日本の国際テロ対策協力

令和4年3月8日

1 東南アジア諸国連合(ASEAN)を通じた協力(日ASEANテロ対策対話等)

 我が国は、我が国と関係の深いASEAN地域、をテロ対策支援の重点地域として積極的にテロ対策協力を強化してきています。2004年11月の日ASEAN首脳会談においては、テロ対策協力の強化を謳った「国際テロリズムとの闘いにおける協力に関する日ASEAN共同宣言(英文仮訳)」が採択されました。

 また、2005年12月の日ASEAN首脳会議での合意を受けて、我が国は、ASEAN全体との間でテロ対策を正面から取り上げ、率直な意見交換を行うことを目的として、2006年6月28日~29日に本邦において「日ASEANテロ対策対話」を初めて開催(我が国の国際テロ対策担当大使が共同議長)(遠山政務官スピーチ(英文))、同対話においては、優先協力分野とそれぞれのリード国を特定し、本件対話を毎年開催し、同対話の枠組みにおいて日ASEAN間でのテロ対策協力の強化について対話を継続していくこと等が合意されました(共同議長サマリー(英文仮訳))。2007年9月10~11日には、クアラルンプールにおいて第2回会合が開催され(マレーシア及び我が国が共同議長)、各優先協力分野における日ASEAN間の具体的な協力につき、協議が行われました。なお、2008年10月には、ラオスにて第3回会合、2009年8月には、ベトナムにおいて第4回会合、2010年6月には、インドネシアにおいて第5回会合、2011年2月には、カンボジアにおいて第6回会合、2012年7月にはフィリピンにおいて第7回会合、2013年5月にはタイにおいて第8回会合、2014年5月にはシンガポールにおいて第9回会合、2017年2月にはマレーシアにて第10回会合、2019年1月にはブルネイにて第11回会合が開催されました。

2 アジア太平洋経済協力(APEC)を通じた協力

 2002年10月26~27日、メキシコでロス・カボス首脳会議が開催され、テロ対策に関しては、各国首脳から、インドネシアのバリ、また、フィリピン、モスクワ等のAPEC地域で続発したテロ事件に対する強い非難が表明され、また、これらのテロ事件とも関連する、「APECメンバー・エコノミーでの最近のテロリズム行為に関するAPEC首脳声明(APEC反テロ行為声明)(骨子全文)」が採択されました。また、APEC域内におけるテロ対策の重要性が再確認され、APECにおける運輸、金融、通信分野等における期限付きのテロ対策措置についてとりまとめた「テロリズムとの闘い及び成長の促進に関するAPEC首脳声明(APECテロ対策声明)(骨子全文)」が採択されました。また、小泉総理(当時)からは、テロ関連対処能力向上支援のための日本の取組みにつき発表がありました。(APECにおけるテロの取組

 2003年には、APECのテロ対策活動を調整し、実施していくためのテロ対策タスクフォース(Counter-Terrorism Task Force:CTTF)が設置され、インドネシアが議長、我が国が副議長を務めました。2003年10月20~21日に開催されたバンコク首脳会議では、引き続き、テロ等の安全保障上の課題への対応を、APECの任務として取り組んでいくことが合意されました。

 2004年11月20~21日に開催されたサンティアゴ首脳会議では、テロ対策に関する具体的な取組が確約され、我が国が提案した機械読取式渡航文書の早期導入に関する項目についても、各国からの賛同を得ました。

 2005年11月18~19日に開催された釜山首脳会議では、我が国が提案した国際刑事警察機構(ICPO)への紛失・盗難旅券情報提供に係るイニシアティブを含むテロ対策に関するAPECのコミットメントの実施を奨励することが合意されました。

 2006年11月18~19日に開催されたハノイ首脳会議では、テロと闘うための努力を継続する決意が再確認されるとともに、テロ資金に対処するための協力と能力構築活動を更に進めることが合意されました。

 2007年9月8~9日に開催されたシドニー首脳会議では、テロ集団の解体、テロ集団からの経済・金融システムの保護といったメンバー・エコノミーの責務につき再確認されました。

