国連外交
核軍縮に関する国連総会ハイレベル会合における岸田外務大臣演説
平成25年9月26日
議長,御列席の皆様,
はじめに,本日のハイレベル会合の開催に尽力されたアッシュ議長を始め,関係者の皆様に感謝の意を表します。このような機会に演説できることを光栄に思います。
私は,被爆地である広島市の出身です。核兵器使用の惨禍を見聞きして育った者として,人一倍強い思いを持って核軍縮・不拡散に取り組む決意です。
安倍総理が開会セッションで「核兵器のない世界」実現への思いを述べましたが,私から日本の核軍縮政策について更に具体的に述べます。また,先に軍縮不拡散イニシアティブ(NPDI)を代表してオランダが行った演説も我が国としてもちろん支持するものです。
議長,
私は,核軍縮の取組は,二つの認識に基礎を置くべきであると考えています。まず一つ目は,核兵器が使用された際の人道的影響についての正確な認識です。日本は,唯一の戦争被爆国として,広島と長崎の惨禍を,世代と国境を越えて継承していく責務を有しています。本日の多くの国々の演説において核兵器の人道的影響について強調されていますが,日本としても核軍縮を進めるにあたっては,核兵器の使用が直後の被害のみならず,社会経済や将来世代にわたって耐え難い損害をもたらす惨禍を正確に認識すべきとの考え方を強く支持します。我が国としては,核兵器の人道的影響に関する議論に積極的に参加し,全ての国にとってオープンかつ普遍的なアプローチで議論が進むよう努力したいと考えております。
二つ目の認識は,北朝鮮やイランの核問題,核テロの危険など,今日の国際社会がますます多様化する核リスクに直面していることへの冷静な認識です。我々は,核軍縮の取組を進めるにあたって,これらのリスクに有効に対処でき,また十分に実践的な対応を取っていくべきと考えます。
議長,
私は,こうした考えに基づき,「核兵器のない世界」の実現に向け,現実的で具体的なステップとして「3つの低減」に取り組みたいと考えています。即ち,(1)核兵器の数の低減,(2)核兵器の役割の低減,そして(3)核兵器を開発・保有する動機の低減を目指した取組です。「核兵器のない世界」に向けて核兵器の数を低減させるためには,まず,核戦力や核ドクトリンについての透明性を向上させるとともに,安全保障政策における核兵器の役割も併せて低減させる必要があります。また,地域や国際社会において安全保障上の懸念が存在することが,核兵器を開発し保有する誘因となっていることから,こうした安全保障環境を改善し,核兵器を開発・保有する動機をも低減させる必要があります。
議長,
核兵器の数の低減に関しては,オバマ米大統領がベルリンで改めて核軍縮の決意を表明したことを強く支持するとともに,米露が早期に更なる核軍縮交渉に入ることを期待します。また,米露二国間交渉が,その他の核兵器国も参加する多国間による核軍縮交渉に早期に転じることを期待します。多国間交渉が開始されるまでの間は,その他の核兵器国は引き続き核軍縮を進める,あるいは少なくとも核兵器を増やさないことにコミットすべきと考えます。
議長,
これまで日本はNPDIを通じて実践的な提案や取組を行ってきました。例えば,核戦力の透明性については,来年のNPT準備委員会で核兵器国が行うべき核軍縮措置の報告のフォームを提案し,各方面から高い評価を得ています。核戦力の増強,特に透明性を欠いた核戦力の増強を防止する上で有用な提案と考えています。
こうした実績の上に立ち,「核兵器のない世界」のビジョンに向けたブロックを積み上げる努力を重ねてまいりたいと考えています。一昨日も豪州と共に共同議長を務めてNPDI外相会合を主催し,核軍縮の推進に向けた政治レベルのコミットメントを確認したところです。次回は第3回準備委員会の直前に被爆地広島で明年4月に開催予定であり,2015年NPT運用検討会議に向け,有益な提案を行う考えです。
議長,
ここ国連の中にも原爆に関する展示がありますが,開会セッションで安倍総理から申し上げたとおり,広島・長崎へ訪問いただくことにより被爆の惨禍を自分の肌で直接感じていただき,「核兵器のない世界」への思いを新たにしていただければ幸いです。この関連で,被爆70周年である2015年に国連及び広島市の協力の下,同市で国連軍縮会議を開催することを検討中であることをご紹介したいと思います。
御静聴ありがとうございました。