日本の国際テロ対策協力

令和7年9月1日

1 基本認識

(1)テロの脅威

  • 2013年1月のアルジェリア、2015年1月のシリア、2016年7月のバングラデシュなどの相次ぐ邦人殺害テロ事件、2019年4月のスリランカでのテロ事件、2023年10月のハマス等パレスチナ武装組織によるテロ攻撃、2024年4月のパキスタンでのテロ事件等、テロは引き続き国際社会の脅威であり、我が国国民及び企業の安全に直結する深刻な問題です。
  • また、2019年以降、新型コロナの感染拡大により、人々の情報通信技術への依存が高まり、テロを取り巻く環境にも大きな変化がありました。テロリストは、ガバナンスの脆弱化、貧困、人種・民族問題の顕在化による社会的分断など、パンデミック後の新たな社会の情勢にも適応しつつ世界中でテロ活動を継続し、インターネットやSNS、オンラインゲームや、生成AI等の新技術を悪用した過激思想の拡散やテロ活動への勧誘、ドローンや3Dプリンター等簡易的で安価な武器の悪用、さらには暗号資産などを使用したテロ資金の獲得といった傾向も顕著に見せるようになりました。
  • 2019年3月にNZで発生したテロ行為のSNSを通じたライブ配信の影響等により、テロ・暴力的過激主義の脅威は全世界へ瞬時に拡散しているほか、国際的にテロ組織との直接的な関わりを持たず、個人(ローンオフェンダー)によるテロ事案も発生しており、テロの形態・背景は多様化し、対応策も広範かつ複雑化してきています。これらに効果的に対処するために、途上国等への支援も含め、各国・国際機関・地域機関等と一層緊密に連携して対応しつつ、国際テロ対策協力を強化していく必要があります。

(2)テロ及び暴力的過激主義対策の重要性

  • 国際社会におけるテロの脅威が持続する中で、我が国がこれまで、G7伊勢志摩テロ行動計画(2016年5月)等に基づき実施してきた、ア 水際対策を始めとするテロ対処能力向上、イ テロの根本原因である暴力的過激主義対策、ウ 穏健な社会構築を下支えする社会経済開発のための取組については、これを維持・強化していく必要があります。
  • 特に近年は、若者がインターネット・SNSへのアクセスを通じて、過激思想に影響を受ける機会が増えている中で、我が国としても、各国政府及び関連国際機関と連携しつつ、暴力的過激主義対策を着実に実施していく重要性が高まっています。
  • テロ・暴力的過激主義に感化されない社会環境作りは、一朝一夕に実現できるものではなく、我が国が重視してきた教育を通じた取組をはじめ、元テロリストの刑務所における脱過激化やリハビリテーション・社会再統合支援、地域コミュニティにおける過激思想への対応能力強化のための啓蒙・能力開発支援等を一層強化していく必要があります。
  • また、諸外国においては、テロ事案に従事する警察、検察官など法執行機関による、捜査・訴追における電子証拠の活用を含む技術力向上、刑事・司法協力の促進、起訴全般にかかる能力構築、起訴時の人権擁護の観点に関する理解の向上等の支援ニーズや重要性もますます高まっています。
  • コロナ禍で一旦途絶えた、国境を越えた人の移動が完全に回復した現在、国境管理や海上保安を始めとする水際対策の重要性も忘れてはなりません。テロの発生・未然防止やサイバー・セキュリティ対策等に万全を期すとの観点からも、アジアを中心とした各国における水際対策への支援により、テロの脅威拡散リスクを低減させることは、我が国及び国際社会にとって、引き続き重要な課題となっています。

2 テロ及び暴力的過激主義対策における我が国外交方針

  • (1)我が国は、2015年初頭のシリアにおける邦人殺害テロ事件を受け、テロ対処能力向上支援を含む外交上の「3本柱」を打ち立てました。
  • (2)2016年5月のG7伊勢志摩サミット首脳会合において、我が国は議長国として、「テロ及び暴力的過激主義対策に関するG7行動計画(PDF)別ウィンドウで開く」を取りまとめ、発表しました。
  • (3)2016年9月のASEAN関連首脳会議では、我が国は、「テロに屈しない強靱なアジア」としていくための先導的役割を果たしていくとして、アジア地域に対する総合的なテロ対策強化策(PDF)別ウィンドウで開くを発表しました。
  • (4)2019年6月、G20大阪サミットにおいて「テロ及びテロに通じる暴力的過激主義によるインターネット悪用に関するG20大阪首脳声明」を採択し、テロリストによるインターネット利用対策へのコミットメントを再確認しました。
  • (5)2023年5月、G7広島サミットにおいて、オンライン及びオフライン上のあらゆる形態のテロリズム及び暴力的過激主義、マネロン及びテロ資金供与等に対して取り組むという強いコミットメントを表明し、テロ目的のための新技術及び新興技術の悪用に対抗し、テロ及び暴力的過激主義コンテンツのオンライン上での拡散の問題への取組を強化すること等を盛り込んだ首脳コミュニケを採択しました。
  • (6)2023年6月、日ASEAN越境犯罪対策高級実務者会合(SOMTC+Japan)において、「日ASEAN越境犯罪対策協力作業計画2023-2027」を採択し、テロ対策を優先分野の一つに位置付けました。
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