平成23年8月
今回の会議は,「核兵器のない世界に向けた緊急の共同行動」というテーマの下に活発な議論が行われ,概ね以下のような成果を得た。
各セッション参加者の発言概要については以下のとおり。また,会議では多数の出席者から,東日本大震災によって被災された方々に対しお見舞いのメッセージが発せられた。
軍縮は,国家や専門家だけでなく市民ひとりひとりに関係した問題であり,市民社会の役割は重要であることが確認された。オタワ条約やオスロ条約の交渉においてNGOが主導的な役割を果たした例を挙げつつ,ジュネーブ軍縮会議(CD)に市民の代表が参加できるよう規則を改正すべきという意見が述べられた。また,現代の若者への核兵器の脅威に関する教育を一層充実させるべきとの意見も出された。
米国の参加者は,米国の今後の核政策として,戦略,非戦略,配備,未配備等全てを含めて全体的な核の数を削減していきたいと発表。豪の参加者は,2010年NPT運用検討会議での合意実施に対する実質的な貢献として,日豪が主導する非核兵器国のグループであるNPDI(核軍縮・不拡散イニシアティヴ)の取組みを紹介。仏の参加者は,5核兵器国が信頼醸成を目指して取組んでいる具体的措置を紹介した。会場の参加者からは,開会式で田上長崎市長が述べた「核兵器は抑止力があり使われないという神話が人々の思考を停止させている」との言葉を引用し,この神話を廃止させなければならない等の発言があった。
露の参加者は,米露の安定は世界の安定に繋がるとしながらも,今後の核政策について,欧州での通常兵力の差を考慮せずに非戦略核兵器の削減はできないと述べ,中国の参加者は,核軍縮を行う中で新たに補強されたモメンタムを強化していくためには,なすべきことが多くあると述べた。また,どのような環境が整えば中国は核弾頭を減らすのかとの問いに対し,具体的な数は言えないとしつつも,米露二国間での戦略的な安定性が確保できるまでのレベルとし,米露の更なる削減を条件とした。
兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉がCDで約15年間停滞している現状を説明し,早期条約交渉開始のために今後なすべきことにつき意見交換が行われた。CDでの公式交渉が困難であるならば中間的な措置を取ることが必要と述べる参加者に対し,中国の参加者は,CDでの枠組みの中で交渉し条約を求めるべきであるとの主張を行い,活発な議論が行われた。
内閣府原子力委員会委員長代理は,個人的な意見と前置きしつつ,社会福祉と安全を満たせるかとの観点から原子力政策を検証していく必要があると述べた。医師でもある菅谷松本市長は,チェルノブイリ原発事故後に現地で医療活動に従事した経験を基に,原子力災害に伴う放射性被爆について発表を行うとともに,原子力政策は「産業経済か命を優先するか」の選択の岐路に立たされていると訴えた。
核兵器禁止条約の実現を求めるNGOや反核国際法律家からの発表に対し,同条約には核保有国が賛成していないことから,早期の交渉開始の実現可能性を疑問視する意見等が述べられた。また,出席した専門家からは,核兵器廃絶に関わる「検証」についての課題についての発表が行われた。
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