁立すること、日米同盟・アジア関係強化・国連重視と国際協調・基本的価値観を共有する諸国との連帯を外交の基本方針とすること、安保理改革を常任・非常任双方の議席拡大を通じ早期に実現すべきこと、安保理非常任理事国選挙での支持を求めることなどを訴えた。

(2)食料危機・気候変動に関する国連事務総長主催夕食会

 約35ヶ国の代表、世銀及び関連国連機関の長が出席する中、麻生総理は、潘事務総長等の冒頭発言に続き、各国代表としては最初に発言を行った。

 民間部門、市民社会を含む全ての関係者とともに世界的パートナーシップを構築し、食料危機・気候変動問題に対処していくことの必要性につき訴えるとともに、我が国の具体的取組につき紹介した。

(3)潘基文国連事務総長との会談

 潘基文(パン・ギムン)国連事務総長より、麻生総理が就任直後に国連を訪問するという政治的リーダーシップを発揮したことへの謝意が表明された。

 また、日本人職員の活躍をはじめとする日本の国連における積極的な役割への高い評価と、ODA増額を含む今後の積極的貢献への期待も表明された。

 麻生総理からは、国連が安定した力強い機関として発展していくことへの期待とともに、日本もそのため可能な限り貢献するとの考えを伝えた。

(4)日豪首脳会談

 両首脳は、日豪間の戦略的パートナーシップを更に発展させていくことで一致した。この関連で、麻生総理より、サマーワでの陸自への豪州軍の協力に謝意を表明した。また、ラッド首相より、双方の利益となるようなEPA/FTAの実現に向け協力したい旨の発言があった。

 両首脳は、日豪共同イニシアティブの核不拡散・核軍縮に関する国際委員会の成功を目指し今後両国が連携していくことで一致した(会談後、麻生総理はラッド首相とともに、同委員会の委員決定につき共同記者発表を行った。)。

 また、両首脳は、現下の世界金融危機に関し協力が必要との認識で一致し、捕鯨問題につき外交的解決に向け議論を続けていくことで一致した。

(5)日・イラク首脳会談

 タラバーニー大統領より、イラクの状況改善について説明があり、麻生総理より、年内を目処に空自の業務終了を検討することとした旨述べたところ、先方より、日本政府の決定を理解し、自衛隊の支援に感謝する、今後は経済等の関係強化を望む旨の発言があった。

 総理より、長期的経済関係の発展のため、日本企業の石油分野参入も望む旨述べ、先方より、日本には進んだ石油分野の技術もあり、関係を強化したい旨述べた。

(6)U2ボノ氏及び音楽家ゲルドフ氏の総理表敬

 ボノ氏より、マラリアの撲滅には日本の科学技術を活かした蚊帳の配布が極めて有効であるとの指摘があり、麻生総理からは、日本製の蚊帳は純粋なビジネスとしても成り立っており、こういったプラグマティズムが重要と述べた。

 また、ボノ氏より、日本は東南アジアにおいて援助とビジネスの両面で彼らの発展を助け成功を収めたが、是非アフリカでも行うべきとの指摘があった。

(7)その他(立ち話等)

 麻生総理は、キクウェテ・タンザニア大統領、ホルタ東ティモール大統領、ジョンソン=サーリーフ・リベリア大統領、サパテロ・スペイン首相、ナーセル・クウェート首相、韓昇洙(ハン・スンス)韓国国務総理、ライス米国務長官、ミリバンド英外相、ズィーバーリー・イラク外相等と短時間の立ち話や挨拶をした。また、滞在中に、ブラウン英首相から総理に対し、就任祝いの電話があった。

2.全体を通じての評価

(1)我が国の外交方針を新総理から世界に発信

 我が国総理の国連総会出席が3年振りに実現し、一般討論演説で我が国の外交方針を総理から力強く世界に向けて発信することができた。今回は麻生総理の就任直後であり、内外の注目を集める中、新総理の外交理念・外交政策を伝える機会にもなった。特に本年は、我が国は第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)、G8北海道洞爺湖サミットを主催しており、その成果や我が国の貢献を、国連総会の一般討論演説や夕食会等の場でアピールできたことは有意義であった。

(2)国連の場における首脳外交を展開

 国連総会の一般討論演説の期間は、世界各国から首脳級が多数来訪し、首脳外交の機会となる。麻生総理は短時間の滞在中に、日豪首脳会談、日・イラク首脳会談を行い、関係強化を図ることができた。また、各国首脳等との立ち話・挨拶や、開発問題に取り組むボノ氏・ゲルドフ氏の表敬などを通じて、今後の外交を展開する上での基盤を強化することができた。

(3)国連の運営・改革への積極的参画

 麻生総理は、一般討論演説や夕食会に加え、国連事務総長との会談を通じて、我が国が国連を重視し、安定した力強い機関への発展に向けて貢献する姿勢を改めて明確に示した。今後、我が国に対する期待を踏まえつつ、国連の運営や、安保理をはじめとする国連改革の取組に積極的に参画していくためのモメンタムが得られた。

【参考】麻生総理の第63回国連総会出席日程

日付 内容
9月25日(木曜日) 午後 羽田発 ニューヨーク着
日豪首相会談
一般討論演説
U2ボノ氏及び音楽家ゲルドフ氏の総理表敬
潘基文国連事務総長との会談
夜 食料危機・気候変動に関する国連事務総長主催夕食会
日・イラク首脳会談
深夜 ニューヨーク発
9月27日(土曜日) 午前 羽田着
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