貿易と開発
特恵関税制度
1 一般特恵関税制度の意義と導入の経緯
一般特恵関税制度(GSP:Generalized System of Preferences)は、開発途上国の輸出所得の増大、工業化と経済発展の促進を図るため、開発途上国から輸入される一定の農水産品、鉱工業産品に対し、一般の関税率よりも低い税率(特恵税率)を適用する制度です。
国連貿易開発会議(UNCTAD)において、南北問題解決の一手段として先進国から開発途上国に対し一方的に便益を与える特別の措置として検討がなされ、制度の枠組みが合意されました。日本はその合意に基づき1971年8月から実施しています。
2 日本の現行特恵関税制度
(1)特恵関税の受益国及び地域
経済が開発途上にあり、固有の関税及び貿易に関する制度を有し、関税について特別の便益を受けることを希望する国及び地域のうち、その便益を与えることが適当であるものについて、政令で指定されています。
2024年4月1日現在、以下一覧のとおり126か国4地域が特恵受益国として指定を受け、告示されています。
特恵関税制度に関する詳細や具体的手続等については、税関のホームページからご確認ください。
(2)特恵関税措置の内容
項目 | 農水産品 | 鉱工業産品 |
---|---|---|
対象品目 | 特定の品目を選定し、その品目に対して特恵関税を供与。431品目 | 石油、毛皮など一部の例外品目を除き、原則としてすべての品目に特恵関税を供与。3,285品目 |
特恵税率 | 個々の品目ごとに一般の関税率より低い税率を設定 | ア 原則として無税 イ ただし、一部の品目は一般税率の20%、40%、60%、80%。 |
特恵停止方法 | エスケープ・クローズ方式:国内産業に損害を与える等の場合に、政令で特恵適用を停止 | エスケープ・クローズ方式:同左 |
(3)LDC(後発開発途上国)に対する特別特恵措置(LDC特恵措置)
日本は1980年4月からLDCに対する特別特恵措置を導入しています。現在、特恵受益国及び地域のうち、LDC44か国(以下一覧の(注)の国)に対して、上記(2)の特恵対象品目全てに加え、LDCにのみ適用される特別特恵対象品目(2,434品目)について、無税の措置を供与しています。
特恵受益国及び地域一覧表(令和6年度)
(アイウエオ順:(注)の国はLDC(後発開発途上国))
アゼルバイジャン、アフガニスタン(注)、アルジェリア、アルゼンチン、アルバニア、アルメニア、アンゴラ(注)、イエメン(注)、イラク、イラン、インド、インドネシア、ウガンダ(注)、ウクライナ、ウズベキスタン、エクアドル、エジプト、エスワティニ、エチオピア(注)、エリトリア(注)、エルサルバドル
ガーナ、カーボべルデ、ガイアナ、カザフスタン、ガボン、カメルーン、ガンビア(注)、カンボジア(注)、北マケドニア共和国、ギニア(注)、ギニアビサウ(注)、キューバ、キリバス(注)、キルギス、グアテマラ、グレナダ、ケニア、コートジボワール、コスタリカ、コソボ、コモロ(注)、コロンビア、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国(注)
サモア、サントメ・プリンシペ(注)、ザンビア(注)、シエラレオネ(注)、ジブチ(注)、ジャマイカ、ジョージア、シリア、ジンバブエ、スーダン(注)、スリナム、スリランカ、赤道ギニア、セネガル(注)、セルビア、セントビンセント、セントヘレナ及びその附属諸島地域、セントルシア、ソマリア(注)、ソロモン(注)
タジキスタン、タンザニア(注)、チャド(注)、中央アフリカ(注)チュニジア、ツバル(注)、トーゴ(注)、トケラウ諸島地域、ドミニカ、ドミニカ共和国、トルクメニスタン、トルコ、トンガ
ナイジェリア、ナミビア、ニウエ島地域、ニカラグア、ニジェール(注)、ネパール(注)
ハイチ(注)、パキスタン、バヌアツ、パプアニューギニア、パラグアイ、バングラデシュ(注)、東ティモール(注)、フィジー、フィリピン、ブータン、ブルキナファソ(注)、ブルンジ(注)、米領サモア地域、ベトナム、ベナン(注)、ベネズエラ、ベラルーシ、ベリーズ、ペルー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ボツワナ、ボリビア、ホンジュラス
マーシャル、マダガスカル(注)、マラウイ(注)、マリ(注)、ミクロネシア、南アフリカ共和国、ミャンマー(注)、モーリシャス、モーリタニア(注)、モザンビーク(注)、モルディブ、モルドバ、モロッコ、モンゴル、モンテネグロ
ヨルダン、ヨルダン川西岸及びガザ地域
ラオス(注)、リビア、リベリア(注)、ルワンダ(注)、レソト(注)、レバノン
(以上126か国4地域)