国際法

令和6年12月10日

国連総会における岸田内閣総理大臣一般討論演説

国連総会議場で一般討論演説を行う岸田総理 (写真提供:内閣広報室)

 日本時間令和4年9月21日(ニューヨーク時間9月20日)、岸田文雄内閣総理大臣は、第77回国連総会において、一般討論演説を行い、日本は、国際社会における法の支配を推進する国連の実現に尽力すると述べ、基本的原則として、以下を強調しました。

  • 「力による支配」を脱却し国際法の誠実な順守を通じた「法の支配」を目指すこと
  • 力や威圧による領域の現状変更の試みは決して認めないこと
  • 国連憲章の原則の重大な違反に対抗するために協力すること

国連安全保障理事会公開討論における林芳正外務大臣ステートメント「法の支配のための結集」

林芳正外務大臣

 令和5年1月12日、林芳正外務大臣は、国連安保理において、「国家間の法の支配」に関する閣僚級公開討論(PDF)別ウィンドウで開くを主催しました。同討論で、「国家間の法の支配」は、1945年以来、加盟国が積み上げてきた揺るぎない原則に立ち戻ることであるとして、加盟国に「法の支配のための結集」を呼びかけました。(公開討論のコンセプト・ノートについては、こちら(英文)(PDF)別ウィンドウで開くを御参照ください。)

G7広島サミット

G7広島サミット議長国記者会見を行う岸田総理 (写真提供:内閣広報室)

G7長野県軽井沢外相会合

 令和5年4月18日、G7長野県軽井沢外相会合の成果文書として、外相コミュニケ(PDF)別ウィンドウで開くが発出されました。国家間における法の支配に関して、記載は以下のとおりです。

 「国連憲章の規定に従った、あらゆる国の領土一体性又は政治的独立に対する武力による威嚇又は武力の行使の禁止は、戦後の国際システムの礎を成している。しかし、領土的野心によって、一部の国が再び力による支配に回帰しつつあり、そのため、我々は、法の支配に導かれた平和を堅持するための取組を倍加してきた。1970年の友好関係原則宣言で再確認された、武力による威嚇又は武力の行使による領土の取得の禁止は、誠実に遵守されるべきである。我々は、世界のいかなる場所においても、力又は威圧により、平穏に確立された領域の状況を変更しようとするいかなる一方的な試みにも強く反対する。この点、一方的に領土を併合するために正規又は非正規の軍隊を派遣することは禁止されている。」

G7広島首脳コミュニケ

 令和5年5月20日、G7首脳は、G7広島首脳コミュニケ(PDF)別ウィンドウで開くを発出しました。国家間における法の支配に関して、記載は以下のとおりです。
 「我々は、次のとおり国際的な原則及び共通の価値を擁護する。

  • 大小を問わず全ての国の利益のため、国連憲章を尊重しつつ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、強化する。
  • 世界のいかなる場所においても、力又は威圧により、平穏に確立された領域の状況を変更しようとするいかなる一方的な試みにも強く反対し、武力の行使による領土の取得は禁止されていることを再確認する。」

G7広島サミット セッション9「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」

 令和5年5月21日、G7広島サミットのセッション9「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」が開催され、G7首脳、8か国の招待国首脳、ゲストとして参加したゼレンスキー・ウクライナ大統領の間で、ウクライナ情勢を始め、国際社会が直面する平和と安定への挑戦にどのように対応すべきか議論が行われました。各国首脳は、インド太平洋やアフリカを始め、国際社会が抱える様々な平和と安定に関する諸課題について議論を交わし、以下の点が重要であるとの認識を共有しました。

  • 全ての国が、主権、領土一体性の尊重といった国連憲章の原則を守るべきこと
  • 対立は対話によって平和的に解決することが必要であり、国際法や国連憲章の原則に基づく公正で恒久的な平和を支持するということ
  • 世界のどこであっても、力による一方的な現状変更の試みを許してはならないこと
  • 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くこと

注:(注)8か国の招待国と7つの招待機関は、豪州、ブラジル、コモロ(アフリカ連合(AU)議長国)、クック諸島(太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国)、インド(G20議長国)、インドネシア(ASEAN議長国)、韓国、ベトナムです。

上川外務大臣のオランダ・ハーグ訪問

 上川陽子外務大臣は、令和6年1月11日(現地時間)に、オランダ・ハーグに所在する国際司法裁判所(ICJ)及び国際刑事裁判所(ICC)を、同月15日に、ドイツ・ハンブルクに所在する国際海洋法裁判所(ITLOS)を、それぞれ訪問しました。同訪問の成果は以下のとおりです。

  • 日本の外務大臣の国際裁判所訪問により、現状認識を共有しつつ、「法の支配」や「人間の尊厳」のため国際裁判所が果たしている役割への日本の揺るぎない支持を発信。今後の更なる連携強化を確認。
  • 「法の支配」の脆弱さにより平和と安全が脅かされている国際社会の現実を踏まえ、日本の強みを生かした「法の支配」の強化のためのパッケージとして、以下の3つの柱を推し進めていく旨表明。
    1. 各国に対するICJ強制管轄受諾宣言やICCローマ規程締結の呼びかけ等による国際裁判所の役割強化といった国際的側面の取組。
    2. アジア・アフリカにおける法制度整備支援やICC被害者信託基金を通じたアフリカの紛争下での女性支援といった各国の国内における「法の支配」を浸透させていくための取組
    3. 国際・各国の国内の両方の「法の支配」を支える国際法務人材の育成(JICA・UNAFEIを通じた研修プログラムや東京国際法セミナー)及び国際裁判所や国際機関の邦人職員の増加
  • 今次訪問の成果を踏まえ、対話と協力に基づき、国際社会における「法の支配」の強化のための外交を包括的に進めていく旨発信。