 2008年11月22~23日に開催されたリマ首脳会議では、国際テロと大量破壊兵器、及びその運搬手段の拡散は自由で開かれた平和で繁栄した社会への直接的な脅威であることが合意され、これらの脅威を取り除くためのコミットメントについて再確認されました。

 2009年11月14~15日に開催されたシンガポール首脳会議では、テロ対策のための能力構築の重要性を認識するとともに、貿易の安全、航空保安、エネルギー・インフラのテロ攻撃からの保護、テロリスト向け金融対策、サイバー・テロとの闘い、食料供給のテロリストによる異物混入からの保護及び緊急事態への備えといった分野におけるAPECの取組を歓迎しました。

 2010年11月13日~14日に開催された横浜首脳会議では、テロリストによる攻撃、混乱及び濫用から地域経済のシステムを守り、テロリストによる資金調達に対抗し、貿易の再開を円滑化するとともに、サイバーセキュリティを向上させるための取組を特定し、実施することが合意されました。

 2012年9月8日~9日に開催されたウラジオストク首脳会議では、APECテロ対策と安全な貿易のための総合戦略を実施するためのコミットメントが再確認され、地域の商取引をより安全で効率的かつ強じんなものにするための、安全な貿易、旅行、金融、インフラに関するより深化した協力と能力構築への支持が表明されました。

 2014年11月10日~11日に開催された北京首脳会議では、APEC統合テロ対策を履行するための協同努力を継続するとの決意が再確認されました。

 2015年11月18日~19日に開催されたマニラ首脳会議では、テロリストの資金調達との闘いや乗客の事前リスク分析及び他の措置を通じた外国人テロ戦闘員の渡航を妨げるための能力構築イニシアティブを含め、APECが実施してきた努力と活動を歓迎するとともに、「APECテロ対策及び貿易の安全のための総合戦略」をさらに完全に履行し、テロリストの活動からインフラ、渡航、サプライチェーン及び金融システムを保護するために、集団的及び個別的行動をとり、ベストプラクティスを共有することを奨励することが首脳宣言で確認されました。

 2016年11月19日~20日に開催されたペルー首脳会議では、自由で開かれた経済を支える我々の基本的な価値に対してテロ行為がもたらす深刻な脅威を認識するとともに、「APECのテロ対策及び安全な貿易についての統合された戦略」の4つの横断的分野において、エコノミーが行動を継続し、ベストプラクティスを共有することを奨励することが首脳宣言で確認されました。

 2017年11月10日~11日に開催されたダナン首脳会議では、APECエコノミーが、サプライチェーン、人の移動、資金及びインフラを守るためのAPEC の戦略に従って、地域におけるテロの課題及びその経済的なインパクトに継続的かつ効果的に対応することにコミットすることが首脳宣言で確認されました。

 2021年11月12日にオンラインで開催されたニュージーランド首脳会談では、首脳宣言の付属書である行動計画の中で、APECのテロ対策及び安全な貿易についての統合された戦略を実施すること等により、安全な成長を促すために、反腐敗及び透明性の措置に関する協力を向上させることが確認されました。

3 ASEAN地域フォーラム(ARF)を通じた協力

 ARFにおいては、2001年から毎年特定の議題についての常設会合として、「テロ対策及び国境を越える犯罪に関するARF会期間会合(ISM)」が開催される等、テロ対策に関する議論が集中的に行われており、我が国は、こうしたARFの枠組みにおけるテロ対策協力の強化に向けた取組に積極的に参画しています。2005年12月には、東京で、インドネシアとの共同議長により「海上安全保障のキャパシティ・ビルディングに関するARFワークショップ」を開催しました。本ワークショップにおいては、ARF参加各国が実施している海上安全保障に関する各種取組及びこれらを更に進めるための今後の課題等について活発な議論が行われました。