 同訪問に際して行われたぶら下がり会見記録について、以下を御参照ください。

パレスチナ占領地に関する国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見手続:我が国による陳述の実施

口頭手続に参加する日本代表団(写真出典:国際司法裁判所(ICJ)サイト)

 国際司法裁判所(ICJ)においては、2022年12月にイスラエルによるパレスチナの占領、入植及び併合の法的帰結に関する勧告的意見の発出を要請する国連総会決議が採択されたことを受け、勧告的意見の発出に向けた手続が行われています。 我が国は、2023年7月に陳述書(英語)(PDF)別ウィンドウで開く を提出した上で、2月22日の口頭手続に参加し陳述を行いました。陳述においては、我が国として、中東和平に関する基本的な立場を改めて述べた上で、この機会に、国際社会における法の支配の重要な要素である「武力による領土取得の禁止」という原則について、その法的論点に関する我が国の見解(英語)(PDF)別ウィンドウで開く を述べました 。

 陳述書の概要はこちら(PDF)別ウィンドウで開く口頭手続における陳述の概要はこちら(PDF)別ウィンドウで開くを御覧ください。

 我が国としては、今回の口頭手続への参加も含めICJの活動に引き続き貢献していくことで、国際社会における法の支配の強化のために積極的に取り組んでいく考えです。

友好関係原則宣言

 「国家間における法の支配」は、友好関係原則宣言(国連総会決議25/2625、「国際連合憲章に従った諸国間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言」、1970年採択)の前文で使われている用語です。関連個所の一部(仮訳)は以下のとおりです。

 総会は、

 国際連合憲章において、国際の平和と安全の維持並びに諸国間の友好関係及び協力の発展が国際連合の基本目的に含まれることを再確認し、(…)

 国際連合憲章が、国家間における法の支配の推進に最も重要であることに留意し、(…)

 憲章に従って、諸国民の友好関係及び協力に関する国際法の原則を誠実に遵守すること並びに国が負っている義務を誠実に履行することが、国際の平和と安全の維持及び国際連合の他の目的の遂行に最大の重要性を有することを考慮し、(…)

I 次の原則を厳粛に宣言する。

 国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しないほかのいかなる方法によるものも慎まなければならないという原則

 いずれの国も、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎む義務を負う。このような武力による威嚇又は武力の行使は、国際法及び国際連合憲章に違反するものであり、国際問題を解決する手段としては決して使用してはならない。(…)

 いずれの国も、他国の現行の国境線を侵すような又は領土紛争及び国の境界に関する問題を含む国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇又は武力の行使を慎む義務を負う。(…)

 国の領域は、憲章に違反する武力の行使から生ずる軍事占領の対象としてはならない。国の領域は、武力による威嚇又は武力の行使から生ずる他国による取得の対象としてはならない。武力による威嚇又は武力の行使から生ずるいかなる領土取得も合法的なものとして承認してはならない。(…)

 憲章に従って、国が相互に協力すべき義務

 国は、国際の平和と安全を維持し、国際経済の安定及び進歩並びに国の一般的福祉並びにその政治的、経済的、社会的体制の相違による差別のない国際協力を促進するために、このような相違に関わりなく、国際関係の種々の分野において互いに協力する義務を負う。

 このために、

a. 国は、国際の平和と安全の維持のため他国と協力する。(…)

 国は、憲章に従って負っている義務を誠実に履行するという原則

 いずれの国も、国際連合憲章に従って負っている義務を誠実に履行する義務を負う。

 いずれの国も、国際法の一般に承認された原則及び規則に基づく義務を誠実に履行する義務を負う。

 いずれの国も、国際法の一般に承認された原則及び規則に基づき効力を有する国際的な合意による義務を誠実に履行する義務を負う。(…)

気候変動に係る諸国の義務に関するICJ勧告的意見手続:我が国による陳述の実施

口頭手続に参加する日本代表団
陳述する中村和彦地球規模課題審議官
陳述する高村ゆかり東京大学教授
陳述するミロン・アンジェ大学教授

口頭手続に参加する日本代表団(写真出典:国際司法裁判所(ICJ)サイト)

 国際司法裁判所(ICJ)においては、2023年3月に気候変動に係る諸国の義務に勧告的意見の発出を要請する国連総会決議が採択されことを受け、勧告的意見の発出に向けた手続が行われています。我が国は、2024年3月に陳述書(英語)(PDF)別ウィンドウで開く をICJに提出した上で、2024年12月9日に口頭手続に参加し、口頭陳述を行いました。口頭陳述においては、我が国として、気候変動対策に関する基本的立場を改めて述べた上で、気候変動分野における国際法上の義務及び法的帰結に関する我が国の見解(英語)(PDF)別ウィンドウで開く を述べました。

 陳述書の概要はこちら(PDF)別ウィンドウで開く口頭陳述手続における陳述の概要はこちら(PDF)別ウィンドウで開く を御覧ください。

 我が国としては、今回の口頭手続への参加も含めICJの活動に引き続き貢献していくことで、国際社会の法の支配の強化のために積極的に関与していくと同時に、人類共通の喫緊の課題である気候変動への対処に積極的に取り組んでいく考えです。

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