 2006年7月の第13回ARF閣僚会合においては、我が国もその採択を支持した「サイバー攻撃及びテロリストによるサイバー空間の悪用との闘いにおける協力に関するARF声明」及び「テロリズム対策に対する人間中心によるアプローチの促進に関するARF声明」が採択されました。また、2007年5月にはシンガポールにおいて、我が国とシンガポールとの共同議長により「第5回テロ対策及び国境を越える犯罪に関するARF会期間会合」が開催されました。

 さらに2008年7月の第15回ARF閣僚会合において「海上安全保障に関する会期間会合(ISM)」の設置が合意されたことを受け、我が国は2010年3月に開催された同ISMの第2回会合においても、第一回会合と同様インドネシア、ニュージーランドとともに共同議長を務めました。同会合ではこれまでのARFにおける海上安全保障についての議論をレビューし、今後の取組の方向性について議論が行われました。

 また、2011年5月には、マレーシアにおいて、我が国とマレーシアの共同議長により「第9回テロ対策及び国境を越える犯罪に関するARF会期間会合」が開催され、我が国は、同年より優先分野の一つである「過激化対策」分野でマレーシアと共同リード国を務め、2013年2月に「過激化対策に関するワークショップ」が開催されました。

 2015年8月の第22回ARF閣僚会合において「テロ・国境を越える犯罪対策に関するARFワークプラン(2015-2017)」が採択されたほか、同年3月にはマレーシアにおいて我が国とマレーシアの共同議長により「過激化対策ワークショップ」が開催されました。

 2016年7月の第23回ARF閣僚会合においては、ARFとしてテロに断固として屈せず、連携して、テロ及び暴力的過激主義対策を強化していく決意を示すため、我が国から、ラオス、EU、カナダと共に「最近の残虐なテロ行為に関するARF閣僚声明」の発出を提案し、全会一致で了承されました。

 2017年8月の第24回ARF閣僚会合においては、議長声明の中で、あらゆるテロ行為への非難や、ASEAN反テロリズム条約(ACCT)の効果的な履行へのコミットメントが表明されました。

 2018年8月の第25回ARF閣僚会合においては、議長声明の中で、外国人テロ戦闘員の帰還や移転の脅威に対する効果的かつバランスのとれた措置の実施を通じたコミットメントや、インターネット、SNS及びテロ目的のサイバー空間を含むICTの使用に対抗し及び阻止することの重要性と有効性が確認されました。

 2019年8月の第26回ARF閣僚会合においては、「テロ及び暴力的過激主義の予防及び対策に関するARF閣僚声宣言」が採択され、テロ及び暴力的過激主義に対抗するため、関連安保理決議等の履行や、国際法等の枠組みに沿った対策の推進、ICTの悪用等による過激思想の拡散に対抗するための官民連携を含む持続的かつ包括的アプローチ等が確認されました。

 2020年9月の第27回ARF閣僚会合においては、議長声明の中で、フィリピン(スールー・セレベス海域)におけるテロ行為への非難が表明され、テロ・国境を越えた犯罪対策に関するARF作業計画の実施に関するARF参加国の取組を歓迎するとともに、急進派・暴力的過激主義防止及び対策に関するASEAN行動計画の採択に留意することが表明されました。また、「テロリスト及び暴力的過激派グループに雇用された又は関連する児童の扱いに関する声明」及び「国際安全保障におけるICTの安全及び使用の協力に関する声明」等が採択されました。

 2021年8月の第28回ARF閣僚会合においては、2021年3月にインドネシアのマカッサルで起きた教会爆破を含むテロ行為への非難が表明されるとともに、議長声明の中で、新型コロナのパンデミックを背景に、テロ、テロを助長する暴力的過激主義(VECT)及び国境を越える犯罪がもたらす複雑な課題に対処するための地域の継続的なコミットメントが評価されました。また、我が国はブルネイ等とともに、テロ及び国境を越える組織犯罪等の重要な課題に関する若者の役割やエンパワーメントに着目した「ARFにおける青年・平和・安全保障アジェンダの推進に関する共同声明」の共同提案国となり、採択されました。


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